帝国の復興は困難を極めた。それは今まで帝国が積み重ねてきた愚行の結果であったが、本来その債を
負うべき皇帝はすでに亡く、また未だその後継も決まっていない。
運良く戦災を逃れた貴族達は保身にかまけてばかりで動こうともせず、あまつさえ次の政権下での復権
を狙ってか、アースラに賄賂を贈ってくるような輩までいた。
うんざりだ。
アースラは復興活動の中心として動き始めて以来、そういった貴族連中の無能ぶりに辟易していた。そ
のくせ権力に対する執着は人一倍で、自分たちの利が損なわれるような場合には容赦なく口出しをして
きた。無論そんな口出しなど相手にもしなかったが、今まで自分が軍人としてこんな連中の為に戦って
きたのかと思うと気分が悪かった。
「お前達はここで待機していろ。必要があれば呼ぶ」
アースラは部下の兵たちにそう命じると、重い扉を開いて屋敷の中へ足を踏み入れた。
復興はあくまで自分に対するけじめと、全てを失ってしまった民たちの為にしていることだ。アースラ
は自分が政に向いている性質だとは思っていないし、人の上に立てる器だとも思えない。
けじめ。そうだ。その為に彼女は、ここに来た。
ユンナの屋敷に。
屋敷の中は薄暗く陰気だったものの、整然としてた。
人の気配を頼りに奥へと進んでいく。
アースラは歩きながら、自分の中で強い怒りの炎が湧き上がるのを感じた。今まで幾度となく押し殺し
てきた怒りだ。だが、今日は違う。
ユンナは二階のテラスに、まるでアースラを迎えるように立っていた。そしてアースラの姿を見ると、
薄ら笑みを浮かべてうやうやしく頭を下げた。
「や。これはアースラ卿。わざわざのご来訪恐れ入りますが、どのようなご用件で……?」
アースラは無言で銃を取り出すと、躊躇せず引き金を引いた。ガンっという耳障りな音と同時に、ユン
ナの足元が爆ぜる。しかし、ユンナは眉一つ動かさずに顔を上げた。
「ユンナ。貴様は先の戦乱の責任者として罪を償わなければならない」
「責任者? ほほう、私が責任者と?」
さも意外そうに、ユンナが言った。
「貴様には査問会への出頭命令も出ている」
淡々とアースラは言葉を続ける。
「査問会へ? ほうほう」
「貴様には……遠からず罰が下るはずだ。だが、それは私が望む程の罰にはならないだろう。残念なが
らな」
そこまで努めて平静を装っていたアースラの顔が、怒りに歪んだ。ユンナの力を望む声は、いまだ帝国
内に根強いのだ。忌々しいことに、軍部にも貴族にもその名前は広く深く浸透していた。
「や。なるほど」
ユンナはまるで他人事のようにふむふむと頷く。それがアースラの苛立ちをさらに煽った。
「だが……! だが、私は人として、彼らの仲間として貴様を許すことができない!」
アースラはそう言うと、銃口をユンナへと向けた。
「やや。とすると、アースラ卿。あなたは私を殺すおつもりでここへおいでになったと?」
「……そうだ」
「ふむ。それは困りましたな。生憎と……私はまだ完全な『神』というものを創り上げていないのです
よ」
「なっ!?」
アースラは湧き上がる怒りに、思わず引き金を引いた。が、それと同時にユンナの姿が掻き消える。
「貴様っ! この上まだ……まだあんなことをくり返すつもりなのかっ!」
アースラは銃を構え、視線を巡らしながら叫ぶ。その後ろに音もなくユンナが姿を現し、そっとその首
筋に手を触れた。
「や。当然でしょう? それこそが私の生きがいなのですから」
「うあっ!?」
頭の中に強い衝撃が走ったかと思った瞬間、アースラの意識は深い闇に飲み込まれた。
アースラは身体の中に炎を感じ、目を覚ました。それは強い、しかし一度に焼き尽くそうな炎ではなく、
ゆっくりとじわじわ焼いていくような嫌らしい炎だ。
「やや。お目覚めですな。気分はいかがですか、アースラ卿?」
ぼやける意識を無理矢理引き起こすと、目の前にユンナが相変わらずのにやけた笑顔を浮かべて立って
いた。
「ユンナ、貴様っ!」
怒りが頭にかかったもやを吹き飛ばす。
思わず掴みかかろうとして、初めてアースラは自分が置かれている状況に気が付いた。
両腕は手首を合わせるように天上から伸びた鎖に繋がれ、身体は半ば宙に浮かされた状態だ。両足はあ
る程度自由に動かせるものの、やはり足首の部分で鎖に繋がれていて、それは大きな丸い鉄球へと続い
ていた。服はそのままだったが、銃は見当たらない。
改めて回りを見渡すと、そこは地下牢のような場所だった。アースラが吊られている部屋は狭く、薄汚
れていて、鼻を捻じ曲げるような異臭が漂っている。部屋の隅には大きな壷が置かれていた。
その時、アースラは身体の奥で炎がうねるのを感じた。
「んあ……」
思わず、声が漏れる。
それを見て、ユンナが満足そうに微笑んだ。
「や。どうやら良好のようですな」
その言葉にアースラの顔色が変わった。
「貴様! ま、まさか私の身体に何か……!」
脳裏に一人の少女が浮かぶ。ユンナに身体を作り変えられて見るもおぞましい姿になった少女。
「ああ、ご安心を。まだアースラ卿の身体に直接手を加えたわけではありませんよ。
あれには適正が必要でしてね」
その言葉に、アースラはほっと胸を撫で下ろす。しかし次の瞬間には、再び炎が身体の中で大きくうご
めいた。
「んんんんんっ!!」
「や。ただ少し適正を試させて頂いてはいますけれどね。なに、ちょっとした薬を飲んでいただいただ
けですよ」
「んくっ! あん……はあ、くうん……! く……薬?」
身体が燃えるように熱い。アースラは知らず知らずのうちに、もじもじと足を擦り合わせていた。炎は
押さえようとすればするほど、それはアースラを嘲笑うかのように大きく嫌らしくうねった。
「ま、しばらくはそのままで様子を見させていただきましょう。そうそう、アースラ卿が寂しくないよ
う、遊び相手もご用意させていただきましたので」
「な、なにを……?」
意味ありげなユンナの視線を追いかけて、アースラは息を飲んだ。
部屋の隅に置いてあった大きな壷から、何かがゆっくりと這い出していたのだ。それは無数の触手の固
まりだった。大きいものから細く小さいもの、イボのような突起物がついたものや、まるで蛇のように
先端が口になっているようなもの、そういった触手が何本も何本も壷から這い出し、アースラにゆっく
りとにじり寄ってきていた。
「ユ、ユンナ! あれは……」
視線を戻した時には、すでにユンナの姿はなかった。代わりに、どこからか声が響いた。
「や。どうぞごゆっくりお愉しみください。そうそう、そいつはある程度言葉が通じるように作ってお
りますので、コミュニケーションをとってみるのもよろしいかと思いますよ。それでは……」
呆然とするアースラの足に、最初の一本が絡みついた。
「や、やめろっ! んんっ、いやだっ! 放せっ!」
触手は次々とアースラの身体にまとわりつくと、いとも簡単に服を引きちぎった。豊かで形の良い胸が
露になり、触手たちは得体の知れない粘液で濡れた体でぬめぬめとした跡をアースラの肌にゆっくりと
残していく。
「くう……ああ……あああ……ん……んああ……」
身体の中で炎がうねった。肌は上気し、吐息が漏れる。
触手たちは味わうように全身をゆっくり、時間をかけてはいずり回る。
「あああっ! ふああ……やめ、ああ……やめろ! んんんん……!」
炎が高まる。内からの焼け付くような熱さに、アースラは身をよじった。足に繋がれた鎖がジャランと
音を立て、わずかに残された衣服がまた少し床に落ちた。
「ひあっ! やあ、だ、だめっ!」
触手のうちの細身の何本かが、アースラの胸の先端に絡みついた。痺れるような快感がアースラの身体
を駆け抜ける。
「ふわ……ああんっ! いや……だ、こんな……こんな……あああああっ!」
乳首をしごかれ、乳房を揉みしだかれて、アースラは悶えた。炎は一層激しくうねり、アースラを内側
から攻め立てる。尻尾に絡みついた触手は、強くそれをねじりあげている。
そして一本の触手がアースラの秘所の周りを、ゆっくりと這いずり回り始めた。
「だめっ! だめだ! そ、そこは……んんっ」
アースラにはまだ性交の経験がなかった。自分で慰めたことさえ数える程度しかない。
恐怖が頭を渦巻いた。しかし、片隅にはほんの少しの期待があった。アースラはそれを認めたくなくて、
首を振った。
「頼む……そこだけは……くああああっ!?」
ユンナの言葉を思い出し、触手に言葉をかけた瞬間、それはアースラの秘所を一気に貫いた。
「ああ……あ……いやあ……」
鋭く強い痛みに、アースラの身体が一瞬強張る。しかし。
「え……ああっ! やだっ、んふっ! あああんっ!?」
その痛みはあっという間に、快楽に飲まれて消えていった。アースラの中に侵入した触手は、ゆっくり
と、しかし時には強く出入りを繰り返す。
「くうっ、はあっ、はあっ! んんっ! あああ……いやあっ! だめ、だめだ……んん!」
やがてアースラの腰が、触手に合わせて動き始めた。
始めはおずおずと、そしてどんどんと強く。
「だめっ! だめ! も、もう……うんんん! ああん! いやあっ! だめ! あああっ!
ああああああっ! そんな……んあああっ! はあんっ!」
じゅぷじゅぷと淫猥な音が部屋に響く。
アースラの顔は、快楽に蕩けていた。潤んだ目は焦点を無くし、口からはよだれが一筋流れて跡をつく
っている。
「もうっ、もうっ! んんん、いやっ! もうっ……!」
アースラが高まりに昇り詰めようとした瞬間、今まで激しく動いていた触手たちが一斉に動きを止めた。
「え……?」
我に返ったアースラが、もぞもじと身体をよじる。
「んああっ!」
幾つかの触手が、焦らすように動いた。
いや、違う。焦らしているのだ。本当に。
一本の触手がアースラの目の前で鎌首をもたげた。そしてアースラはユンナの言葉の意味を、ようやく
理解した。アースラの尻尾がそわそわと揺れた。
「あ……ああ……くぅっ……」
理性が束の間だけ、それを押し留めた。しかし、すぐにそれは炎に焼かれて消えていった。
「あ……や、やめないで……くれ……つ、続けて……頼……む」
アースラはうつむき、視線を触手からそらしながら、小さな声でつぶやいた。
「ん!? んんんんんんんっ」
触手はそれを聞くと満足したのか、アースラの口に押し入り、存分にその中を犯して出て行った。
そしてその触手はゆっくりと身体を這い、嫌らしく口を開いて濡れそぼった淫裂の周りをぐるぐると撫
でまわしてから、その後ろの穴に先端を突っ込んだ。
「んあああっ!? ちが、そこっは! あぁぁ! ちが……うんっ!」
アースラの身体を未知の感覚が走った。しかし、それは間違いなく快楽だった。
「はぁぁんっ! んんんんんっ、んんんんんんんっ! くぅぅぅんっ! だめだっ、そんなっ!
ああああああっ! だめ、だめっ! ふわっ、くうぅぅ!」
それはアヌスの中で二、三度慣らすように大きく動くと、すぐに前後運動を開始した。
同時にヴァギナにも大きなイボのついた触手が激しく出入りを始める。
アースラの身体の中の炎は、まるで火山の噴火のように激しく燃え盛った。
「いやっ! もう、もう、もうっ! んあぁぁぁぁ! だ、だめ! おかしくなる!
おかしくなるぅっ! んんんっ! んんんんんっ! いやぁぁぁっ!」
その瞬間、触手たちは一斉に白い液体を発射した。顔に、胸に、尻に、そして膣とアヌスにも大量の液
体が吐き出される。
「んあっ、ふわっ、んんんんっ、んあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
そして同時に絶頂を迎えたアースラは身体を弓のようにしならせて、二度、三度と身体を振るわせた。
耳の毛が逆立ち、尻尾は膨らんで真っ直ぐ伸び、口からはよだれが溢れ、潤んだ瞳からは涙が筋になっ
て落ちていった。
そしてアースラの意識は再び闇の中へ落ちていった。
やがて。
「や。なるほどなるほど。さすがはアースラ卿。なかなか良い身体をお持ちですな。
これならば、新たな神の素体としても申し分ないでしょう」
了