するり、とルビーの指が動く度にゾクゾクとしたものが背中に流れる。
自分の肌がこんなに鋭利な感覚を持っているのを驚くと同時にそれを悔やんだ。
シャツ越しにでもルビーの小さな指がリアルに感じられて、もうダメか、とそんな思いでさえ頭の中をよぎる。
「スズさん・・・まだおなかですよ?おっぱいとかクリとかまだ触って無いじゃないですか」
だが彼女の声ですぐに我に返らざるを得なかった。
その声はどこか笑いを含んでいて、自分よりも一回り以上小さい子供にしてやられるのが悔しく思える。
その悔しさで唇を噛んだら口の中にひどく生臭い血の味が広がって気持ち悪かった。
ああここまで追いつめられてたんだな、と今更ながらにスズは思う。
「・・・っ」
唇の暖かな感触に驚いて瞼を思わず見開くと目の前にルビーの顔があった。
1度目の時もそうだったが、2度目の今でも思う。
上手いな、と。
自分の唇が彼女の舌に絡め取られる度に微弱な電気が走る。
それは男性との交わりでは決して得られない箇所からの快感だ。
さっき噛んでできた傷を重点的に舐められている為、ぴりぴりとした痛みと快感とに酔ってしまいそうだった。
しかしここは上司の手前、身体を預けるわけにもいかず、中途半端な意志だけが頭の中に残る。
いっそ流されてしまえば楽なのにそれすらもできずに、ただ奥歯を強く噛みしめて舌の進入をなんとか抑えていた。
だが、
「あ・・・っ」
ウィークポイントをするり、と、あの独特の手つきでなぞられた瞬間、声が、狭い唇の間から漏れて、しまった。
その時を見逃す程、自分は甘くはない。
本当にそれは狭い隙間だったのだがルビーの小さな舌は何の問題もなくスズの舌に触れた。
スズの舌は緊張の為か硬くなっていて、1度目はきっと、そんな事を感じる余裕さえなかったんだろうなとルビーは思う。
硬くなった舌の根本からゆっくりと溶かすように舐め上げると、スズの舌は容易く反応した。
彼女の口からはルビーのものとも、スズのものともつかない唾液が口の端から溢れている。
それを見届けるとルビーはまたそろ・・・と肌を撫でた。
「・・・っう・・・!」
瞬間、彼女の身体が小さく跳ねる。
それでも唇は繋がったままで、さらにルビーは角度を変えて、深く舌を入れた。
左手はスズの顔に添え、もう片方はさっきからスズの肌をまさぐっている。
肌を撫でる度にスズの舌は硬くなって、率直な彼女の身体の反応が面白かった。
ちゅ・・・とわざと大きな音を立てて口を開放すると、スズの息が荒くなっている事にようやく気が付いた。
「OVER様、ちょっとスズさんの手を放してあげてください」
だいぶ息が上がっている。顔も以前とは比べてかなり赤い。
唇を手の甲で拭い、その唇に今度は彼女の指を含ませた。
「っひ・・・」
指先は最も神経が通っている場所だ。感じないはずがない。
ぺろぺろと、まるで男のモノにそうするように丹念に舐め上げる。
指と指の間から、爪の間まで舌を這わせた。
「っ・・・嫌です・・・これ・・・はぁっ・・・」
おそらくこんな所、誰にも舐められた事がないのだろう。
想像以上のスズの反応に、心の中でニヤリと笑った。
こり、と奥歯で分厚くなっている皮膚を噛まれた。
「ふあっ・・・」
指にある舌が動く度、小さいものだが声が出てしまう。
手を噛んで耐えようとしても一方の手はルビーの口にあって、もう一方は身体を支える為に使っているのでしようにもできなかった。
しかし、まだこれくらいなら耐えられないものでもない。
確かに触られるなんて初めてで、ましてや舐められるだなんて想像だにしていなかったのだが、まだ、大丈夫だと思えた。
でも体内にどうしようもなく熱が溜まっているのも確かで、早くそれを開放したい欲求も確かにあるのを、声が出るたびに自覚してしまう。
「ひああっ!」
油断した瞬間、大量の快感が体の中を駆けめぐった。
そういえば舌の動きに気を取られていて、手の動きの方をまったく警戒していな、と思い出す。
ふふ、と妖艶にえむルビーの顔が近くにあった。
「どうしましたかぁ?スズさん」
「・・・っ」
「もしかして・・・感じちゃいました?」
悪戯っぽく、上目遣いで笑う彼女は本当に楽しそうだった。
いつのまにか彼女の手が、上の方まで移動している。
指への攻めも止んだ。
「スズさんのおっぱいって、すっごく綺麗なんでしょうね」
そう言うとルビーはスズのTシャツに手を伸ばした。
する、と小さな手がシャツの下の肌に触れる。その手はどんどん上昇していったが、硬い布の感触を確かめて、止まった。
「切りますよ」
あまりにも普通に言われた言葉に、「え?」と言うこともできなかったが、肌に押しつけられた冷たい刃物の感触は嘘じゃない。
「止め…!」
びり、という大きな音もたてずに、ルビーは実に器用にブラジャーだけを切り取ってみせた。すう、とシャツ一枚にしか保護されていない胸に風が通る。そこも汗ばんでいたのか、風が通った瞬間寒く思えた。
やっぱり、と思った。まくり上げて完全にあらわになった彼女の胸は、薄暗いこの部屋の中では乳白色の光を発しているようだった。その中に息づく、桃色の艶やかさが映えていた。
自分より僅かに体温の高い手。彼女の肌は柔らかかった。自分も大人になればこんな肌になるのかなとルビーは思う。
自分の手はとても小さいが、そのぶん器用な動きも容易にできた。上半身の中で、もっとも敏感な部分に指が触れる。
「っ!」
彼女の体が僅かに震えた。息を呑んだ、その表情ですらも美しかった。目に溜まった涙に、自分とはとても違う純粋さに驚いた。
自分と同じ色の目、同じ色の髪。長さこそ違うが毎朝くしでとかす自分の髪の感触と、彼女の感触は同じだった。
自分を犯しているようだ、とルビーは思った。だが自分と同じで、でも遙かに脆い彼女でなければここまで傾倒しなかっただろう。
ゆっくりと両手でしっとりとした肌の感触を楽しみながら、自分の唇より淡い色のアクセントをそっと口に含んだ。
「っああ・・・る・・・ルビーさ・・・」
たまらないという風にスズは首を横に振る。そのたびにぽたぽたと額から汗が飛んできたが、別段汚いとも思わなかった。
そのまま、噛んだり、唇で挟んで刺激してみたり、とにかく思いつく限りのことをした。
「やあっ・・・!!・・・あっ・・・あんっ・・・ああっ!」
「凄い声ですねえ。軍艦様、起きちゃうかもしれないですよ?」
「・・・っ・・・くあっ・・・はあっ・・・ん」
彼女は良く反応した。なので唇を噛んで必死に声を殺しても、結局隙間から漏れてしまう。
上司に痴態を見せないため、彼女は見ていて痛々しいほど必死だった。
「ふっ・・・んんっ!・・・っあ・・・」
口から放し、ぐりぐりと指でつまんで刺激する。彼女はもう、多少の痛みなら快感に飲み込まれる程になっていた。
口からはア行の声しか漏れない。
「あっ・・・あああっ!ひあっ・・・あんっ」
「・・・だめですよスズさん」
私の声で彼女の意識をこちらに戻す。我ながら悪趣味だと思ったが、そうさせる何かが彼女にあるのかも知れない。
声と共に熱い吐息を彼女の耳に送った。きっとこの温度は、この人に対する私の温度なのだ。熱くなった舌で耳の中を舐ると、また彼女の体が反応した。
「ふっ・・・うぅ・・・」
「・・・もう良さそうですね」
ベルトで固く閉ざされた、彼女の中。先程からもじもじと足を摺り合わせていたのを、見逃すはずがない。
ベルトに手を伸ばし、かちゃかちゃとわざと音を立てて外した。
「や・・・止めてください!そこだけは・・・」
彼女の長い腕がベルトに伸び、必死で抵抗をされたが、別段、作業に困るということでもなかった。
スズのズボンは彼女の体型に似合わず、随分とぶかぶかだった。目線を下に落とすと、それだけで彼女の下着が見えるほどである。
「白ですかあ。似合いますけど、他のもはいてみたらどうですぅ?」
くすくすとした笑いを漏らす。たちまち上気していた顔はさらに鮮やかな朱色に染まった。
上がっていく呼吸のペースが自分の物なのか、それともこの、目の前の女性の物なのか、ルビーにはわからなかった。
「ここまできたんですから・・・ねえ」
湿り気を帯びている下着に手をかける。
「もう、ぜーんぶ、見せてください」
そう言って、一気に膝まで下ろした。その姿はひどく中途半端で、とても動きにくそうに見えた。
ズボンだって膝までしか下ろしていないので、足を動かそうにもできないだろうし、上半身も胸をまくられて、そのままである。
全裸よりも、こうやって局部的に見せられる方がよっぽど扇情的だ。
「も・・・止めてください・・・」
今にも泣きそうな声。それはそうだろう。こんなに恥ずかしい格好、女だったら誰だって泣きたくなる。
しかも自分よりも年下の子供にいいようにされて。
「えー!どーしてですかあ?」
確かに自分は子供だが、だからこそできる物というのがあるのだ。この場合、この質問がそうだった。
「え・・・」
「わかった!スズさん、軍艦様のこと、実はそんなに好きじゃないとか・・・」
「っ違います!」
「じゃあ・・・何でそんなこと言うんですか?」
「何で、って・・・」
「軍艦様、好きなんですよね?好きな人を傷つけたくないんですよね?」
「・・・あ」
「勝手ですよスズさん!人の代わりに自分が傷つくのが嫌なだけとしか思えな」
「ご・・・ごめんなさい」
「我慢できないんですかあ?」
「・・・できます」
あっさりと、彼女は自由への言葉を捨てた。
ごめんなさい、というたった一つの言葉は、体の自由を奪うには効果が充分にあった。
弱々しくなったスズもスズだが、ルビーだって悪ふざけがすぎる、とOVERは思う。
コンクリートの壁にもたれかかって先程の会話の一部始終を見ていたが、あれはやりすぎだ。
生かさず殺さず。反抗しているのを力で押さえつけるのがたまらなく愉快なのに、もうその意思が無くなってしまったようだった。
「OVER様」
よくもまあ、こんなことができるものだ。末恐ろしいガキだと、一人OVERは呟いた。
「なんだルビー」
「ここからはお任せします」
スズの方を向いた。嫌悪と恐怖とが入り混じった目をしていた。それも無理は無い。
何しろ上司をここまでした張本人なのだから。
「ああ」
しかし自分だってそろそろ我慢しきれない。にい、と牙をむく。
「任せろ」
腕を押さえ込み、覆い被さる。ひんやりとした床の温度が、今は心地よい。
首筋に舌をはわせただけで、上半身が動く。やはり見ているのと実際にやってみるのとでは全く違う。その感度の良さに驚いた。
「しっかり感じてんじゃねえか」
このぶんなら下の方だって、と指を移動させる。柔らかな金色の陰毛が、安っぽい蛍光灯の下で艶やかに光っていた。
その、更に下。水分の感触があった。じゅぷじゅぷ、と指を動かすたびに水の音が鳴る。
「ひっ・・・あんっ」
中心部からは止めどなく水が溢れていた。まるで涙のようだった。目で泣けないぶん、こちらで泣いているのではないかと思った。
だがそれは涙よりも粘性を持ち、とろりとしている。密と言われれてみれば、全く、その通りだ。
何の予告もなく、OVERは指を一本その中に突き立てた。本当は違う部分でその熱を感じたかったのだが、今は慣らさないといけない。
「痛・・・OVERさ・・・んはあっ!あっ・・・いっ・・・」
その喘ぎ声は痛みを訴えているのだろうか。それとももっと別の物だろうか。
しかしOVERは関係ないとばかりに、もう一本指を増やした。
「ふああっ!入って・・・入ってきてる・・・も・・・これ以上」
きつく、ぴちぴちとした感じではあるが、反面ひどく熱くて、中に入れている指がいまにも溶けきってしまいそうだった。
ぐいぐいと中の指を動かすとひときわ高く声を上げた。
もう、本当に限界だった。
ズボンの中から取りだした物をちゅぶちゅぶと入り口に押し当てる。それだけでも熱は感じ取れた。
強引に押し進めると、ぷちという破裂音がした。どうやら少し裂けてしまったらしい。
痛みのあまりスズは口を大きく開けている。声にならないほど苦しいようだ。
「・・・動かすぞ」
きつくて、動かしづらくはあったが、まあなんとかなるだろうと腰を動かす。
絡みついたきついピンク色の肉壁が、時折見えるのがグロテスクだった。
それでもスズは徐々に慣れてきたのか、次第に声が上がってきた。
ぴっちりと隙間無く結合された部分につ、と指をあてる。
「っあああ!!」
びくん、とひときわ大きく体が跳ねた。じゅぶ、という水音も聞こえるようになっていた。
ぐちゅ、ぢゅちゅ、じゅぷじゅぷ、ぬちゃ。
「んっ・・・ああっ・・・はあんっ・・・やっん・・・あふう」
「すげえ音だな。あ?スズ」
「違・・・ああんっあっ、あっ!」
あんなに冷静な娘がここまで悶えるとは思ってもみなかった。
OVERは右手でスズの腰を抱え、左手でクリトリスに潰してやるように刺激を与えた。
「ひあああああああっ!!」
悲鳴のような絶叫。のけぞって、口からはよだれが垂れている。
その瞬間密壺がきゅっと収縮した。
「いっ!あああぁっ!あっあっ」
ごりごりと一番深い部分に当たる度に、スズは声を漏らした。
こっちにも余裕ができたのか、さっきまで動かすので精一杯のはずだったのに、知らず知らずのうちに様々な角度で打ち込んでいた。
「ふぁあっ、あっ・・・ああっ!ひやあっ!もう・・・い・・・」
腰の動きを上げる。がり、と言う音がして見てみるとスズは堅い床に爪を立てていた。そのせいで爪がほんの僅かだが欠けている。
無理矢理腕を首に回させた。あの床よりかは幾分かマシだろう。
「あっあっああっ!!いっああああっ!イっちゃ・・・あっ、あっ!」
一際彼女の体が激しく痙攣する。丁度最奥に当たったときだった。
「あっ・・・もうイきま・・・――――」
意識を手放す直前、スズは男の名を叫んだ。
先程までいた金髪の女性はこの部屋にはいない。目を覚まし、いつものような表情を浮かべて去っていった。
あの人も困ったものですねと。
「・・・どうでした?」
OVERにもたれかかるように背中を預けながらルビーは言った。しかしOVERは答える気にはならなかった。
「・・・どうもこうもねえよ」
「残念でした?」
再びOVERは押し黙った。最後にスズが叫んだのは自分の名でも、ましてやこの少女の名でもなく、ただ、
『軍艦様』と。
そこまであの男のことで占められていたのかと、呆れる反面、行為の途中だというのに我を忘れた。
「さあな・・・」
ぐしゃ、と前髪を掻き上げる。結局暇つぶしにはなった。だがひどく後味が悪かった。
そのときプククとかみ殺したような笑いが後ろから聞こえてきた。
「・・・ルビー」
「いえ、四天王最凶と言われる程のOVER様でも可愛いところがあるんだな、と」
「斬られたいか」
そんなことないですよう、と言っているルビーは子供らしかったが、あの時のルビーは異様なまでに、あの場に馴染んでいた。
特にアフターケア。深い眠りについているスズに軽い催眠術を施したらしい。
彼女曰くいつも使っている洗脳術よりも、こういう、一時的な記憶を忘れさせる催眠術はよっぽど簡単なのだそうだ。
その後てきぱきとスズに衣服を着せていくルビーに一種畏怖めいた物を感じた。
切り裂いたブラは魚雷の、これからも使われない予定のクローゼットから取ってきていた。
こんな事、普通でも思いつかないというのに。
「しかしスズさん凄かったですねー。あれが愛の力ってヤツですねー」
「テメーの方が凄えよ」
「え?何か言われました?」
「何でもねえよ」
「あ、凄いで思い出したんですけど」
「軍艦を倒したボーボボが、あの、えーと・・・ほら、前にOVER様が殺印を施した、お米の人を・・・」
「ライスか」
「そう、それです。その人も倒しちゃったみたいで。さっきおちょぼ口から連絡がありました」
「そうか・・・」
ぱきぱきと首を鳴らす。
にやりと後ろにいる少女が笑んだのがわかった。
「また、お楽しみ、ですよ。OVER様」
「・・・ったく。今日は客が多い」
次は純粋に楽しみたい。
愛とか情とか、そういう人間の思念が絡まってくると面倒だ。先程のが良い例である。
「じゃあ、私は一階に行って来ますので」
「ああ」
城の最上階で、OVERは大きく伸びをして、次の客人をもてなす用意を始めた。
終