「ちぇんちぇ〜今日はお客たん来なくて暇らねー」  
窓に張りつきながら外を眺め、ピノコが不服そうな声を洩らす。  
ブラックジャックは椅子に腰かけながらその後ろ姿をジッと眺める。  
(うむ・・・)  
短いスカートから覗く白くてモチモチした足に彼はいやらしい視線を這わす。  
(そうだな・・・今日はもうどうせ客も来ないだろうし・・・)  
 
いつもよりずっと早い時間に夕食を取り、風呂に入ってパジャマに着替えた。ピノコはピンクの可愛らしいネグリジェ姿である。  
「今日は寝る時間が早いのよさ」  
「いいんだ。暇なときに睡眠を取っとかなきゃ、オペが続いた日にゃぁろくに眠れやしないさ」  
(ま、今から眠れないことをするわけだがな・・・)  
ブラックジャックの下心など見抜けるはずもないピノコは  
「はい、ちぇんちぇ〜おやすみのキッチュ!」と、頬に軽く口づけて自分のベッドに戻ろうとした。  
 
と、ブラックジャックに腕を掴まれ、ピノコはきょとんとして振り向いた。  
「待ちなさい、ピノコ。お前はわたしの奥さんじゃないのか?いつも自分で言ってるじゃないか」  
「えっ、そうらよーっ!ピノコはちぇんちぇーの奥たんらもん!」  
「なのにほっぺにキスだけで終わりか?・・・夫婦なら、もっとやらなきゃいけないことがあるだろう」  
「もっとやらなきゃいけないこと・・・?」  
 
ピノコには何のことやらさっぱりわからなかった。いつもと様子が違う先生に少し戸惑いながらも、『夫婦』であることを認められた喜びの方が大きくてあまり気にならなかった。「わたしと本当の夫婦になりたいだろう?」  
「うんっ!ないたい!」ピノコは真剣に頷いた。ブラックジャックは薄く微笑むと、そのまま顔を近づけてきて唇を重ねた。  
 
幼い少女のグミのような柔らかい唇に男のソレが甘く吸いつく。  
(・・・・・!!)  
ピノコが驚いたのはその先であった。強引に唇をこじ開けられたかと思うと、熱く湿った巨大な舌が口腔内を貪り始めたからである。  
「うあ!んっ、ん、んっ!!」  
最初に唇に触れたときの優しさが信じられないくらい、荒々しくピノコの口の中で暴れまわっている。生暖かい吐息と、舌に絡みついてくる他人の唾液──気持ち悪くてピノコは逃げようと必死になってもがくが、頭をがっしりと押さえつけられ横を向くことさえ叶わない。  
 
ちゅぱ、っと不快な音が鳴って、ようやくピノコは解放された。唇の周りの濡れた感触に嫌悪がさざめき立ちゴシゴシと拭ってやりたかったが、ショックで頭が痺れてしまい体が動かない。  
「・・・ちぇん、ちぇ・・・」  
やっとの思いで吐き出した言葉も最後まで聞いてもらえず、ベッドの上に押し倒されてしまった。  
「やあっ、やだぁっ!!」  
ブラックジャックの行為はますますピノコを混乱の沼地に沈めていくばかりだった。  
か細い首筋や鎖骨に舌を這わしつつ、潜り込んだ指先が捕らえた淡い果実を弄んでいる。  
 
「ちぇんちぇえ、やめて、やめて・・・」  
ピノコの無力な拒絶など当然歯止めになるわけもなく、男の悪戯はエスカレートしていく一方である。  
ネグリジェを胸の上までまくりあげると、まだ何の膨らみも見せない丘の頂きにある可愛らしい乳首を舌でつついた。  
「やあ、んっ・・・!!」一番敏感な先端をねっとりと攻めたてる。もう片方の果実も指先での刺激を怠らないでいた。  
「あっ、あっ、あんっ、あ、あっあっ」男の舌使いとまるでリズムを合わせているかのように勝手に体がピクピクと跳ねる。今まで経験したことのない快感にいつしか嫌悪感は薄れていた。  
 
(きもちい・・・ピノコ、きもちいよのさ・・・)  
ボーっと半ば夢見心地で漂いながら、ピノコはされるがままになっていた。  
が、パンティの中に手を入れられ割れ目をなぞられた瞬間、一気に押し寄せてきた恥辱や恐怖といった感情がピノコを正気に戻した。  
「いやっ!!」  
無抵抗になっていた幼女に安心しきっていたのだろう、いきなりの拒絶にブラックジャックは一瞬たじろぎ、その隙にピノコはするりと抜け出し隣りの自分のベッドに飛び乗った。  
 
ブラックジャックは内心の動揺を隠し、涙目で睨みつけてくるピノコにいつもと変わらぬ口調でなだめにかかる。  
「どうしたんだい、ピノコ?なぜ逃げるんだ。・・・わたしのことが嫌いなのか?」  
「・・・ちぇんちぇえのことは、大好き。けろ、ピノコこんなのイヤっ!どうちてあんな汚いトコ触ゆのっ!?」  
幼い少女は小さく震えながら枕をギュッと抱きしめている。憎しみなのか悲しみなのか、どちらとも判断のつかない瞳は今にも涙をこぼしそうだ。  
「汚い?・・・お前に汚いモノなどありはしないさ。」  
 
「うちょおっ!!あんなトコ、汚いもんっ・・・おしっこするトコなのよさ・・・」  
「おしっこする所だろうが関係ない。わたしはお前の全てが見たいし触れたいんだ。・・・恥ずかしい所も何もかもさらけ出してこそ本当の夫婦じゃないか。そうだろ?」  
「・・・・・」  
そう言われてしまうと、反論の言葉も喉奥に引っ込んでしまい何も出てこない。こんなはぢゅかしいことを我慢ちなきゃなやないの・・・?けろ、そえを我慢ちたら、ちぇんちぇえの本当の奥たんになれるんだ・・・・。  
 
ピノコの表情の緩和を鋭く察知し、ブラックジャックは満足して更なる変態行為に移った。  
パジャマのズボンを脱ぎ捨て、そしてトランクスを下に降ろす。  
「ピノコ、見なさい」言われるままに視線を走らせた。  
そこにあるモノは、ブラックジャックの冷静な顔とはまるで似つかわしくない、今にも蒸気を吹き上げそうなほどに膨張していきり立っていた。  
初めて目にするあまりの衝撃的物体にピノコは釘づけになり、本能から来る恐れなのかじりじりと壁ににじり寄り、身を縮こまらせている。  
 
「先っぽに割れ目があるだろう?男はここからおしっこするんだ。・・・ほら、わたしも一番汚い部分をさらけ出しているがちっとも恥ずかしくなんかない。むしろお前に見てもらえて、すごく嬉しいんだ」  
「・・・ちぇんちぇえ嬉ちいの・・・?ピノコに見られて、嬉ちいの・・・?」  
「ああ、嬉しいさ。すごくな。・・・触ってもらえたら、もっと嬉しいがな」  
「・・・・・」  
「・・・わたしのコレに触ってくれないか、ピノコ」  
ピノコの体がキュッと強張る。  
「・・・イヤか・・・?」  
 
時計の秒針だけが音を刻む空間の中、ブラックジャックの低く欲情を抑えた囁きがくっきりと反響する。  
ピノコは頭を縦にも横にも振ることができず、さまざまな生じた感情のせいでどう行動するべきか全くまとまらない状態にいた。  
じれったさに業を煮やしたブラックジャックは強行手段に乗り出した。  
「やあっ・・・!!!」  
おもむろにピノコの両手を捕まえると、そのまま自らの発情した息子にピタリと導いた。  
「ピノコ、いっぱい触ってごらん。・・・上下に手を、出来るだけ速く動かすんだ・・・」  
 
わけもわからぬまま、ただブラックジャックの命令に従ってピノコは懸命に慣れぬ愛撫を繰り返す。「いや・・・もっと強く、こすってくれ・・・そうだ、いいぞピノコ・・・その先っぽの割れ目も、指でグリグリ押してくれ・・・」  
 
言うとおりにしたら、何やら得体のしれない粘液が突然湧き出し、ピノコはとっさに指を引いた。  
「ちぇ、ちぇんちぇえっ!!おしっこついたよのさっ!!」  
「それはおしっこじゃない、本当だ・・・。好きな相手に触れられると自然に滲み出てくる、まあ本能の印みたいなもんさ・・・」  
(ちゅきな相手・・・)ブラックジャックの言葉は、ピノコの内に暖かいお湯となって注がれていった。どうしようもなく卑猥で否定的なこの行為も、その一言でほのかに愛おしい気持ちが芽生えてきたのだ。  
 
「・・・ちぇんちぇえ、ピノコさっきね、おっぱい触られてるときすっごい気持ちよかったのよさ・・・」  
「そうか」  
「ちぇんちぇえも、ピノコに触られて気持ちい・・・?」  
「ああ、気持ちいいな。・・・だがなピノコ、もっともっと二人で一緒に気持ちよくなれる方法があるんだぞ」  
「ほんとっ?ふたいで?」  
 
「ああ、そうだ。お前とわたし、二人一緒にな」  
そう言って、ブラックジャックは優しく腕の中に少女を抱いた。  
熱く堅いモノがパンティ越しに当たってきて、ピノコはビクッと腰を震わす。  
「なあ、ピノコ・・・二人で一緒に気持ちよくなろうじゃないか。そしたらわたし達は正真正銘、本物の夫婦になれるんだぞ」  
ブラックジャックの声も腕の力も、あくまで優しかった。なのに言い知れぬ不安がピノコを怯えさせ、体内は異常に脈打っている。  
 
ブラックジャックはピノコを抱きかかえると、そっとベッドにあお向けに寝かせた。そして白のコットン生地のパンティに手をかけた。  
「あっ、ダメえっ・・・!」  
慌てて抵抗する間も虚しく、一気に少女の大事な部分を覆っていた邪魔者は抜き取られてしまった。「綺麗だ、ピノコ。これの一体どこが汚いって言うんだ?」  
 
可愛く窪んだへその下方をたどっていくと、そこには剥き卵のようなつるつるとした盛丘が位置し、一本線が丁寧に横切っている。  
ブラックジャックは華奢な腿の間に割って入り足を閉じなくさせて、ピチッと閉じた割れ目を左右に引っ張った。  
「いやーっ!!やあ、やあーっ!!」  
これにはさすがに耐えがたいほどの羞恥に襲われ、ピノコは首を激しく振って拒絶の悲鳴を洩らした。  
「綺麗な膣だ・・・。美味そうな色してやがる」  
感嘆の言葉を終えると、何のためらいもなく彼は陰唇に舌を突き刺した。  
 
「やっ・・・!!」  
信じられない、いや、信じたくなかった。  
毎日排尿しているあのとてつもなくグロテスクで汚らしい肉の集落を、間近で見られただけでなく、よりにもよって最愛の人に舐められているなんて。  
しかももっとショックなことに、生暖かい舌が肉の周辺や裂け目の奥などひっきりなしに這いずり回るたび、思考が溶けていくほどの恍惚に侵されてしまうのである。  
(ピノコは変態なんら・・・こんな汚いトコをベヨベヨさえてこんなに気持ちいぃんらもん・・・)  
 
知識の乏しい幼い少女にとって、それはあまりにも絶望的な結果であった。  
耳に届く喘ぎ声がすすり泣くような音に変わり、ブラックジャックは行為を中断し顔を上げて見やった。  
「ピノコ・・・どうした。なに泣いてるんだ」  
「ちぇんちぇえっ・・・」  
頬に残る涙の光を反射させながら、途切れ途切れに悲痛の言葉を滲ませていく。「ピノコ、変態さんでごめんなのよさっ・・・おしっこするトコロをちぇんちぇえに舐められたら、気持ちよすぎて我慢れきなくなっちゃうんらもおんっ・・・!」  
 
ブラックジャックはフッと微笑むと、「ちょっと待っていなさい」と言って部屋を出ていった。  
すぐに戻ってきた彼の手には立て掛け式の大きな鏡があった。それをベッドの上に置く。  
ブラックジャックはあぐらをかき、その上にピノコを座らせ、足首を掴んで股間を開かせた。当然、正面の鏡には生々しい割れ目が鮮明に映っている。  
「やだっ!!」  
真っ赤になってそっぽを向こうとするピノコの顔をがっしり固定し、決して目をそらさせまいと説得する。  
「ピノコ、よく見るんだ。おしっこが出てくるのはこの部分だよ」  
 
そう言って、人差し指でぷにぷにと肉を示す。そして指は下の方へと進んでいった。  
「ここは膣と言うんだ。わたしが攻めていたのも、お前が感じていたのも、全部ここだったのさ。ここは愛する者同士だけが触れ合っていい場所、刺激を受け、興奮するようにもともと神様が作っているんだ。」  
「・・・・・」  
ピノコは無言で鏡に映る自分の“膣”を見つめていた。  
桃色の肉のヒダが重なったソコは、ブラックジャックの唾液に濡れ、ヒクヒクと呼吸している。  
「だからピノコ、お前は変態なんかじゃない。全く健康な、完璧な“女”だ」  
 
(女・・・・・)  
双子の一人としてこの世に生を受けることもなく、18年間、食べることも遊ぶことも誰かを好きになることもできず、ただの厄介者として姉の中で過ごしていた。  
ブラックジャック先生が、先生だけが、腹に残った異物と片づけず、彼女に『ピノコ』という名前と一人の人間としての価値や存在を与えてくれた。  
衝突したこともあった。  
養女に出された苦い記憶もあった。  
けれど結局、ブラックジャックは彼女を愛した。少女もまた、愛することの幸せ、愛されることの喜びを教えられたのだ。  
 
「・・・ちぇんちぇえー・・・」  
「どうした?」  
「ちぇんちぇえにギュウってちたあーい・・・」  
「ああ、いいよ」  
足首の拘束を解かれ自由になったピノコは、体をひねってブラックジャックの首周りに腕を回した。それに応えるかのように、男も身をかがめて幼い少女をしっかりと抱きしめる。「ちぇんちぇえ、大好きらよ・・・」  
「ああ、・・・わたしもだ」  
抱擁の最中、ふとすっかり縮んで垂れ下がってしまった男根にピノコが気づく。「ちぇんちぇえのコレ、元気なくなっちゃった・・・」  
「ん?なあに、お前がかまってくれたらすぐに元通りになるさ」  
 
そのとき、玄関を激しくノックする音が聞こえてきた。こんな時間にあの尋常じゃない叩き方・・・急患に違いあるまい。「ピノコ、おそらくオペになる。行くぞ」  
立ち上がりかけたブラックジャックを「あ、ちぇんちぇえ・・・」と、ピノコが呼び止める。  
「なんだ?」  
「オペが成功して、患者ちゃんが助かったら・・・また、続きちようね」  
もじもじと、頬を染めながら求めるピノコにブラックジャックは笑ってキスをした。  
「心配するな、わたしのオペは必ず成功してみせる」  
 
そう約束して去っていく彼の後ろ姿は、すでに優秀な外科医の鎧をまとっていた。  
唇に残った愛おしい人の余韻をしばし味わってから、服を着替え、幼い少女は光り輝く瞳と共にブラックジャックの後を追った。  
 
 
 
おしまい。  
 

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