「……誰だお前?」  
「……」  
俺がねぐらに使っている高級ホテルの一室に戻ると、目の前には見ず知らずの若い女が突っ立っていた。  
年齢は高校生ぐらいだろうか?だが野暮ったい服装をしているせいかもう少し上にも見える。  
顔はかわいい分類にはいるのだろうが、能面のように無表情だ。  
「ここにいるってことは、お前も統和機構の人間だな?いや、お前は人間ではないか」  
「……」  
女の表情を探るが相変わらず無表情だ。  
しかしその出で立ちや雰囲気から、この女が合成人間であることはある程度確信がもてた。  
俺は先ほどまでとは違う、鷹が獲物を狙うような眼で女を観察する。  
合成人間とわかった以上、女だからといって油断は出来ない。  
俺も良く知る、組織の最上位クラスに位置する二人の合成人間は姉妹だった。  
 
両手は完全な空手で武器は持っていない。  
体から微弱な電磁波や振動波を発生させている様子もない。  
リセットやリミットが持つ、敵に近づくことを許さないような威圧感や隙のなさも持ち合わせていない。  
はっきりいって隙だらけだ。  
しかも目の前の女は完全に俺の射程に入っている。俺が指を一本動かすだけで簡単に終わらせられるだろう。  
「お前、この俺になんのようだ?見たところ戦闘タイプではないな。新しい指令でも知らせに来た下っ端か?」  
俺はあくまで距離を保ちながら女に問いかけた。  
だが女はこっちの問いかけが聞こえてないのではないか?と思えるほど全く反応しない。  
 
『ちっ……なんなんだこの女は!』  
だんだんと俺は苛立ちを隠せなくなってきた。  
もちろん目の前の女が何の返事もしないことが原因だが  
それ以上に、俺の目線を真正面から受けても全くおびえるそぶりを見せないことも癇に障った。  
らちがあかん。とりあえず身動きをとれなくして、拷問でもしてこの女の正体を――  
そう俺が考えたとき、女は思いもよらない行動に出た。  
なんといきなり服を脱ぎ始めたのだ。  
来ていたTシャツを脱ぎ捨てると、白いブラにも手をかけなんの躊躇もなくはずした。  
俺の目の前に、まるで日光を浴びてこなかったかのような、真っ白い素肌がさらされた。  
女は続けてズボンのベルトにも手をかけた。  
 
「おい、お前!その……ど、どういうつもりだ!!」  
俺は慌てて女に怒鳴りつけた。予想外の展開に頭がついていかない。  
「……え?しなくていいんですか?」  
「何をだよ!いいからさっさと服を着ろ!!」  
俺は目を逸らしながら女に命令した。  
女はきょとんとした表情で俺を見つめている。  
なぜ俺が慌てているのか心底わかってなさそうだ。  
突然現れた女に、目の前でストリップショーをされたら誰だって慌てるだろうが。  
「その、なんだ……お前は、俺相手に『こういうこと』をするよう組織から命令を受けてきたのか?」  
聞きながらも、組織が俺にこの女をあてがったことは間違いなかった。  
しかし、それなら事前に連絡ぐらいあってしかるべきじゃないか……  
「はい。私はそういう役目ですから」  
女は無表情のまま、そのあまりにつらい言葉をあっさり口にした。  
「例えそうだとしても、このやり方はあまりにあからさまだろ。ムードも何もあったもんじゃない」  
俺はため息をつきながら言った。  
こんなやり方でその気になるのは、よっぽど溜まってる奴か、血気盛んな中高生ぐらいだろう。  
この女はそういう奴しか相手にしてこなかったのか?  
すると女が、ベルトにかけた手を止め、口を開いた。  
「あの、私がここに送られる前に、レインって方が」  
「あ!?」  
 
予想外の名前が出て思わず鋭い目つきになる。  
女は俺の表情の変化にやや怯えながらも、言葉を続けた。  
「その……『あいつ、一人ぼっちで相当飢えてるだろうから、会ったらすぐに裸になってやりなさい♪』って……」  
 
バギィ!!  
 
「……!」  
女のすぐ横の机が真っ二つに裂け弾けとんだ。  
女は何が起こったのかわからぬまま、反対側のベッドに吹っ飛んだ。  
「あのクソ女め!!どこまでも舐めやがって!!!」  
どうもおかしいと思ったら、あの女が噛んでやがったのか!  
俺は大した戦闘力もないくせに、自信満々に俺に対等な口を利いてくる、あのクソ生意気な女を思い出し歯軋りした。  
ベッドの上に上半身裸のままで吹っ飛んだ女は、さすがに不安の表情を浮かべている。  
女はベッドから起き上がろうとして――どうやらようやく自分の体の異変に気付いたようだ。  
「え?あれ?」  
女はしびれて動かなくなった自分の手足を見つめ、不思議そうな声を上げている。  
さっき机を吹っ飛ばしたとき、女の両手足に繋がる神経に隙間を作ってやったのだ。  
女はうつぶせに突っ伏した状態で、なんとか体幹をくねらせて起き上がろうともごもごと動く。  
俺はそんな女の上にまたがる様にして立ち、肩を掴んで仰向けにひっくり返した。  
そして馬乗りになり、ズボンから自分のモノを取り出し女の目の前に突き出した。  
「……咥えろ」  
 

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