細い形のよい眉や唇は、しかし今や歪なカーヴを  
描き、少女の心の内を色濃く滲ませていた。  
 
まだ幼さを充分に残したその顔立ちからは、まだ  
少女の年齢が十を幾らか越えた程度に過ぎない  
ことを窺わせる。  
 
その伸びきってはいないが、白磁を思わせる美しい  
指先が握っている「モノ」は、赤黒い肉塊だった。  
 
「さぁグレーテル…今度はその可愛い小さなお口で  
おじさんのを清めておくれ…」  
「……はい…」  
 
四十代半ばと思しきその男が発する下卑た言葉に  
呼応するかのように、腰まで届く銀髪の持ち主である  
少女は、血や脳漿の飛び散った床の上に跪くと徐に  
小さな口を開いて、異臭漂う陰茎を頬張っていた。  
 
「はむうっ…んんっ…んぐ」  
「おお…この前よりも上手くなったねグレーテル…」  
男の眼には暗い陰影と狂気の兆しが浮かんでいる。  
 
 
ルーマニア西部パナト地方の中心都市ティミショアラ。  
 
かつてルーマニア革命の引金となった、その地方での  
暴動の記憶も市民からは忘れられていこうとしていた。  
 
だがそのティミショアラの名も無い通りに面した古い  
アパートの地下室で行われている出来事こそ、その  
革命及びチャウシェスク時代に執られた政令707号  
――――多産政策の果てに捨てられた孤児達の  
避けようの無い悲劇に相違なかった。  
 
 
「んむう〜っ、んぐぐ…っ!ぷはあっ!」  
下手をすれば自分の祖父ほども年の離れた男の  
陰茎を、少女は必死でその口に収めようとしている。  
 
親の顔どころか名前すら知らないであろうその少女は、  
このキッズポルノ業者に拾われてもう長い。  
 
だがとうに時間の感覚を失っている少女には、もはや  
自分の年齢すらよく判らなくなっていた。  
 
地下室の外ではまだ粉雪が舞っている。  
 
暖房が完備されている訳ではないこの部屋で、  
唯一暖かさを感じさせるのが、まだ幼い少女の口の  
中だった。  
 
男は存分に少女の口内で暖をとると、不意に  
尿意を感じ、小さく身震いをした。  
「…さっき払った金、あれはオプション料金も入って  
いるのか?」  
男はビデオ機材を扱っている若い男に尋ねた。  
 
「ええ…お客さんはいつもドイツ・マルクで支払って  
下さいますからね…これがルーマニアの金銭…レイ  
だったら上乗せするところですが――――」  
「では構わんのだな…」  
 
男は少女の薄桃色の舌を掴むと、その上に己の  
萎んだ陰茎を無造作に乗せた。  
「さぁ、グレーテル…おじさんは用を足したいんだ…  
わかってるな?」  
少女の頬に絶望が奔り、やがて諦観が浮き上がる。  
 
「はい…どうか…おじさまのおしっこを…飲ませて下さい」  
目を瞑り、大きく口を開け、放尿の瞬間を待つ。  
 
目尻に小さな光る粒が見えたが、其れは男の嗜虐を  
煽る為のスパイスにしか成り得なかった。  
 
 
饐えた臭い漂う老朽化したアパートの地下室から、  
微かに水音のようなものが響いてくる。  
 
其れは誰もが聞き覚えのある音…一定の高さから  
放たれた液体が水面を叩く音―――排尿音だった。  
 
「あ…ぶっ! ごほっ、げええっ…!」  
 
初めて小便というものを口にした少女は激しく噎せ、  
何とか飲み込んではいるものの、いつも飲まされている  
白濁液を遥かに超える量である為に、その半分以上を  
既に床に零してしまっていた。  
 
其れは結果的にアンモニア臭を放つ黄褐色の飛沫が、  
剥きだしになっている少女の、優柔な白い太腿を汚す  
事になるのだが、最早少女に其処まで考える余裕は無い。  
 
「むおっ…グレーテル、ほら、零すんじゃないっ!」  
声高に叱責すると、男は緩んだ腹の肉を揺すりながら  
己の小便を、美しい裸体を晒したまま眼前に跪いている  
幼い少女の小さな口の中に、次々と注ぎ込む。  
 
先刻からグレーテルと呼ばれている少女は、自分が  
遂に便器と成り果てた現実に、その大きな深い澄んだ  
瞳を暗灰色で濁らせ始めていた。  
 
その虚ろに中空を見つめる瞳のすぐ下に在る、小ぶりで  
愛らしいつくりの口は、今や黄褐色の架け橋で男の  
醜悪な亀頭と完全に繋がっている。  
 
薄闇の中に浮かび上がる繊細な白い指先は、溺死者  
の其れを思わせる必死さで床板を掴んで離さない。  
「そうだ…飲め、まだまだ出るぞ…!」  
 
「んっ…んぐぐっ!おぶ…っ、ん…ぐっ」  
珊瑚色に輝く唇の端からは小便の飛沫が舞い上がり、  
少女の円やかな頬や長い睫に降り注いでいた。  
 
膨らみ始めたばかりの二つの白い丘陵に、黄色い川が  
幾筋も流れる様は、機材を操る男の腰にも卑賤の魅惑を  
閃光じみた速さで奔らせ、強引なまでの勃起を促す。  
 
「んぐぐうっ…!ごふうっ!おええっ…」  
 
此処に来る前に酒場にでも寄ってきたのか男の放尿は  
2分以上にも及び、その間、少女の可愛らしい口からは  
下品な水音が絶えず漏れ続けていた。  
 
「ふう〜っ…」  
最後の一滴を、膝立ちの姿勢で今や人間便器と化した  
幼い少女の口の中に男は搾り出す。  
「ああ…がっ、あ、あ…おっ…!」  
 
全身を小刻みに震わせながら汚辱に耐えているその姿は、  
却って少女の聖性を際立たせ、闇の中で静謐な輝きを  
放っていた。  
 
「…よし、まだ最後の其れは飲み込むんじゃあないぞ」  
醜悪な笑いを頬に貼り付けたまま、男は細緻な造りの  
少女の華奢な顎を持ち上げる。  
 
相変わらず低い室温が、少女の開けたままの口から  
立ち昇る小便の湯気を鮮明に白く映し出していた。  
 
「あ…がっ!…うあ…あっ!」  
男の命じた通り口内に小便を溜めたままの少女が  
苦しげに呻き声をあげる。  
 
未だ瑞々しさを失っていない桜色の唇の端からは、  
だらだらと男の汚液が溢れ出して自らの股間――  
まだ淡い産毛すら生えていない―――に溜まり、  
恥辱の三角州を形作っていた。  
 
「よし、飲め、グレーテル。ありがたく頂戴するんだ」  
 
「んぐ…っ、んっ、んぐうっ…ごくっ……」  
許可が出るのと同時に、少女は男の排泄した汚液を  
躊躇せず飲み込んでゆく。  
 
その度に真白い無垢な喉が上下に蠕動し、それに呼応  
するかの様に時折下腹部が痙攣していた。  
 
「ふははっ、どうだ? 精液とどちらが美味い?」  
黴臭い地下室内に男の哄笑だけが横溢している。  
 
「…ど、どっちも美味しい…です」  
 
あらゆる命令に首肯する事こそが生き延びる術だと  
既に少女は理解していた。  
 
目が覚めてから此方、何も食べていなかった少女の  
胃袋は、男の排泄した小便だけで満たされ、その  
白い腹を僅かに膨らませている。  
 
「げ…ふっ……!」  
 
咄嗟に掌で口元を押さえようとした少女を、しかし  
身体は裏切り、脆くも男達の前に醜態を晒させていた。  
 
自らが吐いた息のあまりのアンモニア臭に、少女は夥しい  
虚脱を覚え、犀利だったその瞳は俄に濁りを増してゆく。  
 
背中から男達の嘲笑が浴びせられたが、最早少女の  
鼓膜を震わせることはなかった―――。  
 
 
凄まじい勢いでホースから迸る水流の塊が、壁際に  
立ち尽くす少女の裸身を叩き続けていた。  
 
「ひいっ! いやああっ…ああっ…!」  
子供特有の高い体温故に、美しい白桃色を示して  
いた少女のきめ細かな肌が、忽ち青白く変移していく。  
 
小便臭いのを何とかしろ――――客の注文に応じた  
機材係の若い男が選択したのは、ホースで『清掃』を  
手早く済ませることだった。  
 
「…あうぅ…ひうっ! あ…わわっ…」  
カチカチと絶え間なく漏れる、小さな歯鳴り音。  
 
濡れそぼった少女の肌は、無残に粟立っている。  
小さな平たい胸の頂点に在る薄茶色の乳首も、  
その扱いに怯えているかの様に硬く尖っていた。  
 
「くふっ…ぐふっ……ふはははっ!」  
男は少女の凄惨な姿を鑑賞しながら、身を捩って  
笑いだした。  
 
ここ数年で経験したことが無い程の激烈な疼きが  
股間で爆ぜ、禍々しい形をとって表れていたからだ。  
既に何も纏っていない下半身の中心から、暴力的な  
本性を漲らせた肉塊が血管を浮かび上がらせている。  
 
「ひっ…!」  
薄闇の中でも判るほどに少女の顔に怯えが奔った。  
 
「…さぁグレーテル、こっちへおいで…」  
 
まだこの部屋に入って男は一度も精を放っていないのだ。  
怒張は弧を描いてそそり立ち、亀頭は大きく横に向かって  
張りだしていた。  
 
弱々しい足取りで、少女は悠然とソファに腰掛けている  
男の方へと歩み寄る。  
 
俯き加減な少女の瞳に在るのは、諦めの色彩だけだった。  
 
「さぁ中身を見せるんだ…お前の奥の奥まで!」  
 
男の爛れた瞳からは、腐臭すら漂ってきそうな気配がある。  
 
おとなしく言われるままに、少女は自分の細い指先を股間に  
あてると、柔らかな裂け目を左右に広げ始めた。  
 
男からよく見えるように、腰を前に突き出すのも忘れていない。  
広げられた薄い肉片は程よく発達していたが、その周りに色素の  
沈着は殆ど見られず、少女の幼さをより強調していた。  
 
「違う! もっと思い切り広げるんだ!」  
「は…はいっ……」  
 
羞恥で頬を紅く染めながら少女がより大きく広げると、膣口が  
僅かに開き、内側の濃い桃色をした膣壁までが覗ける。  
 
前回見た時とほとんど変わりないその状態に男は満足した  
のか、鷹揚に頷いた。  
「よしよし…じゃあ次はおじさんの上に乗りなさい」  
男の声には猥雑さと恫喝を混ぜ合わせた色が滲んでいる。  
 
少女は裸足でソファーによじ登り、朦朧とした表情で自分の  
股を大きく開くと、徐々に腰を落としていった。  
「くううっ…んぅっ…!」  
 
男の亀頭部分が直接、少女の秘裂に触れたが、其処は  
未だに水滴を残す湿った肌と違い、全く濡れていない。  
 
「ん…? 何だ、乾いているぞグレーテル!」  
嫌悪を露わにして吐き棄てるように叱責した男は、少女の  
身体を軽々と持ち上げて自分の膝の位置まで運ぶと、その  
股間に、節くれだった太い指を乱暴に潜り込ませていた。  
 
「いぎっ…!」  
 
悲鳴と身体の硬直は同時だった。  
不快と嗜虐の皺が男の眉間に刻まれる。  
 
男は少女の膣に指を第二関節まで埋めたまま、秘唇の  
中心にある小さな突起を撫であげ始めた。  
 
膨らみ始めたばかりの固さが残る二つの乳房も、男は空いた  
方の掌で包み込んで揉みしだく。  
 
「くうっ…んんっ…!」  
少女は目を瞑って砕けそうになる腰に何とか耐えていたが、  
男の指の腹が乳房の丸く膨らんだ部分をこする動きには、  
思わず甘い吐息を漏らしてしまう。  
 
「んぁあ…っ…」  
 
手入れのされていない無骨な爪の背が、つんと立った少女の  
可憐な乳首を弾いていた。  
「ひぐぅうっ……お、おじさまっ…ダメえっ…!」  
 
漸く、とろりとした液体が膝頭を濡らすのが男にもわかった。  
其れは、少女の膣から流れ出してきた淫靡な液体だった。  
 
「おお…漸く湿ってきたな…これなら…」  
おもむろに男は両手を伸ばすと、まだ未発達な少女の幼い  
乳房を鷲掴みにして、屹立した陰茎を膣の入り口にあてがう。  
更にその姿勢のまま、思い切り己の腰を下から突き上げていた。  
 
「はぐうぅうッ…!!」  
亀頭が最も深い場所に届いているのが少女にも判った。  
「はぁっ…ひぃあっ…お、奥まで届い…ふああッ…!」  
 
仔細に見れば、約数センチ、少女の秘裂に陰茎が埋まり  
きれていないのが判る。  
「あっ…ふああっ、ふ、深いッ…!」  
 
「これだよ! 素晴らしい! ウチの古女房や商売女じゃあ  
まず味わえない!…ああ、わかるか、グレーテル。私のモノが  
お前の一番奥にまで届いているのが! しかも…まだ私には  
余裕がある――――最高だよお前の穴は!」  
 
肉付きの薄い少女の下腹部が、僅かな膨らみを見せている。  
「ここだな?…くははっ!」  
擦る指先で確かに己の亀頭がその内側に存在しているのを  
感じとると、男は爛れた笑顔を浮かべながら、両手で少女の  
腰を掴み直し、容赦なく烈しいピストン運動を再開した。  
 
「ひぎいっ!…痛っ…はひっ…!」  
少女は少しでも痛みから逃れる為に、男の肩に手を掛けて身体を  
持ち上げようとしていたが、楔の様に少女の膣に打ち込まれている  
極太の陰茎がそれを許さない。  
 
「おじさんにはね、きみと同じくらいの歳の娘がいるんだよ…」  
歌うように喋りながら、男の上下運動が次第に加速していく。  
 
「それはもう可愛らしくてね……余りにも可愛いものだから、  
何度か悪戯をしてしまいそうになったり…ふふっ」  
まだ膨らみかけの少女の乳房が、激しく上下に揺さぶられる。  
 
「もう我慢も限界にきていた処に、グレーテル…」  
膣口がめくれる程まで引き抜くと、今度は支えていた少女の腰から、  
唐突に男は手を離していた。  
 
弾みで深い位置まで、ずるりと男根が滑り込む。  
 
「――――っ!!」  
臍の裏側まで届いた亀頭が、少女の瞳孔を半ば強引に開かせた。  
「ふふっ……最近…漸く生理が来たそうじゃないか?グレーテル」  
「そ、それはっ…はぐううっ!」  
予告無しに男が突き上げると、まだ柔らかさを残す子宮口に先端が  
僅かにめり込んでいた。  
 
「さぁグレーテル…娘の代わりに、おじさんの子供を産んでくれ!」  
「ひっ、い…いやぁあっ!」  
少女の悲鳴が、男の脊椎に痺れるような快感を更に流し込む。  
 
「…おおおぅおっ!! 出るっ、出すぞっ!」  
 
男が吼えた。  
 
一拍おいて、少女の膣内が、炸裂した大量の白濁に穢されていた。  
 
「あぁあ!…あ…うあぁ…っ」  
「グレーテル、孕めっ! 私の子を孕むんだッ!」  
子宮の入り口にぶち当たる精に促され、膣壁が亀頭の傘に絡まり、  
少女の意思とは無関係に陰茎全体をきつく絞りあげていた。  
 
か細い両脚も、今は男の腰に力強く巻きつけられている。  
「んくうっ…! ふああっ……」  
目覚めと同時に飲まされる、非合法な薬が漸く少女の全身に  
廻りきったのか、虚ろな瞳には快楽を貪る炎が揺らめいていた。  
 
「おおっ! グレーテルっ、判るかっ? 種付けされているのが!」  
「…ああっ!は、はいっ、で…出てます…っ」  
抗うことを放棄した少女の表情は暗澹としている。  
「…何が出てる!?」  
「おじさまの…精子が、私の中に…どくどく…出て…います……」  
 
忘我の境地に入りつつあった少女は、男が伸ばしてきた舌にも応じ、  
次第に狂おしい喘ぎ声を漏らし始めていた。  
 
 
男は二つの白い尻肉を強く掴むと、凄まじい速さで腰を打ちつけながら  
再び少女の膣奥で射精を繰り返していた。  
男が十代の頃でさえ、此処までの連続した炸裂は経験が無い。  
 
膣から容赦無く送り込まれてくる快感と理性の狭間で、少女の意識は  
混濁の度合いを一層強めていく。  
 
「ああぁあっ! いくっ、い…いきますっ…!」  
 
遂に少女が陥落の証である嬌声を漏らした。  
 
羞恥が、プライドが、嫌悪が、均整のとれた精緻なつくりの肢体が、  
凛々しい眉が、希望が、禍々しい男の欲望で粉砕されていた。  
「ああぅあ…あひいいぃい〜っ!!」  
 
「ぬお…おぉおっ!!」  
獣じみた声で吼えると、男は足先を痙攣させながら精嚢に残っていた  
最後の白濁を、締め付けてくる柔らかな膣と幼い子宮に迸らせる。  
 
一部の隙もなく繋がっている筈の肉襞からは、白濁が溢れ出していた。  
 
「んあぁあ〜っ! イクっ! 私っ、孕まされながら…イッちゃうぅうっ!」  
 
少女は弓反りになって、男の眼前に白い喉を晒していた。  
 
「か…はっ、ぁああっ…凄いぃ…んあぁ…種付け…凄い、です……」  
少女の視線は空を彷徨い、可愛らしかった薄桃色の唇の端からは、  
穢れた涎が幾筋も溢れ出している。  
 
その灰青色の瞳からは、辛うじて残っていた微かな光が完全に  
喪われていた。  
 
 
――――――ブツッ。  
 
 
何かが、切れる音がした。  
 
 
 
「……これくらいで止めようよ、姉様」  
涼やかな声を室内に響かせたのは、少女と瓜二つの鮮烈な  
美貌を獲得している少年だった。  
 
その指先はTVモニターのスイッチに触れている。  
 
「まぁ、兄様。これからがいいところなのに」  
 
不満げに頬を小さく膨らませているのは、今しがたTVモニターの  
中で悲鳴をあげていた少女――――グレーテルだったが、全身を  
覆っていた陰鬱さは見事に霧散していて、代わりに燦爛たる華を  
その身に纏っていた。  
 
「だって長すぎるんだもの…僕、眠くなってきちゃった」  
欠伸混じりに少年――――ヘンゼルが呟く。  
「もう…ダメね兄様。この後がいいシーンなのに…私ね、  
大きい方まで喰べさせられたのよ、このおじさまに……」  
 
グレーテルと呼ばれていた少女が一瞥した先には、無様に  
全身を震わせながら、床に這いつくばっている男の姿があった。  
 
目尻や頬には、これまで過ごしてきた年月の残滓が醜くこびり  
ついている。  
もはや頭頂部にまで後退した髪には白髪が目立つ。  
衣服は剥ぎ取られたのか、何も身に着けてはいない。  
 
……そして両手脚首は、特大の釘で絨毯敷きの床に  
それぞれ縫い付けられていた。  
「ゆ、許してくれっ! 何でもするっ! 命だけはぁあっ…!」  
涎を垂らしながら哀願しているその姿には、先刻までの  
TVモニター内での大仰な匂いは欠片も残っていない。  
 
男の横には、年の頃十七、八の娘がやはり全裸で、しかし  
此方は何の縛めも無くただ床に転がされていた。  
 
聡明そうな顔立ちは、しかし恐怖のためか血の気を失って  
蒼白を湛えている。  
輝く黄金色の長髪も、乱雑に床に伸びていて、却って無残さを  
際立たせていた。  
 
「あら、私達、別におじさまを殺しに来たんじゃないわよ?」  
「………えっ?」  
「そうそう、僕等は仕事が早く終わったから、暇潰しに此処に  
立ち寄っただけなんだよ」  
「久しぶりの故郷だから、つい懐かしくなっちゃって…でもおじさまが  
あんな昔のビデオを持っていたなんて、正直驚き」  
 
ビデオデッキから取り出したテープを、グレーテルが指先で弄ぶ。  
 
「ちっ、違うっ…決して…他に売り捌こうとか――――」  
「ふ〜ん、でも姉様に対して代償は支払って貰わなくちゃ…ね?」  
男の弁明を遮って、少年が朗らかに囁く。  
「代…しょ……!?」  
「とりあえず、おじさんには姉様と同じモノを存分に味わって欲しいな」  
「――――!!」  
狂おしい程に見開かれた瞳は、少年の言葉を完全に理解した証左だ。  
 
「いやだわ、兄様。私が最近お通じ悪いのを知っているくせに…」  
羞恥で言い澱むことも無く、グレーテルは床の男を凝視しながら他人事の  
様に淡々と呟いていた。  
「ゴメンよ、そうだったね姉様……ねぇ、おじさん、そういう訳だから  
別のひとに頼むことにするけど、いいよね?」  
 
「べ、別の……?」  
呼吸を荒げながらも、男は問わずにおれなかった。  
 
「―――さぁこっちだよ、お嬢さん」  
ヘンゼルが掴んだのは先刻から床に伏して微動だにしない娘の  
波打つ金髪だった。  
「いっ! 痛いっ…!」  
「や、やめてくれっ! 娘だけは…リリだけはっ!」  
 
重なる親娘の悲鳴が聴こえていないかの様な機械的な動きで、  
ヘンゼルは籠めた力を些かも緩めずに、娘の髪を引っ張る。  
 
ぷちぷちという、微かな音と共に、リリと呼ばれた娘の頭皮から数十本  
単位で黄金色の線が引き千切られ、床の上にばら撒かれていく。  
「ひいいっ!…痛いっ、お父様っ! ひぎいっ…!」  
 
細腕の何処にそんな力が秘められているのか、少年は磔になっている  
男の方へ軽々とその娘を放り投げていた。  
 
「さ、判ってるね? リリちゃん。ビデオじゃ姉様がこのおじさんにおしっこを  
飲まされていたけれど、今度はキミがおじさんに御馳走するんだよ♪」  
「えっ…ええっ!?」  
「但し、大きい方。できなきゃ、二人とも其処で終わり…OK?」  
「―――!!」  
叱咤とは無縁の柔らかな口調で、死刑の宣告を娘の耳に届ける。  
 
「リリ…私は構わないから…おいで……」  
既に諦観が全身を支配している男は悄然と呟いたが、娘はそう簡単に  
割り切れるものではない。  
 
如何にビデオで父親の過去の悪行を見てしまったとはいえ、今迄の  
自分にとって、最愛の父だったことには変わりない。  
その父の顔に跨り、あまつさえその口に向けて排泄しろという。  
 
到底頷ける話ではなかったし、何より年頃の女の子が人前で排泄行為を  
行うこと自体が問題外だった。だが――――。  
 
「ホラ、おじさんも姉様と同じ美食家になりたいって言ってるよ?」  
リリの全身は、己の理不尽な死を予感して凄まじい震えに襲われていた。  
 
膝から下の激しい痙攣も全く止まらない。  
 
背後から、少年の斧が自分を狙っているのが恐ろしい程、良く判る。  
だが、娘は父親の顔の処まで行って其の上に跨ってはみたものの、  
其処で動けなくなってしまっていた。  
 
「す、すみません…やっぱり…わ、私にはできません! 許して下…」  
掠れた声で少年の方を向いて哀願しようとした刹那。  
――――唐突に、リリは腹部に熱い痛みを感じていた。  
「え…っ?」  
 
下腹部に真紅の線が一本、流麗に横に引かれている。  
その長さ、約二十センチ。  
 
 
…ボコッ……  
 
 
何かが溢れるような音が、娘の鼓膜を震わせた。  
 
「あら、やっぱり兄様お上手ね。斧の扱いは敵わないわ、私」  
鈴を転がすかのような天使の声で賛美する少女。  
 
下を向いた途端にリリは自分の腹が真横に裂けて、内側から  
軽快な破裂音と共に、腹腔圧で腸が次々と外に溢れ出てくる  
光景を目の当たりにしていた。  
 
内臓を殆ど傷付ける事無く、皮膚の表面だけを裂いた業は、  
無数の屍を築いてこそ到達し得る神の域だった。  
 
「ひぎいいっ! はぁひいいいいっ…!!」  
慌てて両手で押さえて腹腔内に腸を押し戻そうとするが、  
娘の力如きでは到底不可能なのは明らかだ。  
 
真冬の室内が、娘の腹部から立ち昇る血の湯気で忽ち  
白く曇っていく。  
「…あ…わ、わ…リリっ!……わぷっ…!」  
 
凄まじい量の血液が男の顔に降り注ぐ。  
「リリっ、リリ…っ!!」  
悲鳴を漏らす口の中にも容赦無く注ぎ込まれる血潮は、  
男の口内に鉄錆の味を存分に広げていた。  
 
「あぁ〜ダメだよ、せっかく丁寧に裂いたんだから」  
 
少年は爽やかな笑顔で、なだめるように娘の腹部に  
手を添えると、まだ戻しきれてない大腸の端を掴み、  
一気に外へ引っ張り出した。  
 
――――ブボボボッ!  
凄まじい量の血煙が中空に舞う。  
 
「…いっぎゃぁああああっ!!」  
遂に娘の眼球がくるりと上を向いて、白い部分だけが残った。  
 
父親の顔に跨ったままの姿勢で、娘は激しく痙攣し始める。  
其れは腹部から迸る血液に気付かなければ、娘が父親の  
顔の上で腰を振っている近親相姦の様相を呈していた。  
「リ…リリ………」  
 
全裸の上半身と顔面を娘の血で真っ赤に染め上げた男の  
顎は、弛緩と収縮を飽くことなく繰り返している。  
 
呆然が覆っている顔の上には、娘が迸らせた血飛沫と、爆ぜた  
腹部の小さな肉片が幾つも載っていた。  
「あわ…わっ……ひぃ!」  
 
「さぁ〜おじさん、お待ちかねのモノだよ♪」  
陽気に笑いながら、少年は血で滑る温かい娘の大腸を器用に  
掴んで引っ張り出すと、消防士がホースを持つように構えて男の  
口に狙いを定めた。  
 
「あ、口を閉じたらダメよ、おじさま。引金に掛けた指が  
驚いて動いちゃうかも知れないから♪」  
念を押すかの様に、少女が笑顔で銃口を男の額に固定する。  
 
「せえ〜のっ!」  
掛け声と共に少年が勢いよく扱くと、「ぽんっ」と間抜けな  
音が響き、大腸の末端部分から、弾ける様に茶褐色の  
太い塊が飛び出していた。  
 
「げえぇええええッ!」  
 
男の顔面に夥しい量の大便が載る。  
大きめのバナナ程もある娘の糞を数本分、父親が己の顔で  
見事に受け止めていた。  
 
その内の約半分が、男の口の中に落ちようとしている。  
「兄様、素晴らしいコントロールだわ!」  
手を叩いて少女が称賛の声をあげた。  
 
「ぐあああっ、おえぇえっ…!」  
先程の覚悟は何処に消し飛んだのか、男は涙と鼻水を垂らしながら  
激しく顔を振って、悪臭を放つ汚物の塊から逃げようとしている。  
 
「あらあら…ちゃんと喰べないとこうよ? おじさま♪」  
優しく諭す様に呟くと、少女は些かも躊躇わずに、先刻から掌に  
包み込んでいた陰嚢の右側内部の睾丸を、指先で挟んで潰していた。  
 
「…ッぎゃあうゎああああッ!」  
無様な咆哮が室内の壁を叩き、男の目尻から更に涙が滲み出す。  
 
「ひいいいっ!!うがぁああうわっ!」  
全身を仰け反らせながら暴れ、口の端からは泡を吹いていた。  
 
「……うるさいなぁ…もう、いいよ」  
失笑ぎみに苦笑した少年は、やがて倦怠の色を瞳に浮かべると  
小さく溜息を吐いて、無造作に右腕を振り下ろした。  
 
 
斧が床を叩く鈍い重低音が室内に響く。  
 
刹那、目を瞑った男が恐る恐る眼を明けると、其処には  
少女が小さな口で小便を嬉しそうに受け止めている姿が  
あった。  
 
 
――――何だ、夢だったのか。  
 
陵辱の限りを尽くした少女に対する罪悪感にも似た感情が、  
今の悪夢を自分に見せたに違いない。  
 
その証拠に、床に磔けられていたはずの身体では、見えない  
位置にいた少女の顔が、僅か数十センチ先で歓喜の表情を  
浮かべながら小便を飲んでいるではないか。  
 
ああ……明日は久しぶりに娘を何処かに遊びに連れていって  
やるか。来週の日曜は教会に行こう。以前、告解室で懺悔  
したのは何時のことだったか…まずは明日、久しぶりに教会で  
日曜の小便は懺悔です、何処も小便で小しょべえぅおほおぉ  
 
其処まで男の思考が奔るのに要した時間、約一秒。  
 
振り下ろされた鈍器が、綺麗に男の胴体から首を切り離すと、  
くるりと弧を描いた其れを見事に少女の目の前に着地させていた。  
 
その生首に、僅か一秒ほどではあったが魂が宿っていたのを眼球の  
動きで察すると、グレーテルは満足げに頷いた。  
「うふふ…素敵よ、おじさま。見苦しいほど、生に執着していたのね」  
 
ビシャッ…ビシャ……  
 
愛らしいグレーテルの顔に向かって、黄色く濁った液体が断続的に  
迸り、室内にアンモニア臭を漂わせている。  
 
恐怖で膀胱が膨らんでいたのか、放たれる尿の量は尋常ではない。  
「…久しぶりの匂いと味だわ。でもおじさま、ちょっと甘いみたい。  
糖尿かもしれなくてよ?…健康には気をつけてね」  
 
優しい声を掛けられたのが余程嬉しかったのか、男の全身は  
出鱈目なステップのダンスを踊りだしていた。  
 
小刻みな痙攣と失禁を繰り返している男の身体は、既に死を  
迎えている。  
 
暖かな汚水流をその美しい顔に浴びながら、少女は眼前にある  
もはや置物と化している男の生首に向かって、艶やかに微笑んだ。  
 
 
 
「――――ロアナプラ? 何処の国だったかしら」  
 
「姉様、もう忘れたの? アジアだよ、タイの地方都市さ」  
「ああ、そうだったわね。確かボルシチの食べ放題…だったかしら」  
「そうだよ。ところで姉様、今度の仕事が終わったら少しバカンスに  
出かけてみない? 最近は仕事が続いていたからさ……」  
「まぁ兄様、素敵な提案! そうね…何処がいいかしら♪」  
 
仲睦まじく手を繋いで部屋を後にする双子の背後には、  
親娘の共同作業からなる血溜まりと糞尿の池が、凄まじい  
臭いを撒き散らしながら、まだ仄かに白い湯気をあげていた。  
 
 
(了)  
 
 
 
 

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