軽快な電子音。  
テープが回り始める。  
「8本目、かノまったく」  
ディスプレイを睨みつけた女は、ゆったりとしたソファの上で脚を組み替えた。  
葉巻を噛む仕草に、少しばかりの苛つきが見て取れる。  
画質はあまりよくない。  
流れ始めた穏やかで明るいBGMが、ひどく嘘寒く空々しいものに聞こえた。  
 
剥き出しのコンクリートの壁、真ん中に大きいベッド。それ以外はなにもない殺風景な部屋。  
グレイの壁のあちこちに滲む黒ずんだシミらしきものが、悪趣味な装飾に見えなくもない。  
ベッドの上に、ふたりの子供。  
たっぷりした布の黒い衣装は、うるさいほどに派手やかな白いフリルに飾られている。  
透ける金髪を揺らし、まったく同じ顔同じ声で笑い合う少年と少女は天使かと見紛うほどに無垢で無邪気で美しく、  
この寒々しい部屋にひどく不釣り合いな存在に思えた。  
「フラッティ・マイ・ソウル」  
さえずるように、少女が呼ぶ。  
「ソウラ・マイ・マァレ」  
歌うように、少年が返す。  
ほっそりとした小さな手を取り合って、小鳥のようにキスを交わす。  
少女の白い手が、少年の黒いリボンタイにかかる。  
しゅるり、と布がたてる音を、やけに鮮明にマイクは拾っていた。開始の合図という意味でなら、なかなかに効果的だ。  
カメラが寄る。  
あどけない同じ顔が近づき、唇が重なった。  
ぴちゃ。  
濡れた音を立てて、舌が絡み合う。この年齢の子供には不相応な仕草で、互いの衣服を脱がせ合う。  
あらわになった白い肌には、薄紅い跡が散見された。傷だろうか。  
用をなさなくなった黒い布は床に投げ落とされ、白いシーツの上に幼いふたつの裸体がもつれた。  
 
「あ、あん、兄様ぁ」  
幼い少女が、胸に舌を這わされて声を上げた。  
少年の手は器用に少女の股間に滑り込み、ゆっくりと動き始める。  
ほっそりとした太腿が放恣に広げられ、切り替わったカメラがアップで股間を捉えた。  
ふっくらとして、痛々しいほどに白い恥丘。そこを覆うものは一切なく、ピンク色の秘裂があらわに覗く。  
大写しになったそこは、年端もいかぬ子供のそれではない。ちいさいが慣れて熟した、おんなの性器だった。  
細い指が、これも慣れた様子で肉色の花弁を挟んで妖しく動き、すでに潤いを溜めた膣に潜り込む。  
「ふぁ、あ、っん」  
くちゅ、くちゅと濡れた淫猥な音が殊更に大きく流れた。  
少女の可憐な乳首を舐めながら性器をまさぐる、同じ顔の少年。  
少年に弄られて幼い性器を濡らし、嬌声を上げる同じ顔の少女。  
「あぁ、兄様、あぁ、あぁあ」  
舌をちろちろと覗かせて、少女は細い顎をのけぞらせる。  
少年の顔が少女の股間に寄った。  
「あひっ…ひゃぅ、ん…」  
心得た様子で、性器を隠さないように位置を取った少年が、包皮をめくりあげて剥き出したクリトリスを  
舌で転がし始める。  
「きゃ、ぅん、っ、あんっ」  
細い腰が焦れたように揺れるのを捉え、舌先で転がし舐め上げ、口に含んで吸い立てる。  
指が3本、じゅぷじゅぷと派手な音を立てて膣に出入りしていた。  
華奢な手を粘液にまみれさせ、シーツに染みができるほどに幼い少女は濡れそぼつ。  
性器のアップ。  
充血して尖ったクリトリス、淫らにひらいた花弁。指を呑み込んで蜜をあふれさす肉壷。  
眩いライトの中、カメラに囲まれた見せ物のためのセックスで、少女は本気で感じてみせる。  
「あぁ、ああん、兄様っ……イ、っちゃう……っ…」  
淫蕩な翳りを貼りつけて、おもざしだけは天使のような可憐な少女。  
頼りなげな白い身体が反り返り、太腿と腰がびくびくと震えた。  
「…姉様。イっちゃった…?」  
粘液まみれの指を舐めながら、少年も淫蕩な笑みをそのあどけない顔に貼りつける。  
「…あふぅん…」  
陶然とした表情の少女を舐めるようにゆっくりと映し、画面が暗転した。  
 
ぴちゃ、ぴちゃ…ぺちゃ…  
膝立ちになったふたりの男の前に、ひとりずつ子供が這っている。  
男たちの剥き出しのペニスを、子供たちは舐めていた。  
長い髪を無造作に掴み取られた少女と、同じ顔で短い髪の少年。  
ちゅぷ…ぴちゃっ…  
涎を垂らしながら、音を立てて醜怪な肉塊をしゃぶる。  
手前に少女、向こう側に少年。  
同じ顔同じ動作がはっきりと映るように、カメラの位置は考えられていた。  
「…は…あむ…」  
舌を出し、亀頭を乗せて唇をかぶせる。  
「んぐ」  
じゅぷ、ぐぽ、ずちゅ。  
啜り、舌を這わせ、吸う。商売女もかくやと思える淫靡さで、子供たちは熱心に男のものをくわえた。  
太く長いペニスが、ずぷずぷと音を立てて小さな口に呑み込まれてゆく。  
「お、おぉっ、たまらねえ」  
顔にボカシのかけられた男が、下品な呻き声をあげた。  
「まだだぜ…、根元まできっちり、くわえるんだ」  
もうひとりの男が、息を荒げながら命ずる。  
じゅる、ぐぷぷ…っ…ごぷ。  
小さな手が陰茎の根元を擦り、陰嚢をやわやわと揉む。すっかり唾液にまみれてテラテラと光るペニスが  
少女の、少年の口の中にすべて含まれる。  
喉の奥まで達しているだろうに子供たちはわずかに眉根を寄せるだけで、苦しがって吐き出すそぶりも見せない。  
太い指で金の髪を掴みしめ、男たちが腰を振り始めた。  
「んぐ、ぐふぅ…んん…」  
じゅぽじゅぽと容赦なく口を犯すペニス。涎が細い顎をつたい流れ、激しい動きにつれて飛び散る。  
「う、おおっ」  
ひとりがペニスを引き抜き、白濁の液を飛ばした。口を大きく開けたままの少年の顔にびちゃびちゃと大量の  
汚濁が降り注ぐ。  
もうひとりは深々と含ませたまま、腰を震わせた。少女の喉が上下に動いて、精液を嚥下するのがわかる。  
先端から滴る名残の液を幼い顔に、ぬらぬらとなすりつける様子を捉えながら画面はふたたび暗転した。  
 
四つん這いになった少女の尻が、画面いっぱいに映し出される。  
アナルはその周囲の肉が擂鉢状に削げ落ちて、散々使われ慣らされた事実を物語っていた。  
その向こうに、亀裂からはみ出した陰唇が見える。濡れてつややかに色を増したそれを、男の無骨な指が  
面白そうに引っ張った。  
「うぅん…」  
ねだるように腰をくねらせる少女。  
応えて、男のペニスが前戯もなしにアナルを穿つ。  
「ぁはあっ…」  
紛れもない歓喜の声を上げて、少女がのけぞった。男がそのまま抱え込んで、仰臥した自分の身体の上に  
ほっそりとした身体を軽々と乗せる。  
アナルをつらぬかれたまま男の身体の上に仰臥した少女の脚は、容赦なく左右に大きく広げられた。  
「あ、あぁん」  
肉棒を呑み込んだアナルに、ぱっくりと開いた膣からとろとろと漏れ出る液がつたい落ちる。  
「姉様、…姉様、気持ちいい…?」  
少年が、広げられた少女の股間に這い寄って、ちろりと濡れた性器を舐めた。  
「あふぅうんっ、…に、いさ…ま…っ、来て…ぇ…」  
まだ頼りない胸のふくらみを自身の手で揉みしだきながら、小さな口が甲高い嬌声を上げる。  
「私の…っ、おまんこに、兄様の、おちんちんを、挿れ…て…」  
ちゅる、と尖ったクリトリスをかるく吸って、少年は笑う。  
「欲張りな、姉様。アナルだけじゃ足りないの?そんなに太いのを、いっぱいに挿れられてるのに…?」  
「おまんこ、おまんこも、いっぱいに、してっ…ああ、兄様っ、はやく来て…は…やく…」  
無毛の恥丘に手を伸ばし、少女は自らの秘裂を掻き広げた。  
少年が膝立ちになって股間に身体を寄せ、自らのものを少女の秘裂へと向ける。  
先端は丸くつややかで包皮は完全に剥けていたが、さすがに成人のものにはほど遠い体積の屹立が粘液に  
まみれながら、貪欲な粘膜に呑み込まれていった。  
「あぁぁぁ、兄様………!」  
「姉様。挿入ったよ…僕のおちんちんが、姉様の、おまんこに…」  
片割れに身体を重ね胸の淡いふくらみに顔を寄せる少年の背後に、もうひとりの男がにじり寄るなり  
肉の薄い尻を一気につらぬいた。  
「くあぁっ…」  
「あ、あ、兄様…兄様…も、気持ちいい…?ねえ、お尻…アナル、犯されて…気持ちいい……?」  
「姉様、姉様、ああ、気持ち…いいよぉっ…姉様の、おまんこ…も、おちんちんが、入ってる…アナルも…」  
淫らに喘ぎ卑猥な言葉を紡ぎ出す双子は、その身体をつながらせたまま屈強な男たちに挟まれつらぬかれて  
…みたび、画面が暗転した。  
 
男たちは、いない。  
広いベッドに、ほっそりとしたふたつの裸体だけが絡み合う。  
「兄様、兄様…ああ…いい…」  
「姉様、姉様…気持ちいい…」  
ふたつの身体は、黒光りのする双頭のディルドでつながれていた。  
膣から生えた人工のペニスが、アナルを犯している。  
「兄様、ああ、もっと…」  
無感動に画面を追っていた女は、ふと違和感を覚えた。  
兄様、と呼ばれているのは髪の短い少年。まろやかな胸、その膣からは太いディルドが伸びて……  
違う。犯しているのは少女のほうだ。髪の長さと呼び声だけで見紛うところだったが、よく見れば  
犯されている髪の長い片割れの股間には、たしかにペニスが屹立していた。  
「姉様、姉様ぁ」  
かわいらしいペニスを震わせて、少女のふりをした少年が喘ぐ。  
「兄様、ああ、気持ちいいよ…」  
膣からペニスを生やし、少年の言葉で少女が嘆息する。  
犯すほうが男役か。  
同じ声同じ顔なればこその趣向といえた。子供の性交を見たがるような変態は、そんな倒錯も喜ぶのだろう。  
子供の演技にしては、しかしずいぶんと熱が入っている。もう言葉にならないような声を上げ、快楽に我を  
忘れた様子で、それでも役割を間違えることがない。  
「きゃぁぁあぅ、…ぁんっ」  
「あう…っん…っ…」  
ひときわ高く啼き全身を震わせて、ふたつの身体が寄り添った。  
まず、アナルからディルドが引き抜かれる。ついで膣から、濡れそぼった淫具がぼとりとシーツの上に落ちた。  
「兄様」  
「姉様」  
犯す役割が終わっても、髪の長いほうが少女の役を続けるらしい。  
「どこへも行かないね、姉様」  
「どこへも行かないでね、兄様」  
寄り添い小鳥のように唇を交わしながら、ふたつの同じ顔が交錯する。  
まるで人格が入れ替わったとでもいうような双子の少年と少女。少女と少年。わからなくなる。  
 
冷たい眼に虚無の光を宿らせて、女は葉巻をくわえ直した。  
政権が瓦解した国の、施設から放り出された子供たち。闇に沈んで二度と光のなかには戻れない、不幸な  
独裁者の落し子たち。  
いつ殺されても誰にも顧みられることのない、切り刻まればら撒かれても誰ひとり知ることのない。  
そんな環境で、双子のきょうだいが生きるよすがとしたのが、互いの存在であったことは想像に難くない。  
片割れがいなければ、生きていなかっただろう。精神も肉体もズタズタに瓦解していただろう。  
「すでに充分過ぎるほど壊れてはいるが、な…」  
これ以上劣悪で過酷な環境はないという中で彼らがなお最も恐れたのは、片割れを失うこと、だったに違いない。  
だから。  
兄は姉の、姉は兄の人格を、それぞれ自分のなかに構築したのではないか。  
精神的に追いつめられた人間が、逃れるために自我の中に別人格を作り出すことは、さして珍しいことではない。  
彼らは、それをしたのではないか。ただし、形成したのはまったく別の人格ではなく、ただひとりの肉親、  
かけがえのない自らの半身のそれだったのではないか。  
そうなら、自分が生きていさえすれば片割れを失うことはないのだ。自分のなかにいるのだから。  
ひとつの身体にふたつの精神。ふたりでいればふたつ、ひとりになってもふたつ。  
 
生きる限り、ひとりであっても彼らは永遠に、双子なのだ。  
 
「…くだらん」  
灰皿に吸いさしの葉巻を捻り潰し、女は懈怠そうな顔を上げる。  
中身がどうであれ、身体は1人分ずつだ。分断すれば1人分の戦力でしかないのだ。  
わずかに倦み疲れた態の白い貌によぎるのは、憐憫でも哀切でもなく、不快と憎悪の表情だった。  
液を漏らす双子の性器のアップに、文字が重なってゆく。悪趣味なビデオのタイトルらしい。  
『ヘンゼルとグレーテル』  
お菓子の家に迷い込み、魔女を焼き殺した子供たち。おとぎ話はハッピーエンド。  
だが、これはおとぎ話ではないし、女は浅慮のために竃に突き落とされる魔女でもない。  
ゴミ溜めのようなこの街は、お菓子の家でありはしない。  
砂のような画面を映して耳障りな音を発し始めたディスプレイのスイッチを切り、女は立ち上がる。  
熱帯のロアナプラは、鬱陶しい熱と濃密な血の香りを孕んで、喧噪の夜明けを迎えようとしていた。  
 
 
END  
 

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