『私が守りたかったもの』  
 
旧隊長、ウォルフの裏切りによって壊滅した対デモニアック特殊部隊「XAT」だったが、一人生き残った隊員によって  
よって建て直され、今や新生「XAT」は、ナノマシンに感染し、デモニアック化した人々を保護し、差別から守る  
組織へと急成長していった。その立役者となった、たった一人の生存者「アマンダ・ウェルナー」は、今やXAT隊員の  
間では、「鬼教官」として恐れられていた。  
この日も何時ものように、アマンダの怒声が基地内に響いていた。  
「ちょっとそこ、チンタラしない!」「ダメでしょ!、そんな調子じゃ」「私語は慎みなさい!」  
ヒステリックなまでに厳しく注意を怠らないアマンダに、隊員達は常に身を震わせていた。そして、一人の男性  
隊員がアマンダに話しかけてきた。  
「教官〜、もうこれ以上ムリっすよ〜、少し休みましょうよ〜」隊員は軽いノリで休憩を要求した。  
「何言ってるのよ、これしきの訓練でへこたれてるようじゃ、XAT隊員は務まらないわ!」アマンダは冷静かつ強い  
口調で隊員を絞る。  
「でもさあ、あんまり訓練続けると体が持たないっつうかさあ、俺もう限界なんすよ」隊員は必死で言い訳を  
する。それを見たアマンダは、頭を掻きため息を突きながら隊員に質問した。  
「貴方・・・、家族はいるの?」  
「え?・・、あ、お、親と、妹が・・・・」  
「貴方、任務中に死んで家族を悲しませる気?、そんなことはこの私が絶対に許さないわ、それが嫌なら、訓練を  
続けなさい」  
「りょ、了解っ!」  
アマンダの気迫に隊員は根負けし、直ちに訓練に戻った。  
厳しい指導で有名だったアマンダだが、それと同時に、隊員たちに「命の尊さ」を隊員達に説く事でも有名だった。  
自分の身を守れない者は、他人の身も守ることも出来ない、等、口を酸っぱくして毎日言っていた。その理由は、本人しか  
知らない、忌まわしい過去が原因だった・・・・・・。  
 
時計の針が午後4時を指した頃、アマンダは更衣室へと向かった。この日は現所長が数日前から今日の為にアマンダに早退を許可し、翌日の  
休暇を与えられていた。更衣室を出て、門へと向かうアマンダの後ろから、彼女を引き止める声が聞こえた。  
「アマンダ教官!」  
アマンダが振り向くと、一人の若い女性隊員が立っていた。その女性隊員は、部隊内でミーハーであることで有名で、ストイック  
なアマンダは彼女に手を焼いていた。  
「何?、どうかしたの?」アマンダは隊員に声をかける。  
「教官、今日は随分早いんですね。」  
「その事?、ああ、今日は所長がこの日の為に早く上がれるように手配してくれたの。」  
「この日・・・・、なんの日ですか?!」  
理由を聞かれたアマンダは、少し考えながら答えた。  
「そうね・・・・・、『大切な人』を迎えに行く日・・・、かしら?」  
「大切な人・・・・・・・、も、もしかして・・・、恋人ですか?!」  
それを聞いた隊員は、何時もの甲高いキャピキャピした声で食いついてきた。そのテンションに、アマンダは  
少し引きながら言葉を返す。  
「ち、違うわよ、それより・・・・」アマンダは隊員の手を強引に掴み、自身の目に近づけた。その気迫に、隊員は  
一瞬たじろぐ。  
「貴女・・・、何?、この爪」  
隊員の爪は長く伸び、水色に塗られていた。  
「あ・・・、これは・・つ、着け爪です・・・。」隊員はしどろもどろになりながら答える。  
「任務に差し支えるから、切りなさい、その爪」「へ?」「早いうちにね」  
手を離すとアマンダは振り向き、出入り口へと足を進める。隊員は鬼教官の気迫に圧倒されながらその  
後姿を眺めていた。その後姿は、何処か嬉しそうな雰囲気を漂わせていた。  
 
 
時を同じくして、ここはドイツ国内のとある少年院。建物の中では、一人の銀髪の少年がボストンバッグに荷物を詰め込んでいた。  
少年は14歳の頃に人を殺め、その罪を償う為にここに服役していた。裁判では、未成年であること、被害者からの  
陰湿な虐めを受けていたことから情状酌量され、懲役2年半を言い渡されていたが、模範囚として半年早い出所が決まった。  
少年が門を出ると、警備員が声をかけた。  
「まじめにやるんだぞ」  
少年は軽く会釈し、前へと歩き始めた。すると門の前に1台のタクシーが止まり、そこから一人の女性が降りて来た。  
白い肌、桃色の柔らかい髪の毛、緑色の瞳、少年は感じた。迎えに来てくれたと。  
少年は女性の元へと早歩きで駆け寄った。向かい合うと、女性はにっこりと微笑み、少年に言葉をかけた。  
「おかえりなさい、マレク・・・」それは、XATの鬼教官、アマンダ・ウェルナーの、隊員の誰もが知らない、優しい笑顔だった。  
「ただいま・・・・」マレクは逸る気持ちを抑え、アマンダに声をかけた。2年ぶりに会うアマンダは、以前よりも美しさを増していた。  
が、何処と無く痩せたようにも見えた。マレクはアマンダと話す話題を探していたが、なかなか見つからない。するとアマンダが  
先に口を開いた。  
「大きくなったわね、マレク・・・・」アマンダの言うとおり、マレクの身長はアマンダと並ぶ程伸び、少年院  
内での規則正しい生活と運動で、以前よりも少しばかり逞しくなっていた。そんなマレクの手を握り、アマンダは言った。  
「帰りましょう、私達の家へ・・・・」「うん・・・」2人はタクシーに乗り、帰る場所へと向かった。  
 
家路に着くと、2人は家へと足を踏み入れる。マレクは2年越しに入る家の中を見渡す。何もかも2年前と変わらない。  
全てが昔のままで、強いて言えば、自身の身長が伸びたせいで、家具などが小さく見える程度の物だった。その後  
マレクは荷物を整理する為に自室へと向かった。部屋を中を見たマレクは息を呑んだ、ゲルトのポスター、ベッド、机の  
位置、此処も全て変わらないままだった。  
「ずっとそのままにしていたのよ・・・・・、マレクが何時、帰ってきてもいいように、ちゃんとキレイに  
しておいたわ」後ろからアマンダの声が聞こえた。  
「アマンダ・・・」マレクは振り向く。その瞳は、若干涙ぐんでいた。  
「ありがとうアマンダ、でも大変だったでしょ?」  
「うん、でも苦にはならなかったわ、マレクが帰ってくる事を思えば・・・・」  
「そう・・・」マレクの心は、アマンダの優しさに打たれていた。  
「あ、そうだ、マレク、私夕食の支度してくるから、今日はお祝いだから、腕に依りをかけるわ。」  
そう言いながら、アマンダは台所へと向かった。マレクは自室で黙々と衣服の整理を始める。すると暫くして、マレク  
は胸の奥から熱いものがこみ上げてくるのを感じた。やがてそれは涙へと姿を変え、マレクの瞳からぽろぽろと  
滴り落ちた。我慢しようとしても、涙はそれを無視し続けた。悲しくもないのに。そして、マレクは膝を抱え、声を  
押し殺して泣いた。アマンダに聞こえないように・・・・。  
 
部屋を出ると、アマンダが食事の用意をしていた。どうやら今日はパスタのようだ。食卓に並べられている物は、どれも  
気合が入っているように感じた。  
「マレク、準備出来たわよ、あんまりお金はかけられなかったけど・・・・、でも美味しく出来たと思うわ」  
2人は椅子に座る。マレクがパスタを口にすると、少し目を見開いた。  
「・・・美味しい・・・・・」  
「本当に?、よかったぁ・・・・」アマンダは子供のようにはしゃいだ。マレクが自分の料理で喜んでくれたのが、とても  
嬉しかった。  
「ねえ、ちょっと聞いてみたかったんだけど、少年院の食事って、どうなの?」それはアマンダの素朴な疑問だった。  
「うーん・・・・、味が無かった、かな・・・・・」  
「そう・・・だから美味しく感じるのね・・・」アマンダは少し意地悪そうな顔でからかう。それを見たマレクは一瞬  
凍りつき、あたふたし始めた。  
「あ、いや、その、ア、アマンダの料理は本当に美味しいんだ、嘘じゃないよ、本当だよ」  
慌てふためくマレクを見つめるアマンダ、するとアマンダはプッ、と吹き出し、クスクスと笑い出した。  
「ごめんごめん、マレクとこうやってまた一緒に暮らせると思うと、嬉しくなっちゃって、つい」  
「なんだ・・・、アマンダ、ちょっと性質が悪いよ」  
「ふふっ、本当にごめん」アマンダは安心するマレクの表情を、とても可愛いと思った。会話も弾み、その  
夜の食事は、楽しいものとなった。  
 
その後、2人は食後の休憩をリビングで取った後、アマンダは自室へと向かい、マレクはテレビの報道番組を眺めていた。  
アマンダの部屋からは彼女の荒い息遣いと、数を数える声が静かに聞こえる。どうやらトレーニング中のようだ。すると  
ブラウン管に、アマンダの姿が映し出された。どうやら新生XATの事について取材を受けているようだ。  
テレビに映ったアマンダは、凛々しい表情でインタビューに応じる。  
「―――アマンダさん、あなたはここでは『鬼教官』と呼ばれているようですが、その事に関しては  
どう思われていますか?―――」  
「―――私は、隊員に好かれる教官を目指しているわけではありません、優秀な隊員を育て上げる事を  
一番の目的としています―――」  
「―――アマンダさんが隊員への指導で一番心掛けていることは何ですか―――」  
「―――私は常に常に隊員たちに、『命の尊さ』を説いています、中途半端な訓練では、任務中に  
命を落としてしまうかも知れません。そのような事で大切な人を悲しませることの無い様、私は  
隊員達に厳しく接しています。―――」  
インタビューにきびきびと答えるアマンダを見ていると、ドアが開く音がした。マレクが振り向くと、そこには  
アマンダがいた。そのアマンダの姿に、マレクは息を呑んだ。アマンダは黒のタンクトップにホットパンツ姿で、汗で  
タンクトップが胸に張り付き、乳首が突き出していた。マレクは思わず赤面する。  
「どうしたのマレク、顔真っ赤よ」  
アマンダが前かがみになり、マレクに顔を近づける。その拍子に、豊かな胸がゆさゆさと揺れ、汗の香りが  
鼻を刺激した。  
「あ、いや、・・・、その・・・・・、あ、アマンダ、さっきテレビにアマンダが出てたよ」  
マレクは欲情を誤魔化す為、先ほどの報道番組のインタビューの話を持ち出した。  
「ああ、あれね。でも、見たいと思わなかったわ、だって自分がテレビに映るのを見るのって、結構照れるのよ」  
「そ、そうなんだ・・・・・」マレクは少し俯く。  
「じゃあ私、シャワー浴びてくるから」アマンダはシャワールームへと向かって行った。マレクは天気予報を  
見ていたが、自意識とは無関係に、先ほどのアマンダの姿がフラッシュバックして浮かんだ。たわわに実った果実の  
ような乳房、黒のタンクトップが、肌の白さをより引き立てていた。その黒い布地からは、明らかに乳首と思われる  
突起物が浮かび上がっていた。それと、ホットパンツから伸びた、程よく肉付きの良い、スラっと長い脚も魅力的だ。  
もんもんと広がる妄想に、マレクは抵抗した。欲望にこのまま流されてしまったら、自分がダメになると思い、頭の中で  
別の話題を探していると、アマンダの腕を思い出した。  
(あんな細い腕なのに、どうしてあんなに力があるんだろう・・・?)  
XATで鍛え上げられたアマンダの腕は、その美しさ、細さにも関わらず、男顔負けの力を持っっている。マレク  
も少年院で鍛えさせられたが、アマンダとアームレスリングなんてしたら、腕をへし折られてしまうだろう。  
そんな事を考えながら、マレクは少し噴き出した。  
 
マレクもその後シャワーを浴び終え、自室のベッドに横たわった。2年ぶりに見上げる天井、思えば、天井を見上げる  
のも久しぶりのような気がした。虐められていた頃の自分は、うつ伏せにベッドに入り、枕に顔を埋めながら、アマンダに  
気付かれないように泣いていた。その自分を虐めた奴らは、もういない。自分が殺したからだ。しかし、それでも  
心の闇が消える事は無かった。あんなに憎んでいた相手なのに、スッキリしたのは、殺した直後だけで、後から言葉に  
出来ない程の嫌悪感が自分を襲った。マレクは、その時ほど自分が弱虫だと思った事は無かった。  
そんな事を思い出しつつ、マレクの脳裏にトレーニング後のアマンダの姿が映し出された。もし叶うなら、あの  
豊かな膨らみの谷間に顔を埋めてみたい、思い切り甘えてみたい、アマンダに抱きしめられたい・・・・・。しかしそれは  
叶うことの無い願望だった。血縁はなくとも姉弟だし、そもそもアマンダが自分のような子供に興味を持つ訳がないのだ。  
アマンダのような美女は、背が高く、ハンサムで、稼ぎのある男を好むものなのだ。どれ一つ、自分には無い物だった。  
そうと知りつつも、マレクの右手は股間へと伸びていった。満たされることのない性欲は、このような事でしか解消出来ないからだ。  
「アマンダ・・・・・・・」自然とマレクの口からアマンダの名前が漏れる。すると、部屋のドアをノックする音が聞こえた。  
「マレクー、起きてるー?」マレクは突然自分を呼ぶ声にすぐさま手を引っ込め答える。  
「うん、大丈夫だよ」マレクは自分が起きてることを知らせた。  
「部屋に入ってもいいかしらー」アマンダは部屋に入りたいようだ。マレクはドアへと向かい、その扉を開ける。  
すると、自身の髪と同じ色のパジャマを着たアマンダが立っていた。アマンダはにっこりと笑う。  
「・・・・来ちゃった・・・」その笑顔に、マレクはくらくらしそうになった。アマンダは部屋に入るなり、ベッドに  
腰掛けた。マレクも同時にアマンダの隣に座る。  
「・・・どうしたの?、アマンダ・・・・」  
「ちょっと・・・・・、寝る前に、マレクと話がしたくなって・・・」  
マレクはドキドキしていた。自分の部屋に、アマンダと一緒にいるのだ。しかもマレクはさっき、アマンダを  
オカズにオナニーしようとしていたのだった。その罪悪感から、どうしても節目がちになる。話がしたい、とアマンダ  
は言っていたが、何せ話題が見つからない、暫くの沈黙が流れる。すると、アマンダが先に口を開いた。  
「・・・マレク・・・・・、私って・・・、ダメなお姉ちゃんよね・・・・」  
びっくりした。なにせ、アマンダが自分の事を、『ダメなお姉ちゃん』と言ったからだ。  
「どうして・・・・?」マレクは理由を聞く。  
「だって私、仕事が忙しいのに漬け込んで、マレクがこんなに辛い目にあっていたのに、気付いてあげられなくて・・・  
、ここまで追い詰めてしまったから・・・」  
悲しそうな顔で答えるアマンダを見たマレクは、必死でアマンダを慰めようとした。  
「そ・・・、そんな事・・無いよ、アマンダは綺麗で、優しくて・・・、強くて・・・カッコよくて・・・その・・・  
・・、誰かに言ったわけではなかったけれど・・・、僕にとっては自慢の家族なんだ・・・」  
マレクは難とか言葉を探して、アマンダを励ます。それを聞いたアマンダは、少し笑みを浮かべて返した。  
「そう・・・そう思ってくれてるのね・・・・、嬉しいわ・・・・・」  
マレクはアマンダが少し機嫌を良くしてくれたことにほっとした。その直後、アマンダはマレクを驚かせるような  
事を口にした。  
「ねえ、マレク・・・・・抱かせてくれる・・・・、かな・・・・・?」  
 
その言葉は、マレクの心臓を撃ち抜いた。あまりにも突然の事の為、マレクはしどろもどろになる。  
「え・・・、あ、そ、それって・・・・・・」  
気が動転するマレクに、アマンダは目を細め、マレクの頬を左手で摩る。手の温もりとすべすべとした質感がマレク  
の心臓の鼓動を早めた。顔を真っ赤にして黙り込むマレクに、アマンダは優しい声で語りかける。  
「嫌・・・かしら・・・・・?」アマンダが答えを待ってる。もはやマレクは緊張の余り、口の中がカラカラに  
なり、喋ることが出来なかった。その為、マレクは首を縦に振るという形で気持ちを伝えた。  
「そう・・・・」答えを聴いたアマンダは、マレクの首に両手を廻し、ゆっくりと自分の身体に引き寄せた。  
マレクの顎がアマンダの右の肩に乗っかる。アマンダは右腕でマレクの背中を抱き、左腕でその銀色に輝く  
髪の生えた頭を撫でた。  
夢にまで見た、アマンダの抱擁、姉弟であるが故に、その願いは叶うことはないと思い、諦めていた。しかし、今の  
自分は、そのアマンダに抱かれている。夢ならば覚めないで欲しかった。シャンプーの香りと、アマンダの  
体温が心地良かった。  
マレクが肩から顔を離すと、自然とアマンダと向かい合う形となった。アマンダは微笑みながら、マレクに頬ずり  
をする。その表情は、マスコミのインタビューに答える時の凛々しいアマンダとは違う、母親の様な物だった。  
快感に浸るマレクだったが、心配な事があった。アマンダに抱かれる快感によって、マレクのペニスが勃起を始めていた。  
それを悟られないよう、マレクは腰を少し遠ざけていた。が、アマンダの右腕がマレクの腰を引き寄せようと動き、それと  
同時にアマンダのその柔乳がマレクの胸板を押す。驚いたマレクは咄嗟にアマンダを突き飛ばしてしまった。アマンダも  
あまりに突然の事だった為対処しきれず、マレクの抵抗に目を白黒させるばかりだった。その直後、『ゴンッ』という  
鈍い音が部屋に響いた。  
我を取り戻したマレクは、すぐさまアマンダの方へと目を向ける。アマンダは「いたた・・・」と言いながら、頭と  
背中を摩っている。どうやら壁にぶつけてしまったようだ。その後、アマンダがその緑色の瞳をマレクに向けると、マレク  
の身に言いようの無い恐怖が襲ってきた。  
何せ咄嗟とはいえ、アマンダを突き飛ばし、壁にぶつけてしまったのだから。きっと怒っているに違いない。マレクの  
体に悪寒が走り、がくがくと震えた。弁解の言葉を言おうとしても、思うように舌が回らない  
「あ・・・あ・・あ・・・ア・・・アマン・・・ダ・・・・・ご・・・・ご・・ごご・・・・・」  
当のアマンダは無機質な表情で寄って来る。マレクは本能的に逃げようとしたが、腰が抜けて動けない。無機質な  
表情がまた、恐怖心を倍増させていた。  
「マレク・・・・」アマンダが口を開いた瞬間、マレクは目を瞑った。  
『―――殺される―――』肉体的な戦闘力では敵わない事を知っていたマレクは、覚悟を決めかけていた。だが、アマンダ  
の口からは予想外の言葉が発せられた。  
「ごめんね・・・・」アマンダは微笑みながら謝った。その言葉を聞いたマレクは、一気に体の力が抜ける。  
 
「・・・ごめんね・・・・マレク、びっくりさせちゃって・・・・今のは私が悪かったわ・・・」  
怒りなど微塵も見せずに謝るアマンダに、マレクは聞いた。  
「どうして・・・・・?、・・・・怒って・・・ないの?」  
アマンダはくすりと笑いながら答える。  
「怒ってなんか無いわよ、悪いのは、みんな私だから・・・・」  
貴方は悪くない―――そう言わんばかりの笑みでアマンダは謝る。  
「・・・・・ご・・・ごめん・・・・」  
「どうして?、マレクが謝る必要なんて、何処にも無いんだから・・・」  
「でも僕・・・、アマンダの事・・・・突き飛ばして・・・、壁に・・・・・、ぶつけたりして・・・・痛くなかった・・・?」  
心配するマレクに、アマンダは無事を主張する。  
「大丈夫よ、私これでもXATの隊員だったのよ、これくらい、どうってことないわ」  
マレクはアマンダの無事を知り、ほっとしたのもつかの間、アマンダはさらにマレクを驚かせる言葉を発した。  
「ねえ、マレク・・・、貴方、私の事おもって・・・・オナニーしてるでしょ?」  
図星だった。だが正直に話したら、それはそれで激しく怒られるかもしれない。そう思ったマレクは、いけないと  
思いつつも、嘘を言ってしまった。  
「し・・・してないよ・・・そんな事・・・」  
「本当に・・・・?」アマンダが追い討ちをかける。アマンダの尋問と、嘘をついた罪悪感が、マレクの胸に  
重く圧し掛かった。  
「ほ、本当に・・・、してないよ・・・・、第一・・・、可笑しいよ・・・・、血は繋がってないけど・・・・アマンダ  
とは姉弟なんだし・・・・・姉弟でオナニーするなんて・・・・変だよ・・・、変体のすることだよ・・・」  
マレクの口から出た言葉は、まるで自分自身を戒めているように発せられた。マレク本人も、そのつもりで言った。それを  
聞いたアマンダは溜息を一つ吐き、口を進めた。  
「そう・・・・、じゃあ、私って・・・変体、なのかな・・・?」  
その言葉に、マレクは心臓が飛び出すかと思った。まさかアマンダが自分の事を思ってオナニーだなんて、考えもしなかった。正直、嘘で  
あって欲しいと思った。女性のオナニーは雑誌で見たことがあったが、写真の艶かしい女性と同じ事を、あの  
優しいアマンダがしているだなんて、想像もしたくなかった。しかも、自分がオカズに使われているだなんて・・・・、マレクが  
抱いていたアマンダのイメージが、音を立てて崩れていった。半ば放心状態になったマレクの銀髪を、アマンダは撫でながら言う。  
 
「ビックリしたでしょ?、マレク、貴方の言うことは私、極力信じるつもりよ、でも嘘をついても、後が辛くなるわ、だから・・・  
、言いたくなったら、いつでも言って良いのよ、私、まってるから・・・」  
アマンダの包容力と、心の広さに、マレクは嘘をついた事を後悔した。そしてマレクは、その罪悪感に打ち勝つため、アマンダに  
事実を打ち明けることを決意した。  
「ア・・・、アマンダ・・・・、僕・・・アマンダで・・・オナニー・・・・してたんだ・・・ごめん・・・」  
マレクは蚊の泣くような声で正直に話した。  
「どうして、貴方が謝る必要があるの?、私も同じ事・・・していたのよ」  
「僕・・・嘘ついて・・・・アマンダの事・・・・変体だなんて・・・言って・・・自分も同じなのに・・・」  
肩を震わせて謝るマレクを見たアマンダは、また一つ溜息を吐いた。  
「マレク・・・私嬉しいわ、ちゃんと正直に言ってくれたから・・・・」  
アマンダの優しい一言に、マレクはやっと気を落ち着かせる事が出来た。  
「それにしてもアマンダ、どうして僕がオナニーしてるって思ったの?」マレクはアマンダに訊いた。  
「私・・・・見たのよ、マレクがオナニーしている所」  
気付かなかった。マレクは自分がオナニーしてる事は、姉にはバレていないとおもっていたからだ。  
「それって・・・何時の事・・・・?」マレクが時期を聞く。  
「マレクが中学校に入ってからのことかしら・・・・私が水を飲みに起きたら、マレクの部屋から私を呼ぶ声が聞こえたの・・・・、部屋  
を覗いて見たら、貴方が私の名前を呼びながらオナニーしていたの・・・・、でも・・・・、その後のマレク・・・・・、泣いていたわ・・  
・・・」  
たしかにそうだった。いけないと思いつつも、アマンダの豊満な肢体を思い浮かべながらマレクはオナニーしていた。だが快感の  
後は、強い罪悪感に苛まされた。妄想とはいえ、大好きなアマンダを汚してしまった。それがマレクにとってとても辛かった。  
そうと知りつつも、何度もアマンダでオナニーする度に、快感の後に深い、絶望感にも似た感覚が襲った。姉をオカズにオナニーだなんて、誰にも  
言えない、そんな孤独感が、苦しみを倍増させていた。  
「アマンダは・・・・僕がオナニーしてる所見て・・・・嫌だった・・・・・?」  
マレクの問に、アマンダはゆっくりと首を横に振った。  
「全然、嫌じゃなかったわ、むしろ・・・嬉しかった・・・・マレクが私の事、こんなに思ってくれてるなんて・・・・」アマンダは頬を  
自身の髪の毛と同じ色に染めて言う。  
「でもアマンダ・・・・、どうして僕なんかで・・・・・オナニーしてたの・・・・?」  
「ぼ、僕なんかって・・・・」  
アマンダの説明を無視し、マレクは話を進める。  
 
「だって、僕はアマンダより10歳も年下だし・・・あの時の僕なんて、背も低かったし・・・・弱虫だし・・・・アマンダみたいな女の  
人は、もっとかっこいい男の人がいいと思って・・・・僕なんか・・・相手にしてもらえないって思って・・・・・」  
「『僕なんか』じゃないわ、だってマレクったら、中学生になってから少しづつかっこよくなって・・・・・顔は前から可愛いと  
思っていたけど・・・・・五年も経って・・・こんなにかっこよくなっちゃって・・・・まさか私が10歳も年下の男の子に  
恋するなんて・・・・こんな事・・・・誰にも言えなかったわ・・・」  
それを聞いたマレクは、自分は決して孤独ではない事を感じた。アマンダも、誰にも言えない、そんな苦しみを抱えて、もがいていた。  
さっきまで恥ずかしそうな顔をしていたアマンダだったが、すぐに目を細め、あの優しい微笑を浮かべた。  
「でも・・・・正直に言っちゃったら、何だかスッキリしちゃったね・・・・・」  
言われてみればそうだった。さっきまで重く心に圧し掛かっていたもやもやが、全て取り払われたような気がした。そんなマレクをアマンダ  
は、色っぽい声で誘惑する。  
「マレク・・・・私のおっぱい、触ってみたい・・・・・?」  
今更嘘をついても仕方ないとおもったマレクは、素直に「うん」と首を縦に振った。  
「そう・・・・だったら・・・私のお願い・・・・聞いてくれる」  
「お願いって?」  
「私の事・・・・・『お姉ちゃん』って、呼んでくれないかな・・・・・?」  
「どうして・・・・?」  
「だって・・・マレクったら私の事、いつも呼び捨てにしてるじゃない、私ね、一度でいいからマレクに『お姉ちゃん』って  
、呼ばれてみたかったの・・・・」  
マレクは顔を真っ赤にし、アマンダの目を見つめた。  
「・・・・お・・お姉・・・ちゃん・・・・」  
初めての為、緊張と興奮で声が震え、ぎこちない呼び方となった。しかしアマンダはマレクの小さい顔を両手で包み込み、笑顔を見せた。  
「合格・・・・よ・・・」  
アマンダが唇を尖らせ、顔を近づける。だがマレクは、それを拒否するかのように目を背けた。  
「・・・・どうして・・・?」アマンダは残念そうな顔で理由を聞いた。  
「だってアマンダ・・・僕、融合体なんだよ・・・キスなんてしたら・・・アマンダが融合体になっちゃう・・・・」  
マレクの言ったことは、アマンダもよく知っていた。  
 
「・・・・マレクは、私が融合体になったら・・・嫌?」  
「嫌って言うか・・・・好きな人を融合体にしたいだなんて・・・普通思わないよ・・・・」  
その通りだ。愛する人を融合体にしてしまう、それは融合体故の悲しき定めだった。だがアマンダの心は決まっていた。  
「マレクの気持ちは解らなくもないわ、少し、私の話、聞いてくれる?」マレクはこくり、とうなずいた。  
「私ね、マレクが融合対になったって知ったとき、すごく怖かった、取り返しがつかない事になったら、貴方を殺そうとも思ったわ。でも  
、融合体になったヘルマンを見て思ったの、例え体は違っても、心があれば、その人はその人のままだって。ヘルマンは最後までヘルマン  
らしく勇敢に戦って、逝ったわ・・・。だからマレクも、融合体でも心があれば、貴方はマレクのままなのよ。私はこの体が融合体に  
なっても、私は私のままでいるつもりよ、後はマレクの判断に任せるわ」  
マレクはアマンダの優しい眼差しの中に、強い意志を感じた。アマンダは人間の身体を棄ててまで、マレクを愛そうと言うのだ。これほどまでに  
深い愛に満ちたアマンダを見たのは初めてだった。彼女なら・・・・、マレクの心は固まっていた。そしてマレクは、アマンダの、その  
小振りながらも厚みのある唇にキスした。アマンダは嬉しさの余りマレクの後頭部を優しく撫でる。キス、とはいっても唇同士が軽く  
触れ合う、いわゆる『フレンチキス』であったが、マレクにとってはファーストキスであり、相手が出会った時から憧れていたアマンダだけ  
あって、マレクは嬉しさの余り飛び上がりそうになった。  
やがてアマンダは唇を離すと、パジャマのボタンに手をかけ、一つずつ外して行く。上着を脱ぐと、黒のブラジャーに包まれた白い乳房が現れる。  
ブラの黒が、肌の白さをより一層引き立てていた。そのブラも外され、椰子の実のようなたわわな柔乳がゆさっと揺れた。そしてアマンダは  
仰向けにゆっくりと倒れる。それでも巨大な膨らみは形を保っていた。  
「マレク・・・・触って・・・・」アマンダが優しくも色っぽい視線を送りながら誘う。マレクは大きな果実に手を置く。最初はマレクは乳を  
揉まず、表面を撫でるだけだった。  
「お姉ちゃんのおっぱい・・・・・すべすべ・・・・」  
「どうしたの?、揉んでもいいのよ?」  
「え・・・、あ、ち、違うんだ、お姉ちゃんのおっぱい、すべすべしてるから・・・つい・・・」  
乳房の丸みに手を這わせているだけのマレクに、アマンダは揉むように催促する。マレクは試しに、右の親をそのマシュマロのような柔肌に  
めり込ませる。すると、何とも言いがたい不思議な物を感じた。何処までも指が沈んで行きそうにも感じた。次は思い切って全ての  
指をめり込ませた。  
 
はあっ・・・・あうぅぅぅぅ・・・んん・・・・」アマンダが快楽に甘い悲鳴を上げる。驚いたマレクは咄嗟に指の動きを止めた。  
「お、お姉ちゃん・・・・何・・?、今の声・・・」  
「マレク・・・今のは気持ちよくて出た声よ・・・・だからもっと、貴方の好きにして・・・・」  
それを聞いて安心したマレクは、今度は五本の指で乳肉をゆっくりと揉む。その度に肉が指の間から浮かび上がり、血管が浮き出る  
程の白い肌は、温度を上げていった。オルガンを弾くかのように指を動かすと、アマンダの「あっ・・・あっ・・・」という小さな  
喘ぎ声が聞こえた。最初は快感に悶え、眉間に皺を寄せたりしていたアマンダだったが、何時しかその表情からは力が抜けており、  
その乳房の如く柔らかな表情へと変わっていった。その表情を見たマレクも、力が抜けるような感覚を覚えた。そしてマレクはゆっくりと  
前へ倒れこみ、アマンダの髪と同じ色をした乳首を口に含んだ。  
「あんっ・・・・」生暖かい舌の感触に、アマンダが声を漏らす。最初は口の中で転がしたり、舌で押す程度だったが、そのうち乳首を口の  
奥へと引きずり込みかのように吸う。アマンダは快楽に喘ぎながらも、マレクの背中と頭を撫でていた。  
「あっ、あん・・・、あっ・・、いい、いいよ・・・」まるで赤子をあやすかのように、乳首を吸うマレクの姿は、アマンダの母性本能を  
掻き立てていた。  
やがてマレクは乳首から口を離し、自分にとっての愛情の塊とも言える乳房を枕のように顔を押し付けた。  
「マレクったら・・・赤ちゃんみたい・・・・・」  
「赤ちゃんみたいな僕は・・・・嫌・・・?」マレクが不安げな瞳で見つめる。それがまたたまらなく可愛くて、保護欲を鷲掴みにした。  
「そんなことないわ、お姉ちゃんはそういう所、可愛くて大好きよ」マレクを抱く腕に力が少し入る。マレクの表情も少し明るくなり、再び乳首を吸い  
始めた。今度は左の乳首を吸いながら、右の乳を揉む。徐々にアマンダの呼吸が浅くなった。もうほとんど口呼吸の状態だ。荒い息でマレクの  
名を呼び、喘ぐ。それに伴い、乳首も固さを増してゆく。固まった乳首の舌触りが快感になる。次の瞬間、アマンダの体が  
軽く痙攣を起こし、体からくた〜〜っ、と力が抜けていくのを感じた。  
「・・・・お姉・・・ちゃん?」  
「はあ・・・はあ・・・はあ・・軽く・・・イっちゃったみたい・・・・」  
色っぽくアマンダが言うと、マレクに顔を近づけるように指示する。そしてマレクの唇にキスする。今度はさっきと違い、アマンダの舌が唇を  
舐める。ぺろっ、ぺろっ、と、母犬が子犬の口元を舐める様に、愛おしい眼差しで。  
 

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