普段あれだけ煙草や酒にまみれているのに、肌は滑らかで柔らかくて、暖かった。  
日本で上司に無理矢理連れて行かれた風俗だって、もっと酷かったのに。  
そう、ちょうど今と同じ格好。太股に挟まれて、股間に鼻先を押し付けている形。  
風俗の時は清潔に洗われていて全部剥き出しだったけど、やたら臭くて嫌で仕方なかった。  
下着を着けたままのレヴィからは、汗とカビとラム酒の匂いがする。  
本当はこっちの方が臭いはずなのに、堪らなく心地良い。  
鼻を段々と強く押し付けて、柔らかい素肌に深く埋めていく。  
唇に触れたシルクの下着が、薄く湿っている。  
太股と黒革のドレスに囲まれた狭い空間に、レヴィの匂いが充満していた。  
   
「嬉しいか?ロック」  
   
ああそうだよ嬉しいよ。本物のレヴィの匂いだ…想像していたのと同じ、いやもっと良い。  
深呼吸を繰り返しながら、執拗にショーツの股間を舐める。  
写真の中で微かに見えていた物に、今実際に触れ、舌で味わっている。  
シルクの滑るような布地越しに、硬い陰毛とヴァギナの形が舌に触れる。  
どうでも良い風俗の女じゃなく、俺にとって一番大事な女の物。  
   
「レヴィ、レヴィ…」  
   
自分の下半身を疎かにしていたせいで、ペニスがきつくて仕方がない。  
でも今は脱ぐ手間も煩わしい。  
ひたすらに求めていた。体温と匂いと鼓動の伴う肉体を。  
ズボンの生地を突き破ろうとする陰茎と同調して、舌先を何度も割れ目の中心に突き立てる。  
冷静に考えればさっさと素っ裸になってしまえばいいのに、そういう方向に頭が働かない。  
とにかくこの場で全てを味わいたかった。感じたかった。  
 
「ふん。まるでバカ犬だな。噛み付いたら離れねえ」  
「…ああそうだよ。だってずっと欲しかったんだ」  
「頭ん中でピンクのレースをせっせと編んでいた癖に、今まで何もしなかったってのか」  
「悪いか」  
「悪かねえさ。とんだヘタレ野郎だがな」  
   
髪の毛が掴まれる感触。  
目の前の白い恥丘が遠ざかり、あっと思った瞬間に自分の頭も引っ張られる。  
股間に顔を押しつけた形のままでベッドの上を引きずられていると分かるのに、しばらく時間がかかった。  
その間に、俺自身がすっかり純白のステージの中心に引きずり込まれ、レヴィはそれを捕まえた立場で枕の辺りに居座る格好になった。  
つまり、俺はショーツの罠に引っ掛かった獲物って事だ。  
しかし、それでもシルクの餌から離れられない。  
それどころかキスや舐めるだけでは足りずに、遂に直に口を付けて吸い始める。  
実際の味がどうかなんてどうでもよかった。どうせ脳内で変換されているから。  
物凄く、甘くて美味しい。  
   
「そうだよなぁロック。男ってのはみんなそうだ」  
   
そんな言葉を吐きながら、掴んだ髪を捻り上げて俺の顔を引き剥がす。  
強引に裏返すようにねじ曲げられ、声も上げられない。  
首がどうにかならないようにするには身体全体を動かすしかなく、結局そのまま仰向けに寝転がってしまう。  
   
「どうせなら、もっと豪勢に食わせてやるぜベイビー」  
   
何が起こるのかは分かっていたから、抵抗はしなかった。  
 
「どうだ、具合の方は?」  
   
レヴィの匂いがする、と言おうとしても言葉にならない。  
鼻と口を完全にレヴィの股間に塞がれ、呼吸する度に体温と体液で湿った空気が入ってくる。  
顔に押し付けられた柔らかい体重が心地良い。  
革のスカートが電球の光で妖しく輝き、彼女の身体と共に俺の顔の上で揺れる。明らかに不自然な、作為的なリズムで。  
顔面騎乗なんてマニアックな体位が、こんなにツボにハマるなんて思いもしなかった。  
   
「今のお前はさしずめクッションだな。ケツに潰されて臭い匂いを嗅ぐのが存在意義だ。奴隷以下、人間ですらねえぜ」  
   
ああそうだよ、今の俺、レヴィの物になっている…  
   
そう思った瞬間、股間に鋭い打撃が降ってきた。  
見えなくても、それがレヴィの振り下ろした脚、あの頑丈で艶めかしいブーツの踵だと感じる。  
全身に電撃が走り、下半身が勝手にブリッジみたいに反り返る。  
訳の分からない叫びをレヴィの股間にぶつけながら、宙に向かって射精した。  
服はそのままだから、精液は全てパンツとズボンに染みこんでしまった。  
だけど、そんなのはどうでも良い。  
脱力した腰がベッドに落ちて、脳味噌が快楽の水に浸される。  
理屈じゃない。レヴィの手で無条件に脳内物質の栓を開けられているみたいだった。  
   
「あーなんつーか…正直想像を超えていてフォローできねえなこりゃ」  
   
返事の代わりに音を立ててヴァギナを吸った。  
何を馬鹿にされてもコケにされても構わない。  
レヴィの手で施される快楽が全てだった。  
   
「OK、OK。次は女王様の御慈悲って奴だぜ」  
   
レヴィの腰が浮き、俺のズボンのベルトが外される感触が伝わってくる。  
光が少ないせいか思いの外に手こずるらしく、馬乗りの姿勢が四つん這いになっていた。  
その隙に、俺はワイシャツとネクタイを自分の手で脱ぎ、レヴィの腰に手を伸ばして、左右の結び目を同時に解いた。  
   
紐で固定されていたショーツが、色んな液で濡れた重さでだらしなく俺の腹の上に落ちてきた。  
 

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