リフトから落下した積荷を追って、リンは単独で廃物遺棄坑に降りた。
このあたりのディク程度なら、一人で対処できると判断していた。
(護衛のレンジャーが一人、積荷と一緒に落ちたみたいだけど……
あの高さからじゃ、運が良くても酷い怪我を負っているだろう)
自分を阻むものは無い。積荷を確保し、戻るだけだ。
愛用の銃で、蜘蛛や蟻の姿をしたディクを軽々と退け、先へ進む。
だが、その広い部屋に入ったとき、見たことも無い巨大な蟻のディクがいた。
(あれはボスアント…? いや、違う……大きすぎる。新種か)
まだ気づかれていない。散らばっているジャンクの陰から、少し様子を伺う。
よく見ると、別のディクの上にのしかかって、何かをしているようだ。
下にいるディクはまだ生きているのか、荒い息をして、体を痙攣させているようだ。
(生きたまま、食われているのか?)
だが視界が悪く、この場所からではよく見えない。
そのディクを挟んだ向こう側に扉があった。
(肉を投げて気をそらせてその隙に扉に走れば、戦わずにすむ……)
リンは意を決すると、肉を扉から離れた場所に思い切り投げ、
一気に扉に向かって駆け出した。
思った通り、巨大な蟻のディクは肉の落ちた方に注意を向けた。
リンはすばやく扉の前まで行くと、開こうとした。
だが、扉が開かない!
(しまった!)
扉はDレート認証で開くものだった。暗くて、近づくまでそれに気づかなかった。
今のリンにはDレートが無く、開くことはできない。
リンが引き返そうとしたとき、巨大なディクはもう肉を食べ終え、リンに気づいていた。
ちょうど、入ってきた扉の前まで移動し、逃げ道を塞いでいる。
「戦うしかないか…!」
リンは銃を抜いた。
彼女は気づいてなかった。
さっき、このディクは別のディクを食べていたのではなく……