「ん?出かけるの?」
玄関を開けると写楽が出かけようとする所だった。
「うん!ピノコちゃんと約束してて…」
嬉しそうに我が小さな弟は靴を履いている。
「…写楽…」
「ん〜なぁに〜?」
「靴ひも踏んでる」
「え?うわぁぁっ!」
タイミング悪く、写楽の先に出した足は靴ひもを踏まれた方だった。
写楽は両腕をバタバタさせて前につんのめり、転ぶのを避けるために、和登の腰に抱きついた。
「痛たっ!」
和登は小さく悲鳴をあげた。
そうだ、帰り道にジョーズと乱闘したんだっけ…
剣道部主将が聞いてあきれる。チンピラまがいの不良に負けたのだ。
「え、そんなに痛かった?」
写楽は和登のスカートをまくり上げ、腰に青あざを見つけた。
「わぁっ!ちょっと、これどーしたの…さ…」
写楽がスカートの中の青あざから和登に視線を戻すとそこには鬼のような形相の姉の顔があった。
「姉のスカートめくる弟がどこにいるかー!」
「…で?写楽にビンタしたと。」
涙目の写楽の頬に湿布剤を貼りながらBJは言った。
「ひどいよ、心配して見ただけなのに…」
写楽はぶつぶつと文句を言いながら訴える。
「じごーじとくよのさ。」
BJに湿布留めのテープを渡しながらピノコが言った。
「れでぃのスカートをめくるなんて、あ・り・え・な・いんだから!てんてー、ピノコ買い物行ってくるよのさ!」
ピノコは軽蔑するように言い捨てて、部屋を出ていった。
「ま、待ってよぅ!ピノコちゃーん!」
治療を終えた写楽はピノコの後を追い部屋を飛び出す。
「やれやれ…騒がしい奴らだ」
BJは写楽が開けっ放しにしていったドアを閉めると苦笑いして、部屋の隅に立っていた和登に視線をやる。
和登はいきなり向けられた視線に戸惑い、目をそらした。
「さて、次はおまいさんだ」
「い、いいわよ。手当なんて」
和登は動揺していた。
あんなことがあってから、BJに対して言葉にしがたい感情が生まれていたから。
「ただの青あざだもん、なんてことな…い…し……」
必死に診察拒否をするが、こちらに歩み寄ってくるBJの威圧感に和登の声はだんだん小さくなっていった。
「ただの青あざかどうかは、医者が見てみないと解らんだろう。」
じっと目を見て言われると、悔しいが逆らえない。
これが医者の力なんだろうか。
和登は拒否虚しく、叱られた子犬のようにしょんぼりして椅子に座った。
「何してるんだ?」
「何してるって…診察するんでしょ?」
「ああ。」
BJは和登の座る椅子に歩み寄ると、和登を抱き上げた。
「きゃっ!?」
「腰の診察は座ったらできんだろう」
BJの足は部屋の隅にあるベッドに向けられていた。
和登の中で嫌な予感と不安と言葉にしがたい不思議な感情が、ごちゃごちゃになりはじめていた。
BJは和登を診察用のベッドに降ろすと、和登のスカートのファスナーに手をかけた。
「ちょ!ちょっと!」
和登はBJの手を抑えて制止した。
「…なんだ?めくられた方が良いのか?私はどっちでもかまわんが…」
そう言って今度はスカートの裾の方に手を伸ばした。
「わーっ!そっちのが嫌!」
和登はなぜかスカートをめくられるのはどうしても嫌だった。
[だってスカートめくって診察ってなんだか卑猥だし…]
頭の中で言い訳をしつつ、自分がスカートをめくられ、横になったイメージ…いわゆるセクシーポーズと言うのだろうか。そんなものが頭に浮かんだ。
[ダメダメ絶対ダメ!そんな格好できない!]
頭からイメージを消すように小さく頭をフルフルと振った。
不意にカチャンと音がした。そして、ジーッと金属の擦れる音。
BJの手がスカートのファスナーを降ろしたのだ。
和登の脈が少し速まった。
診察なんだ。そう何度も心の中で唱えると、少し収まる気もした。
スカートを取り、和登にあざのある方を上に横になるように指示すると、BJは湿布や消毒剤などが乗った台をベッドの横に持ってきた。
それを見てさらに和登の気持ちが落ち着いた。そう、これは診察。ただの診察。
「いったい何をしたらこうなるんだ?」
眉にしわを寄せてBJはため息をついた。
和登の腰には拳大の青あざとその真ん中に細長い蚯蚓腫れができていた。
半分は下着に隠れているがそうとう大きな青あざだった。
「えーと…ちょっと男子生徒と乱闘して…」気まずそうに和登は言った。
「乱闘だと?」
「竹刀でビシーッとやられて…」
「なるほどね、おまいさんらしいや…下着下ろすぞ」
「えっ!」
返事を待たずにBJは和登の下着を膝のあたりまで下げた。
急に訪れた辱めに驚くが、たかが診察に取り乱すわけにいかない。BJに背中を向けた形で横になってるのがせめてもの救いだ。
歯をぐっとかみしめて恥ずかしさに耐えた。
形よく張りのあるお尻が露わになっているが、BJは医療用の薄いゴム手袋をして、数種類ある湿布剤を選んでいて全く気に留めてないようだ。
「さて、こりゃ相当染みるぞ…」
BJの手があざの下、お尻の柔らかい部分に添えられると、ピクッと反応した。
指先に軟膏のような物をすくい取り、蚯蚓腫れの部分にそっと這わせる。
「いぁっ!!……うぅぅ…」
ピリピリした激しい感触が脊髄反射のように伝わる。
情けない声をあげる和登に容赦することなく、薬を塗り込んでいく。
「ちょっ!しみるぅっ!…いたっ…あぁ……」
「染みるのが嫌なら乱闘なんか二度としないことだな」
どこかぶっきらぼうに言い捨てると、添えていた手で尻にパチンと平手を打った。
「きゃ!」
「全く、乱闘なんて女子高生がするもんじゃないだろうが…」
BJはぶつぶつ言いながら違う薬を手に取ると今度は両手に塗り込み、蚯蚓腫れの周囲のかすかに腫れたあざ部分を撫で始めた。
今度はそっと優しく、誤って蚯蚓腫れに触れないように塗り込む。
「……っ…ん…」
腫れのかすかな痛みと暖かな手の感触、ぬるぬるした薬の感触が混ざりあって、言いしれない気持ちが和登に沸き上がってくる。
ふと、電車で痴漢にあったことを思い出した。
あの時のお尻を撫でる手は死ぬほど気持ち悪かった。
あまりに気持ち悪すぎて我を忘れ、手加減も忘れ、犯人を病院送りにしてしまったのだが。
今日は逆だ。
あまりに心地良すぎて我を忘れそう。
[…お尻…触られてるのに……嫌じゃない…]
むしろ気持ち良い。
「……はぁ…」
声が出てしまいそうなのを誤魔化して小さくため息をつく。
このまま触られていたい。なんて思うのはおかしいんだろうな…と思った瞬間、暖かな手は和登の体を離れた。
代わりにひんやりとした湿布を貼られ、丁寧にテープで固定された。
事実上、診察と治療は終わり。
[…終わり…かな…]
勝手に動いて怒られる可能性もあるので、BJからその言葉を待った。
「……」
BJはゴム手袋をはずすと無言でベッドに腰掛けた。二人背中合わせ。
和登は背中を向けているので見えないが、ベッドに体重がかかり揺れるのを感じた。
「…頼むから」
BJはため息をつくと、頭を掻いて言った。
「…治療で感じるのは勘弁してくれないかい」
「!!」
和登は勢いよく飛び起きた。
うまく誤魔化したつもりだったのに。
見透かされてた。そう思うと恥ずかしくて、悔しくて頭に血が上りそうだ。
血だけじゃない。どうやら水分もあがってきたようだ。
知らない内にポロポロと涙がこぼれ落ちてきていた。
シーツの上にぱたぱたと涙が落ちる音に気づき、BJが振り向いた。
驚きと、ばつの悪そうな表情。
こんな顔、するんだ。和登は頭のどこかでそう思った。
「…あぁ…悪かったよ、泣くんじゃない…」
和登の頭を引き寄せて、子供にするように髪を撫でる。
「…あんまり、困らせないでくれ…」
「?」
和登は言葉の意味が分からずに頭を少し上げてBJの顔を見た。
「…治療で感じられると、我慢しきれん…」
BJには珍しく、少し紅潮した顔で言い切ると和登の唇に口づけた。
また初めて見る表情。なぜか少し嬉しくなった。
「んっ!ふぅ……」
激しいキスだった。突然のことに和登はBJの舌や唇にうまく答えることもできず、ただされるがままだった。
「ぷはっ…あっ!…やぁ……」
唇を離れると耳、首筋に舌を這わせる。
空いた片手では器用に制服のシャツのボタンをはずし、もう片方の手はしっかりと不安定に反らせた和登の体を支えていた。
「…気に留めない振りをしていたのに…」
鎖骨のあたりにキスをした後にぽつりと言った。
「……おまいさんは私の前で無防備すぎる」
唇は胸の柔らかい膨らみ部分にたどり着き、強く、長く吸った。
「あぁっ…痛…い…」
敏感な肌を強く吸われ、和登は声をあげる。
ブラははずされ、胸全体が露わになり、外気に触れたからか、先端はすでに堅く起っている。
BJが唇を離すと赤くあざが出来ていた。キスマークをつけていたのだ。
唇はさらに、乳首に舌を這わせる。
「はぁぁっ…ん…あっ…」
あまりの刺激に耐えきれず、和登は身を跳ねさせた。
暖かく、ごつごつした手が肌を撫でる。
吸っていない方の乳房に手を添えると、グッと掴むように揉む。
「んっ…ちょっ…と…痛い…あ…」
力が入っていたのは初めだけで、次第に柔らかい感触を楽しむようにむにむにと指を埋めたり乳首を指で押し捻るように愛撫する。
「あぁっ!やっ…くぅ……」
両方の乳首を同時に責められ、大きく声をあげた。
「…気持ち良いか?」
BJは唇を離すと、和登を見上げて言った。
和登はかすかにふるふると震えながら涙目で小さく頷いた。
「そうか…」
相手の快感を確認すると、和登の体を診察の時のように横向きに倒すと、そっと湿布の上から患部を撫でた。
「ふぅ…」
和登は熱っぽいため息をつく。
「私はおまいさんの体はとても綺麗だと思ってる…」
手は患部から太股あたりを撫で進み、和登の体を慈しむように見て言った。
内腿を撫で、局部の寸前でピタリと止まる。
「…ぁ…」
そのまま触れて欲しい。和登は心の中でそう思った。
「今日みたいに、あざなり傷なり作られると心苦しくてね。もうやめて欲しい。」
指先が、和登の触れて欲しいギリギリを通って止まった。
「以後気をつけると約束してくれるなら触れてやろう。」
まるで意地悪な取引だ。ずるい。
断れるわけ無い。
悔しさやプライドよりも、今触れて欲しい。
「…約束するから…お願い……」
和登は恥ずかしい気持ちを抑え、じっとBJの目を見て答えた。
BJは口の端で微笑むと、和登の上になっている足を持ち上げ、その間に自分の片足を入れた。
局部を完全に開いた体勢になる。指先がそっと触れると、かすかに水っぽい音がした。
「あ…」
濡れているのが解り、さらに恥ずかしさがこみ上げてきた。
「……凄いな…」
ぼそっとつぶやくと、指をぐにぐにと押しつけて撫でたり、時折中に指先を浅く挿れたりと水音を激しく立てた。
「い…あぁっ!やっ!あっ…ふぅ……ん…」
指の刺激に腰をビクビクと反応させる。
急に指の動きが止まって離れ、何か別の物の感触に変わった。
指より熱く、大きいそれは、和登の局部に添えられるとかすかにビクンと脈打った。
「あ……」
[アレだ…]
あの件以来もちろんだが誰ともしていない。
やっぱりあの時のように痛いんだろうか、不安が一瞬よぎったが今は期待の方が大きかった。
添えられた物は、割れ目に沿ってこすりつけるような運動を始めた。
「えっ!?やっ!はぁぁ…んっ…」
愛液をまぶすようにズルズルと動かすと、紅く腫れた突起にこすれて新たな快感が加わった。
抱えられた足をじたばたと動かそうとするが、BJにしっかりと固定されている。
「…いくぞ」
ぼんやりとした頭にかすかに聞こえると同時に、下半身に鈍い痛みが走った。
「ひっ!……はぁ…あ……」
次第にじわじわと自分の体に押し入ってくる物の熱が心地よくなっていく。
熱い異物の感触が奥まで進み、グッと押しつけるように腰を打ちつけられた。
「ひゃぅっ!」
「…キツいな…痛みはあるか?」
「あ…わか…ない……最初だけ…少し…」
紅く上気した顔で和登は答えた。
今は痛くない。むしろ中で脈打つかすかな動きに、快感を見いだしていた。
「動くのは少し待つか…」
そう言うと和登の抱えあげられた足にキスをして、舌を這わせた。「んぅっ…だめ、くすぐった…い」
ゾクゾクしながら抵抗の言葉をあげると、BJはすんなりとやめてくれた。
「これじゃ私がもたん。」
「え?…あっ…」
BJは足を抱えあげたまま体を前に倒し、和登に体重をかける体勢になった。
「……あれ以来誰かとしたか?」
「なっ!するわけ無いじゃない!!」
なんてこと言うの!と顔を真っ赤にして和登ははっきり否定した。
「だろうな…」
BJの口の端が少し笑ったようだった。
腰を引き先端を残して抜いた。
「いっ!…あぁぁ…」
壁にこすれる感触に下半身を震えさせる。
「道理でこんなに…キツい」
「ひゃぁっ!んっ!」
言うと同時にまた奥深く差し入れ、和登の膣内を埋める。
「あっ!…んっ…ひぁっ!」
数回繰り返すと、和登が喘ぎ声の間から言葉を投げた。
「せんせっ…この体勢…なん…か…へん」
以前の時とは違う、何かがあった。ゴリゴリと擦れるように当たるたび足が吊りそうな、全身に電流が流れるような感覚が襲う。
「…気にするな。あと少し、そのまま感じてれば良い」
若干腰の動きを早めると、和登の反応を見ながら微妙に角度や深さをの調整をする。
「いやっ!!あっ…あぁん……そこ、だめぇ!」
快感の中心を的確に捉えられた和登は涙目になりながら体中に力を入れて、どうにかなりそうな恐怖から逃げようとする。
「くそっ!…力を抜け、何も怖いこた無い…」
そっと空いた手を和登の乳房にのばし、優しく愛撫を始める。
「んあっ!ひっ!あぅっ!やっ!もぅ…だめ…だめぇっ!!」
ひときわ大きく叫ぶと、ビクンと全身を一度大きく跳ねさせた後、ビクビクと小さく足を痙攣させた。
「…全く…危うくこっちがもたないとこだったぞ…」
ため息をつきながら言うと、BJは余韻にぐったりとした和登の体をうつ伏せにし、膝を立たせた。
お尻を突き出した姿勢になる。
和登はぼんやりと[さっき想像した格好みたい]と思った。もっともスカートも下着もつけていないが。
「さて、私も限界だ…」
BJは高く突き出した形良いお尻に両手を添えると、和登の局部に狙いを定めた。
愛液が滴るほど濡れた入り口は、ぱっくりと口を開けて早く受け入れたいと訴えているようだった。
「悪いがちょいと激しくするぞ…」
言うが早いか、再び一気に後ろから突き刺す。
「んぁっ!ひっ…」
もう痛みは無い。敏感になりすぎて、挿入されるだけでいきそうになっていた。
BJは和登の腰骨あたりを掴むと、しっかりと自分の体に打ちつけ始めた。
和登の熱く湿った狭い膣内をぎっちりと埋め、奥深くまで楽しむように何度も力強く責める。
「あっ、やっ、やっ…うっ、あぁん…いぃっ…」
ズンと奥に響くたびに頭が真っ白になりそうだ。
うつ伏せの体勢で宙に浮いた和登の乳房は、BJの動きにあわせてぶるぶると揺れていた。
和登は快感の波にさらわれ、何がなんだか解らないような、ただひたすら与えられる快楽に身を委ねていた。
「もっ!だめっ!……あぁ…また、また…せんせっ!いっちゃう!!」
半狂乱で叫ぶように言うと、和登は無意識に腰を自ら動かし、大きな絶頂を迎えた。
「うぁっ!…和…登…あぁ…」
突然の腰使いと絶頂による激しい締め付けがBJを襲い、いっそう大きくストロークを加えると思い切り深く挿入し精を吐き出した。
和登は自分の体内に熱い物を感じながら、快楽の余韻と一つの幸せに酔っていた。
[…名前……呼んでくれた……]
「晩ご飯食べてくんれしょ?」
買い物から帰ったピノコと写楽は二人でキッチンで大騒ぎしていた。
本当なら和登も手伝った方がまともな食事にありつけるだろうが、いかんせん腰が立たなくなってしまっていた。
行為後、BJはテキパキとアフターピルを処方し、ぬるま湯で湿らせたガーゼで汚れた部分を拭いてくれた。
何となく気まずく、無言で服を着せられたが和登はなぜか幸せな気分だった。
あの瞬間、確かに名前を呼んでくれた。私を思って抱いてくれた。
それだけで胸が幸せでいっぱいになった。
「大丈夫か?」
BJが治療器具を片づけながら言った。一応キッチンの方も気にして、小さな声だった。
「…平気です」
気恥ずかしくて、突き放すような言い方をしてしまう。
BJは鼻でふふっと笑うと和登に軽くキスをした。
「さっきまではあんなに可愛かったのになぁ…」
唇を離し、目の前でニヤニヤしながら言った。
「なっ!!」
和登は耳まで真っ赤にして大声を出しそうになった自分の口をあわてて押さえた。
今度は和登の額にキスをして、言った。
「今度から定期的に、約束の確認をしないとなぁ。」
BJはからかうように、楽しそうに笑いながら、キッチンに戻っていく。
[…えらい約束しちゃったかも…]
和登の心臓はまるで壊れたように、ドクドクと音を立てていた。