「なあ、ロック、ハイだったんだ」
「は?」
ベッドに腰掛け手持ちのシガレットで夜明けの一服を楽しむロックに、後ろから声がかかった。
そこには肩まで真白なシーツをかけたレヴィがいて、呆けたようにヤニに染まった天井を見つめていた。
彼女は肌には直接は何も身に着けてはおらず、シーツと肌がすれる音がひどく耳に心地いい。
「ハイだったんだよ、ピート・ロック。ぶっとんでたんだ」
「何が言いたいんだよ」
「だからな、なんつうか……」
レヴィは天井を見上げたまま言いよどむ。
そんな彼女を見てロックは煙をふかし、ニタリと彼らしくない笑いを浮かべた。
「可愛かったぞ、レヴィ」
「んな!?」
ロックの発した一言にレヴィは飛び起きた。
その瞬間白いシーツが彼女の体から滑り落ち、黄色人種の血が巡っているとは思えぬほどに白い肌がロックの前に現れる。
ロックは一本目を吸い終え、二本目のシガレットをまき始める。
「誰がcuteだロック、頭に蛆でも沸いたか?」
「かもな」
「だろうな、今度私の事をcuteなんぞと言ってみろ、てめえの体に風穴でcuntって綴ってやる」
「はは、『ケツ穴を増やしてやる』か」
「そうだ、てめえのケツ穴をふや……し……て」
そこでレヴィの威勢は止まった。目を丸くし徐々に頬が赤さを増していく。
ロックはククッと笑いレヴィの耳元に唇を寄せた。
「何が、どうしたって?」
「いや……」
「anu」
「黙れ、ゲイ・ボーイ」
ロックから顔を離しレヴィは彼を睨みつける。睨まれても、ロックはヘラヘラと笑うばかりである。
「誰がゲイだって?」
「てめえだこのボケ。いいか、人の……ケツを、ほるなんてゲイかバーにいるイカレ野郎共くらいだ」
「ビデオとかで見たことないのか?」
「あれは職業だろうが」
「まあ、でも」
そう言って、ロックはもう一度レヴィの耳元に口を寄せた。
「俺に『初めて』くれたんだろ?」
その一言が爆弾だった。レヴィの白い顔と体が真っ赤に染まった。
それは恥ずかしさと怒りが入り混じったもののようだった。
レヴィが大声で叫ぶ。
「人を処女だったみてえに言うんじゃねえよボケ!」
放たれた拳骨をスッとかわし、ロックはまた笑う。
「後ろは……virginだったろ」
レヴィの顔の赤さがこの時頂点に達した。
そこに、ロックが止めを刺す。
「嬉しかったよ」
その言葉で、レヴィは更に目を丸くした。
そしてシーツの中に体全体で潜り込んだ。
「……ロック、昨日はハイだったんだ」
「ああ」
「だから…………今日は、二日酔いだ」
「いいんじゃないか? 今日はオフだ」
「あのな……」
「ん?」
ロックが振り返ると、レヴィはロックに背を向けたまま、ポツリと呟いた。
「あとで、二人で商店街に買い物に行かないか? ロック」
「ああ、行こう」
気がつくと、ロックの手元のシガレットは根本まで燃え尽きていた。
終わり