「先生、お帰りなさい!」  
「ああ… ただいま」  
 
幾多の危機を乗り越え、予想外にハードなアクションをこなし、長旅から生還したBJを賑やかな面々が迎えた。  
……しかし。  
自宅が吹っ飛んだままでは、とても体を休めることなど出来ない。  
「ピノコちゃんたち、僕のウチに来ればいいじゃんかぁ」  
写楽の提案は、無邪気でまっとうなものだった。  
「ありがたいな、私はまだ落ちつけないからピノコを頼むよ」  
恩師の無念を晴らし、父親への憎悪も消え失せたBJは、珍しく張りの無い声で返事した。  
 
「ちょんなぁーーっ、先生! あたちを置いて何処にも行っちゃダメ!!」  
拉致された事すら記憶から追い出したピノコはすこぶる元気で、むしろパワーアップしている。  
──お前もいい加減懲りただろう、安全な場所で少しのんびりしてなさい…、 BJの説得など聞きもしない様子だ。  
眉をくもらせ、ため息をつく背中に、クミが微笑みながら言葉を掛ける。  
「先生、お住まいが整うまでは、ずいぶん時間が掛かると思いますけど?」  
 
うーんと小さく唸り、観念したようにBJは和登に尋ねた。  
「…しばらく、厄介になっても構わないか?」  
ブラック・ジャック先生が、ウチに…  
和登はわざと無関心を装い、少し横を向いた。  
「しゃ、写楽がそう言うなら、別にいいよ」  
つっけんどんに答えたつもりでも、赤みがおさまったばかりの顔には嬉しさが滲み出る。  
再会を喜ぶ周囲の雰囲気に紛れ、その微妙な表情は気付かれずに済んだ。  
 
「ウチ、いつものことだけど両親は海外だから、遠慮しないで下さい」  
重いトランクを運ぼうとする和登の手を、BJが上から包むように留めた。  
息を飲む和登の大きな瞳は、白黒二色の前髪から見える目と至近距離でぶつかった。  
「私の荷物だ、自分で持つ」  
 
久しぶりに間近で聞く穏やかな響きは、和登の耳から全身を駆け抜け、甘い陶酔をもたらす。  
ぼんやりとBJを見上げた和登は、重なった手の不自然な熱さにも気付かなかった。  
 
写楽とピノコが連れ立って出かけてしまうと、広い家の中に二人きりになった。  
「客間の準備、してきます」  
慌ただしく立ち働く和登を、背後からBJが捉えた。  
いきなりのことにも驚いたが、何よりその腕の熱さは普通ではない。  
「えっ、先生…、どーしたの?」  
「お前のせいで、余計に具合が悪くなった… 少し休むぞ」  
 
「はァ?…やだっ、どこ触ってんの!」  
「まったく、いまだに短いスカートから脚を出して…、何考えてるんだ」  
「ど、どっちが!…熱あるんでしょ、おとなしくしてないと駄目じゃん!」  
抵抗もむなしく、ベッドに引っ張り込まれた和登の制服の裾から、BJの手が滑り込む。  
腿の裏を伝い、小さな下着に到達した指先は丸い尻を撫で上げ、目的地を覆う布を探った。  
ここに早く入りたい、と訴える視線が皮膚の内側を震わせ、和登はうろたえた。  
 
ぬめりはまだ外に出てはいないが、既に入り口は火照り、周囲もぷっくりと膨らんでいる。  
一体いつからこんな体になったのか。 誰にこんな風にされたのか。  
恥ずかしさに縮こまった体は、呆気なくシーツの上に押し付けられる。  
弾力のある唇、懐かしい煙草の匂い。  
ヤニくさいのは大嫌いなのに、何故この風変わりな医者にだけは全てを許してしまうんだろう。  
 
やだやだと言いながら、我知らず和登はBJにしがみつき、舌を絡め唾液を受け取る。  
僅かな時間も惜しむ性急な接触で、羞恥と欲情は簡単にすり替わった。  
破れそうな勢いでショーツを脱がされても、相手を押し退けることもできない。  
ひくついた局部は、もう侵入を許可する粘液をたらして開きはじめる。  
思い通りの可愛らしい反応に、BJはご褒美を用意した。  
 
硬くなった陰茎は狭い入り口をぬるりと通り抜け、当たり前のように潜り込んでいく。  
くふっ、と鼻から抜けるような声をもらし、和登が軽く背を反らせた。  
「あ、あぁ、…だめっ、あの子たちが戻ってきちゃうよぉ…」  
「やめた方がいいか?」  
「いっ、…意地悪!」  
 
「う、…やっぱりお前のは…、最高だな」  
怒張を根元まで収めると、締め付ける感触を味わいながら、悦びに歪んだ和登の顔を眺めた。  
切なく喘ぐたび、たわわに息づく乳房が、制服の中で揺れているのが外からでもはっきり分かる。  
順序は逆になったけれど、手早くはだけられた胸元が外気に触れ、ふわっと赤みを増した。  
 
しこり立った乳首を口に含み、その側面を丁寧に舐めまわす。  
刺激を受けるたび、胎内がぞわぞわと蠢く。 密着した陰部は激しい動きを保留し、互いを確かめ合う。  
当たる角度が少し変わるだけでも子宮が収縮して、熱い尖端をより深く誘い込む。  
ゆっくり擦れる肉と肉は、久しぶりの結合を緩めることはなかった。  
いやらしい表情をずっと観察されてるのに、和登は恨み言の代わりに、つい本音をこぼした。  
 
「せ、先生…、やっぱり生きてたんだ…」  
戻ってくれて嬉しいなんて言ったら、きっと笑われる。  
事故後に無事が分かった後も、ずっと心配してた。  
伝わってくる情報はどれも不確かで、海外からのニュースを聞くたび不安になった。  
平然と帰ってきた姿を見ても、幻を見てるような気持ちは拭えなかった。  
 
思いを込めてすがる腕から、BJは和登の思いを感じ取った。  
「………」  
悪かった。  
ありがとよ。  
そんな言葉で、埋め合わせるつもりはない。  
返事をする代わりに、和登の奥深くまで強張りを打ちつけると、甲高い声が響いた。  
 
「あ、やあぁっ、…先生っ!……」  
足指の先まで痺れる快感に、和登は半泣きになって、全身をがくがくと震わせた。  
BJはすぼまる尻を引き寄せ、うねりながら絞り込む粘膜の中に、濃い白濁を一気に放った。  
 
 
「…おい、起きられるか?」  
ぐったりしていた和登を、軽く揺する手が覚醒させる。  
はっと飛び起きると、あれ程乱れていた服はきちんと直されていた。  
横になったBJは疲れたように目を閉じ、バタバタと入ってくる足音を迎えた。  
 
「お姉ちゃん、たっだいまー! …あれっ、どうしたのぉ、先生?」  
「写楽、静かにしてあげて… 少し熱があるみたいなの」  
和登は制服のシワを気にしながら、二人に向かって、いかにも真面目な顔をつくった。  
 
「ちぇんちぇ、らいじょーぶ?… 」  
そっとBJの前髪を上げ、おデコを合わせるピノコの仕草の自然さが、ふいに「おんな」らしさを意識させた。  
少し前の灼けそうな視線はどこへやら、慈しむように笑いかけるBJの様子は、特別な絆の深さを語っている。  
──こんな小さな女の子に、嫉妬しちゃってる!? 和登は自分自身に動揺した。  
 
「早く治るおまじない、ちてあげゆねー♪」  
プチュ、と音を立ててBJの頬にピノコの口がくっついた。  
「こら、よしなさい…」  
うつるぞ、と言いかけて、少し離れた場所から睨む目に気付いたBJは蒼ざめた。  
 
(本間先生…、わたしに勇気を)  
天国の恩師は、聞こえないふりをした。  
 

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