私は約束通り、症状の好転したロミを自宅へ連れてきた。  
  思った以上に、ピノコもロミもお互いを気に入ったようだ。  
  あっという間に仲良くなった二人は、ラルゴの散歩に出掛けて行った。  
  ようやく静かになった家で、私は今回の病気の資料を整理し始めた。  
つい作業に没頭してしまったらしい、辺りは夕映えに包まれ、明るい色に染まり始めた。  
  まだ二人は帰って来ない…、いい加減暗くなるのではと心配ながらも、私は机を離れなかった。  
 
  ふと気付くと、クスンクスンと鼻声がして、小さな足音が後ろに近付いてきた。  
  振り向くと、ジャンパースカートの裾を破かれたロミが泣いていた。  
  驚いて訳を聞くと、どうも散歩の途中で写楽に会ったピノコに置いていかれたらしい。  
  それにしても、何故服が破けているのだろう…  
 
「あのね、急にラルゴがね、リードをすごい力で引っ張ったの、  
 それからあたしのスカートの裾に噛みついてね…、転んじゃったの、痛かった…」  
「あいつ、なんてひどい事を…、ん、いや待てよ?」  
    
  私はラルゴの、例の能力のことを思い出した。  
「ひょっとして、転んだ後に車が飛び出して来なかったかい?」  
「えっ、おじさんどうしてそんなこと分かるの? そうよ、急に曲がり角から車が…」  
「なるほど、じゃあラルゴはお手柄だったんだな… ところでピノコはいつ帰ってくるか知らないか?」  
 
「今日はピノコちゃん、学校があるからって言ってた」  
「あっ、そうか、しまったな、私が忘れていたんだ…」  
「ほんとはね、一度ここに帰って来たのよ、でも先生が忙しそうだからって、  
 ピノコちゃんとあたし、そ〜っとまた外へ出たの」  
「そうだったのか… すまなかったね、とにかく傷の手当てをしよう」  
 

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