騎士には地方領主の面がある。
本城使えのカーライルも、いずれは土地持ちとなったときのことを考え勉強に打ち込ん
でいる。彼の勉強法は図書室で指南書の類を借り読むことである。図書室でよく会う女
性は二人いる。そのうちの一人はアリアナ=メイクリル。今日はそのアリアナの話をし
ようと思い、筆を取った。
読み終えたのを元の位置に戻して帰るときに、何本か離れた通路から音がする。
書架が邪魔になるので、その発信源は当然見えない。
「これより怪音波の発信源を調査する」
独り言で冗談を言いつつ、通路を一本ずつ見て回る。やがて見つかったのは女の子が
一人、爪先立ちをして本を収めようとしているところだった。
「あれはアリアナさん」
片方の手で数冊の本を持ち、もう片方の手を伸ばした格好だ。
ふらふらとしていて、非常に危なっかしい。
そのうちバランスを崩して本を落としてしまう。さっきからの音はこれだったのだろう。
僕は近づいて本を拾い「ここですね。入れておきますよ」と言い棚に収めた。
「助かりました、カーライルさん……」
僕に気づいてアリアナさんはお礼を言う。その顔は、ほんのり赤い。
恥ずかしいのかまだ残っている本で、顔を隠してしまった。
「それも、僕が戻しますよ」
たちまち、アリアナさんの顔を遮る物は無くなり、ますます彼女の顔は赤くなる。
ちょっと意地悪しちゃったな。
その後、二人で図書室を出て中庭へ移動した。木のそばに座り、軽く雑談に興じた。
アリアナさんは、最近読んだ物語の内容を熱く語ってくれた。彼女は物語への憧れが強い。
病弱なためあまり外に出ない人だから、活字を通して情報を得ることが多いからだろう。
僕のほうは、兵法、法律、計算、道徳、などなど、将来を見据えた勉強をしていること
を話した。
「貴方は勉強熱心なんですね」
「と言っても嫌々ですよ。騎士に成り立ての頃は剣さえ振るえれば、それでいいと思っ
ていたんですから。こんなに勉強が必要だとは思わなかった」
「でしたら勉強に楽しさを見出せばいいのでは? 好きこそ物の上手なれ、と言いますから」
「楽しさかぁ……だったら、一緒にやりません?」
突然の僕の提案にアリアナさんは「えっ!?」と驚いた。やがてうつむき「いいですよ」
と言ってくれた。よく見えなかったが、図書室のとき以上に顔が赤く見えた。
約束の日曜日となった。普段、勉強となると億劫なのだが今日はぱっちり目が覚めた。
城門前で待ち合わせ。門番の視線が痛い。まぁ、城内から出てきた奴が門前で立ちんぼ
してたら、そりゃ怪しいよな。あぁ、早く来てくれアリアナさん。
「ごめんなさい、遅れてしまって」
到着するなり、アリアナさんは息を切らせながら言う。
「構いませんよ。それより、はい深呼吸。吸って、はいて〜」
「すーはー……すーはー……お、落ち着きました。ありがとうございます」
遅れまいと走ってくれたのかな。でもそれでアリアナさんが倒れでもしたら大変だ。
「これからは遅れそうだからといって、走らなくてもいいですよ。貴方が参ってしまう」
「本当にごめんなさい。でも嬉しいです、貴方のその優しさが……」
アリアナさんが、真っ直ぐに僕を見て言った。
そのころには、門番の視線が我慢できないほど痛くなってきたので、二人は急いで門を
くぐった。
「あら……貴方?」
図書室に入ってすぐ、司書の子と目があう。(この司書については別項に詳細を譲る)
僕を見る表情は柔らかかったが、後ろに続くアリアナさんを見ると怒ったように、
「私、研究室に行くから。終わったら呼んでよ。鍵かけなきゃならないから」
と言って、出て行った。
「どうしたのでしょう、あの人?」
「さあ? まあ、人目を気にせず勉強出来るし、いいんじゃないですか」
そして二人は、奥のほうの席について勉強を始めた。
「問。貴方は一軍の将です。敵将が2、3回打ち合っただけで逃げました。この敵将の
思惑を答えなさい」
「狭地に誘い込み伏兵で勝負を決しようとしている」
「正解です」
アリアナさんが問題を出して僕が答える。普段は難しく思えるのに、今日はよく頭がさ
えるようで、すいすい答えが出る。
ぐぅ〜 と、お腹が鳴る。もう昼過ぎだ。集中していて気づかなかった。
「アリアナさん、休憩にしましょう」
「私、お弁当を持ってきています。一緒に召し上がりませんか?」
僕は当然、その招待を受ける。中庭に移り、そこで食べることにした。場所はいつもの
木のそば。敷物を敷いてそこに座る。アリアナさんが弁当包みを開く。
「それでは、召し上がれ」
「はい、いただきます」
まず、一口食べる。美味かった。だから、なんの躊躇いもなく感想が言えた。
「うん、美味しい。アリアナさんはいいお嫁さんになれますよ」
「まあ……お嫁さんだなんて……そんな……」
アリアナさんの声がもじもじと小さくなっていく。
「これが……私の勉強なんです」
あぁ、なるほど花嫁修業か。貴族の息女だもんな。
「厳しいんでしょ、やっぱり?」
「はい、でも褒めてもらえるから頑張れるんです。……そう特に……」
と、そこまで言って詰まる。でも顔は僕のほうをしっかりと見ている。
「特にさっき貴方に褒められて、とても嬉しかった……」
二人で、顔が真っ赤になった。やがて、アリアナさんが目を閉じ顔を斜め上に傾ける。
自然と僕は彼女にキスをした。それで午後の勉強はおあずけになった。
図書室の奥まったところでもう一度、キス。
「はぁん……胸が苦しい……」
言われて、アリアナさんの胸に手を添える。服越しなのに動悸がはっきりと伝わる。
「苦しいなら服、脱がそうか?」
「いえ……それは、自分で……」
日焼け避けのため暗幕がかかっているから、室内は暗い。アリアナさんは真っ直ぐ立ち
上がり服を脱いで行く。暗さのために見えにくいのに、僕はえらく興奮した。
「あ、あの脱ぎました……」
そういわれても見えないので解らない。だから僕は手を伸ばしアリアナさんに触れた。
「きゃっ!」
高く、でも小さい悲鳴が上がる。
「うん、確かに全部脱げてる。じゃあ……しますよ」
そう言ってからアリアナさんを抱き上げて、机の上に寝かす。
「ああ……冷たい」
気持ちよさそうに言う。ほてりやすいアリアナさんには丁度いいのかもしれない。
それから、僕も全裸になって机に上る。その頃には目もなれて、うっすらだがアリアナ
さんが見えるようになった。
「……行きます」
と宣言してアリアナさんのあちこちを攻めた。その度に体をビクンと硬直させ忙しいく
らいだ。やがて全身にうっすらと汗を帯びてきた。息が荒い。彼女は本番に耐えられる
だろうか。
「これから、本番をしますけど、苦しかったらすぐに言ってください」
「は、はい……でも耐えてみせますから」
アリアナさんの足を広げさせる。薄暗い中で狙いをつけて、先っぽを当てる。
「あっ……カーライルさんの物? 熱い……」
「そうです。それがアリアナさんの中に行くんです」
「こ、これが……」
話をしている間、秘所からはぬるぬると液が漏れてきて僕の物に絡んでくる。これなら
行ける、と僕は決心して腰を押し付けた。
「ぃっ……いああぁぁっ!!」
甲高い声が室内に響く。
「アリアナさん、意識は?」
「は、はっきりと……だから、続けて……」
僕は、いつアリアナさんの意識が飛ぶかと心配でいたわりながら事を進めた。
「あぁっ……もっと、早く」
アリアナさんが僕を急かす。イきそうなんだろうか?
「はうぅっ……何だか……体中が熱くなって……特に貴方と繋がっているところがっ」
猛烈に射精したい気持ちが高ぶってくる。でも、中は躊躇われた。そこで僕は自分の物
を引き抜く。
「えっ? どうしたんですか……きゃっ!!」
アリアナさんの疑問には答えず、僕は彼女の上に跨る様に座り手で自分の物をしごきだ
した。僕の意を察したのかアリアナさんはぎゅっと目を閉じ時が来るのを待った。
ぶしゅっ! ぶしゅっ! びゅるる〜〜
僕の先端から出された精液がアリアナさんの顔を白く染めていく。
「あぁ〜っ、白くて熱いのが……沢山私に掛かって……」
アリアナさんはうっとりとしながらそう言って気を失った。
「あ、アリアナさん! ……生きているよねっ!?」
僕は慌ててぺちぺちとアリアナさんの頬を叩いた。すぐに彼女の口から「す〜す〜」と、
可愛らしい寝息がして安堵した。
「寝るのはまだ早いよ。お嬢さん」
僕は、笑いながらアリアナさんの顔を拭いてから一緒に眠った。
それからというもの、勉強も苦ではなくなった。アリアナさんに成果を見てもらいたい
という思いがあるからだ。彼女のほうも、僕にあれこれ指摘してもらいたいらしく、暇
を見つけてはよく会った。
「貴方がもっと、えらくなったら……」
「何?」
「えっ……その、あのぉ……」
アリアナさんは、言葉を濁し黙ってしまう。言いたいことはわかっているので僕は、
「僕がえらくなったら、そのときは……」
アリアナさんはびっくりしながら聞いている。
「結婚しよう」
僕が言い終わると彼女から抱きついてきた。そして涙を流しながら言う。
「はい……約束です」
「うん……迎えに行くよ」
二人の間に暖かい空気が満ちる。
「子供は、三人……つくりましょうね」
そういわれて、僕はまだ見ぬ子らの顔を想像してみた。それだけで、気分がうきうきし
て来て、アリアナさんと笑いあった。
――その後の二人に関しては詳しいことは筆者も知らない。
ただ噂では、アリアナの望みとおり三人の子を儲けカーライルはメイクリル家に婿入り
してその跡を継いだという話や、結婚を認められずに二人で国を出た、などと言われて
いる。だが真っ向から反発するような説があるところから、甚だ信憑性に乏しい噂であ
り、更なる史料の発見が望まれているのが現状である。
完