「ただいまー」  
アマンダが帰ってきた。  
最近のアマンダは帰りが早い。仕事をちゃんと定時までに終わらせているから問題ないっていうのはヘルマンの話。  
勿論、仕事が仕事だから、夜中に出て行く時もあるけど。  
無理してジョセフより早く帰ってきて、アマンダは台所に直行する。  
アルさん曰く、最近のアマンダの方が仕事がいいそうだ。  
ブラッドの恋人曰く、私生活が充実してれば仕事も上手くいくものなんだって。  
ふーん……  
「美しくないわ」  
エレアが僕の彫ったマリア像を評論する。  
ジョセフの真似をしてみたけど、上手くはいかないや。ジョセフってああ見えて意外と器用なんだな。  
「マレク、はかどってる?」  
サーシャが部屋に入ってきて、僕は慌てて彫ったマリア像を机の中に隠した。  
「木屑も隠さないと意味ないわよ」  
サーシャが笑う。  
ほんの気分転換なんだ。サーシャみたいに医者になろうと思ったけど、僕はサーシャみたいに頭が良くないし。  
そりゃ、頭が良くない分、もっと頑張らなきゃって思うけど……  
一人で言い訳を考えていると、玄関が開く音が聞こえた。ジョセフが帰ってきたのかな?  
 
「家に帰った時ぐらい、ニコリとしやがれっての!!なぁゲルト!!」  
あの声はヘルマンだ。  
ジョセフは帰り道でヘルマンとゲルトに捕まったらしい(正確にいうとゲルトもヘルマンに捕まったんだけど)  
ヘルマンはアマンダの作った料理を「うまいうまい」って誉めながら食べていた。  
うん、最近のアマンダの料理は前よりずっと美味しい。  
「ダメ、全然だめね。こんなに塩味を聞かせて、ジョセフの身体を壊したいの?」  
このエレアの小言のせいなんだけどね。  
ジョセフはアマンダとエレアのどちらの味方もせずに黙々と夕食を食べている。  
そんなジョセフに突っかかるヘルマン。ゲルトが宥めている。こんな困った顔のゲルトなんてみんな知らないだろうな。  
どっちの味方もしてないって言ったけど、サーシャがいうには料理を食べているってことはアマンダの味方なんだって。  
そういうの、よくないと思うな。アマンダにちゃんと美味しいって言ってあげればいいのに。  
そしたらサーシャが「ジョセフも昔はヘルマンぐらい騒がしかったのよ」って。ヘルマンみたいなジョセフ……想像できないや。  
 
夕食の後、ヘルマンはどこからかお酒を見つけ出して、なんだか宴会騒ぎになった。  
なんだか見たことの無いお酒で、けっこうアルコールが強いみたいだ。  
サーシャが「あれはシドウが置き忘れていったショウチュウ……」って。  
ああ、シドウとアマンダはお互いお酒が強くていい飲み友達みたいなんだ。  
ジョセフはお酒飲んでるところを見たことがないから、アマンダはそこらへん物足りなく思ってたりして。  
ヘルマンがXATの他のメンバーを呼び出したものだから、ホントにホームパーティになり始める予感。  
アマンダはホストだから甲斐甲斐しく持てなししなきゃって台所とダイニングを行き来しているけど。  
あ、いつの間にかジョセフも手伝っているし。……サーシャは働かないのかな?なんてサーシャを見たら、翠の目がキュインキュインしてた。威嚇?  
エレアは「うんうん」いいながらショウチュウにご満悦の様子。  
……あ、このおつまみ美味しい。え?ジョセフが作ったの?アマンダより料理上手だね!!……ゴメン、アマンダ。  
失言だった。あれは仕事の時のアマンダの目だ。得物を狩るときの肉食動物の目だ。  
 
メイフォンや、ブラッドや、その彼女のレーネさん、アルがやってきて、結構な広さの家でも狭く感じるぐらい。  
「ヘルマン、あんまり新婚さんの家にお邪魔するもんじゃないぜ」とブラッドは大人の意見。  
「そういう訳だから、マレクもはやく独り立ちしないとな」とアルさん。  
「ヘルマンはアマンダを獲られたからジョセフに嫌がらせをしてるのさ」とゲルト。  
「カッコワルイですね」トドメをさしたメイフォン。  
 
一時間後、「おまえら俺を仲間はずれにするなよ……」と背中を煤けさせてウォルフ隊長がやってきた。  
「隊長、もうお酒ありませんよ」「どうせなら買ってきてくれればよかったのに」「気が利かないですね」とフルボッコ。  
そこにメイフォンから誘われたシドウが酒樽を持ってやってきたから、流石って話。  
エレアが「そろそろ子供は寝る時間よ」なんて言い出す。そういうエレアだって子供じゃないか。「レディーに年を聞くのは美しくないわ」  
酔っぱらったレーネがブラッドに口移しとかし始めて、アマンダが僕の目をふさぐ。  
夜にもっと凄いことをジョセフとしてるじゃないか。今更すぎるよ。っていうかお酒臭い。アマンダも飲んでる?  
 
結局シラフなのは僕とジョセフだけ。正直ジョセフには同情するよ。  
でもジョセフはなんだか楽しそうなんだよね。なんだか損な性格。  
え?冷蔵庫の中身が無くなった?買い出しに行ってくるの?ご苦労様……  
ガルムのエンジン音が遠くなってきた頃、入れ違いに場違いな蹄の音が響いた。  
どうみてもザーギンです。本当にありがとうございました。  
 
で、帰ってきたジョセフは大根でザーギンを殴り始めるし、酔っぱらったヘルマンも混じって乱闘になり始めるし、  
シドウの持ってきた樽の中からスノウが出てくるし、スノウがジョセフにモーションかけるとアマンダが不機嫌だし  
ホントにどうにかしてよ、コレ。収集がつかないんだもん。  
 
でもね、ホントに大変なのはみんなが寝静まった後なんだよ。  
アマンダとジョセフがさ、うん、わかるだろ?  
僕の身にもなってよ。義理の姉さんと兄さんが、その、そういう事してるんだよ?  
だいたいさ、アマンダから誘っておいて「恥ずかしい」とか無いよ。恥ずかしいのはコッチだよ。キスにどれだけ時間かけているんだよ。  
ジョセフって、あの平然とした感じで、すっごく直球なこと言うんだ。そしたらアマンダも燃え上がってさ、もうワインが葡萄ジュースになるぐらい甘い。  
そして長い。  
アノ時のジョセフは、もう職人だよ。前技で何回アマンダをイカせるんだって話。もうアマンダはトロトロになる訳。  
汗と牝の臭いで部屋がむんむんするんだ。挿入すると、アマンダのおっぱいが、こう、ババロアみたいにグニョグニョブルンブルン震えて、  
汗の飛沫がこっちに飛んでくるんだから。ヤるなら自分達の部屋のベットの上でして欲しいよ。  
いつもとなりの部屋から、喘ぎ声をか聞こえてくる比じゃないよ。なんで他の人は起きないんだろう。お酒ってスゴイな。  
それで二人が達すると、一段落なんだけど、アマンダはもう足腰立たないのにジョセフを求めてさ、結局アマンダが気絶するまで終わらない。  
それで、後始末はジョセフが黙々としてる。ちょっと涙がでるよ、あの光景は。  
 
うん、まあ、そういう訳だから、なんかもうこのゲームじゃ満足できないっていうか、だからヨハンにあげるよ。  
……そんな目で見ないでよ。  
うん、じゃあ明日学校で。  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「マレクは起きたくないのよ。夢の中が幸せだから……」  
 

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