「…フン、しくじったな… 高速なんざやめとくべきだったか」
遠方への往診を終えたBJは、深夜近くだというのに緩慢にしか動かない車のハンドルを軽く叩いた。
「あーん疲れたぁ…、周りの車はみんな遊びに行ってたのかちら」
隣でピノコが、力の抜けた声を出した。
「留守番してた方が良かっただろう? 退屈なら寝てていいぞ」
「れも先生も眠そうよ…」
「まあ、少しな」
軽く目元を擦ったBJは、溜息をついて襟元を緩めた。
「いーの、先生の横顔見てんの、ピノコらいちゅき」
「おかしな奴だ」
気怠い表情のBJを、テールランプの光がほんのりと照らす。
ニコニコしながらピノコはその頬にキスをした。
「邪魔するな、ゆっくりでも動いてるんだから」
「眠気覚まし…ちてあげようと思ったのにィ」
BJの膝にすり寄ったピノコは、ぺったりとそのまま倒れ込んだ。
と、パチッと目を開いて何か企んだような顔でBJを見上げる。
「ね、先生…、ここでしてあげまちょうか?」
「動き始めたぞ、ちゃんとベルト締めて座ってろ」
BJはその言葉を無視して、少し流れを早めた車列に運転を合わせた。
「先生のベルト、緩めちゃうんらもんね」
バックルがカチャリと音をたて、ピノコの指ではずされた。
「バカッ、何してんだおまえ!」
慌てたBJは思わず横を向き、その拍子に僅かにハンドルがブレる。
「ウフフ、しっかい前見て運転おねがいちまちゅねぇ」
「やめなさい、危ないだろうが!」
暗がりの中でも、BJが顔を強張らせて微かに紅潮させているのが分かる。
その様子が楽しくて、ピノコはおかまいなしにズボンのジッパーまで下げた。
「退屈なんらもの…、ね、いいれちょ?」
更に指先を中に滑り込ませると、BJがハンドルをぐっと握った。
「おまえっ、…運転中だぞ、やめろ」
「れも、もう硬くなってきてるわのよ…」
〈冷静な先生〉のうろたえる顔が嬉しくて、ピノコはBJの下腹をゆっくりなぞり出した。
「おい、 …やめろっていうのに」
制止する声には、いま一つ勢いが足りない。
「熱くなってる…、他のこともちたくなっちゃう…」
緩めた衣服から硬い茎を取り出すと、ピノコはその先端に舌でそっと触れた。
「……っ、ばかやろ」
少し呼吸を早めたBJが、顔をしかめて前を睨み付ける。
「らいじょーぶ、ちょっとらけでやめてあげゆ…」
ピノコは中程までを、一気に吸い込むように口に含んだ。
「…もうじき料金所だ、顔を上げなさい」
ぬめる舌が絡みつき、先端の切れ目をなぞり、指先が根本の柔らかい部分を愛撫する。
自身が硬く大きくなるのを意識しながらも、BJは努めて落ち着いた声でピノコを抑えようとした。
「コートの裾、被せていいわのよ」
「そんなもんじゃ隠れんだろうが、こらっ、いい加減に…!」
強く引き離すと、ピノコの目が熱く潤んでいる。
「先生も…して」
「………」
返事をする代わりに、BJは左手をピノコのスカートにもぐり込ませた。
「ふぅんっ…」
湿った声を漏らして、ピノコは腿を強くすり合わせ、その手を離さない。
「…家まで、待てないのか」
ショーツの上からふくらみを少しまさぐってやると、腿がじわじわと開き、次の行動を誘う。
「ああぁん、…先生、お願い」
肩にもたれ掛かったピノコが、BJの耳元で切なくねだる。
「くそッ、これじゃ運転どころじゃない…」
郊外に停めた車の中、倒したシートの上で二人は重なった。
もうべっちょりと濡れたピノコの中に、なんの抵抗もなく分け入るBJ。
「ああっ!、……や、あぁっ」
「すごい濡れようだな、どうしたってんだ」
「だって、…だってぇ」
狭い車内でねちゃつく音をわざと聞かせながら、BJが繰り返し中まで送り込む。
「くッ、奥まで入らん…」
「はあっ…、あ、浅いの、イイ…」
「ちくしょう、こいつぁ疲れるぞ」
「あ、あん、ピノコもう、…なんか…」
浅い結合に苛立ちながらも、BJはピノコをガシガシ穿つ。
入り口付近を強く刺激され、できるだけ開いた脚の合間に受け入れながら、ピノコの背が反り始める。
「腰を上げて、…できるか」
抜き差しを緩めて、横に揺すりながら問いかける。
「あっ、……んん!」
少しだけピノコの腰が浮き、僅かに挿入が深くなると徐々にぬめりが締まってきた。
「あふっ、先生、好き……」
「待て、…そんなに締めるな」
ピノコは身を捩って、蜜が垂れ零れるのも構わず刺激を全て熱に変えていく。
「……あ、すごく…、ああぁあぁ……っ!!…」
掠れる声をあげ、ピノコの奥が大きくひくついてBJを強く絞り込む。
キツい体勢で腰の動きを早めると、一瞬の静止のあと、まだ痙攣する粘膜の中に抑圧が弾けた。
深く息をついたBJを受け止め、その口にピノコが舌を差し入れる。
適当にあしらうようにそれに応えながら、目を開けたBJが呆れ顔でピノコを見た。
「…おまえなぁ、これが眠気覚ましか?」
「らってぇ… したくなっちゃったんらもの」
「もう往診には連れていかんからな」
「えっ…」
しょんぼりするピノコに、着衣を直したBJが苦笑して声をかける。
「怒っちゃいないから、服を直しなさい」
ぎゅっとしがみついてきたピノコを宥めるように、その背中をさすってやる。
「おい、早く帰りたいんだよ わたしは」
「あ、ごめんなちゃい…」
うつむくピノコを軽く抱き寄せ、そっと囁く。
「家に戻ったら…続きだぞ」
顔を上げたピノコの頭をくしゃくしゃと撫でると、BJは前を向き直って車のエンジンをかけた。