ブラックキャット  

光が筋を描きながら足元を優しく照らし、足元のそれが大理石である事を教えてくれる。部屋のあちこちに置かれた花から、心地よい香りが彼女・・・時の番人ナンバーT「セフィリア」の鼻をくすぐった。  
セフィリアは今、クロノナンバース本部最上階の執務室にいた。  
巨大な執務用の机と椅子がある以外は何も無いが、純白の大理石でできたその部屋は、その空虚さが帰って荘厳ですらあった。  
その純白の部屋の中で一箇所だけ異質なものがあった。  
それは机の上に載った漆黒の塊である。  
・・・それは漆黒の剣・・・いや、漆黒のオリハルコンの剣に貫かれた拳銃であった。  
「・・・今度は逃がすつもりはありませんよ・・・黒猫さん」  
セフィリアは誰に語るでもなく、そう呟いた。だが、その静寂を破る者がいた。  
「本当に・・・こうするしか方法は無かったのか?」  
「・・・・ベルゼー。聞きたいのですか?分っているのでしょう?それをあえて私の口から聞きたいのですか?」  
ベルゼーと呼ばれた男・・・時の番人の一人は、それを聞いて口をつぐんだ。  
「もはや時間はありません。無理やりにでもトレイン・ハートネットには  
我ら、時の番人の一員に戻ってもらわねばなりません。そのためには  
過去の過ちを繰り返してでも・・・飼い猫になってもらわねばなりません。  
野良猫の期間はすでに終わったのですから」  
「しかし・・・」  
なおもベルゼーは渋った・・・が、セフィリアの瞳を見た途端、口を閉じた。  
セフィリアの瞳には海のように深い哀しさだけがあった。  
「申し訳ありません・・・御意のままに・・!」  
「よろしい」セフィリアは微笑で、ベルゼーの一礼に答えた。  
ベルゼーは気づいていなかった。  
セフィリアの瞳に潜む・・・哀しさよりもはるかに大きな嗜虐の炎に。  

「ふぅ」トレインは何十回目かのため息を吐いた。  
ベットの足に、高手後手に縛り上げられた両手がくくりつけられている。  
背中をベットに預けながら足を床に投げ出し、トレインはただ唇を噛み締めた。  
縄抜けももう数え切れないほど試した。  
だが、オリハルコン製の特殊ワイヤーと、クロノナンバーズ独特の緊縛術によって、拘束された腕はピクリとも動かす事ができない。  
もはや手も足も出ない虜囚であった。  
もうどれ位ここにこうしているだろうか。  
「・・・・まさか時の番人が、プライドも捨てて奇襲をかけた挙句、二人がかりで来るなんてな・・・」  
トレインは一瞬で始まり、次の一瞬で終わった戦いを思い出した。  
攻撃を受けたのは、依頼主から報酬を受け取った後、トイレに行こうとイヴたちから離れ一人になった瞬間だった。  
ベルゼーの最初の攻撃は防いだが、その攻撃に気を取られた一瞬の隙に、セフィリアの漆黒の剣に銃を貫かれ、そのまま峰うちを喰らった。  
記憶はそこで途切れていて、気が付くとこの部屋にいたわけである。  

(また・・・この部屋に来る羽目になるなんて・・・)  
トレインはクロノナンバース時代にこの部屋に幾度となく足を運んでいた。  
ここは、クロノナンバース本部の地下45階セフィリア専用フロアの中に一室である。  
中央に柱、側面に硬いベットが一つと、部屋全体を流水で洗い流せるような流水孔、巨大なシャワーがあるだけの恐ろしく殺風景な部屋であった。  
忌々しい悪夢だけがつまった部屋であった。  

下肢が疼くような圧迫に苛立ちがつのる。先程から感じ続けている尿意はますます酷くなってきていた。  
セフィリアが出ていってからもう三時間になるだろうか。  
焦燥が、トレインを襲っていた。  
「少々着替えてまいりますから、ちょっとの間こうして待ってて下さいね」  
そう言ってセフィリアが出て行ってから、もう随分になる。  
裸足の爪先がせわしなく大理石の床を這い、眉がキュッと寄せられた。  
ズボンに包まれた太股が、ふくらはぎが痙攣するように震える。  

じっとりと滲む汗に不快を感じながら、トレインは伸ばしていた脚を曲げて膝頭をギュッと摺り合わせた。  
「う……っく……」  
喉の奥から思わず苦し気な声が洩れる。  
後ろに回された腕に両手の爪をきつく食い込ませ、トレインはただ部屋の扉をセフィリアが開けるのを待った。  
その肩が大きく上下する。  
摺り合わせた内腿が痙攣する様に震えていた。  
フ……と僅かに、トレインの脳裡に最悪の状況が浮かんだ。  
もしこのままセフィリアが帰って来なかったら……?  
「ッ…………」  
トレインの腕を捕えているオリハルコン・ワイヤーは酷く強固で、薄いシャツ一枚を隔てた皮膚に深く食い入っていた。  
もう一度、トレインはゆっくりと考える。  
もしこのままセフィリアが帰って来なかったら……。  
けれどトレインがもう一度大きな吐息をつこうとした時、遠くで微かにドアの開く音が聞こえた気がした。  
「セフィリア……?」  
弾かれた様に頭を上げ、ほぼ正面に見える扉を見つめる。  
果たして、廊下を歩く音に続いてガチャリとノブが回り、セフィリアがようやくその扉を開いて入って来た。  
その瞬間、トレインは息を呑んだ。セフィリアの姿はいつもの黒いスーツ姿とは似ても似つかない姿だったからだ。  

まるで娼婦か何かのように露出の高い姿であった。  
胸元を強調し大きく開いたビスチェ、紐のように細いTバックショーツに  
その豊満な体を包み、その繊細な指は二の腕までのロンググローブに包まれ、  
無駄な肉の無いほっそりとした美脚は針のように細く尖ったピンヒールのロングブーツを履いていた。  
それらの素材は真紅で染められたレザーでできていて、まるで朝の霧のように白いセフィリアの肌に、まるで血染めのような禍禍しい妖艶さを与えていた。  
その妖艶な輝きを見た瞬間、トレインの脳裏に封印してきた無数の過去の情景がよぎった。  
「遅くなって済みません、私も少々久しぶりでしたので、気が浮き立って、ついあれこれと着替えに迷ってしまいまして」  
「セフィリア……ワイヤーをほどけ」  
悠長に言うセフィリアに対して、トレインは半ば叫ぶ様に言った。  
その声にセフィリアは微笑し、ベッドに――トレインが縛り付けられているすぐ横の所に腰をかける。  
トレインを上から見下ろす様にしながら、セフィリアはやはり呑気そうに口を開いた。  
「どうしたのですか、トレイン。そんなに慌てた口調で・・・?」  
そういうと、トレインの頭を軽く撫でてから、額にキスして、耳朶に指を這わせる。  
「ッ……セフィリア……!」  
セフィリアが帰って来た事への安堵からか、トレインの中の尿意は一層激しいものになっていた。  
その上に、セフィリアが意地悪くトレインの敏感なところを皮手袋越しに、指先でくすぐり始める。  
セフィリアの指の動きに全身が弛緩しそうになり、トレインは合わせた膝頭に力を入れて、涙さえ滲んだ目でセフィリアを見上げた。  
「……どうしたんですか?」  
もう一度セフィリアが優しく尋ねる。  
「…………」  
僅かに口を開き、けれど逡巡した様に目を伏せて、トレインは口を噤む。  

それを見てセフィリアは小さく笑むと、ベッドに腰掛けたままの上体を大きく屈めてトレインの耳朶にそっと唇を押し付けた。  
「っ……ぅ、あ……っ……」  
耳たぶを舌先で軽くくすぐってやると、トレインの顎が小さく跳ねる様に仰け反る。  
その刺激に促進された全身の欲求に、トレインは耐え切れずにもう一度口を開いた。  
「……セフィリア……トイレに……」  
切れ切れに、羞恥を押しながら言う。  
荒い吐息に交じったトレインのその声を、セフィリアは目を細めて楽しそうに聞いていた。  
「早く……!もう……っ……」  
急かす様にトレインが叫ぶ。  
セフィリアはゆっくりとベッドから立ち上がると、トレインの正面に回ってその場にしゃがみ込んだ。  
見世物でも眺めるかの様なセフィリアの目に、トレインは瞬間激しい不安に襲われる。  
「……セフィリア……?」  
震える声で名を呼ぶ。  
「どうしました、トレイン」  
帰って来た優しい声に、トレインは背筋を冷たいものが走るのを覚えた。  
セフィリアはガクガクと震えるトレインの両脚に手を伸ばすと、獣の様に四つん這いになってその両脚をこじ開け、無理矢理にトレインの脚の間へ自身の体を割り入れた。  
「や……やめて……」  
開かせたトレインの脚が絶え間無く震えている。  
頬に朱を走らせている師の顔を見つめ、セフィリアはまたにっこりと笑った。  
「もうちょっと我慢出来るでしょう?」  
セフィリアの言葉に、トレインは必死で首を振る。  
これ以上我慢など出来る筈がない。  
けれどセフィリアは知らぬ顔で、必要以上にゆっくりとトレインのシャツのボタンを外しにかかった。  
一つ……二つ……と。その間にもトレインの悲痛な吐息と哀願の声は続いている。  

トレインの下肢は既に感覚などなくなってしまったのかと思われる程に痛く痺れ、ただ解放だけを要求している。  
「セフィリア……も、う……」  
続く声は、けれど惨めに震え、かすれ、言葉にはならなかった。  
セフィリアはようやくトレインの前をはだけさせてしまうと、あらわになった鎖骨にゆっくりと唇をつける。  
トレインの肌は汗に滲み、ひんやりと心地よかった。  
「駄目ですよ……我慢して下さい」  
クスクスと笑いながら、セフィリアはそろりとその唇をトレインの胸に滑らせる。  
柔らかい桃色の突起に、唾液で湿った熱い舌先をあてると、トレインの肢体がいじらしく反応を見せる。  
苦悶の呻きを聞きながらセフィリアはそこをチュッと吸い、もう片方を指で愛撫し始めた。  
「あ……ぁ……」  
ボロッとトレインの瞳から溜まった涙が零れる。  
胸への刺激は電気の様にピリピリと体を走り抜け、切迫した下肢をも容赦なく突き上げた。  
「いや……いやだ……セフィリア……」  
幾度も幾度も頭を振って、トレインはセフィリアに訴える。  
けれど、セフィリアは瞳を真っ赤にして懇願している、トレインの顔を見つめるだけで、その戒めを解こうとはしなかった。  
「あぅ……っん……んん……」  
切な気な吐息の洩れる唇を、セフィリアの唇が塞ぐ。  
唾液ごとその舌を絡め、優しくくすぐり、時折きつく吸う。  
同時に胸の方も指の腹で愛撫してやると、セフィリアの乳房に当たっている  
トレインの脚がその度にヒクンと震え、行き場を探すかの様に動いた。  

(もう限界などとうに越えてしまっているでしょうに・・・我慢強くなったのね)  
そう思うとセフィリアは堪らなくトレインが愛しくなり、その耳朶に、唇に、更に優しい口付けをした。  
「あ、ぁ……っ……」  
泣き出しそうなその声は、セフィリアをますます残酷にさせる。  
屈辱も羞恥もかなぐり捨てた、ただ切実な欲求のみのトレインの声。  
甘い小鳥の鳴き声でも聞くかの様に、セフィリアはうっとりと目を細めた。  
「セフィリア……っ……セフィリア……ッ!」  
ゆっくりとセフィリアはトレインの首筋に頬を寄せ、その体を包み込む様に抱き締めた。  
「っ……も……がまん、できな……ッ……」  
トレインの頬を伝った涙がホトリとセフィリアの耳朶を濡らす。  
「やあぁぁッ……いや……だ……っ……セフィリア……ッ」  
トレインの両手がその腕を掻きむしる。  
その度にギシギシと、トレインをここに束縛しているオリハルコン・ワイヤーが悲鳴を上げた。  
「は、あ……あっ……も……う……っ……あ、ぁッ……!」  
切迫したトレインの喘ぎは酷く淫らで、セフィリアは小さく喉を鳴らした。  
その面には、もう隠す事を止めてしまった嗜虐に満ちた残忍な笑みが浮かんでいる。  
両足を大きく割られたままの不安定な姿勢のまま我慢を強いられ、  
必死に耐えているトレインの体の温もりを楽しむかの様に、  
セフィリアはその耳朶に、涙に濡れた頬に頬擦りするように顔を寄せた。  
昂奮で、トレインの髪を優しく撫でた指先が火照っているのが判る。  
「ひあ、ぁ……あ……っ……!」  
と、トレインが掠れた様な、一層高い声をあげた。  
瞬間、セフィリアは抱き締めていたトレインの体が僅かに震えるのを感じた。  
トレインの肩口に埋めていた顔をあげる。  
「………………ッ………………」  
突然言葉を無くしてしまったかの様に、トレインはその震える唇をキュッと噛み締めた。  

細めた瞳の縁は真っ赤に染まり、その上を熱い涙が零れていく。  
せめて微笑を浮かべたセフィリアの視線から逃れようとトレインは顔を背け、戦慄く唇を自身の肩に近付けた。  
ジュッと熱いものが前に広がるのを感じると、後は一瞬だった。  
こらえる間もなくトレインは失禁していた。  
それはズボンの前に色濃い染みを作ると、みるみる内に冷たい大理石に広がっていく。  
恥ずかしい音さえ聞こえてきそうな程激しい勢いの放尿……。  
我慢の甲斐もなくもらしてしまったそれは前だけではなく、やがて床についた尻の方にまで侵蝕してくる。  
その温かい水たまりはセフィリアのブーツも濡らしたが、彼女は構わずトレインの美しい顔を見つめていた。  
細められた目に被さる様に、涙で濡れた睫が震えている。  
血が滲みそうな程に噛み締められた唇。  
真っ白な肌は上気して、僅かに色付いている。  
気が狂ってしまいそうな程の屈辱と羞恥の中、ついに失禁してしまっているトレインの……可愛らしい顔。  
セフィリアの体に大きく割り広げられた脚が、痙攣する様に時折ピクンと震える。  
トレインは床の上に小便を垂れ流しながら全身を屈辱の色に染め上げて、ぐっしょりと濡れていく中心を感じていた。  
余りにも惨めで屈辱的な感触。  
解放の悦びなどこればかりも無く、トレインは未だ正気でいる自身を呪いさえした。  
俯いた視線の先に、床を這って広がる水たまりの端が見える。  
紛れも無く、それは今自分が洩らしてしまっているものなのだ。  
言葉など出せる筈もなく、トレインはただ唇を噛み締めて、長く続いた失禁を終えても尚潤んだ瞳でそれを見つめていた。  
濡らしてしまったところは水を吸ってジットリと重く、次第に不快な冷たさに変わっていく。  
体に触れるセフィリアの温もりが酷く異質なものに思えた。  
「……どうしたのですか、トレイン?我慢出来なかったのですか?」  
やがてクックッという笑い声と共に、セフィリアがトレインの心を苛み始める。  
逸らしたままのトレインの顔を無理に自分の方に向けさせると、セフィリアは涙で汚れたその頬に静かに唇を落とした。  
「我慢できなくておもらししちゃったんですか?……『昔』と変わりませんねえ」  
わざと蔑む様な笑みを浮かべて言いながら、トレインの瞳を覗き込む。  
トレインは小さく喉を震わせ、セフィリアのその視線から逃れようと頭を振った。  
無数の過去の情景・・・今と全く同じ過去の情景がトレインの脳裏をよぎった。  
泣き叫ぶことも出来ずにギュッと眉を寄せ、どうしたらいいのかも判らずにただその肩を小さく震わせているトレインが本当に小さな子供の様で、セフィリアは襲い来る嗜虐感を抑え切れなくなっていた。  
「……こんなところで洩らしちゃう様な子には、お仕置きしないといけませんね・・・昔、悪い子猫さんに教えてあげたように」  
そのセフィリアの言葉に、トレインが初めて顔をあげた。  
不安と怒りと非難の色がこもったその顔に一瞥をくれて、セフィリアはトレインのそれに濡れたブーツからポタポタと雫が垂れるのを気にする事も無く立ち上がった。  

ドアの向こうに消えていったセフィリアが再びその部屋に戻って来たのを見るや、トレインはその顔を蒼白にして目を見張った。  
セフィリアが持って来たものは、薬品の注がれた洗面器とそれに投げ入れられているガラスで出来た浣腸器。  
それに、小ぶりのバイブレーターだった。  
セフィリアはそれらを床に置くと、さぁてといった風にトレインの方を見る。  
トレインはセフィリアが自分にこれ以上の責め苦を与えようとしているのを知り、懇願する様に戦慄く唇を開いた。  
「セフィリア…………」  
「濡れたままではトレインも気持ちが悪いでしょう?脱いでしまいましょうね」  
セフィリアはやっと音になったトレインの引きつった声をかき消すと、トレインのズボンのボタンに手をかける。  
「あッ…………」  
ボタンを器用に外してファスナーを下げると下着ごとそれを引き剥いで、セフィリアは重く濡れたそれをトレインの傍らに置いた。  
露になったトレインの素肌に、床に溜まった冷たい水が直に触れる。  
ズボンを脱がされる時に濡れた部分が脚を掠めた為か、露出した脚がひんやりと外気に冷やされて居心地が悪かった。  
体を覆うものは既に肩にかろうじて引っ掛かっているシャツだけで、しかもその裸同然の格好のまま自身が洩らしたものの上に座らされている。  
この姿は人の目にどれ程惨めに映るのだろうと思うと、トレインは身を切られる様な恥辱を感じた。  
「さ、じゃあお仕置きを始めましょうか」  
言ってセフィリアが洗面器の中の浣腸器を取り上げ、中の液体をその先端でゆっくりと掻き回し始める。  
トレインは眉を寄せたまま顔を上げると、セフィリアの手元で浣腸器の中身が液体に充たされるのを絶望的な眼差しで見つめた。  
「いや……だ……」  
小さく頭を振る。  
セフィリアはこれ以上自分に恥をかかせてどうしようというのだろう。  
もう充分じゃないか。  
「やめ…………つ…………」  
声がみっともなく震えるのをトレインは抑えられなかった。  

信じ難い程の屈辱ならばもう味わった。  
なのにセフィリアはまだ足りないと言う。  
「どうして……こんな……」  
トレインの声に、セフィリアは少し首を傾げて笑って見せた。  
「さあ、どうしてでしょうね」  
言いながら、セフィリアは再び閉じ合わされていたトレインの膝を無理矢理割り広げると、浣腸器を手にその体を割り込ませた。  
開脚を強いられ、トレインの秘所が露にされる。  
「私は、トレインさんの恥ずかしい所をもっと見たいだけですよ」  
「あッ……や……ぁッ!」  
するりと浣腸器の先端がトレインの蕾の奥へ潜り込む。  
「暴れないで……割れちゃいますよ」  
必死で抵抗を試みるトレインを牽制しておいて、セフィリアは一息にトレインの最奥へ向けて液体を注ぎ入れた。  
「ひッ……」  
ドッと内壁中を濡らして生暖かい液が入り込んでくる。  
全てを挿入し終わって、満足げに笑いながらセフィリアがその先端を抜いた瞬間から、その液体は激しい腹痛を伴ってトレインの中を暴れ始めた。  
蕾とその近くの粘膜がカッと熱を持つ。  
御し難い便意が蕾を刺激し、必死でそれに耐えようとするそこがピクピクと蠢いた。  
セフィリアは空になった浣腸器を洗面器の中に放り込んでしまうと、昂奮を露呈した、嗜虐性を露にした笑みを浮かべてトレインの方に向き直った。  
愛しい人の苦悶の表情を見つめるその目には、慈しみの色さえ浮かんでいる。  
感情に任せて、セフィリアはその唇でトレインの熱い耳朶を挟み、指を胸の突起へと滑らせた。  

ねっとりとした舌で耳朶を弄びながら、尖り始めた突起を爪で引っ掻いてやる。  
そうするとトレインが微かにくぐもった声を上げる。  
かつてトレインの好きだった愛撫を繰り返しながら、セフィリアはそろそろと片手をトレインのモノへと移していった。  
「あ……ぁッ……」  
困惑した様にトレインが喘ぐ。  
セフィリアの掌はトレインのモノをとらえ――その中心は、僅かではあるが上を向き始めていた。  
「ちょっと硬くなってますね」  
トレインは頬を染めて俯いた。  
反駁したくとも、言葉を発したらそれだけで洩らしてしまいそうで出来なかった。  
歯を噛み締めて必死に便意を堪えているトレインの目蓋……頬……、そんなところにキスしながら、セフィリアは握り込んだそれを優しく弄ってやる。  
「ふぁ……っ……あぁぁ……」  
ピクンとトレインの肩が震え、狼狽した様な声が零れた。  
「やっとトレインも昂奮してきたようですね、昔のように・・・」  
クスクスと笑い、セフィリアは意地悪くトレインのモノの先端をくすぐる。  
トレインは堪え難い苦痛の中に割り込んで来た甘い刺激に喉を震わせながら、それでも小さく首を横に振った。  
「嘘……ほらほら、どんどん硬くなって来てますよ」  
トレインのモノはセフィリアの愛撫に涎を垂らしながら益々張り詰めてくる。  
セフィリアが、その敏感な亀頭に先走りを塗り広げながら蜜の湧き出る尿道口を親指で軽く擦ると、トレインの意志などお構い無しにそれはセフィリアの掌に吸い付く様に首を擡げ始めた。  

「浣腸されて勃起しちゃうんじゃお仕置きになりませんね」  
セフィリアの手の中で、トレインのモノがヒクヒクと脈打っている。  
今やそれは完全に起立して、恥ずかしい程に昂奮を露呈していた。  
「ち……が……っ……そんな……」  
閑雅なトレインの容貌は汚辱にまみれ、それでも尚その瞳は美しく、艶かしく光っている。  
セフィリアはその目に微笑みかけながら、空いた左手をゆっくりと側に置いてあったバイブレーターへと伸ばした。  
「それじゃあ、これもお仕置きにならないかな?」  
言うや、セフィリアはそれをヒクヒクと収縮を繰り返していた蕾に押しあてると、そのままトレインの内壁を抉る様に挿入を始めた。  
「あぁぁぁァァッ!」  
下肢に走る激痛にトレインが悲鳴をあげる。  
今にも溢れ出そうになっていた濁流がバイブレーターの先端に押し上げられ、腹部を酷い痛みが襲った。  
セフィリアがそれを奥へと押し上げる度、背骨が軋む様な痺れが駆ける。  
「嫌……っだ……痛い、セフィリア……ッ!」  
けれどセフィリアはトレインの悲鳴には耳も貸さず、ゆっくりとその玩具でトレインの中を虐め始めた。  
「いあぁぁぁッ……や、め……っ……あ、ァァッ!」  
薬品の為に続いている鈍痛に加え、物理的な、鮮烈な痛みがトレインの下肢を麻痺させる。  

セフィリアが玩具を先端付近まで抜き出す時、そのまま中のもの全てが吐き出されてしまう様な錯覚が起こるが、次の瞬間にはそれはまたトレインの最奥にまで押し込まれていて、トレインは激しい痛みにその錯覚から引き戻される。  
それを幾度も幾度も繰り返されて、トレインはその度に酷い悲鳴を上げて叫んだ。  
「……なんだ、やっぱり勃ったままですね」  
掌の中のトレインの熱を弄びながら、セフィリアは嘲笑する。  
トレインのモノは、これ程の苦痛を与えられて尚セフィリアの手の中でだらしなく涎を垂らし、快感だけを待ち望んで震えていた。  
「あ……あぁ……」  
そのことをまざと見せつけられ、トレインが悲痛な声を洩らす。  
「トレインさん好きなんですね、こんなことされるのが」  
「ちが……っ……」  
泣き濡れた目をギュッと瞑り、必死でトレインはそれを否定した。  
セフィリアはゆっくりとトレインに差し込んだ玩具を出し入れしながら、その度にヒクヒクと悦ぶトレインのモノの熱を確かめる。  
いくら否定しても抗えない確かな熱。  
「じゃあ、おしっこ洩らして浣腸されてバイブ突っ込まれて、どうしてこんなにここカチカチにしてるんですか?」  
下卑た言葉を楽しむ様に、セフィリアはトレインを苛み続ける。  
トレインは声も無く閉ざした瞳から涙を零し、下肢を支配する鈍痛と――認めたく無い僅かな快感に耐えていた。  
既に便意の限界は越えている。  
けれどセフィリアが押し込んでいる玩具のせいで、体中を弛緩させたところで排便は許されず、押し上げられた熱い濁流が更に激しい痛みをトレインにもたらしていた。  
「昂奮してるから勃起してんでしょう?ほら、弄ってあげる……気持ち良い?」  
「うぁッ……あ、ァァ……!」  
セフィリアの指が乱暴に先端をこね、括れを擦る。  
突き抜ける刺激に、トレインは口の端から唾液を垂らして喘いだ。  

「お尻の方も良くしてあげます」  
セフィリアが手にしたバイブレーターのスイッチを入れる。  
「ひあぁぁぁッ!やぁッ……いた……っい……痛いッ……!」  
浣腸液でパンパンになったトレインの腸内を、玩具の先端が激しい振動を伴って掻き回し始めた。  
けれど敏感な腸壁を抉られる度、トレインのモノの先端からは先走りが溢れてセフィリアの掌を汚していく。  
堪え難い苦痛と甘い快感はトレインの体の中で一つに蕩け、それはやがて激しい疼きになって全身を苛む。  
玩具はまるで蛇か何かの様に傍若無人にトレインの熱い内壁を蠢いて、その疼きを更に助長した。  
「う……あ、ぁぁ……ッ……」  
発狂しそうな苦しみから逃れたくて、トレインは幾度も頭を振った。  
体が、解放を望んで叫んでいる。  
「……も……いやだ……ッ……」  
堪えようのない涙がボロボロと零れる。  
掠れる声にセフィリアは目を細め、先走りでヌルヌルになったトレインのモノを扱き続けた。  

トレインの体が痙攣する様に跳ねる度、床に溜まった尿がピチャピチャと音を立てる。  
その音が酷くいやらしく聞こえて、セフィリアは酷く嬉し気に笑った。  
「ぬ……いて……っ……も……抜いて……くれ……ッ……!」  
痛みから、快感から逃れようと、トレインの腰が、脚がいやらしくくねる。  
肩に掛かっていたシャツは肘のところにまでずり落ち、そのシャツの下になっている腕は、食い込んだオリハルコン・ワイヤーのせいで皮膚が破れ始めていた。  
「これ抜いたらまた洩らしちゃいますよ?」  
それでもいいの、と、セフィリアがくねりを続ける玩具を出し入れする。  
「い……っ……から……もう……っ」  
苦しい。痛い。  
そう叫び続けるトレインの体は、既に限界を通り越していた。  
ズクズクと続く脳髄を破壊する様な痺れから、とにかく解放されたかった。  
けれどセフィリアはトレインを責める事を止めてはくれない。  
「じゃあ、トレイン……私にお願いしてごらんなさい?おもらしするところ見て下さいって。そしたらこれ、抜いてあげますよ」  
その要求に、トレインが涙を滲ませた目を見張る。  
「や……っ……ぅ……ッ……ん、な……」  
小さく首を振り、声にならない声で哀願する。  
「言えませんか?」  
セフィリアの言葉に頷くと、最奥に一層荒々しく玩具が突き入れられ、トレインは情けない位に高い悲鳴を上げた。  
腸壁が破れそうな痛みに、トレインの喉からは獣の様な呻きさえ聞こえる。  
「言えないならずっとこのままですよ。まあ、このままでも充分気持ち良さそうですが……それでもいいですね?」  
温和な声はトレインにそう言うと、続いてククッと小さく笑った。  
クチャクチャと汚い、いやらしい音が絶えずトレインのモノから聞こえてくる。  
裏側を指先で強くなぞられ、カリを弄られ、蜜の滲む尿道口をさえ時折弄ばれて、そこも最早耐え切れそうに無かった。  

「……っ…………ッ」  
切れ切れに聞こえる声に、セフィリアは優しく問い返す。  
ガクガクと痙攣する脚。  
固く閉じられた瞳。それに伏せられる睫。  
全てがとても愛おしかった。  
「……っ……て……」  
最早何故涙を零しているのか、それさえ判らないまま、トレインは熱く火照った頬を涙が流れていくのを感じていた。  
「見……て……っ……セフィリア……様ッ……あぁ……お……も、らし……する……と、こ……ッ……見て……ぇッ……!」  
嗚咽を洩らしながら、けれどトレインは身を切られる程屈辱的な懇願を口にした。  
羞恥に白い肌を染め上げて、自身に向かって恥ずかしい言葉を口にするトレインを  
見た瞬間、セフィリアはそれだけで達してしまいそうな昂奮に打たれた。  
「やっと昔みたいに可愛い飼い猫に戻ったようですね……」  
呟く様に言うと、その戦慄く唇に軽くキスを落とす。  
そうして小さく微笑むと、セフィリアはトレインの両脚を、その膝がトレイン自身の肩に付く程にぐいと折り曲げた。  
「あぁぁぁッ……」  
玩具を飲み込んでいる蕾が部屋の明かりに曝される。  
不安定なその格好に、トレインが小さな狼狽の声を上げた。  
「いいですよ……見ててあげます……。ほら、恥ずかしいおもらししてごらんなさいな、トレイン?」  
「いァッ…………!」  
セフィリアがトレインの中を責め続けていた玩具を一気に引き抜く。  
「ああぁぁぁぁァァァッ!」  
同時にトレインの、ぱっくりと口を開いたままの蕾から勢い良く大量の浣腸液が吹き出した。  

「いッ……あ、ぁぁッ……あぁぁぁ……!」  
二度、三度と激しい放出は続く。  
回を重ねるごとに蕾から吹き出した液はは汚く濁っていき、トレインの体を深く曲げたまま支えているセフィリアのズボンの太股をぐっしょりと濡らしていった。  
床に零れたそれは溜まっていた小便に交じり、水たまりを更に大きく広げていく。  
「やぁぁぁぁっ……あぁぁっ……ひッ……ひぁぁッ!」  
四度目の放出で吐き出される液は大分少なくなり、代わりに茶色い、ねっとりとした粘液の様なものが泡状になって排出され始めた。  
ブシュッと醜い音と供に、そのドロドロした粘液がトレインの肌にまとわりつきながらポタポタと床へと落ちていく。  
そうして、ヒクヒクと蠢く蕾がまたゆっくりと口を開くと、今度はそこから茶色い便塊が顔を覗かせた。  
「太いのが見えて来ましたよ……ほら出して、トレイン……」  
上擦ったセフィリアの声に小さく頭を振り、幾度も喘ぎながら、それでもトレインはぬるぬるとした腸液にまみれた太い便を床に垂れ流し始める。  
「ッ……あぁぁ……っ……や……ぁぁっ……」  
ズルッとその大きな塊を出してしまうと、その後のものは簡単に蕾を通って床に落ちていく。  
床の一点に柔らかい便が重なって、その回りの小便を茶色く変えていった。  
「フフフ、こっちからも洩れちゃってますよ」  
セフィリアは掠れた声で笑うと、荒い息を紡いでいるトレインの唇を自身の唇で塞いだ。  
トレインは自分でも気が付かない内に、勃起したものの先端から精液を迸らせていた。  
蕾から汚らしい音と共に便塊が溢れ出す度、トレインのモノは嬉しそうに震えて精液を吐き出す。  

それはトレインの胸や腹にかかるとドロリとその斜を滑っていった。  
「うっ……ぅ、ん……っ……ん……」  
セフィリアがトレインの舌の根をとらえ、噛み付く様にきつく吸う。  
幾度も幾度も繰り返し深いキスを与えられながらトレインは排便を続け、その精を吐き出し続けていた。  
「……っ……あ……ぁぁ……」  
仰け反った喉が痛々しく震える。  
やがて全ての排泄を終えた後も、トレインはただ嗚咽を洩らして涙を流していた。  
吐き気のする様な排泄物の匂いの中、けれどセフィリアはトレインの唇をはむように、軽い、優しいキスを繰り返す。  
意志を失った様な瞳の色のまま、トレインは虚脱した体をセフィリアに預けていた。  
「全部出しちゃっいました?」  
その瞳の縁にも柔らかい唇を押しつけると、セフィリアが尋ねる。  
小さくトレインが頷くとセフィリアは微笑んで、抱えていたトレインの両脚を、トレインの肌に排泄物が付かない様注意しながら床におろした。  
ぐったりとベッドに背を預けたまま放心しているトレインをもう一度抱き締めると、セフィリアは今度はその腕をトレインの背中に回した。  
その指先はゆっくりとトレインの腕をなぞり、ようやくその戒めを解き始める。  
「…………」  
ああ、やっと……解いてもらえるのか。  
ぼんやりとそう思うと同時に、トレインはあまりに遅い解放に項垂れたまま唇を噛んだ。  

バラリと、散々トレインを苦しめたオリハルコン・ワイヤーは呆気無く床に落ちる。  
痺れた両腕が精液で汚れるのにも構わずだらりと下に垂らして、トレインは虚空を見つめていた。  
嫌な匂いがする。  
……俺の、匂い、か。  
排泄は終わっても、トレインの落涙は止まらなかった。  
むしろその惨めさは募るばかりで、何の感情もなく流れていた涙を次第に羞恥の色を宿した涙が覆っていった。  
「どうして……こんな……」  
信じ難い程の屈辱ならば、かつて嫌になるほど幾度も味わった。  
なのにセフィリアはまだ足りないと・・・再び飼い猫に戻れと言う。  
「……どうして……」自問する様な声で。  
トレインのその声に、セフィリアは少し首を傾げて笑って見せた。  
「……さあ、どうしてでしょうね」  
言いながら、セフィリアはゆっくりとトレインの頬に唇を寄せる。  
「私は…………」  
少しセフィリアは言葉を詰まらせ、それからまたゆっくりと口を開いた。  
「時の番人が再びトレインの力を必要としているのです」  
トレインが泣き濡れた目を少し細める。  
「……嘘だ……」  
ぽつりと言った言葉に、セフィリアはトレインの肩口に顔を寄せたままで微笑した。  
「……嘘です。本当はあなたが・・・好きだからです」  
それだけ言うと、セフィリアはまたトレインの体をゆっくりと抱き締めた。  
再び飼い猫を取り戻したと思った。  
「さぁ・・・これから昔の事を完全に思い出させてあげますよ・・・トレイン」  

セフィリアはシャワーで一度トレインの全身を洗った後、再びオリハルコン・ワイヤーでトレインを縛りなおした。  
今度は全く抵抗せず、トレインは自ら縛られやすいように手を後ろに回す。  
セフィリアはかつての無数の苦痛と悦楽の夜をなぞるかのように、  
激しくトレインの肉体を乳房や尻、唇、爪、さらに鞭やブーツなど、さまざまな器具でいたぶった。  
夜が明けるまで手加減無しで責め立てた後、セフィリアは汗と愛液と精液と血で濡れたままのトレインをベッドに押し倒した  
シーツが汚れるのも構わずにセフィリアはトレインの体を貪った。  
二人とも幾度果てたかさえ定かで無くなった頃、トレインは傷だらけの疲弊した体を  
セフィリアに抱き締められたまま眠りに落ちた。  
自身の体を苛み続けたセフィリアの胸に抱かれたままに。  
それでもセフィリアの胸はあたたかく、ほんの僅かな間だけ、トレインは穏やかな鼓動と吐息を感じていられる。  

その柔らかさと暖かさで、トレインは天衣無縫の野良猫から、再びセフィリアの飼い猫に戻った事を自覚していた。  
苦痛か哀しさか、それとも安心からか・・・トレインは涙を流していた。  
セフィリアはトレインの涙をしゃぶると、その泣き濡れた顔を豊かな乳房に引き寄せ、子猫のように優しく抱きしめた。  
「もう、あなたは永遠に私の飼い猫ですからね・・・」  
そう言って、セフィリアは鈴のついた首輪・・・かつて常時つけていた飼い猫の証の首輪をトレインの首に『再び』巻いた。  

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