「姉さん」  
 不意にユウが口を開くと同時に、イイコの身体の震えが止まる。  
 どうやら何を言われるかという不安感が震えの原因であったらしく、とりあえずそれが  
明らかになろうとしたために。  
 だが、それは何の解決にもなっていない。  
 ユウの言葉に、イイコが一喜一憂することには変わらないのだから。  
 「ごめん、俺は姉さんのことわかってなかったみたいだ…」  
 「?」  
 案の定、いきなり意味不明の言葉が切り出される。  
 言葉とは裏腹に、姉の思考パターンを読みきっているユウの狙い通り、イイコの頭の中  
は弟が何を言うのか、それだけで占められて何も考えられなくなる。  
 「姉さんって恥ずかしいところを見られるのが好きだったんだ」  
 「なっ?!」  
 弟の口舌から紡がれたその言葉に、驚き、そして怒るイイコ。  
 「何を言ってるのよ、そんなはずないでしょっ!バカッ!」  
 あまりにも酷い言いがかり〜と、彼女は捉えた〜に、今の自分の徹底的に劣位の立場も  
忘れて、噛み付くような言葉をユウに浴びせる。  
 「いいんだよ姉さん、俺の前では素直になっても」  
 そんな姉の怒りの反応もどこ吹く風のユウ…もはや完全に舐められているイイコ。  
 ただでさえ純粋で素直な姉と、奸智に長ける弟というだけで既に差があるのに。  
 何があってもユウに嫌われたくないと思っているイイコと、やりすぎ言いすぎでイイコ  
が怒って、殴られたり蹴られたりしても、それはそれで気持ちのいいものだなどと気楽に  
考えられるユウではハナから勝負にならない。  
 (誤解なきよう付け加えるとユウがそんな「守備範囲の広い」リビドー回路を働かせる  
ことが出来るのはイイコ相手の時だけ、ある程度許容できるのはヒメくらいで、その他の  
相手には責め一本槍である)  
 従ってユウには姉へかける言葉の選択肢が無数にあり、それに対しイイコに与えられた  
答えの選択肢は常に一つ、それもユウによって誘導されたものだけなのだから。  
 
 あまりの言い草にますます怒る姉の勢いにもまったく動じない弟。  
 もはや両者の力関係は完全に固定されている。  
 ユウが調子に乗りすぎイイコを怒らせたとしても、それは決してユウを嫌いになるわけ  
ではない。  
 単なる痴話喧嘩に過ぎない。  
 それと同様に、イイコがユウに嫌われることも絶対にありえないのだが、そう自信満々  
に言い切ることの出来ない事情がイイコにはあった。  
 クインシィに表の人格を支配され、最愛の弟に愛の裏返しとはいえ苛烈な対応しかして  
来なかったという罪悪感は、イイコの心の奥底に重い澱として沈んでいる。  
 ユウが姉弟の禁じられた壁を打ち砕いて自分を愛してくれること。  
 それはイイコの心を救ってはくれるが、その奥に沈む澱はまったく掬ってはくれない。  
 逆にユウが自分を愛してくれればくれるほど。  
 自分がユウを愛すれば愛するほど。  
 罪悪感は強迫観念となってさらに重みを増していく。  
 その重みから逃れるためにはより一層ユウのために心も身体も捧げつくすしかない。  
 ましてやユウに嫌われてしまうなどという事態は彼女の精神を崩壊させかねない。  
 勝気な性格、そしてかつての姉弟としての当然の上下関係から。  
 表面上は優位に立つことはあっても、既にイイコは深層心理レベルではユウに服従して  
いるのだ。  
 表層心理では、恋人になった今も自分は姉なのだという意識があるが、それとてイイコ  
に受動的に「可愛がられる」ことを望むユウのために発動しているに過ぎない。   
 
 「姉さんが望むんなら、俺はいくらでも付き合ってあげるよ、姉さんの好きなことなら」  
 「だから何を言ってるの!」  
 素っ裸で弟の前にいることも忘れ、くってかかるイイコ。  
 「姉さん、今更言い訳しても説得力ないよ」  
 そう言って肩をすくめるユウを見て、イイコは羞恥と怒りにかられ。  
 「違うって言ってるでしょ!」   
 絶叫して弟に掴みかかった。  
 
 「姉さん」  
 不意にユウが口を開くと同時に、イイコの身体の震えが止まる。  
 どうやら何を言われるかという不安感が震えの原因であったらしく、とりあえずそれが  
明らかになろうとしたために。  
 だが、それは何の解決にもなっていない。  
 ユウの言葉に、イイコが一喜一憂することには変わらないのだから。  
 「ごめん、俺は姉さんのことわかってなかったみたいだ…」  
 「?」  
 案の定、いきなり意味不明の言葉が切り出される。  
 言葉とは裏腹に、姉の思考パターンを読みきっているユウの狙い通り、イイコの頭の中  
は弟が何を言うのか、それだけで占められて何も考えられなくなる。  
 「姉さんって恥ずかしいところを見られるのが好きだったんだ」  
 「なっ?!」  
 弟の口舌から紡がれたその言葉に、驚き、そして怒るイイコ。  
 「何を言ってるのよ、そんなはずないでしょっ!バカッ!」  
 あまりにも酷い言いがかり〜と、彼女は捉えた〜に、今の自分の徹底的に劣位の立場も  
忘れて、噛み付くような言葉をユウに浴びせる。  
 「いいんだよ姉さん、俺の前では素直になっても」  
 そんな姉の怒りの反応もどこ吹く風のユウ…もはや完全に舐められているイイコ。  
 ただでさえ純粋で素直な姉と、奸智に長ける弟というだけで既に差があるのに。  
 何があってもユウに嫌われたくないと思っているイイコと、やりすぎ言いすぎでイイコ  
が怒って、殴られたり蹴られたりしても、それはそれで気持ちのいいものだなどと気楽に  
考えられるユウではハナから勝負にならない。  
 (誤解なきよう付け加えるとユウがそんな「守備範囲の広い」リビドー回路を働かせる  
ことが出来るのはイイコ相手の時だけ、ある程度許容できるのはヒメくらいで、その他の  
相手には責め一本槍である)  
 従ってユウには姉へかける言葉の選択肢が無数にあり、それに対しイイコに与えられた  
答えの選択肢は常に一つ、それもユウによって誘導されたものだけなのだから。  
 
 あまりの言い草にますます怒る姉の勢いにもまったく動じない弟。  
 もはや両者の力関係は完全に固定されている。  
 ユウが調子に乗りすぎイイコを怒らせたとしても、それは決してユウを嫌いになるわけ  
ではない。  
 単なる痴話喧嘩に過ぎない。  
 それと同様に、イイコがユウに嫌われることも絶対にありえないのだが、そう自信満々  
に言い切ることの出来ない事情がイイコにはあった。  
 クインシィに表の人格を支配され、最愛の弟に愛の裏返しとはいえ苛烈な対応しかして  
来なかったという罪悪感は、イイコの心の奥底に重い澱として沈んでいる。  
 ユウが姉弟の禁じられた壁を打ち砕いて自分を愛してくれること。  
 それはイイコの心を救ってはくれるが、その奥に沈む澱はまったく掬ってはくれない。  
 逆にユウが自分を愛してくれればくれるほど。  
 自分がユウを愛すれば愛するほど。  
 罪悪感は強迫観念となってさらに重みを増していく。  
 その重みから逃れるためにはより一層ユウのために心も身体も捧げつくすしかない。  
 ましてやユウに嫌われてしまうなどという事態は彼女の精神を崩壊させかねない。  
 勝気な性格、そしてかつての姉弟としての当然の上下関係から。  
 表面上は優位に立つことはあっても、既にイイコは深層心理レベルではユウに服従して  
いるのだ。  
 表層心理では、恋人になった今も自分は姉なのだという意識があるが、それとてイイコ  
に受動的に「可愛がられる」ことを望むユウのために発動しているに過ぎない。   
 
 「姉さんが望むんなら、俺はいくらでも付き合ってあげるよ、姉さんの好きなことなら」  
 「だから何を言ってるの!」  
 素っ裸で弟の前にいることも忘れ、くってかかるイイコ。  
 「姉さん、今更言い訳しても説得力ないよ」  
 そう言って肩をすくめるユウを見て、イイコは羞恥と怒りにかられ。  
 「違うって言ってるでしょ!」   
 絶叫して弟に掴みかかった。  
 
 クインシィ化していなくても。  
 元々イイコは感情的になると我を忘れるタイプだ。  
 自分が今、一糸纏わぬ姿だと言うことは脳裏から綺麗さっぱり消えていた。  
 スッ。  
 むしゃぶりついて来た姉の下腹部に、カウンターで迎撃するかのように伸びるユウの手。  
 ピチャッ。  
 湿った物を触る音がする。  
「ああっ」  
 悲鳴を上げて足を縺れさせるイイコ。  
 勢い良く飛びかかった分、そのままユウに倒れ掛かる。  
 優しく抱きとめられて、ほんの数秒前まで怒りに我を忘れていた頭がクールダウンする。  
 姉弟の仲、そして既に何度も体を交えた仲でも、愛する男にこんな風に抱きとめられる  
とイイコの仲の乙女な部分が心臓の動悸を加速させ、顔と頭の体温を上昇させ、頬を赤く  
染めさせる。  
 そしてユウの口が、イイコの耳に近づいて。  
 「危ないなぁ、大丈夫姉さん」  
 その優しげな声に、ほんの少し前の怒りも、たった今、いくら肉体関係があるとはいえ  
いきなり陰部を刺激されたことも、簡単に忘却の彼方に追いやるイイコ。  
 まさに一挙一動をユウの思うがままに操られている感がある。  
 だがそれに続くユウの言葉は。  
 「そんなに勢い込まなくたっていいよ、そんながっつかなくても姉さんが望むならいつ  
だって相手するからさ」  
 爽やかな声色で、淫靡なことを呟く。  
 もっとも言葉とは裏腹に今のユウはストレートにイイコを受け入れる気など欠片もなく、  
羞恥責めで咽び泣かせるつもりなのだが。  
 「が、がっつくって何よ?」  
 酷い言い草で夢見心地に水を指され、ふくれっ面になるイイコ。  
 「だってこんなに勢い良く飛びついてくるなんて、やっぱりよっぽど昂奮したんだね、  
俺に見られてさ」  
 
 「やっぱりね」と言わんばかりのしたり顔のユウに、沈静化したイイコの憤怒が再び  
活性化する。  
 「違うって言ってるでしょ!」  
 振り出しに戻ったように同じ言葉を叫ぶと、今度は既に引っついているため何の妨害も  
受けることなく首尾よくユウにむしゃぶりつくが。  
 「はははっ、だからそんなに昂奮しないでって、後からいくらでも見てあげるからさ、  
姉さんの恥ずかしいところ」  
 抗議の意思をまるで無視されてしまう。  
 「誰もそんなこと言ってな…」  
 「いいから、いいから」  
 ムキになればなるほど、ユウはそれを軽くあしらいながら自分への疑いを深めていく。  
 蟻地獄にはまって煩悶するイイコ。  
 思わずその場に寝転んで手足をバタつかせて「違うって言ったら違うのっ」と子供のよう  
に駄々をこねたい衝動にかられる。  
 だが考えてみればユウの勘違い(本当は勘違いをしているのではなく、勘違いした「フリ」  
なのだがそこまでは気づいてない)は故ないことではない。  
 何しろ 先ほどユウの前で盛大に愛液を垂れ流したのだから。  
 あれでは「見られて感じた」と思われても仕方がない。  
 仕方がないが、やはりそんな風にユウに思われるのは嫌なこと。  
 (ああ、そんな勘違いしないでユウ…)  
 自分はユウ相手にしか何も感じない女なのに、見られて感じる淫乱、いや、変態だなんて  
誤解は絶対にしてほしくなかったのに。  
 そんな誤解をされるくらいならいっそのこと、本当のことをぶちまけてしまおう。  
 (わたしはついつい淫らな妄想にふけって、ユウの前で裸でいることを忘れてしまっただけ  
なのよ!)  
 そう頭の中で言葉を紡ぎ、それ自体が充分に言うことが憚られることだと気づいてイイコは  
愕然とした。  
 
 

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