「ねえ、よーちゃん」
「何、しずるさん」
「よーちゃんって、その……するの?」
「何を?」
「……オナ二ー、とか」
しずるさんはおずおずと訊いてきた。
「何それ? おな……?」
聞いたことがない。
ゲームか何かだろうか。
この前一緒に遊んだトランプゲームといい、しずるさんは私の知らないことをたくさん知っている。
「どうなの? 正直に答えて」
「えっと……」
(あれ?)
なぜかしずるさんの顔が赤いような。
「……ごめん、わからないんだけど」と私は素直に答えた。
「本当に?」
しずるさんは私の顔を覗き込んできた。
恥ずかしい。
「よーちゃん……」
「そ、そんなじっと見ないでよ。というか何なの? 教えてよ、しずるさん」
「いえ、知らないならいいの、気にしないで。この世には知らなくていいこともあるのよ」
「え〜。そう言われると気になるわよ」
「ダメよ、よーちゃん。よーちゃんはそのままがいいの」
しずるさんはきっぱりと言った。
が、そのあとに「けれどこれはチャンスかも? 教えるべきか……ああ、でも」としずるさんはブツブツ呟いた。
「?」
「…………」
「しずるさーん?」
「…………」
しずるさんは考え込んでしまった。
何かまずいことを言ってしまっただろうか。
私はオロオロしながらシズルさんの言葉を待った。
しばらくして――ふうう、としずるさんは息を吐いた。
「よーちゃん、今日もいい天気ね」
「う、うん。そうね」
よかった。
いつものしずるさんだ。
「よーちゃんっていい匂いがするわね」
「そうかな?」
「うん。今度――」
「え?」
「――よーちゃんにいいことを教えてあげるわ」
「なになに?」
「とっても気持ちのいいことよ」
そう言うしずるさんの目は妖しく、綺麗で、吸い込まれそうだった。
■■続かない。■■