「ずっと二人で」  凪×健太郎  
 
「はぁ、はぁ」  
おれ、羽原健太郎は走っている。  
ついさっき凪から連絡を受けた。  
「健太郎、ちょっと話しがあるからマンションまできてくれ」  
用件だけを言って凪はそっけなく電話をきった。  
なんだろうな………ちょっと暗い声だったけど  
原チャリを止めてからマンションまでのほんの一分も無い距離すらもどかしくて、走る。凪のマンションに着き、エレベータに乗り込み目的の階を押す。  
チーン。  
エレベーターから降り凪の部屋にむかう。  
彼女の部屋の前に立ち呼吸を整えてからドアノブを回す。  
   
「凪ー」  
部屋の中に入ると、すぐ凪の姿が目に入る。彼女は椅子に座って組んだ手をテーブルに置いていた。  
「やぁ、来たか…まあ座れよ」  
やっぱりちょっと声が沈んだ感じがする。訝しく思いながらも、言われたとおり椅子に座る。  
しばらくして凪が重そうに口を開いた。  
「まわりくどいのは苦手だから、単刀直入に言うが…」  
なんだ…何か嫌な予感がする。  
そしてその予感は見事的中する。  
「コンビ解散だ、もうオレには関わるな」  
おれは絶句した。  
 
オレ、霧間凪は考える。このまま健太郎に頼って、甘えていていいのだろうかと。  
親父、探偵さん、直子。オレが大事に思っていたやつはみんなオレの前からいなくなってしまった。  
オレは弱くて、脆い。今までくじけそうになってしまったことも何度もある。もし今度は健太郎に何かあったら、オレは耐えられなくなってしまうかもしれない。  
もう長い健太郎との付き合いの中で彼はオレの特別な存在になっていた。  
オレがついになれなかった“探偵の助手”のような彼。  
大きな事件も一人で解決してしまうような頼りになる彼。  
オレが泣いてしまったときもただ優しく頷いてくれた彼。  
オレはそんな健太郎のことが好きなのだ。  
仲間としてとかではなく(もちろんそれもあるが)一人の女の子として一人の男の子の健太郎が愛おしくてたまらない。  
そう自覚したときに決めた。もう健太郎とは会わないようにしよう、と。  
 
「…………なっ、なんでだよ」  
おれは絶望感にさらされながらも、なんとか声を絞り出す。  
「分かってるだろ?オレと一緒にいると危険なんだ」  
まるで子供をたしなめるかのように優しい口調の凪。でもそれが逆におれを興奮させる。おれは立ち上がり声を荒げた。  
「なっ…そんなの分かってるさ!でもおれは凪の役に立ちたいんだ!おまえが助けてくれなかったら、おれは、どうなってたか分からない。だから…」  
凪も立ち上がる。  
「健太郎」  
今度は少し強い口調だった。ビクッと身体が震えた。  
「もう恩は充分に返してもらったよ。もうオレに付き合うことはない」  
おれはなんとか抵抗を試みようと口を開く。「そんなっ…まだ、おれは…おれ、は」  
うまく言葉を発することもできない。そんなおれを見て、凪は溜息をついた。  
「ふぅ…とにかくもう終わりだ。ここにも二度と来るな」  
谷底に突き落とされたような気分だった。  
体中から力が抜けていく、足はガタガタと震え、奥歯はカチカチと音を鳴らす。  
でも、でも、言わなくては、最後となるのならこれだけは言わなくては。  
おれは拳を握りしめ勇気を振り絞り言った。「も、もう、気付いてるかもしれないけど…おれは、おまえのことが、凪のことがす、好きなんだ。だからもう終わりなんて言わないでくれよ。もっと、ずっとおれと一緒にいてくれ。頼むよ…」  
自分の想いを一気に言葉にした。  
 
「………」  
オレは言葉を失った。オレのことが好き?  
健太郎が?  
健太郎はもう気付いてるかもしれないけど、と言ったが、オレは色恋沙汰には疎いのだ。そんなの気付くわけがない。  
しばらくすると物凄い幸福感が沸き上がってくきた。  
健太郎がオレのことを好きだと言ってくれた。こんな、がさつで女の子らしさなんてかけらもないオレを。  
健太郎はオレをじっとみつめて答えを待っている。  
オレも健太郎のことが好きだ。  
そう言えたらどんなに幸せだろう。今でもこんなに嬉しいのに、自分の気持ちを健太郎に伝えることができたなら………  
でも、それはできない。好きなのに、いや好きだからこそできないのだ。  
今度は自分の中に矛盾を感じて、なんともいたたまれない気持ちになった。  
オレは自分の気持ちに耐え。なるべく感情を押し殺した声で健太郎に答える。  
「すまない…オレはおまえを、そういう風には見れない。おまえの気持ちに応えるこ…」  
すうっーっ、と何かが頬を伝った。  
 
凪の拒絶を絶望感と、ともに受け止める。  
と、その時彼女の瞳からなにか光るものが流れ出た。  
「凪?」  
おれが声をかけると凪は、ぐい、と手の甲でそれをぬぐった。  
「あ、あれ何か目にゴミでも入ったかな?」ぬぐってからも凪の瞳からはキラキラと光る涙が次々と溢れ出す。その時、おれは凪の気持ちを唐突に理解した。  
「あ、あれ、おかしいな。止まらない…」  
「凪!」  
おれは凪のそばにより彼女を抱いた。  
彼女の身体は柔らかくて、細くて見た目そのままの女子高生のそれだった。  
そんな彼女をおれはきつく抱き締めた。  
きつく、きつく。  
細い身体が折れそうになるほど。  
 
「あっ………」  
健太郎に抱き締められた。  
どうしようもなく自分の気持ちが溢れ出しそうになる。  
ダメだっ!  
自分のなかの何かが壊れそうになる。  
一度でも壊れてしまったら、もう戻らない脆いそれが。  
今まで必死に耐えてきたものが…  
「凪、好きだ。愛してる」  
 
それが。  
今。  
壊れた。  
 
「うっ…くっ、ううううう」  
オレは健太郎に身体をあずけ、みっともなく鳴咽をもらす。もう、とまらない。  
「オ、オレも健太郎のこと好きだ…でも、でもだから…」  
健太郎に自分の気持ちをぶつけた。彼はただオレを抱き締めてくれている。  
オレも健太郎の背中に手をまわす。もうどうしたらいいか分からない。  
「健太郎が、いなくなったりしたらオレ、オレ、でも、もしおまえになにかあったらって思うと辛くて…苦しくって…」  
もう、自分でも何を言っているのか分からない。  
「凪」  
健太郎はそう言って、オレの言葉を遮るように唇にキスをした。  
「あっ………」  
ファーストキスだった。  
 
凪の唇を奪った。  
何故そうしたのか自分でも分からない。ただ自然に身体が動いた。唇を離すと凪はおれの方を潤んだ目で見上げ「健太郎…」  
とだけ呟き、おれの身体を強く抱き締めてきた。  
だめだ、凪。そんな風に見られたらもう…  
おれは堪え難い衝動にかられる。  
凪を抱きたい。  
凪を自分のものにしてしまいたい。  
凪と一つに、心も身体も一つになりたい。  
おれはもう一度彼女と唇を重ねる。今度は深く。  
「んんっ!はぁん…ああっ…けん、た…ろうはぁ」  
さらに口の中に舌を入れて掻き回す。  
凪もおれの口の中に舌を入れてきた。二人の舌が絡み合う。  
「な、凪!」  
おれはそのまま凪の制服に手をのばす。  
「だ、だめだ!健太郎」  
凪の拒絶に我に返る。まずい、焦りすぎたか。心の中で舌打ちをする。  
「…っと、わりぃ。だよな、いきなりは無いよな。ゴメン」  
「そうじゃなくて…」もじもじとして俯く凪。  
「ここじゃちょっと。あっちの部屋にオレのベッドがあるから、そこでなら…」  
おれは再び理性を失った。  
 
「うわっ!」  
強引にベッドに押し倒される。  
少し冷静になった頭で考える。  
さっきなんであんなこと言っちまったんだ?淫乱なやつだと思われたかもしれない。  
後悔の念が沸き上がってくる。でもそれはこれから、健太郎と一つになれるという期待感にのみこまれた。  
「健太郎…」  
「凪!凪!」  
健太郎はさっきのオレの言葉でかなり興奮しているようだった。手早くオレの制服を脱がせた。  
…っといっても健太郎はかなり焦っているようで、なんだか中途半端な半脱ぎのような状態なのだが。  
下着があらわになったオレをみつめる健太郎。少し、いや大分恥ずかしい。ブラジャーの後ろに手を回し片手でホックをはずす。  
焦ってるわりには手際がよかった。こいつ手慣れてんのか?そう思うとちょっと悔しくなった。  
くそっ!  
毒気づいてオレのあらわになった胸に、顔をよせる健太郎を小突いてやった。  
「って!何すんだよ」オレは適当な理由をつける。  
「おまえも服脱げ。オレばっかり脱がすのは卑怯だぞ」  
なにが卑怯なのか自分でも良く分からなかったが、健太郎は納得したように服を脱ぎ始めた。  
意外にも筋肉の付いたたくましい身体。最後の一枚を健太郎は躊躇いながらも脱いだ。  
健太郎のはすでに大きく勃起しビクン、ビクンと脈を拍っていた。「そんな、見るなよ。恥ずかしいぞ」  
「ああ、悪い…」  
すごい…おっきい。あんなのがオレの膣内に入ってきたら、どうなってしまうのか?  
想像もつかない。  
「続けるぞ」  
健太郎はそう言って、オレの胸を愛撫し始めた。  
 
キスをしながら凪の胸をせめる。優しく揉みしだいたり、時には強く押してみたりする。唇を離し、首筋、鎖骨へと舌を這わせていく。  
「はぁ…んっ!あっ……はぁん、いっ…はぁ、はぁ」  
おれはAVなどで事前知識はそれなりにあるが、ことに及ぶのは実は初めてだった。  
だからいくらかの不安を感じていたが、凪が感じてくれているらしく安心した。  
おれの口は遂に乳首まで達してそれにしゃぶりつく、口の中で舌をつかい必死に愛撫する。もう片方は指をつかい、こねくりまわしたり摘んだりしてみた。「ああんっ!け、健太郎!胸が…胸がっ!はぁん…いゃぁ…気持ち良いよぉ」  
凪がおれの愛撫で感じている。彼女はいつもの声とは違い、甘ったるい声で喘いでいる。おれは凪の胸から離れて足の間、彼女の秘部へと愛撫を移そうとする。もう下着はぐしょぐしょに濡れていた。それを脱がせて彼女のあらわになった秘部に顔を寄せる。  
「いやっ!健太郎、そんなに見ないでくれ」哀願する凪を無視しておれはそれを観察する。  
綺麗な、すごく綺麗なピンク色。それになんだか甘い、良い匂いがする。  
おれはそれを指で開き、口を近づけた。上にあった突起に舌先で触れてみた。  
途端、凪の身体がビクンと震えた。  
 
「か、はっ………」  
健太郎がオレの一番敏感な部分に触れた。  
初めての快感、まるで体中に心地良い、低周波を流されたようだ。「け、健太郎…そこは、だめぇ、き、気持ち良すぎてオレ、変になりそう…」  
オレの言葉を無視して続ける健太郎。ぴちゃぴちゃといやらしい音が部屋に響く。  
頭が快感で真っ白になりそうだ。  
「健太郎…」  
やっぱり卑怯だ。今度は絶対オレがせめてやる。このどうしようも無い気持ちを、こいつにもあじあわせてやるんだ。  
オレが途切れそうな意識の中で、決意をかためていると健太郎が堪えきれなくなったのか顔を上げ言った。  
「はぁ、凪、おれもうだめだ。堪えらんねーよ、入れていいか?」オレは遂にきたかと、身を強張らせる。  
「ああ…、いいぞ健太郎。オ、オレももう堪え…んない。健太郎とひ、一つになりたい」健太郎は頷いた。  
「入れるぞ」  
なにか硬いものがオレのあそこに触れたのを感じる。その途端激しい痛みが襲ってきた。痛みには慣れているはずなのに、この痛みには我慢できず声が漏れてしまう。  
「んくっ!あ…うっ、…つ!!あ、いっ…ああっ!」  
オレの声に驚いたのか健太郎は動きを止めた。  
 
凪の膣内は信じられないほどきつくて、気持ち良かった。一人でするのとはまるで違う。動いてさらなる快感を得たかった。  
しかしこの反応、もしかして凪は…  
「あっ…凪、は……初めて?」  
凪は息も絶え絶えに  
「んっ…そうだ」  
とだけ言った。  
凪の初めて、凪の処女をおれは今奪おうとしている。  
その事実はおれをさらに興奮させた。  
このまま強引に貫いて凪の処女を貧ってしまおうという欲望と、やさしく凪の処女を大切に扱いたい、という理性が頭の中でせめぎあう。  
「んっ…でも大丈夫だから続けてくれ」  
おれの迷いを見透かしたかのような凪の言葉。  
おれは…おれは…  
凪に覆いかぶさるようにぴったりと身体を密着させる。そして優しくキス。  
「凪、愛してるよ」  
ゆっくりと、ゆっくりと凪の膣内へ進んで行った。  
「け、健太郎…オレも愛してる」  
 
健太郎は優しく、ゆっくりとオレの膣内へと入ってくる。  
痛みも幾分か和らいでくる、いつのまにか処女膜とやらも突破したのだろか?少しづつ快感もうまれてきた。  
「あんっ!健太郎、なんかオレ気持ち良くなってきた」  
「マジか?」  
「あ、ああ」  
「動いてもいいか?」「ああ」  
会話を終え動き出す健太郎。  
ひとつきされるたびに快感は深まっていく。初めてなのに、こんな気持ちが良いものなのか?  
自然と声もでる。  
「あっ!ひあ……あっ、あんっ…はっ、あ!…あ…っはぁ……あ…け、健太郎…健太郎」身体の奥底からなにかが沸き上がってくるのを感じる。  
 
なんだこれは?  
 
「はっ、はっ…凪っ!凪ぃっ…」  
動かし始めてから、いつ絶頂を迎えてもおかしくないほどの、快楽がおれを包んでいる。凪の膣内は暖かくて、ぬるぬるで、すごくきつくて…筆舌に尽くし難いというのはこのことか、などというよく分からない感想が、頭に浮かぶ。  
「うっ…ぐっ」  
まずいもう限界だ。  
「だめだ、凪!もう射精る…抜くぞ」  
おれは引き抜くために腰を引いた。そこで凪に手と足でがっしりと抱きつかれた。  
「だっ、だ…め!もうすこしなんだ。もうすこし…一緒に…膣内に射精してもいいから。健太郎ならいいから…だから…」  
こんなことを言われて抜ける男がどこにいるんだ。  
おれは凪の奥へ、一番奥へと進んでいった。「ああんっ!奥まで、奥まできてる、健太郎が奥までぇっ!!もうオレッ!」  
凪の膣内が、いや全身が痙攣したように、ビクンと動いた。  
その瞬間、まさにその瞬間に、おれは絶頂をむかえた。  
ドクン、ドクン。  
凪の膣内におれの白濁した液体がとめどなく流れ込む。  
 
「あ、健太郎のすごく熱い…」  
絶頂をむかえ朦朧とした意識の中、オレは膣内に射精された健太郎の精液を感じていた。「なっ、凪ぃ…」  
健太郎はすっかり脱力してオレに体重をあずけてくる。心地良い重みだった。  
「健太郎…」  
オレは健太郎の身体を抱き締めて、キスをした。  
健太郎はオレの膣内から、すっかり萎んでしまったものを引き抜くと、そのままオレの横に仰向けになって寝転んだ。  
健太郎はオレの髪を撫でながら今日何度めかの台詞を口にした。  
「凪、愛してるよ」  
オレも今日何度めかの台詞で応えた。  
「オレも愛してる」  
そしてオレはだんだんと意識を失い眠りに就いた。  
 
どれぐらい眠っていただろう?  
外はすっかり暗くなっていた。時計を見ると六時半をまわったところだった。  
ふと、横を見ると健太郎が幸せそうな顔でまだ眠っている。  
「んっ…うん、な、ぎ愛、してるよ…」  
赤面ものの寝言を言う健太郎、オレはたまらなくなり彼の唇にそっとキスをした。  
ここで考える。オレは変わってしまった。文字通り、心も身体も。これでまた以前の様に戦えるのかと。  
オレは変わってしまったら、もう戦えなくなってしまうのだと思っていた。しかし今、心身には前とは違う、前にもまして強い力が、沸き上がってくるのを感じる。  
ここでふいに悟った。そうか…正義の味方の戦う本当の理由。それは誰かの代わりとか、使命感ではなかったんだ。  
みんな何かを守るために戦っていた。  
ふと、あの探偵さんも何かを守るために戦ったのかな?そんな疑問が浮かんだ。  
まあこれは考えても分からないことか。  
オレが守りたいもの、守るべきもの。それは今ここにある。  
そのことですごい幸福を感じた。もうしばらくこの幸福に浸っていたかった。しかしそれはかなわかった。  
「凪ー、ただいまー」綺が帰ってきた。  
 
「健太郎!起きろ!」凪の声で目を覚ます。「うっ…うーん。もう朝?なんだまだ暗いじゃないか」  
「馬鹿!寝ぼけるな!早く起きて服を着ろ」凪はひそめた声で怒鳴る。  
おれはここで、自分が全裸だったことに気付いた。  
ああ、そう言えばさっき凪と結ばれたんだっけ、よかったなーなどと考えてぼぉー、としてると服を投げ付けられた。  
「早くしろ!綺が帰ってきてる」  
やっと状況を把握して素早く服を着た。  
「凪ー?いないのー?あれ?靴はあるのに…んっ!この靴、羽原さんのだ」  
そんな綺ちゃんの声が聞こえてきた。おれ達は凪の部屋を出て彼女を迎えた。  
「お、おかえり綺」  
「お、おかえり綺ちゃん」  
ちょっと声が上擦ってしまった。  
「なんだ、いるんじゃないですか。凪の部屋にいたんですか?また何か事件でも………」おれ達の姿を見ると、何故か綺ちゃんはかぁっ、と顔を紅くして黙ってしまった。  
 
「ど、どうかした?綺ちゃん」  
不思議に思って聞いてみる。するともじもじしながら綺ちゃんは答えた。  
「あの…羽原さん…ズボン逆です、よ」  
「なっ!」  
一気に頭に血が上った。横からもかぁっという音がしたように感じた。  
「あっ、いやこれはさっき急いでたから、いや違うさっきっていうのは、さっきじゃなくて、決してここで服を脱いでいたから、とかでは無くて…つまりその…」  
しどろもどろになり、自分でも何を言ってるか分からない。  
凪に肘で小突かれた。「ぐっ…」  
「あ、わ、私外に出てましょうか?その辺で時間潰してきます」  
おれ達の様子を見ていた綺ちゃんは、そう言うとさっと、背を向けた。  
凪が呼び止める。  
「あ、いやいいんだ」おれも声をかける。  
「うん。今日はとりあえずもう終わったから…ぐぼっ!」  
また小突かれた。今度はかなり強めだった。「まあ、そういうことだから…なんかお腹、減ったな。もうご飯にしようか」  
恥ずかしそうな様子ではぐらかす凪。  
「そ、そうだ晩飯、晩飯。いやー身体動かしたからもう腹減って、腹減ってぇつっ!」  
今度は尻を蹴られた。痛いけどすごく幸せな気分だ。  
「ふふっ、二人とも仲良いんですね。ちょっと待っててくださいね、すぐにご飯の準備しますから」  
微笑みながらこっちを振り向いてから綺ちゃんはぱたぱたとキッチンへ駆けて行った。  
 
綺がキッチンへ行ったあと健太郎の方を見る。  
目が合った。  
「ふふふっ」  
「はははっ」  
何故か笑い声がこぼれる。  
健太郎がこっちに近づいてきた。オレは目を閉じる。  
そして、オレ達はまた唇を重ね合った。  
 
ああ幸せだ。  
 
 
closed.  
 

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