今日も今日とて飽きもせず、岸辺に腰を据えて釣り糸を垂らすリュウ。  
そしていつものように、その様子を眺めているニーナ。  
実にいつも通りののどかな昼下がりであった。  
…はずであった。  
「ねえ、リュウ」  
 それまでほけーっと水面を眺めて何か物思いにふけっていたニーナが、唐突に口を開いた。  
「どうでもいいことかもしれませんけど、気になってることがあるんです」  
「うん…何?」  
「『ネバネバ』ってスキルあるじゃないですか」  
「うん」  
『ネバネバ』…攻撃力75%で射撃。対象の速さを50%下げる体術。  
ちなみに現在、既にリュウが習得済みである。  
「で、それが?」  
「あれって、マッドタールとかドロロとかからラーニングできるスキルですよね」  
「うん」  
「具体的にはどんなことしてるんでしょうか、アレ」  
「へ…?」  
 
 何をいいだすんだろう、ニーナは。  
「そりゃ…体液をぶっかけてるんだろ?」  
 マッドタールはタールの塊であるし、ドロロは泥の塊である。  
したがって、奴等の体液は粘着性バッチリ。そんなもん喰らおうものなら  
早さガタ落ちすることうけあいである。  
「つまり、『ネバネバな体液を浴びせる』スキルなわけですよね?」  
「うん」  
「じゃあ、そのスキルをラーニングした人は…」  
「…あ」  
 リュウにようやくニーナの言わんとしている事が理解できた。  
繰り返すが、現在、リュウが習得済みである。  
「…」  
「……」  
「………」  
「…ぶっかけるんですか?」  
「だーっ!!どうでもいいだろ、そんな事!」  
 ホントにどうでもいいことだった。  
さすがは天然系ひよこ姫、何をいいだすやら言動が突飛なことこの上ない。  
ていうか、狙ってるのか?  
「でも、気になるんです。リュウ、ラーニングしてからまだ一回も『ネバネバ』使ってません。  
 やっぱり、リュウ自身の体液をぶっかけるわけですよね?リュウの体液はネバネバなんですか?  
粘液なんですか?どこから粘液を射出するんですか!?」  
「体液体液連呼しないでくれよ!!ていうか、  
 何を物思いにふけってるのかと思えば、そんなこと考えてたのか!」  
「はい」  
「…(がっくり)」  
 かなり脱力した。あやうく竿を水に落とすところだった。  
 
「で、どうなんですか?」  
「…はぁ」  
 しつこく食い下がるニーナに、リュウは真摯な表情をニーナに向けて問う。  
「…どうしても知りたいの?」  
「はい、できれば」  
 リュウは目を閉じてひとしきり逡巡したあと、意を決したように目を見開き、  
「じゃ、ここじゃアレだから、こっち来て」  
 そう言って竿を岸に据え置き、ニーナの手を引いて近くの茂みの中に入っていった。  
「え。あの、リュウ、釣り竿…」  
「いいから。すぐ終わるから(?)」  
 そして二人は奥へと姿を消した。  
 しばらくして茂みの中から微かに聞こえてきた声を拾うと、こんな感じである。  
「…え、あ、あの、リュウ…」  
「…ほら、見て、ニーナ…」  
「…あ…そんな、こ、こんなに…?」  
「……そうだよ、これがいまから……」  
「……うそ…そんな…っ…」  
「……大丈夫だよ…、…怖くなんて…」  
「…だ、だめ…です…ぅ、そ、そんな、わたし、まだ……、…あ…」  
「…どうかな…ほら、こう…」  
「…そ、そんな…動き方…する…なんて…っ!」  
「…」  
「…」  
 
 
 …そして数分後。  
水辺の長閑なる静寂を打ち破り、  
 
『ネバネバあああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁッ!!』  
 
異常に気合の入った山○勝平ボイスが森に響き渡った。  
 
「し…信じられません…まさか…あんなところから…あんな…すごい…」  
 茂みから出てきたとき、ニーナは既に大人への階段をひとつ昇り終えていた。  
未知の領域へ一歩踏み出した興奮からか赤く火照る頬を両の手で覆い、  
未だ覚めやらぬ余韻に足取りはふらふらとおぼつかない。  
間違いなく、今の彼女の速さは、50%、いや、  
もっと大幅に下がっているものであろう。  
『ネバネバ』恐るべし。  
「どう、納得できた?」  
 リュウは、やけに爽やかな顔つきでニーナに微笑んだ。  
「はい…大変勉強になりました…」  
「そう…よかった」  
 心なしかいつもより優しさ増量中な感じである。  
「あ…でも」  
「何?」  
「リュウの場合で『アレ』がああなるなら、アースラさんとかだと、どうなるんでしょうか?」  
「え゛」  
「今度聞いてみますね」  
「え゛…あの、ニーナ?」  
「それじゃ、私、みんなのところに先に戻ってますね。じゃ」  
「…(マズー(゚д゚))」  
 
 なお、帝国軍人さんは容赦なくエロトカゲに私刑を執行した。  
 

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