クリードに打ち込まれたルシフェルによって、子供の体になってしまったブラック  
キャットことトレイン=ハートネット。  
ティアーユの知恵を借り、無事に大人の姿に戻ることができたトレインであったが、  
子供の姿でいることを気に入ってしまったトレインはその日もスモールトレインに  
なってのんきに町を歩いていた。  
「きゃあ、あの子かわいい〜。」  
婦女子に大人気な小さなトレイン、露店でミルクを買い、飲みながら歩いていると後  
ろからふいに声をかけられた。  
「あんた・・・、また小さくなったの?」  
「んあ?」  
トレインが振り向くと、セクシーな衣装を着たリンスの姿があった。  
「よおリンスじゃねえか。こんな昼間っから散歩か?暇だな。」  
「って、あんたもそうでしょうが!それよりその姿はどうしたのよ・・?」  
「ああ、自分の姿を自由にコントロールできるようになったんだ。集中してイメージすれば  
すぐに大人の姿に戻れるぜ。」  
「ふ〜ん。」  
リンスは偶然を装っていたが、事前にスヴェンにトレインの行き先を聞いていた。密かに  
トレインに心を寄せるリンスは、自分のプライドの許す範囲でアプローチをし続けていた。  
 
「・・・・ところでさ、暇ならデートでもしない?」  
「はっ?リンスとか?・・・・お前・・今度は一体何を企んでんだ?」  
「なっ、失礼ね!こんな素敵なレディが誘ってあげてんのよ!周りの男たちがうらやましがっ  
て見ること必至よ!」  
「・・・・何を必死になってんだオマエ?」  
「べ、別に必死になってなんか・・。」  
グ〜、トレインのお腹がなる。  
「飯おごってくれるなら付き合うぜ!!」  
態度を一転させてビシッとOKサインを差し出すトレイン。  
「まあ・・いいわよ。(とりあえず・・。)」  
 
 
その頃、真っ黒なワンピースに身を包んだ寡黙な少女イヴは、図書館から出て、ご飯を食べよう  
と繁華街を歩いていた。アジトが図書館から離れていたため、昼御飯は外で食べることになって  
いた。きょろきょろと店を見回し、何を食べようかと物色する。  
そのときふと、前方に見慣れた顔がいることに気づいた。  
「トレイン!リンス!」  
「おお、姫っち!お前も飯か!」  
「イ、イヴちゃん・・。」  
いつもはイヴをこれでもかというほどに可愛がるリンスであったが、今日ばかりは目的がトレイン  
であったため、イヴは邪魔な存在であった。  
「ちょうどいいや、一緒に食べようぜ!」  
「うん・・、けどリンスどうしたの?・・・あ・・・もしかしてお邪魔・・かな?」  
「そ、そうねえ・・。(イヴちゃん、さすが!もうそういうことがわかる年頃なのね!)」  
「んなことねえって。」  
ドテッとこけるリンス。  
「姫っちもリンスにおごってもらえよ。昼飯代浮くぜ。」  
届きようのないリンスの気持ち・・。  
「・・・お昼浮けば欲しい本買えるし、じゃあ一緒にいい?」  
「ああ、じゃあこのイタリアンの店でいいな。」  
「(はあ・・。)」  
ガクッとうなだれながらリンスは、店に入っていく二人についていった。  
 
「それにしても・・・。」  
二人並んでスパゲッティを食べているトレイン(小)とイヴを見てリンスは思った。  
「何でこの二人、こんなに仲がいいの・・?」  
 
「姫っちソースがほっぺについてるぜ、とってやるよ。」  
「姫っちスパゲッティの食い方はそうじゃないって前、教えたろ?」  
「ひ、姫っち自由に食べていいから、指をトランスでフォークに変えて食べるのは  
やめろ!」  
「おいおい、姫っちタバスコかけるの忘れてるぞ。やっぱりこれがないと・・・。」  
イヴにしつこいほどちょっかいを出すトレインを見て、リンスは心中穏やかではなかった。  
「(ムカつく・・・。)」  
 
結局、リンスにとってお金だけ無駄になった昼食であった。  
「(ふう、けどこれでイヴちゃんも図書館に戻るだろうし、やっとデートが・・。)」  
「プルルルルルルル」  
イヴの電話が鳴る。  
「はいもしも・・、あっ、スヴェン!・・・えっ?うん、わかったすぐ帰る・・あっ、  
トレインも一緒にいるよ!・・うん、わかった言っとく。」  
「姫っち、どうした?」  
「次の仕事見つかったからすぐに帰ってこいって。」  
「おっ、そうか。」  
「・・・・(こ、こんなことって・・。)」  
再びうなだれるリンス。  
「リンス、飯おごってもらって悪かったな。それじゃ・・」  
「ま、待ってよ!」  
このままでは引き下がれないリンス。  
「なんだ?」  
「あっ、えっと、その・・・・たまには手伝ってあげるわよ、あんたたちの仕事。」  
動きが止まるイヴとトレイン。すぐに怪訝な表情をする二人・・。  
「リンス・・・、だからな・・・今回のお前の目的はなんなんだ!?」  
「もう、いい加減にしてよ!!人を信じないにも程があるわよ!!」  
どこまで自分は信用がないのかと痛感するリンス・・。  
「・・・トレイン、リンスが可愛そうだよ。今回は素直に手伝ってもらお・・。」  
「うーん、まあ姫っちがそういうならな。」  
「・・・・ありがとう・・けど何かムカつくわね・・。」  
そうして三人はアジトへと向かった  
 
 
三人がアジトに戻ると、スヴェンが帰りを待っていた。三十路の男としてはかなりいい線いっている髭の  
紳士、しかし、リンスレット・ウォーカーにとってはアウトオブ眼中だった。  
「―でトレイン、そういうわけでリンスが手伝ってくれるというわけか。(ふう・・)」  
「ああ。(ふう・・)」  
「何、二人揃ってため息なんてついてんのよ!!あたしがいればどれだけ役に立つと思ってるのよ!?」  
「―で今回の仕事の件だが・・」  
「無視するな〜!こら!」  
スヴェンは警察から取り寄せた資料を見せながら説明し始める。  
「今回の仕事は・・簡単に言えばカップルを襲う変質者を捕まえることだ。」  
「カップルを襲うって?」  
トレインが聞いた。  
「その犯人は男で、どうやら女がらみで酷い目にあったことがあるらしい。それで幸せそうなカップルを  
狙っては銃で脅して怪我させるなり、金品を奪うなりしているらしい。」  
「ふ〜ん。哀れな男ねえ。どうせ悪い女に騙されて捨てられたんでしょ。」  
とリンス。  
そのリンスをじっと見つめるトレインとスヴェン。  
「な、何よあんたたち!?」  
「・・・・いや別に(こういう女に騙されたんだろうな・・)。」  
視線を戻す二人。  
 
「−で、どうやって捕まえるかだが・・、囮捜査が一番手っ取り早くて確実だと思う。」  
スヴェンが提案する。  
「それって、私たちの誰かと誰かがカップルになりすまして夜道を歩くってこと?」  
―とイヴが聞く。  
「まあ、そんなところだな。それでだな、カップルの女性役だが、イヴにはまだちょっと無理があるから、  
リンスにやってもらいたいと思っているんだが。」  
「ふふ、もしかして私がいなければできない作戦ってこと?しょうがないわねえ、一肌脱いであげるわよ。」  
さんざん邪険にされてきたため、自分が役に立てるのがすごくうれしく感じるリンス。  
「それで男性役は誰がやるの・・?」  
とイヴ。  
男二人が視線を合わせる。  
「(リンスの彼氏役か・・・。)」  
「今回はスヴェンに譲るぜ。」  
「何を言ってる、リンスとお似合いなお前がやるべきだ。」  
「いやいや、最近アンタ、影薄いからやらしてやるって。」  
「いやいやいや、お前こそ平和ボケで腕がなまってるところじゃないのか?ここらで一仕事しておいたほうが」  
「いやいやいやいや、スヴェ・・・」  
ガスッ!ガスッ!男二人は倒れた。  
「いい加減になさい!!ムカつく!あたしの恋人役になれるんだから、普通取り合いになるはずでしょうが!!  
・・今回は、トレインにやってもらうわ。いいわね!!」  
「あ、ああ・・。」「お、おう・・。」  
 
「−で、今回はそいつが襲ってきたら捕まえてしまえばいいだけだから、お前ら二人で大丈夫だな。」  
軽い負傷を負ったスヴェンが言う。  
イヴがきょとんとした顔をした顔をしてスヴェンに聞く。  
「それじゃあたし達はお留守番ってこと?」  
「ああ、トレインがいるなら問題はないし、俺たちがいたら逆に犯人に勘づかれて足手まといになっち  
まうかもしれないしな。」  
「そっか・・。」  
「じゃあ、犯人が出没する午後8時ごろまでは適当にしていてくれ。」  
「わかったわ。」  
 
リンスは屋上に上がり、意外なところから舞い込んできたチャンスに胸を躍らせていた。  
「ふふふ。(演技とはいえトレインとデートか・・悪くないわ・・。)」  
リンスはそのまま空が暗くなるまでぼんやりと景色を眺めていた・・。  
 
午後八時。身支度をするリンス。大人の姿へと戻るトレイン。作戦は決行されようとしていた。  
「じゃあ、ちょっくらいってくるぜ。」  
「まかせといて!」  
二人が意気込む。  
「ああ、気をつけてな。」  
「頑張ってね。」  
スヴェンとイヴに見送られ、二人はアジトを出発してトワイライト公園へと向かった。  
 
その稀に見る美男美女のカップルに通行人たちは振り返っていた。  
「うおぉ、美人だな〜。あんな子が彼女なんて最高だなあいつ。」  
「カッコいい〜、いいなーあの娘。あんな彼氏がいて。」  
色々な賛美や皮肉がささやかれる。  
 
「トレイン、皆私たちのこと噂してるわね。」  
「んっ?ああ、まあ勘違いして言ってるんだから気にしても仕方ねえよ。」  
「もう、私たちは今は仮にも恋人なのよ。」  
トレインに寄り添うリンス。  
「おい、くっつかな。」  
「何いってんのよ、演技だってバレちゃおしまいなんだから、今から恋人気分でいきましょうよ。」  
「まあどうでもいいけどよ・・・とりあえず・・あんまり胸押し付けないでくれ・・。」  
「何よー、大サービスしてあげてるんだから素直に喜びなさいよね。」  
「いや、別に大サービスはいらないからよ・・・。」  
リンスは表向きは演技とは言え、トレインとのデートを満喫していた。  
 
今夜、変質者が出没するとスヴェンが予測したトワイライト公園に二人はついた。いい雰囲気の  
公園だが、カップルはいなかった。事件があってからというもの、この公園にはほとんどカップルが  
よりつかなくなったのだ。  
「きれいな公園ね・・トレイン。」  
「ああ。」  
「人気(ひとけ)のないところにいきましょうよ。」  
「ああ、変質者がねらってきそうなところにな・・。」  
二人は静まり返った公園を歩く。どんどん奥へと進んでいくうちに、人気(ひとけ)は全くといいほどなくなった。  
「ここらへんでいいんじゃない?トレイン。」  
「ああ、そうだな。そこのベンチにでも座って待ってみるか。」  
腰を下ろし、リンスはトレインにもたれかかる。  
「くっつくなって。」  
「何言ってんの、犯人は幸せそうなカップルをねらうんでしょ?だったら愛し合ってるふりをしなきゃ・・。」  
「・・・。」  
 
トレインとリンスはしばしの間、お互いの体に寄り添ったまま無言で時間をすごした。トレインはリンスに対して恋愛、性的感情を一切持ったことはなかったが、元々、上々ランクに位置される美女のリンスに密に寄り添っている内にだんだんそれとなく意識が芽生えてきた。  
 
「ふふふ、トレイン心音が早くなってるわよ?あたしとこんなことしてるからでしょ?」  
「あ、ああ?んなわけあるか。犯人がそばにいるかもしれねえからに決まってんだろ。」  
「ふふ、天下のブラックキャットが安っぽい変質者相手に動揺なんてするはずないじゃない。」  
「いいから黙ってろ。アホリンス。」  
「あたしの魅力に少しは気づいてくれたんでしょ?」  
「お前・・何言ってんだ・・?頭おかしくなったのか?」  
「もう・・、そんな憎まれ口叩く口はこうしてあげる!」  
リンスはふいにトレインの口唇に自分の口唇を重ねた。数秒間止まったような時間が過ぎる。  
トレインはリンスの肩を持って離す。  
「お、おい。何すんだよ!」  
「ほらほら、そんなんじゃ変質者に演技だってばれちゃうわよ。本当の恋人のようになろうよ・・  
せめて今だけ・・。」  
「えっ・・?」  
リンスは再びトレインに口唇を寄せる。お互いキスをした経験はほとんどない。甘くとろけるという表現  
そのままのねっとりとした時間が一秒ずつ過ぎていく。  
トレインは催眠術にかかるかのように、次第にその甘い感覚に満たされていった。リンスに魅力の「み」の字も感じることのなかったトレインだったが、今、目の前にしている彼女からは、別人かと思うほど強烈な色香を感じていた。  
トレインはリンスのテンプテーションに取り込まれていった・・・・。  
 
キスが終わり、しばし音のない時間が過ぎる。トレインはふっと自分の中で何かが解放されるのを感じた。  
無邪気な子供のような心、何かに対して心を開いて取り込まれたいというような心・・。  
幸せに溢れた表情をしているリンスに、トレインは話しかけた。  
「リンス・・・本当の恋人のように演技するんだよな・・・?」  
「ええ、そうよ。やる気になってくれたの?」  
「じゃあよ・・。」  
トレインはふいに右手でリンスの胸を揉み始めた。  
「あ、あ、いや、ちょっとトレイン!」  
「恋人なんだろ?だったらいいじゃん〜。」  
「あたし外でそういうことするのは・・嫌なんだってば!・・あ・・んんっ・・・。」  
トレインは左手でリンスの下半身をまさぐる。  
「ちょっとっ、ダメだってば・・。」  
ミニスカートの中に手を入れ、パンツの上から秘部を指でなぞる。  
「あ・あああ・・ひあっ・・。」  
さらに右手で豊かなバストをシャツ越しに揉みしだく。  
「あ・ああ・・んくっ・・やめ・・てって・・。・・・もうやめて!!」  
リンスは思いっきりトレインを突き放した。  
 
「はあはあ、あたし・・、本当に外でこういうことはしたくないの・・。」  
二人の動きが止まる。  
「けど・・・・・・・トレインが本当の恋人になってくれるなら、我慢する・・わ・・。」  
それはリンスからトレインへの精一杯の告白であった。  
トレインはしばしリンスを見つめた。そして少し笑って口を開いた。  
「・・・悪いな。俺は今はまだ気ままに生きる野良猫として生きていてえ。そういうことを真剣に考え  
るつもりはねえんだ。ただ・・。」  
「ただ・・?」  
「今はお前を・・。」  
トレインの目が獲物を捕らえる猫の目に変わった。  
 
トレインはリンスに襲い掛かった。  
「いや!」  
逃げようとするリンス、しかしトレインから逃れられるわけもなく後ろから羽交い絞めにされた。  
「いや!無理やりなんていや!!」  
「俺が好きなんだろ?だったら大人しく身をまかせてればいいんだよ!」  
「いや!やめて・・たら!!」  
両手でリンスの胸を揉み、熱くなったものをリンスのヒップに押し付ける。  
「うあ・・あん・・あ・・あ・・。」  
 
リンスをアスファルトの上に押し倒す。そしてパンツを脱がしにかかる。  
「い、いや・・!」  
塞ぐもののなくなった彼女の秘部を、トレインは荒々しくさすり始める。  
「ひあ・・あ・・ああ・ああ・・あ・ああ!」  
「なんだよ、結局ここはもうズブ濡れになってんじゃん。自分に素直になれよリンス。」  
にやっと笑うトレイン。  
「や、やめて・・」  
ブチブチブチッ!リンスの着ているシャツを真ん中から引き裂き、ボタンが跳ね飛ぶ。そしてピンクの  
ブラジャーに包まれた豊満な胸があらわになった。  
「ちょっと、いい加減にしてよ!もう!」  
リンスの抵抗を無視するかのようにはらいのけ、トレインは両手でその胸を大きく揉み始める。  
「ああ、う・・・ああ、あん・・。」  
「でかい胸してるとは思ったが、触ってみると改めて実感するな。」  
ビリリリッ!トレインはブラジャーを中心から引き裂いた。彼女のきれいな胸があらわになった。  
「・・・すげえ。」  
「やん!もうスケベ!変態!!」  
トレインは子供のように彼女の乳首にむしゃぶりつく。  
「うあ、いやん!いや、いやああ、くすぐったいっ・・!」  
胸に顔を埋め、指で乳首を刺激する。そして何度もその綺麗なバストを揉み回す。  
「いあ・・う・・はあ!あああ・・んっ!」  
 
「はあはあ、じゃあ、そろそろいただくぜい〜!」  
「なっ、ダ、ダメよ!そこまでしたら本当に私・・!」  
「なんだよ?」  
「えっ・・いや、・・・その・・・。」  
もはやトレインを嫌いになることなどできないリンス・・・。これが望まないことであったとしても  
トレインから離れることのできない自分の気持ちにリンスは戸惑っていた。  
「ドントシンク フィールってやつだ。考えずになされるがままになってな。」  
「あっ・・いや、ちょっと!」  
トレインはリンスの両足を持ち、彼のナニをおもむろにリンスの秘裂へと挿入する。  
「ああああ・あああ・・ああ!」  
「んあ・・気持ちいい・・ぜ。」  
トレインはゆっくりと腰を前後に動かす。  
「あっ!あっ!あっ!ああ・・ああ!」  
リンスの高い声が静かな公園にかすかに響く。  
「あっ!うっ!ああん、あっ・・あっ!」  
「じゃあ、もっと激しくいくぜ〜。」  
トレインは前後運動をさらに早くしてリンスに突き立てる。  
「ひあ!ああ!あん!あん!あああ、んぁ!」  
「はあはあ、へへへ、最高〜。」  
リンスの豊満なバストが前後に揺れる。  
「たまんねーな〜・・リンスの体は・・。」  
無邪気に笑うトレイン。  
「はあ!ああ!んっ、んっ、んっ・・。」  
「あっ、いく・・・・・・。」  
「あ、ああ、あああ〜!」  
 
「ふい〜、やっぱりオナニーなんかと全然違うな。めっちゃ気持ちよかったぜ〜。」  
トレインが馬鹿っぽく笑う。  
「・・・もう!馬鹿!」  
「そういうなよ、少しは悪かったと思ってるよ。なんつーか、性欲が暴走しちまったつーか、  
自分の気持ちを抑えられなくなっちまったていうか・・。」  
「・・・グス・・。」  
「あっ、ちょっとおい、泣くのだけは勘弁してくれよ!なっ!お願いだから・・・」  
 
ガサガサッ、近くの茂みで音がした。  
「んっ!!」  
「な、なに、あそこの茂みが動いてるわよ?」  
ジェイソンマスクをかぶった男が茂みの中から現れた。  
「ウオオオオオ!!!!」  
男はナタを持ってリンスに向かって突進した。  
「きゃあ〜〜!!」  
「危ねえ!!!」  
ガンガンガン!!トレインはハーディスで男を打ち抜いた。  
男はその場に倒れこんで動かなくなった。  
「あ、ありがとう・・トレイン・・。」  
「ああ。こいつがきっと犯人なんだろう。」  
「・・・・。」  
「じゃ、戻ろうぜ!」  
「・・・・うん。」  
 
トレインの腕前により、犯人は致命傷には至っていなかった。生け捕りであったので報奨金が高く、  
スヴェンも珍しく陽気に笑っていた。  
夜も遅くなったため、リンスはアジトに泊まることになった。  
 
 
次の日―。リンスは昨日の色々な疲れがたたって、昼の2時ごろまで眠りこけてしまった。リビング  
に降りていくと、スヴェンが新聞を読んでいた。  
「おはよー、紳士さん・・。いやもう「こんにちは」か・・。」  
「ああ、昨日はお疲れだったな。今回ばかりはお前にいい働きをしてもらって感謝してるぜ。」  
「ん〜、まあいいのよ。たまにはいいことしなくちゃね。じゃあ・・私も次の仕事があるから  
そろそろ行くわ。」  
「ああ。」  
「ところで・・・トレインは?」  
「トレインなら屋上じゃねえか?」  
「・・そう。」  
 
リンスは自分の複雑な気持ちについて、ある程度整理がついていた。結局、昨日のことが無理やりだったとしても、それでもトレインに対する気持ちは変わらなかった。そして、その気持ちに素直に生きてみようと  
リンスは決意していた。もう一度、トレインに告白しようと思った。例えまた受け止められなくても、自分の気持ちを素直に伝える、ただそれだけでいいと思っていた。  
 
屋上のドアの前で深呼吸をするリンス。  
「は〜〜〜ふ〜〜〜〜。よし!」  
リンスは勢いよくドアを開けた。  
 
 
「姫っち気持ちいいだろう〜。」  
「もう、やめてったら。」  
青空の下、イヴの体にじゃれつくトレインがそこにはいた。  
「うりゃうりゃ〜。」  
「いや、あっ・・あっ・・・。あ、リンス!」  
「へっ・・・・?」  
「・・・・・・・。」  
トレインの目の前にはためらいもなく銃口を向け、引き金を引こうとしているリンスの姿があった。  
「いや、お前ちょっと・・落ちつ・・け・・・」  
ドキューン!!ドキューン!!  
 
スヴェンは銃声を聞き、猛ダッシュで屋上へ駆け上がっていった。そこには血だらけで倒れている  
トレイン・・、それを見つめているイヴ・・がいた。いるはずの泥棒女はすでに消え去っていた。  
「こ、これは・・。」  
 
 
リンスは自分の止まっているホテルへと帰ってきた。これまで、何かを盗みにいって手ぶらで帰って  
きたことなどなかった。しかし今回だけは盗むことができなかった。  
「私にとって一番盗むのが難しいもの・・・それは・・・・・・あいつの心。」  
 
FINISH!  
 

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