仕事を終えて宿に戻ってから後も、レガーチは大抵火星に行きっぱなしだ。  
今日も宿に着くなり早々と薬に手を出す彼をシェンホアが見咎めた。  
「あんまりそればかりしてると、そのうち火星から帰れなくなるですだよ」  
「ああ? それならそれで別に構いやしねえよ」  
「そっちがよくてもこっちが困るね」  
本気で心底どうでもいい、という様子のレガーチにシェンホアは歩み寄り、  
その手から薬を抜き取る。  
明らかに不服そうなレガーチにシェンホアは微笑みかけた。  
「……別に、これ以外にも楽しみはある、ね?」  
不機嫌な顔を覗き込み、囁きかける。  
ち、と短く舌打ちをして、レガーチがシェンホアの身体に手を伸ばした。  
「単にお前がしたいだけじゃねえのか」  
「そんなこというないね、イイのはお互い、私だけ違うですだよ」  
ベッドに腰掛けたレガーチの身体を跨いで、腰を下ろすとシェンホアは  
にこりと笑った。  
 
チャイナドレスの胸をはだけて、愛撫の手に身を委ねる。  
不機嫌さを表すように荒っぽい手つきのレガーチの頭を抱え込むように  
腕を巻きつけると、その耳元にキスを落とす。  
そうすることで相手をいっそう苛立たせると分かっていて、シェンホアの  
態度はどこまでも優しい。それはからかいであり駆け引きであり、彼女の  
楽しみのひとつだった。  
レガーチの股間に手を伸ばすと、片手で器用にベルトを外しチャックを下ろす。  
手を差し入れ、くすぐるようなタッチで触る。まるで恋人にするそれのように、  
優しく穏やかに触れる。それから徐々に大胆に、下から上までを擦り上げる。  
手の内で増す硬さに愛しげな笑みを浮かべて笑い、シェンホアはレガーチの  
肩を強く押してベッドに倒した。横になった彼のズボンと下着を剥ぎ取り、  
半勃ちのそれに舌を這わせる。  
どうやら今回はそういう気分らしい。  
自分がなにをしなくともコトが進むのは面倒がなくて歓迎だ。レガーチは転がった  
まま、シェンホアがするに任せた。先端から始まり根元までゆっくりと舌先で舐め、  
何度も往復する。それに飽きると今度は自分の豊かな乳房の間に挟みこむ。  
熱心な奉仕。  
本音を言うとこんなことをするよりは火星に行ってしまいたかったが、  
言えば本気で殴られると分かっているのでレガーチは黙っていた。  
十分に口腔奉仕を堪能しきり、本人の意思とは無関係に高まった屹立を跨ぐと、  
シェンホアは腰を落とした。ぬかるんだ入り口に触れる熱さに期待が高まる。  
「は……ん」  
浅く息を吐きながら、ゆっくりと全てを収めていく。  
溢れた愛液が太腿をぬらりと光らせながら流れ落ちていく。  
 
身体を埋める熱さに、快感が背筋を駆け上る。  
ひとしきりそれを味わってから、レガーチの腰に手をつき、シェンホアは自ら  
抜き差しを始める。湿った水音と腰を打ち付ける音に自分の吐く荒い息、  
それだけが世界を覆っていく。  
身体の中で硬度を増す熱に悦びながら、一直線に高みを目指すのではなく  
時に緩やかに動きを緩め、快楽の波が引いてからまた動き出す。跨った男を  
見下ろせば、最初よりさらに険しい仏頂面がある。  
知らず、シェンホアの口元が笑みの形に歪む。得体の知れない感情が彼女を満たす。  
それは歪んだ愛しさで、楽しさで、彼女は微笑む。  
その笑う横顔を汗が伝って、顎の先から滴り落ちる。  
微笑んだまま、シェンホアはレガーチに口付けた。  
口付けられたレガーチは顔を歪めて「くそったれ」と口の中で呟いた。  
 
絶頂が見える度にスローダウンを繰り返し、出来るだけ長く快楽に浸ろうとする  
シェンホアに付き合うのは正直言えば面倒だし、なによりキツイ。それに黙って  
従う理由はといえば、逆らうと「よけいに面倒」だからに他ならない。  
自分の上で踊るこの女は、何人も殺した凄腕だ。  
白い綺麗な肌をして、長い黒髪を乱して喘ぐ。  
 
「んっ!」  
彼女の腰を掴んで、突き上げてやる。泣きそうな顔でシェンホアがレガーチを  
見るが、一切構わない。いいかげん、もう十分だろう。こっちの体力は尽きかけだ。  
「ひっ、あ、やぁっ レガーチ!」  
ぎりぎりの間際に踏みとどまっていたものを強制的に絶頂へと向かわせられ、  
シェンホアが泣き叫ぶ。自分の思うままにならない快楽に振り回されながら、  
突き上げられるに任せるだけでなく、自ら腰を使って感じる場所を探る。  
「ん、んんっ!」  
大きく身体を震わせると、中で脈打つ熱さを感じる。  
激しく突き上げられて理性がどこかへ飛びかける。  
「あ、は、ああっ」  
一際大きく突き上げられて、シェンホアが仰け反った。  
思考も理性もいっぺんに吹き飛ぶ。真っ白になる。  
身体の中に広がる熱さだけ感じて、シェンホアは意識を手放した。  
心地のいい、闇に落ちる。  
 
 
 快楽に抗うのは難しい。とても難しい。  
 だから、レガーチが薬を止めることは無いだろう。  
 闇に落ちながら、シェンホアはそんなことを思った。  
 
 
ほんの僅か、まどろみにも似た感覚を味わう。  
レガーチの胸に顔を押し付けたままで、シェンホアはぼんやりと目を開いた。  
気だるさの残る身体を起こして、見下ろせばレガーチと目が合った。  
シェンホアは笑って、彼に口付けた。  
レガーチはそれを煩そうに払い、シェンホアを押しのけて転がった。  
「……疲れた?」  
「うるせ。お前の体力がどうかしてるんだ、こん畜生」  
「薬ばかりやるしないで、少し鍛えるいいですだよ」  
言ってやるが、レガーチは口をへの字に曲げただけで返事をしない。  
「眠い。寝る」  
それだけ言うと、こちらに背を向けた。  
その背を眺めて、シェンホアが呟く。  
「……ほんとに」  
短く溜息を吐く。  
「いつか帰れなくなるですだよ? レガーチ」  
 
 
シェンホアの言葉など届いてはいないだろう。  
レガーチの背中をしばらく眺め、シェンホアはもう一度大きく溜息を吐いた。  
 

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