ブラックキャット  
 

極私的・来週の展開予想  

薄暗い部屋の中。ギシギシと軋むベッドのうえで、一組の男女が絡み合っている。  
上半身裸の男が、一声低く呻くと動きを止め、ややあってスッと身を離した。  
「驚いたよ、サヤ=ミナツキ。お前が処女だったとはね」  
両腕をまとめてベッドの天板に縛り付けられた浴衣姿の女に向かい、嘲るように言葉を投げかける。  
女の割り広げられた両脚の付け根から、鮮血が一筋流れ出て、秋桜模様の浴衣に染み込んでいた。  

ミナツキ=サヤは半ば呆然としたままで、この悪夢のような出来事を振り返る。  
いきなり部屋に入り込んできたこの男に対し善戦はしたものの、所詮は一介の掃除屋、組み伏せられた挙句、ベッドに拘束されてしまった。  
クリード=ディスケンスと名乗るこの男は、明らかに狂った目で、自分を「トレインを堕落させた女」と罵り、報復と称して陵辱したのだった。  
もちろん、彼女も黙って犯されたわけではない。激しい抵抗を物語るように、浴衣のはだけた胸の合間には今も玉のような汗が光っていた。  

「体を使ったんでなければ、一体どうやってトレインをたらし込んだんだい?」  
クリードはサヤのキレイな黒髪を掴むと、涙に濡れた顔を無理やり自分のほうに向けさせ、尋ねた。  
サヤは、苦痛に顔をゆがめながらも、憎しみよりはむしろ哀しみを込めた瞳で語りかけた。  
「アンタは勘違いしてるっス。トレイン君は自由を見つけただけ・・・・アタシもトレイン君もお互いに自由なんスから・・・キャッ!?」  

髪の毛を掴まれたまま、頭を激しくベッドに押し付けられたサヤが恐る恐る目を開くと、クリードがこめかみに血管を浮き立たせて震えていた。  
「自由? 笑わせるな。トレインを自由にできるのは、この世で僕しかいない!」  

逆上した自分を鎮めるように、何度か肩で荒い呼吸をした後、ようやく正気に戻ったクリードはゾッとするような冷笑を浮かべ、ポケットから一本のアンプルを取り出した。  
「お前は自分が自由だと言ったね、サヤ=ミナツキ。今からそれが本当かどうか試してみようじゃないか」  

片手でアンプルの首をパキンと折ると、サヤの顔を押さえつけて中の液体を無理やりに嚥下させる。  
「ゴホッ、ゴホッ・・・な、何なんスか、これはっ」  
「フフッ、“道”という言葉を聞いたことがあるかい。お前は東洋人だから知っているかもしれないが」  
サヤも、実際に目にしたことはないが、“道”と“道師”についての情報は得ていた。人体に内在する氣の力によって人外の技を遣うという。  
「これは任務の途中で知り合った道師から貰った薬でね。要するに強力な媚薬だよ。これで、お前の心が、自分の身体からすら自由ではないと証明して見せよう」  

クリードの台詞が終わらないうちから、早くもサヤの身体に変化が訪れる。  
ドクッ・・ドクッ。脈搏が突如早くなり、熱い血液が全身を駆け巡る。冷えかけていた体が汗ばむほどに熱を帯びてきた。  
それだけではない。身体の深奥、最も秘められた部分から得体の知れない感覚が湧き上がり、鼓動とともに広がっていく。  
(そっ、そんなっ・・・)  
驚くべきことに、先程の陵辱による股間の引きつるような痛みすら、ジンジンと快感に変わりつつあるのだ。内部がジュンと潤むのを感じる。  

「いっ、嫌っ!・・・あんっ!」  
首を振って正気を保とうとした瞬間、体中に激しい衝撃が走った。あまりの強烈さに、最初はそれが快感であることすら分からないほどであった。  
知らぬ間に、全身の皮膚が極限まで敏感になっていた。わずかな動きでさえ、浴衣との摩擦で堪えきれないほどの刺激を与える。  
サヤは身を硬くして、この激しい疼きに耐えるしかなかった。  
「触って欲しくなったらいつでも言ってくれ」  
クリードは相変わらず冷笑を浮かべながら、サヤの苦闘を眺めている。  

「誰がっ・・・んっ・・・こんなの・・・大したこと・・・はぁっ・・」  
枕元の男に反抗的な視線を送りながら、精一杯の強がりを吐く。が、動きを止めたことで、逆に体内には中途半端な淫欲が充満しつつあった。  
(動いちゃダメっ・・・動いちゃ・・)  
考えれば考えるほど、体はその思考の抜け穴を探し始めていく。  
自分でも気がつかないうちに、ピンと伸ばした両脚をギュッと締め付け、中心の密やかな花芯へと刺激を送り込んでいた。  

ジッと身を硬くしたままの体。閉じた瞼だけがピクっピクっと時折震え、内面での苦悩を伝えている。  
全身を侵しはじめた快感に、徐々に思考が奪われ、霞がかかったような意識で、サヤは異変に気づいた。  
(あれっ・・なんか・・変っ)  
頭が真っ白になるほどの快楽がゾクゾクと背すじを伝わって押し寄せてくる。思わず小さな呻き声が上がった。  
「くっ・・・ぁぁっ・・」  
「どうした? もうお終いかな」  

クリードの冷静な声でハッと我に返ったサヤは、知らないうちに悦楽の頂点に向かっていた自分に気づき、ギュッと唇をかみ締めた。  
「こんなの・・全然・・・平気っスよ」  
気丈に言い切った瞬間、クリードの手が素早く浴衣の合わせに入り込み、もうヌルヌルに潤みきった肉裂を撫上げた!  
「・・・っっ!!」  
物も言えず絶頂に押し上げられたサヤの体がガクガクと跳ね、ベッドへ沈み込む。  

「・・ハァっ・・・はぁっ・・・んん・・・」  
信じられないような衝撃に打ちのめされ、言葉もなく荒い呼吸を繰り返すサヤ。  
「とことん癪にさわる女だな。お前の体はとっくにお前を裏切ってる。そうだろう」  
クリードは、まだ絶頂の余韻を味わいながら小刻みに震える体にのしかかり、激しい愛撫を開始した。  
もう体にまとわりついているだけの浴衣をグイと肌蹴させると、上向きになっても型崩れしていない、美しい乳房が顕わになる。  
「見ろ。この尖りきった乳首を。こんなに欲しがってるぞ」  
片手でパンパンに張り切った乳房を絞り上げられ、その頂点の充血した真紅の乳首を口に含まれ甘噛みされる。  
もう一方の手は、もはや閉じることさえ出来ない両脚の狭間にもぐりこみ、ピチャピチャと激しい水音を立てながら、大きく勃起したクリトリスを擦りたてている。  
「ああっ!・・・だっ・・ダメぇっ!・・・もうっ・・・っくううっ・・イクうっ!!」  
抗うことのできない激しい悦楽の波に翻弄され、連続して絶頂に叩きつけられたサヤは、最後にガックリと顔を伏せたまま意識を失ってしまう。  
「フンっ・・もう少し頑張ってくれないと面白くないな」  
クリードはそう言い捨てて暫く思案していたが、ふと思いついたようにサヤの愛銃を取り上げ、ニヤリと酷薄な笑みを浮かべた。  

「んっ・・・ぐぅっ!?」  
朦朧としたまま快楽の余韻に浸っていたサヤは、口元に冷たいものを押し込まれ、ハッと意識を取り戻した。  
「口ほどにもないな、サヤ=ミナツキ」  
冷酷な表情のクリードが自分の口中に突きつけているのが、自分の愛用の銃であることに気づき、全身の毛が逆立つ。  
「こちらもそう簡単にイかれてしまっては張り合いがないよ」  
サヤの顔が、屈辱で火のように赤く染まる。  
「そこでだ。一つ賭けをしよう。今からもう一度お前を犯す。お前がボクより早く達したら、この引金をひくぞ」  
「ひっ・・ひやっ!・・・んぐうっ・・・ほんあぁ・・・っ!」  
口を塞がれて、訳のわからない叫びを上げながら激しく抵抗するが、もうクリードの体は両脚の間に割り込んでおり、押しとどめることは出来ない。  
「いくぞっ」  
ぞぬっ!  

先程無理やりこじ開けられたばかりの処女孔に、またも肉棒が突き込まれた。  
「ふあぁっ!?」  
死の恐怖も吹き飛ぶほどの快感がサヤを襲い、大きく叫んでのけぞる。  
(なっ・・何でっ? 感じちゃダメっ・・・)  
「ん?さっきとは具合が違うな」  
ピストンを開始しながら、クリードが呟く。  
「さっきはキツイばっかりだったが、今度は自分から締め付けてくるぞ。お前、楽しんでるな?」  
「んんっ!」  
サヤは激しく首を横に振る。  
「まぁいい。体のほうが正直みたいだからな」  
余った片手で乳房を揉みしだきながら、激しく腰を遣う。二人の結合部からは大きな水音とともに淫液が絶え間なく汲み出され、シーツに水溜りを作っていく。  
(ああっ・・・ダメッ・・絶対・・感じたりしちゃ・・・)  
頭では考えているのだが、クリードの腰の動きに自分が合わせてしまっていることに気づくことも出来ないほど、快楽に飲み込まれてしまっていた。  
「ククッ、だいぶ気分がでてきたようだな。でも忘れるな」  
ゴリッ。銃口が一際強く押し込まれる。  
「ああっ・・・」  
(くぅっ・・まだ死にたくないっ・・でもっ・・・もう・・・)  
恐怖も、屈辱も、痛みも、全てが快感に変わり、サヤの意識を白く染め上げていく。  
一筋の涙が赤く染まった頬を伝った。ついに全ての抵抗をあきらめると、溜まり切った欲望が急激に頂点へと向かって駆け上っていく。  
「おおっ・・急に締め付けがキツくなってきたよ。そろそろ諦めたかい」  
クリードは、まだまだ余裕たっぷりに言うと、大きな腰の動きでサヤを追い詰めていく。  
「そら、無様なイキっぷりを見せてみろ!」  
「ふあっ・・ああっ・・ああっ!」  
屈辱のためか、快楽のためか、本人にも分からない涙をポロポロとこぼしながら、サヤの体が大きく波打った。  
「いいぞっ・・・それっ・・・逝けっ!」  
「くぅっ!!」  
クリードの体を乗せたまま、引き締まった体が弧を描き、ビクっビクっと震えると、やがて力尽きたように崩れ落ちた。  

 

「ふぅっ・・・はぁ・・・」  
もうこの世の全てから解き放たれたように、恍惚とした表情で荒い息を吐くサヤの耳元で冷酷な声が聞こえた。  
「イッたな」  
全身の血が沸騰したかのように脳裏が真っ赤に染まる。  
(死ぬっ!!)  
銃を持つ手に力がこもり、引金をゆっくりと引く音が、やけにハッキリと聞こえた。  
ガチッ!  
瞬間、恐怖の臨界をこえたサヤの股間から、生暖かい液体がチョロチョロと流れ出した。  
「おい、だらしなくイッたと思ったら、ついでにお漏らしか。本当にくだらない女だな」  
クリードが罵る。  
「こんな醜い殺し方はボクの美学に反するからね。最初から弾は抜いてある」  
魂の抜けたようなサヤの顎を掴んで引き寄せると、勝ち誇ったように言い聞かせた。  
「これで自分の身の程がわかったろう。次はボクを満足させるんだ」  
戒めを解き、自分のいきり立った股間を誇示すると、もう全ての自我を失ったサヤはのろのろと顔を近づけていく。  
肉感的な唇に自分の逸物を出し入れしながら、クリードはほくそえんだ。  
(ククッ・・まだ時間はたっぷりある。この女を徹底的に壊してやれば、トレインの考えも変わるだろうな)  

 
 

数日後、ようやくクロノスの制裁から開放されたトレインは、サヤのアジトへ向かい急いでいた。  
(あいつ、少しは心配してるかな。また小言でもいわれるかもなぁ)  
思いつつも、その顔は晴れ晴れとしている。  
サヤのアパートのある通りにさしかかったとき、アパートの中から一人の男が出てきて人混みに消えた。  
(ん?今のは・・・)  
嫌な予感がして駆け出したトレインは、すごい勢いで階段を駆け上る。  
サヤの部屋の前に辿り着いた瞬間、y=ー( ゚д゚)・∵.ターン と銃声が響いた。  
「サヤっ!」  
部屋に飛び込んだトレインが見たのは、自ら頭を撃ち抜いて倒れたサヤと、震える筆跡で書き遺された遺書だった。  

『トレイン君、ごめん。私は自由になれなかった。トレイン君は本当に自由に生きてね』  

 

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