――守ってやるさ。  
それはずいぶん前から思っていた事。  
ある街で日銭を稼いでいた時に、バトルショーで戦っていた虎人の娘。  
ケンカっぱやくて危なっかしくて、だから守ってやらなきゃと思った。  
子供を守るのは、大人の義務だからと。  
けど、そうじゃない。  
そうじゃないんだ、俺がお前を守りたいのは、もっと別の理由があるんだ  
 
………  
 
 
「ランド!」  
 
かけられた声の方を見ると、リンプーが立っていた。  
ランドはあたりを見回す。自室だ。そして自分はベッドに寝ている。  
 
「……俺…」  
 
自分の体を検分するが、昼間の戦いであちこちにあった筈の傷はすべて治されていた。痛みもない。  
仲間が魔法で治してくれたようだ。  
窓を見れば、外は真っ暗だった。  
 
「今…何時だ?」  
「んー、わかんない。とりあえず夜中だよ。もうみんな寝ちゃった。」  
 
では、リンプーは一人でランドを看病してくれたのか。  
リンプーを見るランドに、リンプーは尋ねる  
 
「それより大丈夫?どっか痛いところは?」  
 
掴みかからんばかりに聞いてくるリンプーに、大丈夫だと返事を返し、立ち上がる。  
軽く伸びをすると、全身がぽきぽき音を立てた。  
 
「お前は?ケガはないのか?」  
 
逆に問掛けると、リンプーは頷く。  
それを見てランドは目を細めたが、リンプーは何故か沈んだ表情をしている。  
 
「ケガがないなら、どうしたんだ?元気がないみたいだぞ」  
 
いつもは元気よく揺れている尻尾も、だらりと床を向き、何かあるのは明らかだった。  
リンプーは少し躊躇しながら、ぽつりと言った。  
 
「ランド、何でいっつもあたしをかばうの?」  
「………かばってないよ」  
「ウソ。さっきだって、わざとあたしの前に飛び出したでしょ。」  
 
いつもは元気よく揺れている尻尾も、だらりと床を向き、何かあるのは明らかだった。  
リンプーは少し躊躇しながら、ぽつりと言った。  
 
「ランド、何でいっつもあたしをかばうの?」  
「………かばってないよ」  
「ウソ。さっきだって、わざとあたしの前に飛び出したでしょ。」  
 
ランドは頭を掻いた。確かにそうだ。気付かれてないと思ってたんだが。  
 
「さっきだけじゃない。いつもいつも、あたしが危なくなると絶対助けてくれるでしょ。何で?」  
「何でって…俺の方が丈夫だろ」  
 
それは事実だった。  
全身を固い殻に覆われたランドは、体が丈夫だ。  
そしてリンプーは、力は強いし素早いが、守りは固いとは言えない。  
身を守るものは、服と、腰から下に生えた虎の毛しかないのだ。  
ランドと違い、まともに攻撃を受けると簡単に致命傷になり得る。  
しかし、それだけでも無かった。  
ランドはリンプーが好きだった。  
いい年して、と最初は思ったが、こればかりは仕方ない。  
 
16も年下の虎人の娘に、この甲殻族の男は恋をしていた。  
 
――壁役くらい、やってやるさ。  
 
伝えられない思いを抱いて、それでも自分にできる事をしたかった。  
ふとランドはリンプーを見た。  
リンプーはランドを見つめていた。目に涙を溜めて。  
驚いたのもつかの間、リンプーはランドに掴みかかった。  
 
「バカ!」  
「はあ?」  
 
呆気に取られるランドをよそに、そのまま、ポカポカと殴る。  
 
「バカバカ、ランドのバカ!」  
「おいおい…」  
 
ランドは呆れ顔で言う。  
 
「そんな事で泣くか?」  
「そんな事って何だよ!」  
 
泣きながら、怒りながらランドの胸に顔を埋めるように殴り続ける。  
 
「好きなヤツの心配しちゃいけないの?あたしのせいでケガなんてして欲しくない!」  
「…そりゃどうも。けどお前な、仮にも男に軽々しくそういう事言うなよ?」  
 
肩を持ってリンプーを引き離しながら、ランドは言い聞かせるように言う。  
リンプーはその言葉に、顔を上げた。  
 
「何で」  
「勘違いするだろうが」  
「だから勘違いって何」  
 
ランドは頭を抱えた。  
ここまで鈍い女だとは。  
 
「つまりだな、愛されてるとか…モテてるとか思うヤツがいるんだよ」  
「ああ、それなら大丈夫」  
 
は、とリンプーを見るランドに、リンプーはうつ向きながらぽつりとこぼす。  
 
「その、あたし、本当にランドが好きだから。リュウとかステンの『好き』とは違うよ。ホントだよ。」  
「………は?」  
 
何が起きたか把握できないランドに、リンプーは自嘲気味に笑う。  
 
「あはは、やっぱり嫌だよね、男ってもっと可愛い女の子がいいんだもんね。」  
 
とっさに、それは違うと思う。  
女らしくて守られるだけの女も嫌いではない。  
けれど、ランドが見ていたのはリンプーだけだった。  
 
「あたしみたいな人を好きになる物好きなんていないよね。ゴメンね、変な事言って…」  
 
言葉より先に、手がのびた。  
背を向けようとしたリンプーの手を、ランドは掴む。  
そのままリンプーの意外に細い体を抱き締めた  
 
「ランドっ!?」  
「そんな事ない」  
 
子供みたいで目が離せないだけだと思っていた。  
あぶなっかしい印象があるから、それだけだと。  
でも、違う。  
 
「そういう物好きなヤツもいるもんさ。俺とか。」  
「ランド…」  
「でもお前も相当物好きだぞ?俺の年知ってるか?」  
「知ってるよ。けど好きなんだもん」  
 
ランドは更につよくリンプーを抱き締めた。  
 
ああ、畜生。  
俺はロリコンなのか?  
それとも15はセーフか?  
どっちにしろ、かあちゃんにバレたら殴られる気がする。  
 
そんな事を思いながらも、ランドは首を精一杯曲げて、その鼻面をリンプーの髪に押し付けた。  
この虎人の娘が、たまらなく愛しい。  
 
異変は、その時起きた。  
最初は微かだったリンプーの香りは段々と強くなり、それに従ってランドの体がほてりだした。  
ランドは慌てて離れる。  
 
「…ランド?」  
 
不思議そうな顔をするリンプーから、甘い香りが流れてくる。  
 
――しまった。  
 
ランドは自らの迂濶さを悔いた。  
動物と大昔に袂を分けた虎人や甲殻族には、発情期はないが、それに代わるものがある。  
好意を寄せる異性を前にすると、発情期に似た現象が起きる。異性を引き付ける香りが出るのだ。  
昼間はそれも起こりにくいが、今は夜、しかも気持ちを確かめ合ったという状況でああいった風に体を密着させると  
まず間違いなく起こるだろう事は、リンプーはともかく、ランドになら予想できたはずだった。  
まさかそれをすっかり忘れてしまうとは。  
リンプーの香りはどんどん強くなる。  
ランドの体からも、そういった香りが流れている事も想像に難くない。  
リンプーを見れば、顔を真っ赤にして、自身の肩を抱くようにしている。  
遅かった。  
 
「ランド…」  
 
熱っぽい顔でリンプーが近付く。  
 
「なんか、変だよ…体が、熱い」  
「来るんじゃねえ」  
 
思いを確かめ合ったとはいえ、ランドはこのままリンプーを抱いてはいけないと思っていた。  
第一、こんな一時の激情に流されていいはずがない。  
第二に虎人は希少種族だ。他種族と結ばれてしまえばその血を絶やす事になる。  
さらに、体格差。  
ランドとの行為は、リンプーにとってはおそらく激痛を伴う。  
年齢を別にしても、問題は山積みだ。  
 
「来るな…」  
 
ランドの制止をよそに、リンプーは近付き、ランドにもたれかかる  
そこで、ランドの躊躇も擦りきれた。  
上をむいたリンプーの唇に、自分の唇を重ねる。  
リンプーの背中を、ランドの手がなぞる。  
 
「…!」  
 
リンプーの体に寒気に似た感覚がはしり、ぶるりと震えた。  
 
ランドはもどかしげにリンプーの服を脱がせた。  
あらわになった背中に手を這わし、獣の耳を舐めると、リンプーが声を上げた。  
 
「あっ…」  
 
「なんか、変だよ…体が、熱い」  
「来るんじゃねえ」  
 
思いを確かめ合ったとはいえ、ランドはこのままリンプーを抱いてはいけないと思っていた。  
第一、こんな一時の激情に流されていいはずがない。  
第二に虎人は希少種族だ。他種族と結ばれてしまえばその血を絶やす事になる。  
さらに、体格差。  
ランドとの行為は、リンプーにとってはおそらく激痛を伴う。  
年齢を別にしても、問題は山積みだ。  
 
「来るな…」  
 
ランドの制止をよそに、リンプーは近付き、ランドにもたれかかる  
そこで、ランドの躊躇も擦りきれた。  
上をむいたリンプーの唇に、自分の唇を重ねる。  
リンプーの背中を、ランドの手がなぞる。  
 
「…!」  
 
リンプーの体に寒気に似た感覚がはしり、ぶるりと震えた。  
 
ランドはもどかしげにリンプーの服を脱がせた。  
あらわになった背中に手を這わし、獣の耳を舐めると、リンプーが声を上げた。  
 
「あっ…」  
 
初めて聞く、リンプーの女の声。  
それが堪らなく感じて、ランドは更に指を動かす。  
背中、肩、首筋…軽く撫でる度に、肩越しに見えるリンプーの尻尾が痙攣する。  
 
「んっ…く」  
 
それを軽く掴むと、一際高い声が上がる。  
 
「ひゃんっ」  
 
リンプーの膝が揺れるのを見て、ランドはリンプーを抱き上げた。  
これからどうするか、経験はなくともわかっているのだろう。  
リンプーはランドの首に手を回した。  
 
リンプーをそっとベッドに横たえ、もう一度、口付けを交す。  
リンプーの口に、ランドの舌が侵入する。  
 
「んぅ…む…」  
 
ぎこちなくではあるが、リンプーからも舌を絡める。  
ねっとりと舌を絡め合いながら、ランドはリンプーの胸に触れた。  
撫でるように回りをなぞり、ときどき指の腹で先端を押し潰す。  
 
「んっ…」  
「痛いか?」  
 
リンプーは首を振る。  
「平気…、ね、もっと…」  
 
強くなる一方の甘い香りに誘われるように、ランドは胸に舌を這わせる。  
 
「あ…ん、ん…」  
 
両胸に与えられる刺激に、リンプーは艶のある声を上げる  
荒い息の音も、声も、下半身の甘い痺れも自分でないみたいだった。  
しばらくそうして胸をいじった後、ランドの手が、だんだんと下へ降りて行く。  
首を曲げたリンプーの視界の中で、ランドの指はヘソの回りを擦り、太股を撫でた。  
そして、閉じていたそこに手をかける。  
 
「や、そこは…っ」  
 
僅かに抵抗するが、ランドの手はするりと足の間に滑り込む。  
毛皮に守られ、普段はぴったりと閉じられたそこは、今は僅かとはいえ濡れていた。  
自分でしか触れないような場所に触れられ、リンプーは声を上げた。  
 
「やっ、あぁ…ぁ、あっ」  
 
しかし、ランドは内心で眉をひそめる。  
予想はしていたが、キツイ、かもしれない。  
 
リンプーは恐らく処女だろう。  
そうでなければ、性格上、もう少し慣れた風を見せるはずだ。  
そして…と、ランドはまた、そこに指を這わせる。  
太いランドの指は、入れただけで、リンプーの処女を奪いかねない。  
できれば、入れるべきもので奪いたいのだが…そっちはもちろん指より太い。  
ランドは甲殻族の中で特に巨根というわけでもないが、それでも他種族にすれば話は変わる。  
リンプーが耐えられるかどうか。  
 
――なるだけ、ほぐさないとな。  
 
身を起こしたランドを、リンプーは熱に侵されたような視線で見上げる。  
ランドはそれに目配せすると、リンプーの足に手をかけ、大きく開かせた。  
片足を持ち上げ、よく見えるようにする。  
「やっ…何…?」  
 
明るい黄色の毛に覆われた桃色の秘裂。  
そこをもう片手の指で押し広げた。  
 
「ちょっとガマンしろよ…」  
 
動揺しているらしいリンプーに声をかけ、ランドはそこに舌を這わせた。  
驚いたのはリンプーだった。  
 
性知識に乏しいリンプーにとって、そこを舐めるという行為は予想外だった。  
 
「やっ…そんな所…っ!や、やだやだやだぁっ、あ、ああっ、んっ、ふゃぁああっ」  
 
羞恥、そして強すぎる快感に身をよじる。  
視線を下へ向ければ、灰色の塊が自分の足のあいだにあって  
そこからはぴちゃぴちゃといやらしい音が立っていて  
それが余計に羞恥心をかきたてる。  
 
――ランドが、あんな所舐めてる…  
 
そして、その光景が更にリンプーの官能を高めていく。  
鼻面ごとそこに差し入れられ、さらに舌を入れられ、熱に冒された頭で、抵抗を試みる。  
 
「ラン…ド、やっ…もう、ああぁっ…」  
 
体を折り、ランドを押しのけようとするも、力の抜けた腕ではそれも叶わない。  
「!?やっ…ぁ、そこはっ!」  
 
突起を舌で擦られ、リンプーの体が跳ねた。  
ランドはそこを執拗に責めたてる。  
香りと共に溢れる液を舐めとり、突起を吸い上げ、舌でつつく。  
 
「や…そこ…ぉ、んんっ、ヘンにぃ…なっ……あ、ああっ、あああぁぁぁぁあっ!」  
 
初めて感じる絶頂に、リンプーは叫ぶような声を上げた。  
視界が一瞬、白く染まる。  
ランドは顔をそこから離すと、まだ痙攣しているリンプーの髪を撫でた  
 
「ランド…今の…あたし、何か…ふぅ…っ」  
「イクって言うんだ、それは」  
「イク…これ、が?」  
 
頷きながら、ランドは自分の服を脱ぐ。  
そろそろガマンも限界だった。  
大きく立ち上がったそれを見て、リンプーは目を見開く。  
リンプーにしてみれば、絶望的な程に大きかった。  
――あれが、今から…  
恐怖に息を飲む。  
ランドはそんなリンプーをそっと抱き締める。  
 
「リンプー」  
 
一度は諦めた恋だった。  
だからせめて守りたいと。  
そう思った相手に、今度は苦痛を強いる事になる。  
それでも。  
 
「…愛してる」  
 
抱き締められた側は、おずおずと背中に手を回す。  
 
「あたしも」  
 
堅い殻の感触が、ひんやりとして心地よい。  
いつもあたしを見守ってくれた人。  
大丈夫、このひとなら、受け入れられる  
 
「愛してる」  
 
 
 
ランドはリンプーを四つんばいにさせ、尻を高く上げさせる。  
振り向くリンプーに笑顔を向ける。  
不安だ、と表情と尻尾が告げていた。  
滲んだままの涙を拭ってやる。  
 
「こっちのが痛くないだろ」  
「そうなの?」  
「そうらしい」  
「…って事は、前にもした事あるんだ」  
 
唐突に言われ、ランドは口ごもる。  
 
「悪いかよ、俺だって健康な男だぜ」  
 
リンプーはともかく、ランドの年齢からすれば、まだ、という方が不自然とも言えた。  
 
「それに、俺が経験無しだったらヤバいぞ。」  
「何が」  
「…わからないなら、いいんだ」  
 
ランドがこうしてリンプーを気遣い、痛みを抑えようとできるのも、それなりの経験があり、余裕があるからだ。  
これがやりたい盛りの年齢の男なら…リンプーを傷つける事になりかねない。  
なんて言えば、リンプーが怒りだすのは目に見えていたから、言わずにいた。  
 
「力、抜けよ…」  
 
僅かに頷くリンプーの頭を、腕を伸ばしてなだめるように軽く叩く。  
両手で、ランドはリンプーの腰、黄と茶、二色の毛の生え際あたりを支え、自身をリンプーの中へ進ませる  
 
「〜〜〜〜っ!!」  
 
先端がリンプーの中に入ると同時に、壊れるのではないかという激痛がリンプーを襲い、声にならない悲鳴が上がる。  
ランドは慌てて動きを止める。  
 
「ぁ、ぐ、…っ!」  
 
顔をシーツに埋め、後ろからでもわかる程、涙を流す。  
尻尾や耳はびくびくと痙攣し、その痛みが尋常でないと告げていた。  
本能的に、痛みから逃れようと、這いずるように逃げようとするリンプーの体を、しかしランドは逃がさない。  
一度入れてしまえば、抜くのにも痛みがともなう。  
それもあるし、ランドの方もこのまま離れたくはなかった。  
まだ何も受け入れた事のないそこは、ランドをきつく締め付けた。  
 
「…くぅ、流石に…きついな」  
 
さらに腰を進めたくなる自分を、なんとか抑える。  
そんなランドを知ってか知らずか、リンプーは絞りだすような声を出す。  
 
「も…だいじょぶ…」  
 
全く平気に見えない、とランドは思う。  
口では平気だと言ってはいるが、声だけでも苦しそうだ。  
しかし、ここでやめてもリンプーは喜ばないだろう。  
ランドに助けられても喜ばなかったのと同じに。  
やめる事はできない。とはいえ、このまま続けたら本当にリンプーを壊してしまう。  
それでランドは、そのままの状態で動かずにいた。しばらく動かなければ、痛みもおさまるだろう。  
そうしたら、少しずつ続ければいい。  
少しでも痛みを散らせればと、ランドは目の前でびくつくリンプーの尻尾を撫でた。  
これは僅かながらも効果があったようで、リンプーの苦しげな声が少なくなる。  
尻尾を触られる感覚は、リンプーの下半身にあの甘い痺れを呼び戻した。  
さらに、ランドの片手がそこに伸ばされる。  
 
「ぅ…ふぁっ…」  
 
指先で、上部についた突起を軽く擦られると、リンプーの口から痛みでない声が漏れた。  
そうしている内に、痛みはだんだんと収まり、リンプーはランドを見た。  
 
――もう、大丈夫だから  
それを受け、ランドはゆっくりと動きを再開した。  
 
「く…うッ」  
 
またも、体を割られる痛みにリンプーがうめいた。  
また動きを止めたランドに感謝しながら、リンプーは呼吸を整える。  
そうして、落ち着いたのを確認するとランドはまた体を進める。  
 
そんな事を何回か繰り返し、ついにリンプーの奥までランドが到達した。  
奥に当たる感触に、吐息が漏れる。  
 
「…はぁっ」  
 
好きな人を受け入れたという喜びに、リンプーはランドに笑顔を向ける。  
 
「よく我慢したな」  
 
繋がったままで、ランドはリンプーの頭を撫でた。  
 
「いい子だ」  
 
大きな手の感触を頭に感じながら、リンプーは苦笑する。  
――妙な口癖だ。  
出会った頃から何かと言われてきたこの言葉が、子供扱いされているようでリンプーは気に入らなかった。  
確かに16も違えば子供扱いされても仕方ないのだが、そう扱われるのが嫌いな年頃でもある。  
加えて、こうして抱かれている時にまで子供扱いするとは。  
 
「こんな、時…まで、…ぁ、…子供、扱い?」  
「…は?いや、別にそういうつもりじゃねえんだが」  
「じゃ…何なの、いい子だ…って」  
 
んー、とランドが唸る。頭をごりごりと掻いて、それから虚空を見つめる。  
 
「ま、口癖だ。気にするな」  
「気にするよっ、…ふゃっ」  
 
勢いよく振り返ろうとし、その拍子に入れたままのものが擦れてへなへなと脱力する。  
 
「子供扱いしてたらこういう事しねえよ」  
 
言われると同時に尻尾を握られ、媚声が漏れる  
 
「っ…あぁっ」  
「動くぞ。痛かったら、言えよ」  
「えっ……ちょ、待っ…」  
 
最後まで聞かず、ランドはピストン運動を始めた。  
抗議を聞きもしないのに、その動きは優しい。  
なるだけゆっくり抜いて、そしてできる限りゆっくりと入れる。  
 
「…うぁ、んっ…」  
 
リンプーの声音から、彼女が落ち着いてきたのを感じとって、ランドは少しずつ動きを早める。  
 
「い、ぁ…っ、あぁ」  
 
一突きごとに上がる声も、中の絡み付くような感触も、全てがランドを刺激していた。  
 
「リンプー…」  
「ふぁっ、あっ、んんっ、あ、やっ」  
 
ランドもそろそろ限界だった。  
 
「リンプー…俺…もうっ」  
「ラン、ド…っ、ランドっ!」  
 
リンプーの高い声を聞きながら、ランドは自身の欲望を吐きだした。  
 
リンプーは、ベッドの中でランドの腕の中に収まっていた。  
あの香りも、体のほてりも収まり、今は心地よい疲労感だけがある。  
 
「ランド…」  
「んー?」  
「あたし、幸せだよ」  
 
柔らかな髪を撫でるのをやめないまま、ランドは微笑んだ。  
 
「そうか…いい子だ」  
 
かけられた言葉に、リンプーは思わずランドの顔を見る。  
また?と言いかけて、やめた。  
どうせ適当にはぐらかされるんだから。  
しかし、抗議を込めた視線には気付いたのだろう。  
赤毛から手を離さずに、ランドが呟く。  
 
「昔話をしてやろうか」  
「昔話?」  
「ああ。…どこぞのド田舎に、男がいてな」  
 
ランドは遠くを見るような目付きで続ける。  
 
「男は早くに父親をなくして、母親と二人暮らしだった。  
 その母親と言うのがまた気の強いヤツで、  
 既に成人した男をガキみたいに叱り飛ばすわ、殴るわこき使うわ、とにかく酷いヤツだった。  
 挙げ句、誉める時までガキ扱いだ。いい年齢になってた男にはそれが不満だった」  
 
どこの童話だろうか、とリンプーは記憶を辿る。  
 
「で、だ。男はそんな母親に嫌気がさして、ついに村を飛び出した。  
 だがな、男は知らずの内に、母親に似てきていた。つい似たような事をしちまう。  
 食う物も、気が付けば嫌いだったはずの田舎料理を選んじまう。  
 母親がうさんくさいっつってた宗教が気に入らない…  
 仕舞いには、同じ口癖を使ってる。気付いても遅く、もう習慣みたいに口をついて出ちまう、と。そんな話だ」  
 
そこまで聞くと、リンプーはピンときた。  
 
「それって、ランドの事?」  
「どうだかな」  
 
しかしランドはおどけたようにはぐらかす。  
もう、と溜め息をつきながら、リンプーはランドに擦り寄るように顔を寄せた。  
 
「…ランドがいい子って言われる所かあ…見てみたいな」  
「だから俺じゃねえって……もう寝ろ。疲れただろ」  
 
抗議の声をあげようとしたが、確かに疲れて眠かったので  
リンプーはそのまま目を閉じた。  
 
ランドはしばらく、そのままリンプーの寝息を聞いていたが、やがて、あ、と声を上げた。  
ここはランドの部屋である。そしてリンプーは寝てしまった。  
 
「………」  
 
仲間に見付かれば、かなり大変な事になる。  
今からでもリンプーを起こすか…  
いや、その前に服を。  
 
「…ま、いいか」  
 
早起きすればいい。  
そう結論づけ、ランドも目を閉じた。  
 

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