午後11時――ベットに身を沈め、大竹りなは布団を被った。本来は1日の疲れを癒す時間だ。しかし、大竹りなにとってそれは苦痛の時間だった。  
 
 
 
 カチッ…カチッ…カチッ…。  
 
 
 
 目覚まし時計の秒針の進む音が、大竹りなの心を焦らせていた。早く寝なきゃ……そう思えば思うほど、眠れなくなる。時計を見ると、さっき寝たばかりなのに午前2時を過ぎていた。時が経つのが早く感じる。  
 「…はぁ………」  
 夜中になると、もの思いに耽るのは何故だろう。大学を卒業してからの事……いや、1番心配なのは、兄の輝明の事だ。  
 りなの歩く、先の見えない道には越えられない壁があった。……兄という壁が、りなの行く先を阻んでいた。  
 心の中がざわつき始める。兄という存在を、否定しようとしている自分がいる。だが、りなはその自分をひたすらに否定した。だけどその自分を否定しきれなかった。  
 「お兄…ちゃん」  
 自分自身、お兄ちゃんをどう思っているのか…それがわからない。でも、私が家を出たらお兄ちゃんは………。  
 「私……お兄ちゃんの事、心配……なんだ」  
 りなは目をつむった。そこから、苦悩と憂いに満ちた涙が零れる。  
 「今日、堀田先生の所へ行こう……」  
 パジャマの袖で涙を拭い、ベットに身を預けた。  
 
 
 りなはいつの間にか眠りについていた。  
 
 
 バイトが終わり、りなは堀田の元へ向かった。堀田がいる部屋の前で、りなは止まった。  
 木製のドアが、鉄のドアに見える。りなの重々しい心が、そうさせていた。ドアの向こうには、りなの心の曇りをなんとかしてくれるであろう人がいる。  
 りなは部屋のドアを2回ノックした。  
 「どうぞ」  
 ドアの向こうから、堀田の声が聞こえた。  
 「失礼します」  
 りなは扉を開けながら言った。  
 「こんばんは」  
 ソファーに座っていた堀田が立ち上がる。  
 「…こんばんは」  
 「今日は寒かったでしょう……。コーヒー、入れますよ」  
 今日も暖房のかかった部屋にずっといた堀田は、そんな事を言った。  
 「あっ…お構いなく」  
 りなは両手で頬をさする。頬は、外の寒さのせいで少し赤くなっていた。  
 「さぁ…お掛け下さい」  
 りなは堀田に一礼する。マフラーを取り、コートを脱いで、ソファーに腰掛けた。  
 部屋が静かになった。そして、コーヒーをカップに注ぐ音だけが流れた。やがて音が止まり、  
 「お待たせしました」  
 と、コーヒーが載ったトレーを持った堀田がやってきた。  
 「あ、ありがとうございます」  
 未だに寒そうに両手をさするりなに、堀田は微笑した。テーブルに2つコーヒーカップを置くと、ゆっくりとソファーに座った。  
 「……堀田先生、相談があるんです」  
 りなが話を切り出した。  
 「はい」  
 堀田はりなの目を見る。  
 「……大学を卒業したら家を出ようと思うんですけど……やっぱり、お兄ちゃんのこと思うと複雑で。最近、夜…眠れないし」  
 りなは俯いた。  
 「輝明さんのことが心配なんですね……。りなさん、あなた自身のことをお聞きしましょうか」  
 「……はい」  
 「りなさん……あなたが幼かった頃のお母さんとあなたの事を教えて下さい」  
 りなは顔を上げた。そして、昔の事を思い出しながら語った。  
 「母は……今も昔も、優しい母でした。母に何か話をしようとしても、ちょっと待ってって言われました。母は…お兄ちゃんのことをしてました。母の話はよく聞かされました。ほとんど愚痴です。お兄ちゃんのことで疲れると私に愚痴をこぼすんです」  
 りなは一息つき、言葉を続ける。  
 「……つらかったですね。でも、しょうがないと思ってました。父は、お兄ちゃんのこと母に任せっきりにしてたし。母は本当に つらそうでしたから」  
 「あなたのお陰でお母さん…随分助かったんでしょうね」  
 りなに語りかけるように、ゆっくりと話す。  
 「でも…。りなさんはずっと我慢してきた。自分の気持ちを抑えてきたんですよね。本当はどうしたかったんですか?」  
 本当はどうしたかったか。りながそれを一番に知っていた。でもその事実を認められなかった。それを認めてしまったら、もっと母に甘えたくなってしまう。そんな気がした。  
 「お母さんに…お母さんに………」  
 「……………」  
 りなを見守る堀田。  
 「ううっ………甘えたかった………」  
 りなは長年認められなかった事をようやく認めた。大人になってから、やっとわかったのだ。幼い頃は複雑な思いをしたが、それは複雑過ぎた。でも、りなは大人になった。複雑な思い……その複雑の先は、甘えたかったという欲望。ただそれだけだったのだ。  
 りなは、幼い子供のように泣いた。  
 「うぇ〜ん!ううっ…。うぇ〜ん!」  
 なかなか泣き止まない幼い子供のように、りなは泣き続けた。  
 
 堀田は立ち上がり、りなの隣に座った。  
 「りなさん……」  
 りなの髪を優しく撫で、そっと抱きしめた。ふんわりと、シャンプーの匂いがした。  
 「りなさん………」  
 震えるりなの背中をゆっくりとさする。  
 「僕でよかったら………甘えて下さい」  
 堀田は目をつむった。  
 「堀田せんせ…うぅっ……ありがとう………」  
 りなは堀田の胸に顔を埋め、堀田の広い背中に腕を回した。  
 「………………」  
 「………………」  
 堀田は目を開けた。何かを感じとったのか、りなは顔を上げた。  
        
      
          
      
        
          
 見つめ合う2人。  
       
     
         
         
     
 2人の唇が、ゆっくりと引き寄せあう。  
          
      
     
        
 
 ほろ苦い味のキスだった。コーヒーの味が、りなの口の中に広がる。堀田の生暖かい舌が、りなの口の中に侵入していく。  
 「ん……んっ……」  
 舌先同士がぶつかり合い、りなは快感に身を震わせた。  
 チュッチュと、りなの舌に吸い付く堀田。  
 「あっ…ぃあぁぁ」  
 舌を吸われて、りなの腰がびくびくと痙攣した。堀田は、唇からりなの舌を離す。  
 りなの目から流れる涙を親指で拭ってやる。  
 「す…すみません…」  
 自らの股間の膨らみを堀田は気にした。りなはそれを撫でる。堀田はぴくりと動いた。  
 「………………」  
 りなは恐ろしいほどに無言になった。そしてズボンのファスナーを下ろす。勃起した巨根が、りなを見つめていた。鈴割れの尖端から透明な液体が垂れているのが見える。りなは舌を出し、肉棒を伝って垂れていく液体を舐めた。  
 堀田は腰を前に突き出した。飢えたケモノのように、エサを目の前にしてよだれを垂らす肉棒は正直者だ。  
 
 
 
 堀田は、完全にりなに欲情していた。  
 
 「はむっ……」  
 舌で亀頭をチロチロと舐め、肉棒の裏筋をぬめる右親指で責める。ぎこちないフェラだが、これはまた可愛い。  
 「うっ……はぁぁ……りなさん………」  
 (見掛けは無垢で純情に見える……でもこの子は……)  
 チュバチュバと音を起て、射精を誘う。しかし、りなは肉棒から口を離してしまった。  
 「り……りなさん?」  
 「堀田先生……触って下さい……」  
 堀田の手をとり、りなの胸に手を持っていく。  
 「弱ったな……これは焦らしかい……?」  
 虚しく勃起する肉棒に向かって、堀田は苦笑した。  
 どくんどくんとりなの心臓の鼓動が伝わってくる。  
 「すごいドキドキしてます……こんなの、初めてだから。彼氏がいても、私……した事が無いんです。だから、堀田先生に……」  
 「………………」  
 堀田は無言になった。  
 堀田の両手が、胸を揉み始める。それが、堀田の答えだった。  
 「堀田…せんせ………っ」  
 「僕が……りなさんの初めての人になる……とても嬉しいです」  
 りなが着ているモコモコした白いセーターを上げ、りなの胸を覆うブラジャーが……。下乳から揉み上げ、ブラジャーもセーターとともに上げた。小ぶりだが柔らかい乳房に、堀田は夢中になった。  
 「ぁっ……ん…ふぅ………」  
 右乳房の乳輪をなぞり、徐々に円を狭める。乳首が勃ってきた。そこを舌先でノックしてやる。ひくひくと、りなの腰が跳ねた。  
 「あンっ………気持ちいぃですっ………」  
 声高にりなは喘いだ。  
 りなの秘部に、手が延びる。ホックを外し、ジーパンのファスナーを下げる。パンティの上から秘部に触れた。愛液に濡れた膨らみに、堀田は指を添える。  
 「あっ…!やあぁん……!!」  
 敏感なクリトリスに指が触れ、りなは悶えた。毎晩クリトリスを触り、彼女のそこは開発されて感じやすい部分になっていた。  
 堀田の中指が勃起したクリを圧迫する。そして上下に激しく擦り始めた。  
 「やぁんっ…!!!!!あぁっ……せ…先生!!!ダメっ…!!!おかしくなる!!!!!」  
 「こんなに大きくして………毎日オナニーしてるんでしょう?いやらしいなぁ……りなさんは」  
 「んあぁっ!!!!イク……!イッちゃうよぉ!!」  
 ビクビクッ…っと内股が痙攣し、りなはあっという間にイッてしまった。  
 
 「はぁッ……はぁ……」  
 絶頂の余韻に浸りながらも、りなはジーパンを脱ぎ始めた。ふらふらと足取りが覚束ない。  
 「りなさん、無理せずソファーに寝転がって下さい」  
 「は……はい……」  
 りなはソファーに寝転がる。堀田はジーパンを脱がせた。パンティの股の部分にはシミが出来ている。  
 「は……恥ずかしい……」  
 堀田はしゃがみ、りなのパンティに手をかけ脱がせてやる。銀色に光るいやらしい糸が伸びてすぐに切れた。  
 「いやらしい子だ……」  
 りなの膣口に滴る愛液を指ですくい、堀田はそれを舐めた。  
 りなは驚愕の目でその光景を見ていた。  
 堀田はりなに笑顔を向けると、美味しいです。と、ひとこと言った。  
 りなの秘部に舌を這わせ、割れ目を往復する。叢をかきわけ、勃起したクリトリスに吸い付いた。  
 「キャァッ……!!!!!!」  
 悲鳴に近い喘ぎを上げ、りなは口を押さえた。  
 ちゅっ……チュパッ……。  
 レロレロとクリトリスの尖端を転がし、りなは2度目の絶頂を迎えた。  
 「んゃあぁぁぁぁっ!!!!!」  
 潮が、堀田の顔面に掛かる。堀田はハンカチを取り、顔を拭いた。  
 「イクのが早いですね……。感じやすいんですね」  
 はち切れそうな肉棒をりなの膣口に挿入した。ソファーで正常位の体勢は少々キツいものだ。  
 2度の絶頂に、りなは意識を失いかけていた。  
 「りなさん、痛いかもしれないですが…我慢して下さいね」  
 ゆっくりと肉棒を挿入するが、なかなか入らない。危うく射精しそうになってしまう。  
 「ぅう…?」  
 りな余韻から醒めた。  
 「い……痛い…!」  
 「りなさん……我慢です……はぁ……はぁ」  
 ズンッと腰を突き出すと、奥深くまで肉棒が入った。  
 「ぁぁっ!!!痛いっ…!」  
 堀田は動きを止めた。  
 「りなさん、よく頑張りましたね」  
 「え…?」  
 「僕は、りなさんの初めての人になりましたよ」  
 りなの顔がほころぶ。  
 「ちょっと痛くなくなったかも……」  
 「じゃぁ、動きますね」  
 ゆっくりと堀田はピストン運動をする。  
 血液と愛液が混じった液体が、ソファーに零れ落ちた。  
 「堀田先生……大好きです」  
 りなは堀田への想いを打ち明けた。  
 「僕もだよ。りな…大好きだ」  
 肉棒が暴発を始めた。  
 
 「あ……あったかい……」  
 子宮目掛けて精液がほとばしる。  
 「うぅっ………」  
 射精の気持ち良さに堀田は目を細めた。  
 二人は、繋がったまま抱きしめ合った。  
         
       
         
      
         
       
         
       
         
       
 「もしもし……」  
 「もしもし?りな、どうした?」  
 「好きな人が……出来たの。勝手でごめんなさい……もう、あなたとは会えないの」  
 「え……?りな……!?」  
 「ごめんなさい…」  
 りなは携帯の電源を切った。  
 「本当に……いいんですか?」  
 「いいんです……これは、私の道だから」  
 12月25日、1つ失い、また1つ得たりな。堀田の傍にずっといること……りなの道には、新しい道が出来た。  
 ずっと一緒にいる事、2人はそれを約束した。  
 雪の降る窓の外を見つめ、いつまでも2人は寄り添っていた。2人でいる喜びを感じながら、いつまでも…いつまでも………。  
 
 
 
 
 
 【完】  
 

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