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長いまつげ、うるんだ瞳、褐色の肌、柔らかな頬の線、ふっくらとした唇、  
その合間にちらり見える小さな白い歯――赤い舌が見えそうで見えなくて、  
こじ開けて見たくなるような……そのために、自分の舌を押し込んでしまいたく……。  
 
顔が意識なく前へ移動した。しかし唇は、意識したところへ衝突する。  
 
柔らかな感触、温かで、ぬめりしめった少女の唇。そのふたつをルカは舌で割った。見たかったあの赤い舌を、舌先で感じ取ろうと深く口中に差し入れた。  
すると、弾力ある固まりに触れた。形をなぞるように奥から引き寄せる。  
 
「ふ、んう……」  
 
もれ聞こえる声。くぐもった音は口を通してルカの体内に落ち、熱に変化して下半身に重く積もった。  
 
吸う。少女の舌を自らの口中へ誘い入れた。ねじれ入ってきた小さな舌が、ルカの歯裏をなめ上げる。水浴びをしているときのような水音が、脳に響く。水浴びと違うのは、体はどんどんと熱くなっていくことだ。  
 
新たな熱が、ルカの両頬に触れた。少女の手のひら。耳の裏に指を絡め、より唇を押しつけてくる。熱い。  
 
ルカの手は、少女の首から背中へと移っていた。舌を吸い押しつける度にゆらゆらと波打つ背中を、さすっていた。下から上へ、なであげるように、より体を密着させるように。  
 
だが、唇が離された。額をぴたりとつけながら、少女はわずかな距離で薄く、早く、吐息を繰り返している。半開きのままの口がまるで誘っているようで、ルカは感触を追ってあごを上げたが、すいと逃げられた。  
「待て」  
息の音で言われる。甘やかな声が、またルカの下半身に重さを積もらせる。  
「おまえ……なんなんだ……」  
「わからない」  
「わからないで、こんな」  
「だって、きみが……」  
「……なんだ?」  
「……」  
 
ルカは答えない。答えを持っていなかった。いや、忘れていた。  
 
「なんだ? おい」  
「……きみ、が……」  
「言え、早く」  
 
頭の中には、目の前の少女と繋がりたい欲求しかない。  
 
右手で少女の髪をつかむように頭を引き下ろした。今度はかみつかんばかりに相手へぶつけた。  
同時に、左手は少女の胸を下からつかむ。口中の少女の舌が引っ込みそうになるのを自分の舌で絡めて止める。  
 
左手には、柔らかな感触はなかった。薄い丘でしかないが、小さな登頂を指に挟んでやわやわとなで回した。鼻にかかった声が上がる。  
 
「待て」  
「なに」  
「服を」  
「うん」  
 
少女が体を離して、服を脱ぎ始める。その間も、鼻を触れあわせ、ついばむように口づけした。少女の顔が上がってしまうと、その細い首筋を追って舌をはわせた。  
 
「は」  
 
息を飲んだ少女は、膝立ちで伸び上がる。裸体の上半身が月光に現れる。  
ルカはその肌をまずは平手で味わう。  
細い腰、うっすらとあばらの浮き出た腹、服の上から味わったなだらかな胸。  
およそ、女性的な豊満さは感じられない。  
だが、汗ばんだ褐色の肌は、匂い立つようななまめかしさで、ルカはどうしようもなく吸い寄せられてしまう。  
 
とろりとした蜜をなめとるように、乳首をなめ上げた。舌で押し、歯で甘噛みし、最後に唇でつまむ。少女の手はルカの後頭部を抱えている。  
肩胛骨から脇にかけて手を往復させると、少女の体はくすぐったがるように揺れ、腰を押しつけてきた。ルカの腹の辺りで、円を描くように回している。  
 
その動きに応えたのか、ルカの欲求か、少年の右手は迷うことなく、いまだまとわれていた少女の下半身の洋服を押し下げ、両足の奥へ潜みこんだ。  
下着をはいたままの窮屈な中、強引に指を押し込む。  
しゃりしゃりとした薄い陰毛を分け入ると、すでにそこは、唇で味わった口中に似たぬめりを持っていた。  
そんなルカの動きに、少女はたじろぐように腰を引いた。ルカは胸をかみ、抗議する。  
「んあっ」  
声と共に、侵入させた指を折った。つぷ。  
「ふっ、あぁ……っ」  
入れる。  
「あ、ん、んん」  
押し入り、中でかいた。腰がはねる。  
「あっ、やっぁあ……っ!」  
指を戻し、入れる。繰り返す。  
少女は、ルカの頭に額を押しつけてきた。耳を打つ荒い息は早い。上向くと、金色の目は閉じられ、眉が苦しげに寄っている。目元の上気が月明かりに見える。  
 
ルカは指の平で少女の入り口の小さな粒をこすった。ことさらに大きな嬌声が上がり、指のぬめりもいっぺんに増えた。つまみ、さらに押し潰す。  
 
「だめ、ルカ、あ」  
 
少女は、少年の頭を抱え込むようにしなだれかかってきた。  
もう体を支えていられないようだ。ルカは空いている手で、自分の下着をずらす。  
肉は、自分で慰めるときとは比べものにならないほど立ち上がっていた。  
少女の腰をその上へすえるついでに、尻をなでた。  
その感触に指を埋め、徐々に下へ下ろしていく。  
少女が相手の意図を悟ったのか、がちりと腰が止まった。  
 
「待て」  
「なに」  
「だめだ」  
「なんで」  
「な、……なんでもだっ、これは命令」  
「イヤだ」  
「なっ」  
 
無理矢理に腰を落とす。が、すべり、ルカの肉の裏筋を少女の粒が転がっていく。  
 
「んはあっ!」  
 
その刺激に少女が鳴いた。目の前にうつむく少女の顔があった。久しぶりに見るような気がする。また、あの赤い舌が、唇の間にのぞいている。  
 
ルカは少女をベッドへ倒した。金の目は焦点を定めていない。両足の間に座り込むルカは、そのまま少女の腰を抱え上げた。  
金の瞳が動き、ルカを見つめた。しばらく視線を繋げあうと、少女の手がそろりと動いた。  
 
ルカの手に、自らの指を添えた。  
 
少年は少女と繋がる。  
狭く、熱された道。  
自身も痛みを感じるほどで、だが下半身は別物のように先へ進みたがる。  
欲望をなだめなだめ、小さく差し入れ、戻しながら、少年は熱に浮かされた。  
少女がつねるように指を絡める。  
 
痛い。熱い。溶ける。  
 
だんだんと押さえが利かなくなり、差し戻し入れる速度が早まっていく。  
腰にたまる熱も最高潮に達していく。  
入り込んでいる少女の中も、たぎるように熱い。  
 
そのとき、少女が手を必死に伸ばしてきた。  
視界を認識しないほど、熱を高めることに集中している頭だが、ようやく音だけは聞き取れる。  
 
「ルカ こわい いっしょに てを ルカ」  
 
少女の腰から手を離し、ルカは律動に揺らめくか細い手を握った。  
手で押さえられなくなった少女の腰を安定させるため、  
空いている手を少女の膝に差し入れ、自分の肩に担ぎ上げた。  
大きく腰を使い、より深く差し込み、角度も変える。  
少女が手を強く握り、下ろされたままの足で、ルカの足を巻き込んだ。  
 
「こわい ルカ いっしょに」  
 
肉が締め付けられる。その快感の中、差し戻すことで肉の全体に行き渡らせ、  
次いで、収縮する中を欲望の限りに強く即座に打ち付ける。  
ルカの熱がその勢いのまま射出された。  
 
 
■□■□■□  
 
肩をぐいと押された。  
「重いぞ、バカ子分」  
射精の後、少女の上へ倒れ込んでいたようだ。  
「あ、ご、ごめん」  
起き上がろうとして、腰の重さに面倒になり、少女の横へ転がった。  
体が少し、ベッドからはみ出してしまった。  
ああ、ぼくのベッドで、二人並ぶのはきついのかと、ぼんやり思った。  
自分のベッドに横になっているはずなのに、見上げる天井は、初めて見るように見えた。  
 
ふいに腕が引っ張られる。横を見ると、少女が壁に向かって体を倒していた。  
右手だけ、ルカと繋げたままだ。あの最中から、離れていない。  
 
ルカはその様子――上半身裸の少女が横で寝ていることを  
改めて認識して、青くなった。  
(ぼく……ええええええええ!?)  
硬直する体は、首の角度さえも変えさせず、今まで起きていた現実を見せつけ続ける。  
ぼくは、この子と――つまり、スタン、と、  
「おい」  
少女は、顔を見せないまま声を続けた。  
「なにか話せ」  
「……え?」  
「話せ、主人の命令だぞ」  
 
登場のときと同様、少女は突拍子もないことを言い出す。  
だがルカは、かえって現実逃避のような気分で要求に応えた。  
「えっと、この前、マルレインが」  
「小娘以外の話をしろ」  
「え、っと、この前、ロザリーさんが新聞に」  
「あんな尻タレ勇者のことも聞きたくないわ、アホ子分」  
「……えーっと」  
「……もうよい」  
「ええ?」  
 
少女の方から、ふう、とため息混じりの吐息が聞こえた。  
「おまえと同じところに、余がいるのなら、いい」  
不可思議な物言いに、少女と繋ぎ合わせた指が、つ、と揺れた。  
「なんだ?」  
「……あの、どうしたの?」  
「なにが」  
「なんか……おかしいから」  
「……ふん」  
鼻で笑う様も弱々しい。精力が抜けたばかりだからというわけでもなさそうだ。  
 
ぼやけた頭で聞いた音が思い出される。  
(「こわい ルカ いっしょに」)  
「怖かった?」  
今度は、少女の指が揺れた。揺れた指を、ルカはおずおずと人差し指で触れる。  
「ごめん、ぼく、……初めてだったから、いろいろわからなくて」  
「そうだろうな、がっつきおって。  
子分の分際で主人に手を出すとは300年早……」  
言葉が途中で途切れた。空いた沈黙に、ルカはベッドの上で片肘をつく。  
「スタン?」  
「300年……おまえは、余と一緒にいられるか?」  
「え?」  
「まあ、当然だな、おまえは余の子分なのだからな」  
「スタン、どうしたの?」  
「どうもせん。昔を思い出しただけだ」  
「昔?」  
「おまえと……最後の方、……似ていただけだ。  
憎き勇者によって壺に閉じ込められた瞬間の、……余のすべてが吹き飛ばされてしまうような、どこかへ持って行かれそうな、あの感じに」  
 
(「こわい いっしょに てを ルカ」)  
 
「ふん」少女は声で笑う。  
「あんなこと、もう二度とあろうはずがないのにな!  
余は完全復活したのだ! 余としたことが、我を忘れておったわ」  
 
背中でしか見えない少女。だが、手で繋がっている少女。  
ルカは心を込めて、手を握った。  
 
「きみはここにいるよ」  
「知ってるわ、バカめ」  
「ぼくも一緒にいるよ」  
「役立たずのエロ子分がな」  
 
ルカは繋いだ手のまま、少女の背中から体を抱いた。  
 
「スタンは、もうひとりじゃないよ」  
 
「……当たり前だ、おまえは一生、余の子分なのだから、余がひとりになるはずなかろうが」  
ルカはくすりと笑った。「そうだね」  
回した腕が、少女の薄い胸の狭間に触れていた。胸が平らなためか、心音が手でわかりそうなほど近く感じられた。  
少年と少女が、世界の片隅の一室の小さなベッドで繋がり存在していた。  
 
■■THE END■■  
 

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