―薄暗く荘厳な空気を漂わす、クロノス本部司令室・・・。
クロノスナンバーズリーダー、セフィリア=アークスは任務を終えたばかりの二人の
部下、バルドルとクランツを呼び出していた。
またこの二人か・・、とセフィリアは目の前の問題児二人を睨み付け、その口を開く。
「あなたたちに、二日間の独房室行き処分を言い渡します」
任務ご苦労様、というような第一声を期待していたバルドルは、セフィリアのその言
葉に顔をしかめた。
「そりゃねーぜ隊長。一応任務はちゃんとこなしたんだからよ」
不服の念を押し付けるバルドル。
「・・・だからといってそのために関係のない一般市民を100人以上も巻き添えに
するとはやりすぎです。戦闘狂であることは結構ですが、クロノスは見境のない殺戮
集団ではないのですよ」
バルドルは「ちっ」と舌打ちをするかのような表情をする。
クランツは無表情のまま。彼が表情を出すことはあまりない。
「・・・」
セフィリアは眼光するどく二人を見つめる。女性であっても彼女のその視線はとてつ
もない威気を放っている。
「ああ、わかった、わかったよ隊長。確かに今回は殺しすぎ・・・たような気もする
よ。じゃあ大人しく入るとするかクランツ」
そういって男二人はその部屋を出て行った。
「ふう・・」
管理職は疲れるものと相場で決まっているものである。
しかし、クロノスの場合は一般のその比ではない。
常に神経を張り巡らせておかねばらならない。その一瞬の判断が世界を揺るがすこと
になるのだから・・。
しかし、彼女も一人の人間であり、一人の女性である。いくらクロノスに命を捧げた
身であったとしてもそれなりにストレスが溜まり、欲求不満に陥ることもある。
ただ、そんな彼女には最近、それらを解消するあるものを手に入れていた。そのこと
を考えると自然と笑みが込みあがってくる。
(今日の任務も・・もうすぐ終わるわ・・)
まるで一般企業のOLだが、彼女はとにかく、それに夢中になっていた。そう、つい
最近捕まえた一匹のペットのことを・・・。
ピピピピッ・・・。
腕時計の電子音が鳴り響く。
それと同時に、部屋に司令務引継ぎをしにベルゼーが入ってきた。
「セフィリア、交代の時間だ」
「はい」
彼女は笑顔で必要書類をその男に渡す。
老け顔の男はその無邪気な笑顔に恋心を抱きそうにすらなる。ナンバーズリーダーと
しての威厳が、任務が終わったとたん女性の可愛らしさに変わってしまっていた。
「・・・」
「では、お願いしますね」
「あ、ああ」
戸惑うベルゼーを尻目に、コツコツッと少し早い足取りで彼女はその部屋を後にした。
「セフィ姉〜」
廊下でばったりとジェノスと出会った彼女。
「こんにちはジェノス。ごきげんよう」
だが、さっさと横を通り過ぎてプライベートルームへと向かう。ジェノスはあっけに
とられたような表情で彼女の後ろ姿を見送った・・。
プシュー。
本部の8階にある彼女専用の部屋。そこへ足を踏み入れると、セフィリアは真っ先に一
番奥の個室へと向かった。
そのドアを開けると・・そう、彼女のペットがいるのだ。
「ただいま、可愛い子猫さん」
「・・・・」
その猫は動かず、セフィリアをじっと見つめる。
「・・今日も機嫌が悪いのですか?」
「ったりめーだろ」
その猫はしゃべった。
「そろそろなついてほしいものですね」
「お前、やっぱり頭いかれちまったんじゃねーかセフィリア!」
声を荒げるはブラックキャットことトレイン=ハートネット・・、そう彼は今彼女
によってこの部屋で飼われているのだ・・。
頑丈な首輪をつげられ、部屋の中心に立っている杭につながれている。ハーディス
を没収されてしまった彼にそれをはずす術はない。故に、この部屋と付属トイレよ
り外へ出ることができない状態であった。
「餌を食べれば機嫌も直りますよ」
「メシなんてどうでもいいから、こっから早くだせって!」
「・・トレイン、何度も言いますが、あなたはクロノスという組織を離れた身なの
です。本来であればあなたは真っ先に処刑されている身なのですよ?こうして生か
されているだけでもありがたいと思いなさい」
「・・・・ちっ・・」
セフィリアは座っているトレインに近づいて、腰を下ろした。
「私はもはや、あなたの上司ではありません。私はあなたの飼い主です。そしてあ
なたは私のペット・・・そろそろ自覚してもいい頃ではないですか?」
「・・・」
トレインの脳裏に5日前、家を訪ねてきたセフィリアに不意をつかれ、気絶させら
れてここに連れられてきたことが思い出される。殺されることは覚悟していたが、
まさかこんなセフィリアの趣味につき合わされるとは思ってもみなかった。
セフィリアはゆっくりとトレインに近づき、そして彼の胸に顔をうずめ、その体を
抱きしめる・・。こうしてペットに甘えることが今のセフィリアにとって最高の癒
しとなっていた・・。
「ああ・・トレイン・・・」
「・・・」
あまりに隙だらけのセフィリア・・、殺そうと思えば簡単に殺すことができるだろ
う。しかし、彼女を殺してしまえばここに餓死するまで閉じ込められることは目に
見えている。故にトレインはその彼女の奇行を我慢しているしかなかった。
最初はただ抱きついているだけだったのが、日に日にその行動はエスカレートをし
ていた。4日目の昨日は口移しで飯を食べさせられていた・・。いくら美女のセフィ
リアといえど、そういうことをされるのはさすがのトレインでも気持ちが悪かった・・。
今日は一体どんなことをされるのか・・、幾多の拷問訓練を重ねてきたトレインであっ
てもその心配が頭から離れることはなかった。
トレインに抱きついて、首元にキスをしたり、髪の毛の手触りを楽しんでいるセフィ
リア・・。何故こんなことをしたがるのか、理解に苦しむトレイン。別にそういっ
た愛撫は逆に心地よいものだから別に嫌いなわけではなかった。しかし、さすがに
何時間もべったりしていられると、性欲的な自制心を保つのに苦労する・・。
「さて・・・、今日は体を洗いましょうか?」
なんだと・・?というような表情でトレインはセフィリアを見つめた。5日の今日は
風呂・・。心して覚悟していたこともあって、その普通な命令にトレインは少し拍子
抜けした。
「・・ああ、いいぜ」
「では、数十メートル程度ですが、散歩に出かけましょう」
セフィリアは杭につないである金具をはずして、金属紐を持ち、トレインを引き連れ
て浴室へと向かった。
(今、セフィリアを殺せば・・・)
そう、トレインの脳裏に浮かんだが、この部屋の鍵は9桁の暗証番号で開く仕組みに
なっている。彼女を殺してしまえばこの部屋から出られなくなることには変わりはない。
トレインは大人しく引き連られていくことにした。
浴室へと二人はきた。意外と狭い、一般的な浴室なんだなとトレインがきょろ
きょろしていると、セフィリアがおもむろにトレインの首輪をはずし始めた。
その重く窮屈だった輪っかがはずれると、次に彼女はトレインの服を脱がし始
める・・。
「お、おい、服くらい自分で脱ぐぜ?−っていうか、あんたも一緒に入るのか?」
「何を言っているんです?飼い主が飼い猫の体を洗ってあげるのは当然のこと
でしょう?」
閉口するトレインをよそに、彼女は思うがままに作業を進める・・・。
上半身は裸になり、ズボンも下げられた。身につけているのはボクサーパンツ
一枚のみ・・。そして、そのパンツにも手がかかる。
トレインは思わず、その身を退かせたが、元来、大胆な性格な彼は、彼女に自
分のモノを見られるのも快感かなと思い、堂々とした仁王立ちの姿勢に戻った。
―そして、黒のボクサーパンツがずりずりと下げられていき、休戦状態の彼の
モノがセフィリアの目の前にあらわになる・・。
「まあ・・・背丈の割には、すいぶん立派なのですね」
「・・・・」
まるで淫乱な女のようなセフィリアのセリフであるが、その彼女を見下げてい
たトレインは、うっとりと自分のペニスを見つめるセフィリアの純真な笑顔を
見て、微塵も汚らわしさを感じなかった。
素っ裸のトレインは先に風呂場に入るように彼女に言われ、それに大人しく
従った。トレインは体を洗うスペースに立ったまま、風呂場を見回した。ただ、
見回すという表現をするほど広くはなかった。
湯船にはお湯がたっぷり入っている。いつの間に沸かせたのだろうか・・?と、
トレインが疑問に思っていると壁に埋められた装置を発見する。
(ああ、適温を保てるようになってんのか・・)
ガチャッ・・。
脱衣所と風呂場をつなぐドアが開かれた。トレインはその方向に目を向ける。
彼は体中がべたべたしていたため、一刻も早く体を洗って欲しかったので、その
ドアが開く音は少し嬉しかった。
―しかし、彼の目にはそんな思考を一瞬で消し去るような情景があった・・。
「さて、洗いましょうか?」
女神のような美しさで微笑みかけるセフィリア。
しかし、トレインの視線はもはや、彼女の体の方に釘付けになっていた。
そう・・彼女は一糸纏わぬ姿になって、彼の前に現れたのであった・・。
「お、お前・・恥ずかしくねーのか?」
「飼い猫であるあなたに裸を見られて、どうして恥ずかしがる必要があるの
です?」
普段、服を着ていても色っぽさを隠すことなどできない彼女の魅惑のオーラ・・。
それが開放され、全身にぶつけられたような錯覚にトレインは陥った。目線
は自然と体に向いてしまう。大きくてものすごく形のよい、柔らかそうな乳
房・・。まだ、一時の穢れをも思わせないくらい綺麗なピンク色の突起。スー
パーモデルを思い寄らせるような、理想的なウエストの括れ・・。さらに視
線を下げると、綺麗な金髪に覆われた秘部が・・・。
「あらあら、Hな子猫さんですね?」
「あっ・・と・・」
トレインはふと我に返り、顔を背けた。
そんな彼を見て、再び微笑んだセフィリアは、トレインのすぐ目の前まで歩
いて、身をかがめた。
「なんて・・立派なのでしょう」
「へっ・・?あっ!」
トレインのペニスは、自覚症状のないまま、いつの間にか極限状態にまでそ
の姿を変えていた。彼はこのような状態でも素直に反応する自分の息子に、
ある種のたくましさを覚えた。
自分のブツをじっと見つめられたことなどないトレイン。セフィリアの視線
がそこに突きさるようで、変なくすぐったさを覚える。
「お、おい、そんなにじっと見つめられても・・・げっ!」
セフィリアはトレインのペニスをおもむろに右手で掴んだ。
―そしてその感触を確かめるように触り始めた。
「しなやかに硬くて・・いいですね」
「お、おま・・そ、そんな風に触れたら・・・」
女性特有の滑らかな手つきでそのかたまったものを優しく愛撫する・・。
トレインはしばらくの間、性欲処理をしていなかったため、体中の神経が
そこに集中するかのようだった。
シコシコ・・・サワサワ・・・。
「うっ・・ぐっ・・」
快楽の刺激に顔を歪ませるトレインの顔を見ながら、セフィリアは手を動
かし続ける・・。彼女にとって彼はもはやペットとしての感覚になってい
るため、女性としての羞恥などは存在していない・・・。
「うっ・・」
ピュッ・ピュピュッ・・・。
「きゃっ・・・」
溜まっていたものが吐き出されるかのように、あっけなく彼は精射をした。
そして、その白いものが彼女の顔へとふりかかった・・。
「・・こんなに早く射精されるものなんですね」
「い、いや・・」
トレインは思わず謝るか弁解するかしようとしたが、すぐに自分のおかれた立
場を思い出して口をつぐんだ。白濁に汚れたセフィリアの顔・・、彼はまさか
生きている間にこんな情景を眺めるとは思ってもみなかった。
「私、男性の性機能についてはよく存じていないのですが、一度精射されたら
しばらく時間をおかねばならないものなのでしょうか?」
「へっ?いや・・まあそういうわけでもねーけど・・」
「では体を綺麗にしながら性欲の処理も行いましょう。これも飼い主の役目で
すからね」
「へっ?」
セフィリアは液状ソープを手にとって立ち上がり、それをトレインの体に塗り
始めた。ぬるぬるとした感触がトレインの体をなぞっていく・・。
「少々、汗の匂いのあるあなたも魅力的ですが、今日は私と同じ匂いになるま
で綺麗にしましょう・・」
洗うというよりは洗剤を塗りこめられていくような感覚・・。そのしなやかな
手で体をまさぐられるトレインは再び下のモノを硬くし始める。
トレインの目の前には夢中になって自分にソープを塗りたくっているセフィリ
アの姿・・、まるで子供が泥遊びをしているかのように集中している・・。
トレインはそれを見取ると、もはや気兼ねすることなしに彼女の体を眺め始め
た。
その美しさは、彼が生きている中で最も美しい鑑賞物なのかもしれない・・。
男であれば女性の体を触りたい衝動に駆られるのは当然のこと。しかし、それ
を実行できるのは相愛の仲であればこそ。その辺のところはトレインはわかっ
ている。
しかし、もはやそれはこの異質なる関係で成立するものなのかとトレインはふ
と考える・・。
(・・・・)
「私を襲おうと考えているのですか?」
「はっ!?」
思わず声が裏返るトレイン。その瞬間的に人の思考を読むかのような彼女の洞
察力に思わずたじろぐ。
セフィリアは腕を休めてトレインの顔を覗き込む・・。
「何か神妙な表情で考えているようですが・・」
「い、いや・・」
「あなたは私の飼い猫にすぎません。飼い主に牙をむけばどうなるかというこ
とはわかっているかと思いますが・・?」
「ん、んなこと考えちゃいねえって・・」
「そうですか・・」