ある夜、イヴはスヴェンの部屋の前にやって来た。
「・・・スヴェン、入っていい?」
「ん?イヴか?ああ、いいぞ」
ガチャ。
アジトにあった大きめの枕を抱えたイヴが立っていた。
髪には寝癖がついている。
「どうした?こんな夜中に?恐い夢でも見たのか?」
「ち、違うよ!」
子ども扱いされてムッとするイヴ。
「じゃあ何だ?」
「・・・・・・」
「?どうした?」
イヴが口をもごらせながら言った。
「・・・あのね、スヴェン・・・」
消え入りそうな声でおもむろに抱えていた枕をどけた。
「!」
そこには、赤い染みが広がっていた。
「夜起きたらこんなふうになってて・・・」
うつむくイヴ。
「どの本探しても載ってなくて・・・。私、病気なんじゃないかって・・・」
その場で泣き出すイヴ。
近づきながらなだめるように言うスヴェン。
「イヴ・・・。それはな、病気なんかじゃない」
「・・・ホント?」
イヴが訝しげな表情で聞いてくる。
「ホントだ。」
「じゃあ、なんなの?何でこんなところから血が出るの?
今までこんなことなかったのに・・・」
また泣き出しそうになるイヴ。
「それはな、イヴ。生理って言うんだ」
「セイリ?片付けること?」
可笑しな返答にスヴェンは笑いながら言う。
「違う違う。大人になり始めた証拠さ」
「ホント!?」
先ほどとは打って変わって嬉しそうに言うイヴ。
「ああ」
「じゃあ、私はもう大人になれるの?」
期待の目でスヴェンを見つめるイヴ。
「ははは。まだまだ先だ」
「・・・な〜んだ」
残念そうに言うが、顔は笑顔だ。
そんなイヴを見てほっとするスヴェン。
「さてと。その服洗っとくから脱いでくれ」
「え!?ここで?」
「ば、馬鹿いうな。部屋でさっさと着替えて来い」
「ハーイ」
部屋を出て行こうとするところで、イヴが振り向いた。
「・・・スヴェン、ありがとう」
パタン。
「・・・ふう」
(しっかし、イヴもとうとう・・・。考えても無かったな・・・)
一安心だが、複雑な気持ちのスヴェンであった。
翌朝。
「おー姫っち。早いじゃん」
10時にようやく起きたトレインが言う。
「・・・トレインが遅すぎるの。それに、『姫っち』なんて呼び方、もうやめてよね。
私はもう子供じゃないんだから」
威張るように言うイヴ。
「?どういうこった?」
「だってわたしもう、せ・・・」
「だーーーーーーーーー!!!」
いきなりキッチンから飛び出し、イヴの口をふさぐスヴェン。
「モゴモゴ・・・」
「おわっスヴェンなんだよいきなり!」
「い、いや、なんでもない。そ、それよりトレイン、朝飯できてるぞ!」
妙な口調で言い訳するスヴェン。
「おっそうか!」
言うか言わないかのうちに、キッチンへと駆け出すトレイン。
「・・・ぷはっ。もう!なにするのよスヴェン!」
「まあまあそうカリカリすんなよ姫っち。やっぱまだまだ子供だな!」
朝食にかぶりつきながら言うトレイン。
「なによ!トレインに言われたくないもん!」
(ふう・・・)
・・・・・・一難去ってまた一難。
今度はイヴに保健体育二時間目を受講しなければいけないスヴェンであった。