ゆるやかな律動のたびに発せられる熱い喘ぎと吐息が、じかに彼の頬にかかるようだった。
仰向けに四肢を投げ出したままの彼の上で、屈みこむように上体を俯けた土星(仮)の躯は、彼のすべての情愛を乞い求めるかのように、肉体の芯を重ね、やわらかく彼の肌に沿わせて律動していた。
彼の中には、もはや残る精は無いように思えた。だが、彼のほんのわずかな反応にも激しく波打つ土星(仮)の肢体と、うっすら湿った吸い付くような肌、息遣いは、その彼の体の裡から熾火を起こすように肉欲を引き出していた。
幾度かの激しい熱波が、遂に背筋から頭頂までつきあげ、彼はありったけの情欲を土星(仮)のあたたかい胎内に放出していた。
「ん……っ」
どちらからともない呻きが漏れ、あふれ出した欲望をすべて受け入れでもするように、土星(仮)の内股が彼の下半身に沿って熱く密着した。体の芯から衝き上げられた震えが、土星(仮)の反らされた細いおとがいを伝い、髪の先までを乱した。
……今は、不思議と幼さを残して見える土星(仮)の体は、上気したままの頬を彼に寄せるように、うつ伏せに横たわった。
それを横目に、文字通り精魂つきはてた彼の四肢は微動だにせずぐったりと力を失っていた。それは欲情を放出したあとの男性の生理ばかりでもなかった。
彼はよろめいて窓辺に出た。風に当たってみたが、逆に肌寒さが、体力を失った身には思ったより辛かった。しかし、それ以上動く気力さえないのか、彼はやつれきった表情で、白昼の窓下を見下ろし続けた。
どちらが求めるでもない。ただ日々、彼女──くさちほだか何だか名もあるのだが、彼の中では不思議と土星(仮)──の、あの躯の中に、彼はふらふらと溺れこみ、自らの体力以上の肉欲を注ぎこんでいた。
……元はといえば、すべては自分に原因があった。かつて妖精たちが小さい4人だったころに、綿棒などを使って、全員に念入りに『教育』したためだ。妖精が人間の身体になったときこうなる狙いも、半分くらいはあったとさえ言える。
が、実際に4人の妖精が一人の人間になってみると、土星(仮)の体力は『4人分』あった。
このまま続けば──というより、もはや限界である。彼は自分が明日にでも死ぬような気までした。
冷風になぶられ、さらに頼りなくなっている思考で考える。何とかしなければならない。
しかし、土星(仮)と──ようやく人間となって、彼の傍らに幸せをかみしめるように付き添っている、土星(仮)と──別れるなどは、彼には考えることもできなかった。どうしたものか。
続