それは夏の暑い日の事でございました。
世界が解放されてからはや半年が経ち、
なんだかんだであの頃の仲間達と集まったときのお話でございます。
手紙を出したのは勿論ルカ殿。
なんでも彼は今度マルレイン姫と結婚することになったそうで、
私ジェームズとスタン様の元にも招待状を出して来たのでございます。
ええ。この時ルカ殿が私達にさえ手紙を出さなければ、こんな事にはならなかったのでしょう。
教会で結婚式を挙げるカップルが、
新郎がまさか女の方になるとは…
教会から帰って来て、まずボクは自分の体質を呪った。
受難体質とはよく言われたけれど、
まさか性別まで変わるとは。
それもまたスタンのせいでこんな騒ぎに巻き込まれてしまって。
せっかくの晴れ舞台ぐらい、かっこよく決めようとしたんだけれど。
教会に行く前に怪しげな顔をしたスタンに魔法をかけられ、
気がつけばタキシードを着る前に女の子に変えられたボク。
スタンの台詞で性別が変わったと分かったとき、
そして元に戻す魔法がないと申し訳なさそうに言うスタンの話を聞いて
ボクはその場で膝をついて大声で泣いてしまった。
はあ、と溜息をつくその声ですら
それは少女の声へと変わってしまっていた。
これじゃあ、マルレインに会わせる顔がない。
家の前の噴水でこれからどうするか
一人考えていると服を血まみれにしたロザリーさんがこちらへとやってきた。
「とりあえずあの馬鹿魔王にはキッチリ制裁して来たから」
そう語る彼女の目は何かやり遂げたような目というか。
殺すと書いて殺りとげた、というような。
「すみません、毎回毎回」
「姫様には話したの?この事。」
いきなり核心をつかれて
背筋がぞくっとする。
「言えるわけ、ないですよ。」
自分が女になったから、
だから教会にいけなかったなんて。
信じてもらえるわけがないし、
そんなの話せるわけがないし…
ロザリーさんはそうボソボソ話す僕の手を掴むと、
ぎゅっと強く握った。
「男なんでしょ!?」
「今は女です…」
それでも、と彼女は一言加えると。
「元は男なんだから、あなたがしっかりしなさい。」
そういってボクをギュッと抱きしめてくれたんだ。
「いきなり性別が変わって落ち込んじゃうのはわかるわ。けどね、戻れないとわかったなら女としていきるのもいいと思うの。わからないことがあるなら、全部教えてあげる。」
温かかった。小さい頃お母さんに抱きしめられたときのような、そんな温もりがした。
「女だって、中々楽しいんだから。」
そういってボクをそっと離すと、頭をそっと撫でてくれる。
今のボクには、いや前のボクにだって嬉しい出来事だった。
けど、なにか嫌な予感も感じていた。
ロザリーさんの目が燃えているのだ。
初めはスタンに再び制裁を加えるためかと思っていたが、
それにしては目の燃え方が違う。違いすぎる。
案の定、ロザリーさんはボクを猛スピードで
自室まで連れていくと、耳元でかすかに、
けれどボクを絶望させるには十分な一言を囁いた。
「女の楽しみ、一から教えてあげる」
だから覚悟しなさい、と。
ベッドに押し倒され、
右手も左手も掴まれて
ボクが本当に女の子になったのか
一晩中調べられました。
最初は羽ペンの羽の部分で、
次第に素手で調べるようになり、
どこから持ってきたのか
ローションでも体のすべてを調べ尽くされました。
届かないとは解りつつもマルレインに助けを求めるたび、
ベッドで高い声をあげさせられるのです。
母さん父さん、ルカはもうめげそうです。