「んぁ…。」  
カーテンの隙間から日の光が差し込み、女の顔を照らしている。  
世間一般的には『爽やかな朝の光』という奴だろうが、彼女にとって  
そんなものはクソッタレ同然、ドブに投げ捨てる価値すらない。  
「ちっ…飲み過ぎたか…。」  
彼女は二日酔い気味の頭を一振りすると、力無い足取りでバスルームへ向かった。  
軽くシャワーを浴びていると、部屋のドアを叩いている音が聞こえてくる。  
眠気と頭痛をシャワーで誤魔化している最中に、急かされるのは殺意すら覚える。  
「あ〜…ったく…シャワーぐらいゆっくり………げっ!」  
自分の股ぐらから出血しているのが視界に飛び込んでくる。  
大きく溜息を付いた後に、彼女はシャワーの蛇口を閉めた。  
「嫌な日になりそうだ…。」  
 
「おい!レヴィ起きろ!」  
部屋の前で、扉を叩き続ける男がいた。  
小綺麗なワイシャツとネクタイに、ビジネス用のスラックス。  
歳でいえば、二十台の半分を超えた処だろうか。  
顔つきや服装から見ても、酷く場違いな雰囲気を醸し出していた。  
男は無造作にドアノブを回してみると、扉は音を立てて開いた。  
「…鍵ぐらい掛けろよ…お〜い入るぞ。」  
彼が部屋に入るのと、彼女がバスルームから出てくるのは同時だった。  
びしょ濡れの全裸の女が、自分の目の前に現れる。  
女は普段から薄着とはいえ、こんなにハッキリと全裸を見たことは無い。  
「うわぁ!?…ご…ゴメン!レヴィ!」  
男は慌てて部屋から出ていく。  
「アイツ何慌ててんだ?…別に減るモンじゃねーのに。」  
レヴィと呼ばれた女は、呆気にとられた顔で乱暴に閉められた扉を見ていた。  
 
支度を終えたレヴィが部屋から出てきた。  
タンクトップと尻が見えそうな位に切り詰められた短パンジーンズ。  
『襲ってください』と言っているような服装に、一瞬目を奪われる。  
その外見とは裏腹、両脇に【ソード・カトラス】と呼ばれる銃を従えているその姿は、  
幾つもの死線を潜り抜けている者だけが持つ独特の雰囲気に包まれていた。  
「で?ロック、仕事でも入ったのか?」  
先程慌てて出ていった男が、扉の隣で立っていた。  
まだ先程のことを引きずっているのだろうか、赤い顔をしている。  
「Hei!聞いているのか?ロック…あたしは仕事があ・る・の・かと聞いてるんだよ。  
 あたしの裸でコキてぇんだったら、今晩のベットの上ででも勝手にしやがれってんだ。」  
渇…とは言い難い台詞だが、アッチの世界へ行きかけていたロックを引き戻すには十分だった。  
ロックは、慌てて妄想を払拭するとレヴィと並んで歩き始める。  
「ダッチが仕事を受けたんだよ…内容は【密輸】…ラグーン商会の本業ってところかな。」  
いつもと変わらない内容に少々溜息が出る。  
どうせなら、米軍駐屯地でビッチ共の血袋をぶちまける位に、スカっとする仕事がしたい。  
レヴィは不機嫌そうに頭を掻くと、ロックの耳元で単調に呟いた。  
「で、あたしの裸を見て勃起ったのか?」  
「え!?あっ…いやっ…その…。」  
ロックをからかうことで、少しは気分が晴れた。  
性悪な小娘染みた笑いを浮かべつつ、レヴィは先にミーティングルームへと入っていく。  
ロックも少々赤面を浮かべつつ、レヴィの後に続いた。  
 
部屋の中に入ると、大柄な黒人がソファーにふんぞり返っていた。  
不良軍人…その言葉がよく似合う風体をしている。  
「ようダッチ!金になる仕事だろうな?」  
ダッチと呼ばれた黒人は、神妙な表情をして考え込んでいた。  
その表情から、受けた仕事が途轍もなくヤバイ物を運ぶ事だと察する。  
「金には十分になる…けど。」  
声は部屋の更に奥から聞こえてきた。  
人数分の飲み物を持って現れたのは、ブロンドの白人だった。  
「ベニー、ヤバイ仕事なのか?俺は【運び屋】としか聞いてないけど。」  
ベニーと呼ばれた白人が溜息を付く。  
「ヤバイって事ならまだマシさ…下手すりゃアジア周辺が大変なことになる。」  
そんな大袈裟な…ロックは軽く苦笑を浮かべていた。  
この町が吹っ飛ぶ程度なら現実味がある。  
しかし、事が『アジア周辺』だと一転してそれは空想に感じ取れた。  
「【NBCR】…か?」  
レヴィの言い放った言葉が、一瞬にして場の空気を凍り付かせる。  
『Nuclear(核)biological(生物)chemical(科学)radiological(放射能)』  
事の重大性に気が付いたロックは、思わず後退りをしてしまう。  
ロックじゃなくても腰が引けるだろう。  
「大量……破壊…兵器……。」  
ロックは絞り出すように発した言葉の後に、気が遠くなるような気がした。  
 
「ちっ…ナンバーテンって奴か…Heiダッチ!あたしゃ下りるぜ。  
 10万$や20万$程度のはした金なんだろ?割にあわねぇ。」  
レヴィは吐き捨てるように言い放つと、部屋を出ていこうとする。  
「前金で50万$、ブツを届けてから更に150万$…。  
 クソッタレな正義主義者の合衆国様からの依頼だ。」  
ダッチの言い放った金額にレヴィの動きが止まる。  
計200万$アウトローが命を賭けるには、十分すぎるほどの金額だ。  
「だけど、そんなヤバイ物なら軍を動かしてでも………。」  
ロックは言いかけた言葉を引っ込めた。  
「ダッチ…ブツの運び先はどこだ……。」  
ロックは何かを感じたようにダッチに訪ねる。  
「OKINAWAだ、katurenのWhiteBeach沖で米軍の艦船に荷物を渡す予定だ。」  
ロックはベニーと目を合わせた。  
ロックの表情を察したのだろうか、ベニーが頷く。  
「中国とロシアが目を光らせているってわけだ…。  
 事がNBCRなだけに、日本の内調も動いているだろうね。」  
ベニーはダッチに詰め寄った。  
その表情から、今回の依頼は受けるべきではないと訴えている。  
「なぁダッチ、この話は下りよう…僕らの手には負えな…。」  
「乗ったぜ。」  
ベニーの声を掻き消すように、レヴィが口を挟んだ。  
先程とは違い、凄く乗り気な表情をしている。  
ロックとベニーは、血の気が引く様な感覚に襲われた。  
この依頼を受けること自体が、狂気であると言えるからだ。  
「レヴィ!この依頼はマズイ!バラライカさんや張さんの処に任せるべきだ!」  
ロックは慌ててレヴィを説得にかかる。  
ベニーもロックに相槌を打った。  
 
「オマエ等…自分で言った言葉も覚えていない馬鹿なのか?」  
レヴィが呆れ顔でロックとベニーを見上げている。  
ロックとベニーは、何のことか解らないとゆう表情をしている。  
レヴィは「仕方ねぇ」と呟くと二人の頭を思いっきりぶん殴った。  
激痛がベニーとロックを襲う。  
「張のダンナんとこの三合会と、バラライカの姉御のホテル・モスクワ。  
 互いに繋がっているとこは……何処と何処よ?」  
レヴィの一言に、二人は如何に馬鹿なことを言ったか気が付いた。  
その様子を見つつ、ダッチは腰を上げると厳重に封印されているケースを取り出す。  
三人は、ひと目にそれが【例の荷物】であると感じ取った。  
「前金はもう受けとっちまっている。  
 張やバラライカに気取られず、目的地に運べるのは俺達以外にゃいねぇ。」  
ダッチの言葉に三人は覚悟を決めざるを得なかった。  
正確に言えば、覚悟を決めたのはロックとベニーの二人だけだ。  
報酬の大きさから、レヴィは覚悟とゆうより『やる気』を出している。  
話し合いの結果、出発は明日の夜と決まった。  
「ロック!ちょっと付き合いな。」  
 
ロックは、半ば拉致同然にレヴィの部屋に連れ込まれた。  
女性の部屋とは思えないほど、壮絶に散らかりまくっている。  
部屋の掃除でもさせるつもりか?そう考えた瞬間…。  
「んぐ!?」  
ロックはレヴィに押し倒された。  
ロックを押し倒すのと同時に、レヴィはロックの唇を奪っている。  
唇と舌をこじ開け、レヴィの舌がロックに侵入してきた。  
時間にして、僅か2〜30秒の出来事がロックには数時間に感じ取れる。  
互いの唇が糸を引いて離れた。  
「なぁロック、もう一度…聞くぞ。」  
ロックはレヴィに馬乗りになられている。  
女性にしては重いかもしれないが、それは筋量があるからだろう。  
ネコ科の動物のように、しなやか且つ力強いレヴィの肉体に魅了された。  
「オマエ…さっきな、あたしの裸を見て勃起ったろ…。」  
ロックは、レヴィが何を言っているのか少々理解に苦しんだ。  
ただ言えることは、レヴィの薄着の部分がロックを刺激していると言うことだ。  
「何というか、今…立っちまってる。」  
ロックの答えに、レヴィは微笑を浮かべた。  
ズボン越しに、ロックの逸物に触れる。  
「固っ………へぇ良い物持ってるじゃん。  
 ロックの銃…あたしが借りるぜ。」  
日本人特有の固さに、レヴィは少々驚きを隠せなかった。  
今まで、いろんな男と寝たことは勿論ある。  
決して大きいとは言えないサイズだが、鉄のように固くなるとは予想外だった。  
 
「んぁ………すげ……固ぃ。」  
ズボンから顔を出したロックの逸物をレヴィは何度も舐め上げる。  
口に含み、愛おしそうに愛撫した。  
シックスナインの体勢になっているロックの目の前には、ショーツ越しにレヴィーの  
蜜壺が踊っている。  
触らなくてもその部分が湿っているのが解るほどに、レヴィは濡れていた。  
「ひうぁ!?」  
急な感覚に襲われる。  
レヴィはロックの顔を見ようと、後ろを振り向いた。  
体勢が体勢な為に、ロックの顔を見ることは出来ないが、何をやっているかは理解できる。  
ロックはレヴィのショーツをずらすと、蜜壺を口や指で愛撫していた。  
レヴィから垂れ落ちる愛液に、赤い物が混じっているのにロックは気が付いた。  
「レヴィ…おまえアノ日か?」  
ロックの一言に、思わず顔が赤くなる。  
行為をしている最中、野郎に「アノ日か?」と言われたのは初めての経験だ。  
忘れかけていた『羞恥心』という物を思い出した気がする。  
「ばっか…ロック…恥ずかしい事を言うんじゃ………あっ!」  
レヴィの言葉を遮らすように、ロックはレヴィを攻め立てた。  
「てめ…ぇ…このあたしに…敵うと思っていやがるな…。」  
自分の発した言葉に対して言葉に対して、ロックが笑うのを感じた。  
レヴィの中で、何かがプチンと音を立てて切れた感じがする。  
「上等だ……このあたしが本気になったらどうなるかを思い知らせてやるぜ?ロック…。」  
シックスナインの体勢から脱出すると、レヴィは再びロックの上に乗った。  
 
「レ…レヴィ?」  
ロックの上には、淫靡な笑みを浮かべた一人の淫魔が乗っている。  
勿論、イメージに過ぎないが、今のロックにとってレヴィはソレと同等の存在だった。  
「あっ…ゴムつけないとマズイよな……。」  
苦し紛れに言ってみた台詞だったが、勿論レヴィには通じなかった。  
片手でロックの逸物を固定すると、もう片方の手で自分の蜜壺の肉壁を開く。  
レヴィは自分の女の部分に、ロックの男の部分を包み込んだ。  
「野暮ったいことを……んぁ…言うな…よ…………。  
 あたしは…アノ日なんだからよ…カギゃできねぇさ……中で濃いの出しても良い…ぜ?。」  
そう言うと、レヴィはロックの上で踊り始めた。  
ロックはレヴィとの結合部分を中心に、彼女の全てを感じていた。  
普段から激しく体を動かす仕事の為か、レヴィの中は考えられないくらいに締まる。  
今までの経験がママゴトのように思えるような感覚がロックを襲う。  
「ひっぁ…………ロック………あひぃ…ん…気…持ちいい……か?」  
気持ちいい所じゃない、気を抜くとすぐに果てさせられる。  
拷問に近い…そんな感覚にロックは陥っていた。  
レヴィは耐えているロックを見下ろすと、軽く抱き寄せてキスをする。  
ロックにとって、妙に安心感がある様なキスだった。  
「ばっか………我慢しなくていいんだよ…思いっきり出しちまいな…。」  
レヴィの一言が、ロックに止めを刺した。  
ロックの放つ熱くて濃い物が、レヴィの奥を打ち抜く。  
何度も痙攣し、その度にレヴィの中にロックの精が放たれた。  
「ひう!?…あっ………熱っ…………あっやっ………あぐくぅぅぅぅぅん。」  
ロックが放つ精が、レヴィの中で広がるのを感じたと同時にレヴィの身体が撥ねた。  
大きく痙攣し、ロックにしがみつく。  
ロックは達したレヴィを更に強く抱きしめた。  
 
少しだけ余韻に浸って、ロックは自分の息子をレヴィの中から引き抜いた。  
抜く瞬間にレヴィの身体が少しだけ痙攣した様な気がする。  
ふとレヴィの女の部分を見ると、たった今ロックが放った精が逆流して溢れていた。  
アノ日のせいか、少し鮮血が混じりのソレを見ると処女を犯した感覚になる。  
「レヴィ…おい…レヴィ………。」  
余韻に浸っているのか、レヴィの反応は鈍かった。  
流石の女ガンマンも、こうなってしまうと可愛い感じがする。  
ロックは先に服を着ようとベットから起きあがった瞬間、いきなり後ろから抱きつかれた。  
「おいロック………まさか一発で終わりじゃねぇだろうな?  
 ヤマトダマシイって奴を見せてくれよ。」  
その日、ロックが解放されたときには、辺りはすっかり暗くなっていた。  
 
―――翌朝  
 
ラグーン商会は出航の準備を進めていた。  
夜に出発して、翌朝にはせめてブルネイ沖ぐらいまでは行きたい。  
余裕を持って準備しているつもりだが、それほど余裕はなかった。  
先程からロックの姿が見えない。  
「おいレヴィ、ロックはどうした?」  
ロックがいないとその分の作業が遅れる。  
ダッチはレヴィに聞いたが、軽くニヤけて「さぁね…」と答えるだけだ。  
ダッチは呆れ顔で軽く溜息を付くと、自分の作業へ戻った。  
「おいレヴィ…あんまりロックをイジメんじゃねぇよ…。  
 ベニー!ロックに湿布薬を持っていってくれ。」  
ダッチの一言に、レヴィは軽く笑い声を漏らした。  
 
                  
                          続く  
 

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