ブレスオブファイア  

「ふぅ…」  
キャンプから少し離れた木の下で、リュウは今日何度目になるか解らない溜息をついた。  
(べつに、竜変身してる訳でも…ないよなぁ…)  
ぼんやり見つめる自分の手には、異常なまでの力がみなぎっている。いや、手だけじゃない。身体中が熱い。  
思えばここ2,3日ずっとそうだった。何だか、身体中が疼いて仕方が無い。テントで皆と横になっていても、とても休める様な状態ではなかったのだ。  
(子供の頃は、こんなこと無かったんだけどなあ…)  
戸惑いながらも、しかしリュウはうすうす気づいていた。慢性的に身体の疼きはあるものの、ある特定の人物を見たときだけ、それが耐えがたいものになることに。  
実を言えばさっきだって、自分の横でその人が無防備な寝顔を晒しちゃったりするものだから、慌ててキャンプを飛び出したのだ。  
あちこちで花が開き、甘い香りが漂う。――季節は春。  
(えーと、つまり…)  
そういうことなんだろうな、ともう一度溜息をついたその時。  
「…リュウ?」  
不意に背後から声がかかった。ぎくりとして振り返る。  
「…ニーナ…」  
「急に出ていってなかなか戻って来ないから…どうかしたの?」  
いや、どうもこうも…  
「な、なんでもないよ…」  
君のせいだよ、ニーナ…  

そんなリュウの心中を知ってか知らずか、ニーナはこちらに近づいてくる。  
「嘘よ。だってリュウ、最近何か変だもの」  
「ちょ、ちょっと待って!」  
自分の傍に来ようとするニーナに、慌ててリュウはストップをかけた。  
「あの…それ以上、近寄らない方が良いと思う…」  
「?…どうしてよ?」  
少しふくれて、ニーナが聞き返す。  
「い…いやあの…」  
顔を赤くして口ごもり下を向いたリュウに、ここぞとばかりに近寄って、ニーナは下からその顔を覗き込んでやった。  
「わ…っ !!」  
「近付いたから、何なの? 折角人が心配してるっていうのに…?」  
ニーナの言葉はそこで途切れた。リュウが、何かをこらえるような顔をしていたからだ。  
「…リュウ?」  
「だから言ってるのに…何でよりによって…」  
そんなに、手が届くぐらい、近くに来るんだよ…  
そう呟くと、リュウは荒々しくニーナを抱き寄せた。  
「きゃ…!」  
驚いたニーナは反射的に身を捩ろうとしたが、リュウの異常なまでの力が宿った身体がそれを許すはずも無かった。顎に手をかけ、簡単に上を向かせると、その唇を強引に奪う。  

「んっ…!」  
唇を押し開けて、リュウの舌が入ってくる。ニーナの口中を貪りながら、その赤い服に手を掛け、引きちぎりそうな勢いで脱がせていく。いつものリュウからはとても考えられない行為だった。あっという間に上半身が下着だけにされてしまい、夜気に晒された白い肌が粟立つ。  
「…んんーっ!」  
唇を塞がれたまま、ニーナは何とかリュウを押し戻そうとその胸板を押していたが、突然その手が力を失い、かくりと下がった。  
「や…何…これ…っ!」  
手だけでなく、身体の方も力を失い、リュウにもたれかかりながら、ニーナは何とか声を絞り出す。  
「竜族はさ、成長すると、発情期ってあるみたいなんだ」  
力の抜けたニーナの身体を抱き、自分も服を脱ぎながら、リュウはその耳元で囁く。  
「その感じだと、唾液に軽いマヒ効果があるみたいだね…」  
「…リュウっ…!」  
「ごめん、ニーナ…止まらないんだ…」  
下着が取り払われ、その、あまり大きくは無いが綺麗な乳房が露わになる。一瞬眩しそうに見とれてから、リュウはそれをそっと揉み始めた。  
「あ…っ!」  
ニーナの身体がぴくんと震える。たちまち尖ってきた乳首を、リュウは指で転がしてやった。  
「あん…っあっ…」  
リュウの腕の中でニーナは控えめな喘ぎ声を上げる。その声がもっと聞きたくなって、リュウはニーナを地面に押し倒し、その先端を口に含むと、舌で愛撫を加え始めた。  

「っあ…っ!ああっ…やんっ…ふぁぁ…っ」  
「…やらしい声出すなぁニーナ…」  
リュウはチュッと先端を吸う。途端にニーナの身体がビクンと跳ね、喘ぎが大きくなった。  
「ひゃん…っ!ああぁっ…お願い…待ってっ…あ…っ!」  
ニーナが動けないのを良いことに、リュウはニーナの乳首を思う存分貪り続けた。その手が下方に伸び、残りの服を剥ぎ取って、ニーナは全裸にされてしまう。  
「あれ…ニーナ、濡れてる…」  
ニーナの太腿の間に手を差し入れて、リュウは呟いた。確かにその部分から引き抜いたリュウの手は、しっとりと濡れて光っている。  
「…見せて」  
「や…止め…んんっ」  
荒い息と共に紡がれたか細い制止の声も聞かずに、リュウはニーナの膝を掴み、そっと開いた。  
淡い桃色に染まった秘裂と、それよりもいくらか濃い桃色に色付いた突起が、微かに光りながら露わになる。  
一瞬の後、リュウの口からほうっと簡単の溜息が漏れた。  
「ニーナ…凄い、綺麗だよ、ここ…」  
「リュ…ウ…」  
「さっきの、気持ち良かった?」  
その問いに、ニーナは顔を真っ赤にして俯きながら、小さく頷いた。  
「じゃあ、もっと気持ち良くしてあげる」  
そっと突起に顔を近づけると、リュウはそれを己の舌で包み込んだ。  
「あぁっ…待っ…!」  
ニーナは咄嗟に声を上げるが、リュウは止めようとせず、構わずに舌を動かし始める。身動きがとれない為、その身体中で一番敏感な部分にリュウがどんな事をしようとも、されるがままにその愛撫を受けるしか無かった。  

「ふあっ…!やあっ…あああぁ…っ!」  
ちゅっ…ちゅっ…  
そこを執拗に責められて、ニーナの唇から一際甘い嬌声が漏れる。たちまちのうちにその突起がリュウの唾液にまみれ、その少し下方の泉は今や湧きかえって、時折ヒクヒクと動き、その時を待ちわびていた。  
「ふふ、こんなに濡らして…ニーナ、僕も限界だよ…」  
そう言うと、リュウははちきれんばかりにいきり立った自分のそれを取り出して見せる。猛々しくそそり立ったその姿に、半ばぐったりしていたニーナの目が見開かれる。  
「ごめん…もう我慢できない…」  
リュウはニーナのそこにモノをあてがうと、その身体をぎゅっと抱き、ゆっくりと挿入を開始した。  
ちゅくっ…  
微かな音と共に、ニーナの身体の中にそれが飲み込まれていく。  
「うう…んっ…ああああっ !!!」  
その痛みに、ニーナは悲鳴に近い声を上げた。  

 

その声に、リュウは一瞬自分を取り戻した。  
僕は今、何をしようとしている…?  
ありったけの精神力で、リュウは自分の中の獣を押し止める。  
「…っ!ごめん…ごめんニーナ…!」  
だが、固く目を閉じて必死に自分の中の獣と戦うリュウの頬に、そっと何かが触れた。  
「リュウ…ねぇ、リュウ…」  
まだ感覚の戻らない指を微かに震わせて、ニーナがリュウに触れていた。  
「いいよ…私のこと、リュウの好きにして良いから…」  
だから、そんなに苦しそうな顔しないで…  
どこか泣き出しそうな笑顔で、ニーナはリュウの背中に細い腕を回した。  
蘇る遠い日の記憶。  
追われ続けて、どこまで逃げたらいいのか見当もつかなくて。  
不安で一杯になりながら、二人で必死に走ったっけ。  
きっと今の自分達は、あの時と同じような顔をしているのかもしれない。  
リュウの心に、先程の狂気めいたものとは違う感情が生まれた。  
目が合うと、少しはにかんだように笑って、改めてその身体を抱き締める。  
「ニーナ…あの…こんなカッコで言うのもなんだけど…抱いてもいい?」  
「…うん」  
ニーナはリュウにぎゅっとしがみついて、頷いた。  
「…来て」  
「…うん」  
その言葉に頷くと、リュウは侵入を再開した。  
ぐっと自分の身体をニーナのそれに寄せると、リュウの分身が少しずつ、白い脚の間に埋まっていく。  

「ぅああ…っ!」  
白い喉がのけぞって、ニーナの身体がきゅっとリュウのモノを締めつけてきた。その結合部からは、処女の証である血が滲み、リュウのそれに絡んでいる。  
「くぅ…っ」  
我知らず声が漏れた。ニーナと繋がっている部分が熱い。  
「リュウっ…ああっ…あああ…!」  
自分の腕の中で強張る細い身体を抱き締め、猛ったモノをとうとう根元まで埋め込むと、リュウは動きを止めた。  
「…大丈夫…?」  
リュウにしがみついたままの格好で微かに震えながら、ニーナは小さく首を縦に振る。  
「…大丈夫。平気」  
決して平気には見えなかったが、リュウの中の衝動は最早耐えがたいものになっていた。  
「…ニーナ…動くよ…」  
ちゅっ…  
微かな水音と共にほんの少しだけ腰を引き、また突き入れる。ニーナは微かに声を上げたが、どうやら最初ほど痛くはなさそうだ。  
それを確認して、リュウはしばらく小刻みに動き続けた。  
「ううっ…あっ…あぁっ…」  
突き入れるたびにニーナの唇から漏れる声が、次第に大きく、違った響きを持ち始める。  
「あんっ…ふぅっ…あ…あっ…」  
その声に応える様に、リュウの腰の引きが大きくなっていく。  
「ああっ…やっ…あああんっ…リュウ…っ!」  
「ニーナ…気持ちいい…?」  
「う…んっ…あんっ…気持ち…いいっ…!」  
「じゃあ、もっと動くよ…っ!」  
リュウは、喘ぐニーナの手首を掴んで地面に強く押し付けると、衝動に駆られるままに彼女の腰を突き上げ始めた。  

「ああっ…!はあっ…んんっ…あああっ…ああっ…!」  
ニーナが高い鳴き声を上げる。リュウはもういてもたってもいられずにその身体をかき抱き、飢えた獣が獲物をむさぼるように犯し続けた。  
「ああっ…ダメえっ…あっあっ…リュウ…っ私…っ!」  
ニーナの限界が近いことを見て取って、リュウの動きに力がこもる。  
「ニーナ…っ!イクよ…っ!」  
「うんっ…リュウ…っ!私…もうっ…!あああっ!」  
「…っく…っ!」  
次の瞬間、二人はほぼ同時に頂点に達した――  

「ねえ、僕で…良かったの?」  
月明かりの下、裸のまま抱き合って寝そべりながら、リュウは口を開く。  
「い、今更…言わなくたって解るでしょっ」  
真っ赤になってぷうっとふくれて、ニーナが答える。  
「…ねえ、それより…発情期ってどのくらい続くの…?」  
「…さあ…」  
二人の視線の先には、5分と経たずに硬度を取り戻したリュウの股間が猛っていた。  

この後数週間、夜中に目が覚めたときリュウとニーナがいないことを確認する者が後を絶たなかったという。  

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