今日もいつもの様に配達してる。  
 
オレ最近この辺に来るようになったけど、まあ、閑静な住宅街ってとこ?  
たまにはこういうのも悪くないかな。  
いつもオフィス街のゴミゴミしてるとこばっかだったかんね。  
行き交うクラクション、車の窓開けて外にガナリたてる人ら、と同時に聞こえて来る様々なラジオ・・・・・。  
ムリな割り込みのイエローキャブにヒヤヒヤさせられっぱなし。  
 
今はそこ、新人が行かされてる。  
 
んでオレは花に水やる奥様方の、肌もあらわな薄着や肩やへそやおみ足で目の保養。  
っも、サイコオ。  
仕事万歳。  
それだけじゃない、今は新しい楽しみもできたんだ・・・・・・・・!  
 
速達。  
 
これマジいい! 速達上等。  
受け取りサイン。  
・・・・・これもすっげイイッ!!  
今日もだよ? 今日もある。  
オレ様、勝手知ったる他人の家のエントランスに向かった。  
 
ここんちは、ほぼ毎日のように来てる。速達あり、小包あり、パンフレットもあり。  
差出人がほとんど製薬会社からだ。  
この街の影の支配者、と専らウワサのアンブレラ社。  
何だろ、ここの奥さんそこの社員なのかな。出勤してないみたいだけど?  
まあ、在宅ワークかもしんないしね。  
 
それより!  
オレにしてみればここの奥さんに会えればいいワケで!  
 
オレ様制服の帽子をキュキュっと直し、頑丈そうな親子ドアの前で若奥様を待つ。  
・・・・・・・・ハァハァ・・・・・・・この瞬間の・・・・・・このバクバクが・・・・・・・・ああ奥さん・・・・・。  
 
「・・・・・・・・はい」  
 
奥さんが出て来た・・・・・!  
オレの顔を見ると、ペンを取り出してサインの用意をする。  
 
「いつもお疲れさまです・・・・・」  
 
奥さんは、オレの持つ小包のサイン欄にいつものようにサインする。  
やっば!  
オレの心臓が16ビート!  
でもッ・・・・・・今日こそはッ・・・・・・計画を実行するんだ! 練習もしたしッ! 完璧さあ!  
 
「あッ!! あたッ! アタタタタタタタタタタ・・・・・・・・!!」  
 
オレ様、たわばな顔を作ると腹を圧さえてその場に転がった。もう迫真の演技ッ!  
 
「ど・・・・・・どうされましたか!? あの・・・・・・あの・・・・・っ・・・・」  
 
狙い通り奥さんはうろたえる。  
ちょっと可哀想だけど、オレはそのまま演技を続けた。  
 
「う゛〜〜〜〜〜ッ・・・・・イテテテテッ・・・・・・・」  
「あのっ・・・・・・あの・・・・・・・い、今救急車呼びます」  
 
奥さんは電話を掛けに行こうとする。  
もうかなりパニクってるみたいだ。カワイィ〜。  
 
「いや待っ! ・・・・・・裏・・・・・裏庭貸して、ちゃんと穴掘って埋めるから・・・・・」  
「えぇっ?」  
「た・・・・・ただの・・・・・下痢腹みたい・・・・・だか・・・・・・」  
「そ、それなら・・・・・あの・・・・・あの・・・・・どうぞこちらへ・・・・・」  
 
奥さんはオレを家の中に入れてトイレまで案内する。  
しめしめ・・・・・・・大成功!!!  
奥さん、オレの仮病まるまる信じちゃったyo! ウブだなあ〜。  
 
オレ様、デンジャった前屈みのままトイレに入った。  
 
オロオロする奥さんの顔ったらイイ。  
ヘンに”苛めたいゴコロ”をくすぐる。  
オレはムダに水を何度も流して、う〜んう〜んと唸りまくった。  
ドアの向うで心配そうな奥さんの声、半ボッキのオレ。  
 
ついに・・・・・・ついに!  
家の中に入れたッ!! やたッ!  
 
「何か水分を・・・・・・あの、向うで暖かいものでも用意しておきます・・・・・」  
 
奥さんが行って気配が無くなると、オレ様とりあえず小便済ませてスッキリ。   
準備は整った、と。  
さーて、始めよっか!  
 
オレは抜き足差し足で家の中を見て回る。  
 
あの奥さんの事なら何でも知りたい。  
どんな生活してるのかとか、趣味は何か、とか。  
旦那の事?? シラネ。  
 
まずフロ場から覗いた。  
 
広い。キレイに掃除されてる。窓からの明りが気持ちイイ。  
こんなフロで朝シャンしたら最高だろうな〜。  
奥さんと2人で入ったりさ!  
ムフフ。いいな〜。  
 
次、寝室。  
 
ベッドでけーッ!  
キング? クイーン? このベッドの上で、あられもない姿で・・・・・?  
ベッド横の窓から庭を見ると丸テーブルとイスが見える。  
きっとあそこでお茶しながら読書でもするんだろうなあ。  
ん?  
芝生はちょっと伸び気味かな。  
 
「おなか・・・・・・治りましたか・・・・・・・・・?」  
 
あ、いけね!  
ちょっと長く妄想しすぎたかも。  
奥さんがオレを捜しに来ちゃった。  
 
「ご、ごめん。どっち行ったらいいのかわかんなくてさ・・・・・はは」  
 
奥さんについて応接間に来た。  
 
んで、なんかカンポウヤクっぽいお茶をごちになる。お腹にやさしいんだってさ。  
ンムギュウンッ!!  
やさしいのはキミさあ〜〜〜!  
 
オレは腹をさすりながら治った事を伝えると、奥さんはホッとしたようだった。  
お礼と名前を言って、ゴキゲンでその場を後にする。  
っく〜! 後ろ髪引かれる思いッ。  
 
翌日の配達の時にお礼のプレゼントをした。  
 
オレの好きなバスケ選手のブロマイド。それもとっときの秘蔵の一枚だ!  
奥さん──ヨーコは絶対に大感激したに違いないッ!  
 
───その後もオレは定期的に腹を壊し、トイレを借りる。  
 
警戒されないようにちゃんと、  
「オレ、おなか弱いんだ。すぐ神経性胃炎になったり、胃痙攣起こしたり・・・・・」  
てな感じのフォローも忘れない。  
ヨーコはかなり初心で、  
「まあ・・・・・かわいそう・・・・・・。大変なのね・・・・・」  
それを信じてくれる。  
ヨーコ!  
キミはこの世知辛い世の中に咲いた一輪の花のよう! オレの妖精さん!!  
 
───そうして少しづつだけど話をして行くうちに、ヨーコの生活が見えてきた。  
 
旦那は最近仕事が忙しくなって、ほとんど家に帰って来ないんだそうだ。  
最初は残業、残業、残業。  
次は休日に呼び出し、接待ゴルフ、残業、と続き、今は短期出張、長期出張という具合。  
 
それホントかねえ・・・・・浮気してんじゃないのォ?  
 
と思ったけど口には出さなかった。  
ヨーコが傷つくといけないから・・・・・。  
オレ、なんか・・・・・彼女に本気になったかも・・・・・・・・・。  
人妻ヤヴェエエエエエエエエエッ! 人妻イイイイイイイイイイイイイイイッ!!  
 
───オレは紳士的に提案して、仕事が休みの日にヨーコんちの庭の芝刈りをした。  
 
いつもは旦那がやってたらしいけどね。  
芝刈り機は一歩間違えるとかなり危ないから、この手押し式のじゃなくて乗るタイプのを買うまで、触っちゃダメって言われたんだって。  
芝が伸びたら近所にある、庭師もやる配管業者を呼ぶ事になってたみたいだけど、オレがキレイに刈ってあげちゃった。  
彼女、そりゃ喜んだよ。  
オレもなんかウレシ〜!  
 
ヨーコがオレを友達として認めてくれるようになってから、オレの休日は全部! もれなく全部! ヨーコんちで過ごしてる。  
 
もちろん彼女が用事がある時──近所の奥様方とお茶するとか──は、彼女の用事が優先。  
しょうがないから自宅でオナる。  
遊びに行ってもいい日は、紳士然として気合入れて行く。絶対にギラギラを見せない。  
 
会えば会話はほぼオレのべしゃり。  
 
ヨーコは恥ずかしがり屋で、たまに少し話す程度。聞き役。オレの話にちゃんと耳を傾けてくれる。  
AHHHH・・・・・!  
こんなにオレの話真剣に聞いてくれるコって初めて!!  
もースゲー嬉しい・・・・・・。  
なもんで、オレもノって来る。  
バスケの事や鉄道や靴について特に熱く語る。あらゆる知識を伝授。  
 
話ばっかじゃない。  
 
ターンテーブル持ち込んで即興DJやってみせたりして、ヨーコを喜ばせる。  
オレ様、皿をこするこするこするこするッ!  
ヨーコそれ見てクスクス笑う。  
ヨーコにもやらせてみると、もう笑っちゃってできない。  
イイ〜ッ!  
 
「ウフフ・・・・・イヤアァ〜・・・・・・・・フフッ」  
 
普通の曲が速くなったり遅くなったり、同じフレーズを繰り返したりするのがおかしいんだってさ!  
こんな事で・・・・。  
か、かわいいナァ・・・・・。  
そんなんならオレ、いくらでもこ、こ、こ、こ、・・・・こするよ・・・・・?  
ハアハア!?  
 
喉が渇けば、時にはオレが変な飲み物作って驚かせる。  
 
ギフトで貰ったとかのインスタントのコーヒーを開けて、コーヒーの粉を少しタンブラーに入れる。そしてそこへ炭酸ジュースを注ぐ。  
キタコレ!  
キタキタキタキタキタ────ッ!!  
コップいっぱいにモッシャーと湧き上がる泡に圧倒されて、ヨーコ唖然。ウヘヘ!  
どうだい、化学実験みたいだろう?  
 
オレたち庭でも遊ぶ。  
 
その辺で買って来た水鉄砲で撃ち合いやったり。  
まあこれも計画のうち。  
わざと撃たれて、  
 
「やられたああぁぁ───ッ!」  
 
とか言いながら、芝に水撒いてるスプリンクラーの下に転がって倒れる。  
白目剥いて死んだフリ。  
んで、そろりそろりと近寄って様子を見に来たヨーコに撃ち返す。  
ドピャ!  
ドピューッ!  
ヨーコの胸の谷間らへんを狙ってみたり。  
 
も、タマンネ。  
 
オレは寝っ転がったまま青空を仰ぐ。  
オレの目に映るのは・・・・・スプリンクラーのしぶきと日の光でできた虹・・・・・。  
ここんちの芝生は虹色・・・・・。  
 
オレ様すっかり水も滴るイイ男!  
びしょ濡れでヨーコを追っかける。待てーいッ!  
 
「パンツまでびっしょり! ヨーコ、タオル貸して」  
 
ほんとはさ、あっちのプールで水遊びしたかったんだ。  
ヨーコのマヴスィ水着姿が見られた筈なのにさ!  
入れない・・・・・。  
中に鯉が泳いでるんだよ・・・・・・いっぱい・・・・・・・・。  
オレ様のティン棒パクっとやられたらやだから、プールはやめた。  
だってあいつら、歯があるんだよ確か・・・・・・。  
 
「そのままじゃ風邪ひいちゃうわ・・・・・」  
 
今日は一段と暑いからちょうどいいぐらいだけどネ!  
でもそれじゃあ計画がおじゃん。  
 
「んじゃシャワー貸して」  
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大成功!  
 
まんまとシャワーにありつけた。  
オレ様、ヨーコの旦那の気分を存分に味わうつもり。  
旦那のムース付けて、旦那のT字あてて男前をキープする。  
花の絵のあるヨーコのシャンプーらしきものの隣の、旦那のシャンプーで洗髪。  
 
全身も洗ってキリっとする。  
出たら旦那のバスローブを着て、タオルで髪を拭く。  
それからヨーコの用意してくれた着替えを手に取る。  
旦那のシルクのパンツ穿いて、旦那のドレスシャツ着て、旦那のスラックスに足を通す。  
 
オレ様もう全身間違いなくヨーコ旦那!  
これで旦那の女房とよろしくやれたら文句ナシ!!  
なんだけどな〜。  
 
「ヨーコ、なんか飲んでいい?」  
「はい・・・・」  
 
オレは冷蔵庫を開けてごそごそと物色する。  
奥の方に瓶ビールの小さいのがあった。  
 
「あっ、コレいいじゃん」  
 
オレはこのビールの正しい飲み方をヨーコに教える事にした。  
まずライムを切って、瓶の口で絞る、そしてそれを中に落とす。  
 
「やってみて」  
「はい」  
 
指がライム臭。  
ヨーコの指もライム臭。  
でもちょうどいいや。  
オレは剃りあと顔に指のライム汁を擦り込んだ。  
 
シャキッ!  
 
としたオレの顔さらにシャキッ! 男が上がる!  
アテテ、ちょいしみる・・・・・刺激が強すぎたかも・・・。  
それを見るヨーコの指を勝手に借りて、擦り込む擦り込む!  
ほんとは舐めたいけどね。  
 
ヨーコのライムも中に落とすと、ヨーコの瓶とオレの瓶の腹を交差して2回ぶつけ合う。  
それからオレの瓶の底をヨーコの瓶の口にゴンッ! とぶつけた。  
 
キタキタキタキタキタ────ッ!!  
振動で泡が上がってきた!  
 
「ほら飲んで! 来るよ、来るよ!」  
「え? え?」  
 
ヨーコのビールが瓶の口から溢れる!  
ヨーコは急いで口を付けると、ビールが零れないように無理して飲んだ。  
でもやっぱり飲み切れなくて零れた。  
口の端からビールが伝う。  
うううう!  
そのビール!  
首筋からでろお〜んと上に舐め上げたいいいいい!!  
 
オレ様が瓶を空ける頃には、ヨーコの頬は酔っ払いのものに変わっていた。  
 
うっへぁ〜?  
マジこんな弱いの!?  
酔った勢いでソノ気になったりやなんかの展開、期待しちゃっていい!?  
 
・・・・・と、電話が鳴ったのはその時だった。  
くっそ、いいとこだったのに・・・・・・・・。  
ヨーコは瓶をテーブルに置くと、多少ヨタつきながらパタパタとかけて行った。  
 
オレは悪いと思ったけど、物陰でこっそり会話を盗み聞きした。  
どうやら旦那からの電話らしい。  
ヨーコはさっさと切ろうとするでもなく、長話してる・・・・・。  
 
何だい何だいッ・・・・!  
 
オレ様、なんだか急に萎えちゃって、ブルー入ってきた・・・・・。  
はあああぁぁ・・・・・。  
胃の辺りがなんかヘンだよ・・・・・。  
オレは乾燥機に入ってる半乾きの服取り出して着替えると、何も言わずに帰った。  
 
・・・・・・ふん、だ。  
 
きっと何時に帰る、とか何してた、とか話してんだろ・・・・・。  
ヨーコ!  
あんたの旦那は浮気してんだよ!? 騙されてんだよ!?  
 
まったく!  
 
絶対オレの方がイイに決まってる。  
オレなら絶対幸せにできる! 絶対!!  
長い事家空けたりして寂しい思いなんかさせない。退屈させない。大事にする。  
・・・・・オレ・・・・・ヨーコが・・・・・何もわかってないヨーコが・・・・・ちょっと憎くなった・・・・・・。  
 
でも! また会っちゃうんだなあ〜これが!  
 
オレは自宅に帰ってからもヨーコの声が聞きたくなるから、頻繁に電話かけるようになった。  
むりやり喋らせてケータイにも録音。  
発作が起きると目を閉じてそれを聞いてはニンマリ。  
 
だけどヨーコはそんなオレをだんだん遠ざけるようになって行った。  
もうオレ、紳士は無理かも・・・・・。  
ティンコ膨らんじゃって理性が保てない。  
ダメだと言われても電話掛ける!  
 
で、何とか2人だけの暗号会話を作り出した。  
 
もし旦那が帰って来てる時に電話しちゃっても、合言葉で会話できるってスンポオ。  
って!  
そうまでしてっ!  
努力したのにッ!  
ヨーコときたら・・・・・ヨーコときたら・・・・・・・・!!  
オレのボスにチクって、オレの担当地区を変えたんだ! あんまりだよッ!!  
 
でも・・・・・・・でも・・・・・そんな事されても思いはつのる一方。  
オレ様だんだん”入って”きた・・・・・。  
 
・・・・・オレ今日仕事休み・・・・・・すんげぇヒマ・・・・・・ヨーコんち行きたい・・・・・・・。  
 
ダメだよう!  
これ以上嫌われたらどうすんのさ・・・・・・・でも・・・・・でもさ?  
彼女、オレの事好きな筈だよ・・・?  
だって会ってた時はあんな楽しそうにしてたじゃん!  
 
・・・・・きっと彼女、照れてるだけなんだ。  
 
本当はオレの事・・・・・・・・・・・・愛してるんだ! そうさ!  
オレ達愛し合ってるんだ!  
もうすぐ旦那と別れてオレのとこへ来てくれるんだ!  
間違い無い、絶対に間違い無い! 今すぐ確かめなくちゃ!!  
オレは確信を持って受話器を取った。  
 
バカバカドコドコ言う心臓に手を押し当てながら、オレは受話器に耳をくっ付ける。  
コール3回で、「Hello?」ヨーコの声だ・・・・・・!  
きっとリビングにいたんだ。お茶してたのかな?  
 
「ハアハァ・・・・・・奥さん・・・・・・・米屋です・・・・・・・」  
「!」  
「奥さん? ・・・・・・・米屋ですよ・・・・・・あなたの・・・・・へへ・・・・・へ」  
「あの・・・・・・お米屋さん・・・・・?」  
「ハァハァ・・・・・そうですよ奥さん・・・・・へへ・・・・・米・・・・・いかがすか(行っていい?)」  
「え・・・・・あ・・・・・あの・・・・・まだ・・・・・お米、沢山あるの・・・・・・」  
「うち、もう倉庫いっぱいなんすよ・・・・・・在庫はけなくちゃなんなくて・・・・・買って下さいよ。ヘ・・・ヘヘヘ・・・・」  
「お・・・・・お米屋さん、あの・・・・・米虫が出たの(今主人がいるの)」  
「ッ!?」  
「・・・・・・今さっき出たばかり(さっき帰ってきたばかりなの)・・・・・」  
「そんな米虫なんか、・・・・何て事ないすよ・・・・・・。んじゃ、今そっち行きますね・・・・・」  
「! ジ・・・・お、お米屋さん・・・・! もしもし? もしもし??」  
 
10分後ぐらいにケータイがあった。  
 
ヨーコからだ。  
家電からかけてきてる。  
 
「ジム!? ダメ! 来ちゃダメ! 来ないで!!」  
「・・・・・奥さん、つれないっすねぇ・・・・・。そこに米虫、ホントにいるの?」  
「さっき買い物に出掛けたわ、でもすぐに戻って来るの! だから! だから!!」  
「へええぇぇぇ? なら都合いいっすね。奥さんもほんとはオレに会いたいんでしょ?」  
「ジム・・・・・!! お願いやめて・・・・・友達だと思ってたのに・・・・・・」  
 
オレに会いたくて会いたくてしょうがないくせに、素直じゃないんだなぁもう。ヨーコの照れ屋サン・・・・・。  
オレはケータイを電源ごと切る。  
んで地下鉄に乗って急いで向かった。  
 
───ヨーコんちに着いた。  
 
玄関は閉まってる。他の窓も。  
もち呼び鈴にも応えない。  
さすがに窓を割る訳にはいかないから、ガレージから入らせて貰う事にした。  
 
ガレージのシャッターは全開に開いてる。  
いつも停まってたでかい高級車が無い。  
米虫の話、ヨーコの嘘かと思ってたけど、ほんとに帰って来てたんだね旦那。  
 
・・・・・・ヘッ。  
帰るなり女の所へ直行か。いいご身分ですねえ、っと。  
そのまま”買い物”から帰って来なくていいよ旦那さん。  
オレが後釜になったげるからさあ。  
ヘヘ・・・・・ヘ・・・・・ヘヘヘヘ・・・・・。  
 
オレ様シャッターの操作盤探して、シャッターを締め切った。  
ガシャ!  
んでドアから家の中に入ろうと思ったら、ヨーコが勢い良くドアから飛び出て来た。  
飛んで火に入るなんとやら、ってね。  
オレのこの、エラメラ燃える胸の炎で・・・・・・ハァハァッ?  
焼かれたいんだねヨーコ!?  
オレは両腕を広げてみせた。  
 
「カマンカマンカマンッッ!! ィヨオコォ〜ッ!」  
 
「あっ・・・・・!」  
 
どうも旦那が帰って来たと勘違いしたらしい。  
ヨーコはオレを見て息を飲んだ。  
 
「やあ・・・・・・奥さん・・・・・・・」  
「か・・・・・帰って・・・・・・!」  
 
オレは逃げようとするヨーコを掴まえて抱き締める。もう止められないッ!  
 
「オレの気持ち知ってるくせに! どうして旦那と別れてくれないんだようッ!」  
「やめてジムッ! 離して・・・・・!」  
「ほんとはオレの事好きなんだよねッ? ね? ね!? そうだ! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・旦那殺そう」  
 
それがイイ!  
 
そうすればヨーコだってもっと素直になれる筈だ!  
それに、この家だって庭だってあの車もこの車もその車もこの奥さんも、みぃーんな!  
オレ様のもんになるんだ!  
 
ヨーコは知らないだろうけどオレ、家じゅう物色した時、旦那のナイショの生命保険見っけちゃって、それこっそり見たんだ。  
旦那にどえらい額がかかってた。  
それだってバッチリ貰うさ!  
だって、ヨーコのもんはオレのもん!  
 
「ね!? ヨーコ!! 言って! 愛してるって言ってよ! 愛してるって言えぇ〜〜〜ッ」  
 
オレ様テンパり過ぎて、ついうっかりヨーコの首絞めてた。  
周りも見えない。  
もうその時には・・・・・・シャッターが半分ぐらい上がってたんだ・・・・・。  
 
テント張ったおかげで、下げづらくなったチャックを何とか下ろし、ぷはあッとせがれを出す。  
で、ゴホゴホと咳き込むヨーコに、オレ様のMagnum XLごとくっついた!!  
ヨーコは悲鳴を上げてオレを突き飛ばすと、四つん這いになって逃げて行く。  
 
それを追って掴まえよう・・・・・・と・・・・・・して・・・・・やっと・・・・・・気が・・・・・付いた・・・・・。  
 
いつの間にかシャッターが開いてて、車がゆっくりと入って来てたんだ・・・・・・。  
 
旦那はリモコンでシャッターを開けたんだろう。  
何コレ・・・・・シャッター静か過ぎ!  
んで車!  
エンジン音しねぇじゃん! 気配もねぇッ!!  
っつーより? オレが夢中人になってただけ?  
 
・・・・・そして車は定位置に停まった。  
 
ヨーコが脱力した風に立ち上がり、直立不動!  
オレも予期せぬ事態に呆気に取られて、ティンティンいなないたまんまボ────────────ゼン。  
来る・・・・・来るッ・・・・・修羅場が来るうぅッ!  
 
マアァジェエ〜!?  
 
旦那ホントにすぐ帰ってきたあぁぁーッ!  
買い物=別宅じゃなかった!  
旦那!  
あんた!!  
何でこっちのうっさそうなFR乗ってかないんだようッ!?  
 
サイドが踏まれエンジンが切られると、ウイィーンとハンドルが上がる。  
全窓も微妙に隙間を作る。  
旦那がシートベルトを外すと、それもまたウイィーンと後ろに下がった。  
コンビニの小さな袋片手に降りて来る旦那・・・・・。  
 
「Hi,honey」  
「ハ・・・・・ハァ・・・・・ィ、Dar・・・・・ling・・・・・」  
「タダイマ」  
「ぉ・・・・・おか・・・・・・・・さ・・・・・ぃ」  
 
ヨオオオオオォォォォォォコオオォォやゔええぇぇ! もう顔まっっっつぁお!!  
 
「今日は日本語教えに行く日じゃないのか?」  
「あの・・・・・日にち・・・・・ず・・・・・て・・・・・も・・・・・の・・・・・」  
 
ヨーコ、消え入るような声で何言ってっかわかんね!  
旦那がドアを閉めた。  
 
「アァ〜・・・・・ハァア・・・・・・で? そりゃ何だ? お前のイロか?」  
 
旦那はオレをチラ見した程度で、ヨーコの目をじっと見据える。なんか怖エェ!!  
こんなアブなそうなヤツがヨーコ旦那??  
前にヨーコが、  
「結婚してからというもの、主人は真人間になってしまって・・・・・男の人って変わるのね・・・・・・」  
とか何とか言ってたけど、真人間にゃ見えねッ!  
いろんな制御装置がブッ壊れてそうだッ!  
 
「これからお楽しみってとこか・・・・・そいつは邪魔したな。・・・・・エエ? ヨーコ」  
 
旦那は助手席に歩いて行き、ドアを開ける。  
ヨーコはカエルのように動けない!  
 
「し・・・・・し、知・・・・・なぃ・・・・・・人・・・・・なの・・・・・」  
「おいヨウコウゥッ! ちょっとナイんじゃないのそれわぁッ!!」  
「・・・・・・・・・・・・・・・・・悪い夢だこりゃ・・・・・・・・・・・」  
 
旦那はダッシュボードを開け、なんか取り出してから車のドアを閉める。  
 
「間男にやられるとはな・・・・・とんだマヌケ亭主だぜ俺も・・・・・・。おかしな電話してると思ったら・・・・・・そういう事か」  
「違うのッ!!」  
 
ヨーコは母国語でなんか叫ぶ。  
旦那もヨーコに合わせてヨーコ語で話した。「じゃあなんで下出してんだろうな」  
てかあんたバイリンなのかよッ!  
オレにもわかる言葉で話してくれようッ!!  
 
「ヨーコてめーッ! 裏切りやがったなッ!?」  
 
2人はオレなんて眼中に無く、やり取りを続けてる。  
チャンスだ!  
逃げよう!!  
オレはズボンも上げずに2、3歩あとずさりし、かけて行こうとした・・・・・・・・・が!!  
 
「Freeze」  
 
旦那が後ろ腰にさして引っ掛けてたらしい銃を取り、オレに向けるッ!?  
 
「アッヒイィィッ!! 撃たないで撃たないで撃たないで撃たないでエェッ!」  
 
助手席から取り出したのは銃だったんだ・・・・・。  
オレ様両手を上げてカチコチに凍った。  
 
「Don't move」  
 
旦那は据わった目でヨーコを睨んだまま、オレの方へ近づく。  
マジ縮こまるって!  
800から700になるぐらい圧縮ッ! オレ様ッ!  
 
「オラ後ろ向け」  
 
オレもう、ガクガクブルブル。  
言われた通りにする。そして───  
 
銃口が後頭部に当てられた・・・・・・。  
 
旦那は収納棚にあるロープを取ると、オレの真後ろで片手と歯でそれをほどき始めた。  
オレはオテアゲした両手を後ろに持ってかれ、きつく縛られる。  
あだだッ!  
それから地べたに座らされ、鉄筋の棚の太い柱に胴をぐるぐる巻きにされて、逃げられなくなった・・・・・。  
も最ッ高ッ!  
自由が利くのは首から上、それと足。少しバタつかせられる程度。  
あと圧縮された真ん中の足・・・・・。  
 
「Hey baby? ・・・・・2ヶ月空けてこれかよ」  
「;lghdg;sjf;iaj:f!!!!!」  
 
ヨーコはぼろんぼろん泣きながら必死でなんか訴えてるけど、旦那はまるで聞く耳持たない。  
かなりブチ切れてるみたいだ・・・・・。  
きっとヤッてなくて溜まってるに違いない。  
 
確かにたまってればイライラするし、冷静に話なんて聞けない。余裕も無い。  
・・・・・て事は・・・・・?  
もしかしてオレ・・・・・・・・・、殺される・・・・・の・・・・・??  
 
次の瞬間、オレは脳裏で再生される映像を見ていた。  
車のスクラップ場で圧縮された車に挟まって、どんどん腐って白骨化して逝くオレの御遺体を、だ。  
 
どうせ・・・・・・・どうせ殺されるんなら・・・・・・・・・・・ッ! もうヤケだッ! ヨーコも道連れッ!!  
 
「あんたッ! 聞けよッ! オレ達もう、死ぬほど何度もパコパコしたんだッ!  
今さっきもパコパコの筈だったんだよ! それにあんたを殺す計画だって!!」  
「やめてッ!!!」  
 
旦那はヨーコにゆっくりと歩み寄り、ヨーコの二の腕をガシッと掴む。  
そして鼻と鼻がくっ付きそうなくらい顔を近づけて、ヨーコの目をじいぃっと見ながら言った。  
 
「そいつはまた楽しそうな話だなヨーコ? 俺も混ぜてくれよ」  
 
ヨーコはただヒッ、ヒッ、ヒッ、と息を飲んで口をパクパクさせるだけ!  
旦那はヨーコのじっとりと汗で滲む首筋を舐めるように見ながら、後ろに回った。  
 
「知人や友人ならいい。だが愛人はマズいよなあ? 奥さん」  
 
そう言うと首筋の汗をぺろーんとリアルで舐めた。  
オレのヨーコに何すんだよォッ!  
 
「〜〜〜っっっっ!!」  
「続きは俺でガマンしてくれ」  
 
旦那はオレのヨーコをオヒメサマダッコすると、FRのフードに座らせる。  
だあぁッ!  
も、もしかしてッ!?  
やんのかッ?  
やんのかよあんたッ!? まじぇえ!!?  
 
「やめてくれ───ッ!!! オレのヨーコに触るなッ! ヨーコ逃げろおッ」  
「ひっ・・・・・ひっ・・・・・」  
「お前のヨーコをちょいと借りるぜ。わりぃな」  
「やめろ〜〜〜〜ッ!!」  
「イタダキマース」  
 
旦那はヨーコのワンピースのボタンを外すと下から捲り上げて、一気に脱がした!  
 
「ッンノオオォォォ・・・・・」  
 
旦那が上から覆い被さってヨーコを押さえる!  
これじゃもう逃げられない・・・・・。  
 
「ヨーコオゥッ! いやだッ! いやだあああああぁぁぁぁぁッッ!!!!」  
 
ヨーコは旦那の肩を押し返そうそうとするが、力じゃ敵わないッ!  
まっちろい足もバタバタさせるけど、何やってもムダ! もう泣きじゃくってる!  
 
「アチィ!」  
 
とか言いながらTシャツを脱ぎ捨てる旦那、ヨーコの前ホックを外してブラを取った!  
ム、ム、ム、ム、ム、ムネッ! てかTシャツゥ!?  
どういう訳でそんな、ぴっちぴちのぱっつんぱっつん着てたんだか知んないけどさぁ・・・・・。  
 
まあ、あれだよ。ほら。  
まだ体がデキる前のローティーンの頃とかに着てたようなやつが、クローゼットの奥から出てきたんだよ。な。  
なんかもう、そういう事にしといてやる。  
 
って!  
オレッ!  
冷静ッ!  
んで!  
ヨーコのパイパイぽろ〜んで、オレ様の目、釘付け! 夢にまで見たパイッ!  
 
「やめてぇぇ・・・・・」  
 
旦那は腰に掛けた銃を取り、ゴツッ! とワイパーの上に置く。  
っつーか! その車!  
あんた殺してからオレが乗るんだから丁寧に扱ってくれようッ!  
 
「っあ゙〜」  
 
旦那はベルトをガチャガチャさせながら外すと、唸りながらジーンズを脱ぎにかかる。  
ってあんたァッ!  
パンツ穿いてねーのかよッ!  
おケケが挟まるッ挟まるゥッ!  
・・・・・考えただけで痛い。  
で、旦那のケツ。  
男のきったねえケツなんか見たくねーヨ!  
 
「Stop! ストーップ! そこまでそこまで! はいカットカットォッ!」  
 
つった所でやめてくれるわけがない。  
悪夢だ・・・・・目の前のレイプショー・・・・・・。  
 
「・・・・・ヨーコ。・・・・・・このヒモパンてのは、いいよなぁ。・・・・・・片方ほどいても、もう片方が生きてる」  
 
オレ様、はすかいからショーを見物してるおかげで見たくもない物まで丸見え。  
旦那はニヤニヤしながらヨーコの下着に手をかける。  
やめろこのっケダモノ───ッ!  
 
「見・・・・・っ・・・・・・っ・・・・・・見ら・・・・・れ・・・・・・」  
 
オレは見るに耐えなくて顔を背けた。  
でも聞こえる、ヨーコのすすり泣きと旦那の荒い息遣い。  
時折チュッ、チュッとヨーコの肌にキスしてるらしき音・・・・・・・。  
 
「い、いやだぁ・・・・・ヨーコ、ヨーコォォ・・・・・・こんなの・・・・・」  
 
あの旦那、オレに聞こえるようにわざとヒワイ音立ててるに違いない。  
耳を塞ぎたい・・・・・こんなのひど過ぎる・・・・・。  
クッソ───ッ!  
 
「っァはあぁっ」  
 
長い事ピチャピチャクチュクチュとスケベ音が続いたあと、ヨーコが声を上げた。  
オレ様気になってつい見ちゃって・・・・・・・。  
見ない方が良かったよ・・・・・・。  
スケベ汁でグジャグジャになったおマンに、旦那がグイグイ突っ込んでるゥッ!!  
ヨーコ顔真っ赤、もう目が虚ろ! だったのが!  
「!」  
オレの視線に気付いてハッとする。  
 
「見ないで〜〜ッ」  
「どこ見てんだヨーコ! よそ見すんな!」  
 
やっぱりヨーコ、オレの事愛してるんだ!  
だからそんな姿見せたくないんだッ!!  
 
「見ない見ないッ! オレ絶っっっっ対見ないよッ! これはナイトメアなんだッ!」  
 
オレ様まぶたを固く閉じる。  
そしてこの悪夢から目が覚める事を、ひたすら祈った・・・・・・。  
 
「おいネギボウズッ!!」  
 
は? 何だよそれ。  
辺りはくっちゅんちゃっぷんとヤラシ音が続く。それ+喘ぎ。  
 
「お前だboy! そこの!」  
「オレかよ! オレの事なのかよッ!」  
 
オレは目を閉じたまま返事する。ぜってー目ェ開けねーッ!  
 
「目ぇ開けろ!」  
「イヤだッ! 絶対にイヤだッ!! 死んでも開けるもんかッ!!!」  
「・・・・・・そうかい(意外と強情なヤローだな)」  
 
ダンッ!!  
 
というでかい音がした!  
オレ様ビビって目を開ける! と同時に、頭の上に水が落ちて来たッ!  
何だ何だッ!?  
旦那がオレに銃を向けてるッ!?  
 
「ヒィッッ!?」  
「よっく見とけ」  
 
どうやらこのバカ旦那!  
棚のウォッシャー液をブチ抜いたらしい!?  
液がこの男前に滴り続ける・・・・・。  
アワワワワワワあいつマジだ! クレイジーだッ! 瞬きしようもんなら実弾喰らわされかねないッ!  
オレはやむなく強姦を見物する事になった。  
 
「Good!(それでいい)」  
 
旦那は銃を持ったままHoodに手を付き、がっつんがっつん腰を動かす!  
ヨーコはオレと目が合うと、恥ずかしさの極致といった顔をして「No・・・・・! No!!」目で見ないでと訴える・・・・・。  
 
「やめてくれようッ! そんなんしたらヨーコのおまんまん壊れちゃうよおッ!」  
 
オレ様いつの間にか泣いてる。  
悔しさと情けなさと続きの見たさで頭ん中混乱。  
 
オレの視線に耐えられずか、ヨーコが両手で顔を覆って隠した。  
 
バカ旦那はその手をムリヤリ片手ではがし、両手首をヨーコの頭の上で纏め上げる。  
ヨーコはオレに顔が見えないように向こう側にやるが、旦那は強引に舌入れてわざとオレによく見えるようにしやがった!  
 
「ん〜〜〜ッん〜〜〜〜ッ」  
 
上からも下からもブチ込まれて自由を奪われたヨーコはもう、やられ放題・・・・・。  
 
「ああ・・・・・オレのヨーコ・・・・・オレの可憐な花びらがあああ・・・・・」  
 
車はゆさゆさ、おマンはずりゅずりゅ、オレは涙が止まらなくてうわあぁん。  
ばけやろHood凹むじゃんかようッ!  
銃も強く押し付けたらキズになるぅ!  
 
「ヨーコ・・・・・! 妖精さん、妖精さん・・・・・こんな奴に・・・・・汚されて行くぅ・・・・・」  
 
窒息!  
窒息ゥッ!  
窒息しちまうよッ!  
いつまでディープってんだようッ!  
 
「・・・ゥゥッ・・・・・ン・・・・・・フハァッ」  
 
ようやっと上の口を開放されたヨーコは、息を弾ませつつ声を殺す。  
一生懸命こらえてガマンしてるようだ。  
でもそんな努力はカラ回りに終わる。  
ヨーコは糸が切れたみたいに、急にコントロール不能になった。  
 
「やああああぁぁぁっ」  
 
旦那がひときわガツンガツンを強くしたからだ。  
ヨーコは首を振って眉を寄せる。  
もう羞恥心とかどっか飛んじゃってて、目を閉じたままオレの方に顔を向けて乱れた。  
おかげでオレ様、見事にビンッビンのカッチコチ。  
半開きになった、バラ色のおいしそうな唇は、激しく喘いで吐息を漏らしております。  
 
じきに、ヨーコの白い喉が反り返り悲鳴が上がった・・・・・・。  
 
ヨヨヨヨヨヨヨーコ!  
イッちまった・・・・・!  
足全体が震えてる・・・・・・。ってエエエ!?  
旦那そこへ追い込みッ!?  
ヨーコの首筋にガブッと噛み付いて、もっと奥に奥にと入ろうとしてる・・・・・。  
 
「もうやめてくれえぇぇぇぇ・・・・・もういやだあぁぁぁ・・・・・」  
 
オレ様号泣。  
ティンの先も泣けてきた。  
最愛の人が目の前で犯されてマジ勃ち・・・・・。どーゆー事コレ・・・・。  
 
「・・・・・・・・・」  
 
旦那は一瞬何か考えてたようだ。  
棒をすっぽ抜くとグデッとなったヨーコを担いで、何考えてんのかこっち来た。  
そして涙でぐじゅぐじゅのオレの前にどっかと座り、ヨーコをだっこしてオレと対面させる。  
 
「よう奥さん、見せてやれ」  
 
旦那はヨーコのももを下から持つと、パカッと開いてオレに見せ付けた。  
ご、ご、ご、ご、ご、ご開帳ッ!?  
そこへ自分のおっ勃ったものを押し当て、挿入。否、侵入。  
ズヌー!  
 
ヨーコの漆黒の髪と同じ漆黒のヘアーが、溢れ出たマジ汁で濡れそぼってる。  
ももの付け根にまで広がって・・・・・。  
スケベ旦那はヨーコの体中を好き放題オサワリしまくって、ナニを動かすでもなく深くハメっぱなし。  
オレがちょっとでも顔を逸らそうとすれば銃。  
汗だくの2人を血走った目で見るしかない・・・・・・。  
 
のぼせたような、ぼんやりしたような、そんな顔したヨーコ・・・・・。  
オレの前じゃ見せた事が無いような顔だ・・・・。  
いつも控えめな表情の下に隠れて、こんなヨーコがいたなんて・・・・・・・・・・・聞いてないヨ!  
 
ヨーコの息が少し落ち着いて来ると、旦那がまた動き出した。  
 
目の前で披露される本番。  
 
旦那のヤロー、ヨーコのふとももにかかったまんまのパンツを取ると、オレの頭に乗せてきやがった。  
それを振り落とすのも勿体ないんで、オレは嗅げるだけ匂いを嗅ぐ。  
って!  
嬉・・・・・・悔しいィッ!  
 
ヨーコはフードの上でィヵされた余韻にまた火が付いたらしく、切ない声を洩らす・・・・・。  
目の前にはぷるっぷる揺れるチェリーパイ。  
おもいきり揉みしだいてむしゃぶり付きてェーッ!  
 
オレはきっとモノ欲しそうな顔してたに違いない。  
よだれをすすってたりもしただろう。  
ヨーコん中がどんなんなってんのか知りたかった。  
旦那はそんなオレの気持ちを知ってか知らずか、動かしながらオレを見て、にやりと笑うとこう言った。  
 
「お前、この角度が弱いの知ってたか?」  
 
そしてグイ!  
とヨーコのどてを片手で押さえると、がっしがっし揺さぶるッ!  
 
「そら! いけ! いけ! いけッ!」  
「ひぃやああぁぁぁァ〜〜〜ッ!!」  
「もうやめてやってくれええーッヨーコを苛めないでくれええッ!!」  
 
ヨーコはアッと言う間に達して、さっきより強い快楽に身を振り乱した。  
かっくんと顎が上がった後も、何度もビクッと電気が走ったように波打つ・・・・・。  
オレ鼻水ダラダラ、ヨダレごっくん。  
旦那はハーハー言いながらヨーコの肩にキスする・・・・・。  
 
やっと終わった・・・・・・・・・・・・・・と思ったら!!!!  
 
うへああぁぁぁん!  
旦那はヨーコを抱えて立ち上がるとFRの方へ行った。  
旦那!  
自分のぃヵヵ゛ゎιぃぁっぃィヵぉっゅを出すまで止めないッ! おさまりつかないッ!  
ヨーコの手をフードにつかせるとパンッパンッ!!  
 
「あんたそれDVって言うんだよッ!! うっ・・・・・えっ・・・・・あっ・・・・・おっ・・・・・」  
 
ヨーコもう足ガクガクいって普通に立ってらんない!  
旦那はお構いなしに突く!  
 
「Mmm,good! Feels good! Is good! Real good! Tastes good!(ン〜いい! 具合良し!)」  
 
いや、「ン〜」じゃなしに!  
 
「Good for you! Good for me! Mighty good!(お前に良し! 俺に良し! すげェ良し!)」  
 
オレは良くNeeeeeeeeee!  
 
上半身に力が入らないヨーコ、フードに崩れ落ちた!?  
そのやられっぷりが旦那を煽って、余計攻めたてさせるッ!  
で、そのうち、旦那はゔーッとかあ゙ーッとかん゙ーッとか唸って、出すもん出し終わった・・・・・。  
脱力してヨーコの上に被さる・・・・・・・。  
 
───旦那は自分のを抜き取ると、ヨーコをフードの上にあお向けに寝かせた。  
 
ちょうどおマンがオレの方向いてて、立て膝が力なく倒れるとぱっくりちゃんがモロ見え全開。  
もうなんかてらてら、ぬらぬらに光ってて、ヒクついてる。  
オレの先っぽも・・・・・。  
 
「雑巾・・・・・・インスタント雑巾は・・・・・と」  
 
旦那がオレの方へ来て棚の道具を探り始める。  
ってあんた!  
雑巾でナニ拭く気かよッ!?  
 
「ねぇなぁ・・・・・・・確かこのへんに・・・・・」  
 
そう言いながらオレの真上の棚を探す。  
当然、オレの目の前では旦那のうまい棒が揺れてる。  
っつか当たるッ!? 顔に当たるうッ!?  
だからッ!  
adadブラブラさせんなってッ!!  
マ ジ や め て く だ さ い !  
 
旦那は雑巾を見付けると手に取って・・・・・暫らく眺めてからまた棚に戻した。  
拭くのやめたらしい。  
そして、そこらに脱ぎ散らかした服を拾い集めると、ヨーコを肩に担いだ。  
 
「ちょっ、ちょっと待てよ! どこ行くんだよ! ヨーコをどうするんだようッ」  
「お前と何があったか取り調べるのさ」  
「オレはッ? オレはどうすんのッ!? オレはこのままなのかようッ!!」  
「すぐ戻るから一生待ってな」  
「そっ・・・・・そん・・・・・・」  
 
2人は行った。オレを置いて・・・・・・。  
 
オレここでポコチン出したまんま干乾びるまで放置されるんだ!!  
その間もあいつらはべとべと睦み合って・・・・・。  
そんなのって無いよ!  
・・・・・イヤだあッ!  
 
「ヨーコのあばずれェッッ!!」  
 
と叫んでみても虚しい・・・・・・。  
また涙が出て来た・・・・・・・もうティンも心も萎びたよ・・・・・・・。  
・・・・・もうぐったりだ。疲れた・・・・・。  
胸にドでかい風穴が空いたよう・・・・・・。  
 
───ヨーコとの楽しい思い出に浸ってると、ガチャとドアが開き旦那が戻って来た。  
 
上を着替えたらしい、ランニングになってる。  
旦那は缶ビールを飲み干すと棚に置いた。  
 
「悪いこたぁ言わねえ。人妻に手ェ出すのだけはやめとけ」  
 
そう言うとオレのロープを解きにかかる。  
 
「痛い目見るぞ」  
 
もう見てるって・・・・・・。  
・・・・・・・充分だよもう。  
旦那はロープを元のように縛ると棚に戻した。  
 
「そら行け」  
 
え? 何?  
・・・・・・・・・・・・マジ?  
逃げていいの??  
 
ラッキ!  
オレ様ガレージを出る!  
って待てよ・・・・・・・・・?  
もしかして・・・・・・・・・・・・・・・・罠!?  
 
きっと後ろから銃でオレを狙ってるんだ!  
そう思ったオレは急に不安になって、芝生を踏んだ所でゆっくりと振り返ってみた───。  
 
旦那はインスタント雑巾でフードを拭いてる・・・・・。  
 
ホントに逃げられるッ!?  
いいのかよこれで!?  
 
オレはどうにも信じられず、逃げるフリをしてこっそり陰から様子を見る事にした。  
 
旦那は棚に行きスプレーを取る。  
多分アンブレラ社製の液体ワックスかなんかだ。  
ここんちの備品や生活用品は傘社製の物ばかりだ。それもせっせとオレが届けたやつばっか・・・・・・・。  
新製品やら何やらヨーコ宛てでどんどん送られて来る。  
 
けど・・・・・もうさ・・・・・傘との繋がりなんてもう、そんな事もう、どうでもいいや・・・・・どうでもいい筈なんだよ・・・・。  
なのに何だ? このモヤモヤは・・・・・・。  
 
旦那はと言うと、一発やったら少し穏やかになったようだ。ワックスがけに精を出してる。  
ってもう気が済んじゃったのかよッ!?  
オレ達の事、もう怒ってないのォ!?  
 
「・・・・・・・」  
 
何故かオレは帰るに帰れなくて、その場にぼーっと立ち尽くした。焦点が合わない。  
 
オレが隠れてる事気付いてたのか、旦那がこっちを見た。  
 
「・・・・・行けよもう」  
 
と言い車に目を戻す。  
ワックスがけの続きをするが、「・・・・・そうだ」はたと手を止め顔を上げた。  
 
「遊んでくれたのには感謝しないとな。ありがとよ」  
「・・・?」  
 
旦那はフンフンと鼻歌を歌いながら、今度はヨーコの街乗り買物用の小型車を拭き始める・・・・・・。  
 
どうも旦那はオレの事を、”退屈してるワイフの遊び相手になってくれた”ぐらいにしか思ってないらしい。  
なんか違くね・・・・?  
違うッ!  
オレ達愛し合ってたんだッ!  
そこには愛があった!  
そうだ! そうだよッ!  
 
オレ、このままじゃ悔しいだけだから、最後に何かしら悪あがきしてやりたい・・・・・ッ!  
オレだって男だ。これじゃあミジメ過ぎるじゃんかッ!  
 
「ォ、オ、オオオオレ達の愛は本物だった! ・・・・・ぁあああんたなんかには絶対に理解できるもんかァッ!!」  
 
言った!  
もう勇気奮ったさ!  
オレはゴキゲンでワックス掛ける旦那に向かって喚いてやった! 近所迷惑ッ!  
 
「ア゙ァ゙ッ!?」  
 
すると旦那は一瞬だけ素になった。  
・・・・そしてオレに怒鳴り返してきたんだ・・・・。  
 
「銃出されたぐらいでブルッてる奴が愛だ何だとほざいてんじゃねえ! 寝取る気でいたんなら死ぬ気で来いッ!!」  
 
な、な、な、何だよこのDV夫!  
弱虫なオレに追い討ち掛けやがって・・・・!!  
クソォ・・・・クソォ!  
 
旦那は何事も無かったかのように、ヨーコカーのタイヤの空気圧を見てまわってる・・・・・。  
 
オレ様もう、恥も外聞も無い・・・・・・・・・・男泣き!  
えっぐえぐ、とむせび泣く・・・・・。  
 
「・・・・・オ、オレも奥さん欲しいぃ〜・・・・・・・オレの帰りを待っててくれる人が・・・・・・」  
 
旦那は、はあぁ〜と溜め息をつくとオレを諭すように言った。  
もうウンザリと言った感じだ。  
 
「誰も止めねえ、よそ行って見付けてこい。うちにはくんな」  
 
オレそれ聞いて大泣き。  
も、全否定され過ぎ。  
ここんち来たいんだyo居心地いいんだyo来たっていいじゃんかyoooooooooooo・・・・・。  
そんなオレを見た旦那は、少しフォローを入れようとしたんだろう。  
 
「・・・・・ア〜・・・・・・・・・・その、何だ。職場とか身近なとこで済ましとけ。・・・・・・・・・・・・大体なテメーッ!」  
 
キレちゃフォローんなんねーよキレちゃ・・・・。  
オレがビクッと身震いした為か、旦那は言葉を飲む。  
それから手に持った液体ワックスを振ると、間を取った。  
 
「・・・・・・・・・・・・あのな。  
いたらいる苦労、いなきゃいない苦労があんだよ。所詮無い物ねだりだ。  
・・・・・・・せいぜい今の立場を楽しんどくこったな・・・・・・・・」  
 
オレがずっと黙ってると、「・・・・・・・・・まったくテメー・・・・・俺がどんだけ苦労し・・・・・・・・まあそれはいい」  
言いたい事が次から次へと出て来たらしい。なんかボヤキみたいになってきた。  
 
「ナメやがって・・・・・・・・・・・・・・・・・。オイシイとこだけ持って行こうとすんじゃねェ! 何の犠牲も無しに!」  
 
たまに小さくキレる。  
かと思うと、「・・・・・・・・もう行けよ。・・・・・・・・風俗にでも行ってなんか適当にあてがっとけ」さっさと〆る。  
 
旦那は棚に行き、袋を開けると新しいインスタント雑巾を取り出して、ヨーコカーのワックスの仕上げを済ませた。  
さっきの汚れた雑巾でいいからオレの涙も拭けようっ!  
 
「You! ボサッと見てんじゃねえ!! 帰れ帰れッ」  
「ヒイィッ!」  
 
旦那は今度は高級車に取り掛かった。  
 
オレ様性懲りも無く、なんか言い返したくてしょうがない。  
もう泣かないようにグッと涙を呑む・・・・・。  
 
これがヨーコの旦那?  
こんな・・・・・・・こんな・・・ヨーコを泣かすようなヤツが旦那だなんて・・・・・・。  
そんなの認めないッ!  
なんかヨーコの話を聞いてると、ひたすらマメな旦那ってイメージだったんだけど・・・・・?  
目の前のヤロー、いかにも単細胞って感じじゃん?  
なんかガラっぽいし・・・・・。  
 
ヨーコから聞き出すの苦労したけど、旦那の事を話し出させたら、さんざんノロケてたっけな・・・・・・。  
本人は自覚無いみたいだったけど。  
 
出張先から毎日電話掛けて来るとか、あのハシとかいうスティックを器用に使いこなすとかさぁ。  
もういいよ。ノロケじゃん。  
ヨーコのビッチめ、オレを目の前に他の男の話なんかしてさ。フン!  
 
ああそうそう。  
オレがうっかりショージを破った時も言ってたな・・・・。  
旦那がジンベーとかいうのを着てショージの張替えをするとか。つかタダのジャパンかぶれじゃん。  
ヨーコ、こんなんのどこがいいの?  
オレのが良くね?  
オレ様の三点シュート見たらマジ気持ちも変わるって!  
 
オレは顔を上げて旦那を見てると、弱い風が吹いた。  
ごちゃごちゃ考え事してるオレの頭を、涼しげな風が撫でて行く。  
泣きあとの残る頬の熱も少しだけ持って行かれた。  
 
・・・・・・頭冷やせって事なんだよ・・・・・。  
 
もう帰れって言ってんだから、諦めて帰ろうかなァ・・・・・・。  
でも・・・・でもさ・・・・・・。  
未練がましいかもしれないけどさ、女々しいかもしれないけどさ、けどさ・・・・・・。  
・・・・・・・・・。  
 
風はそよそよと吹き続ける。  
昼下がりの茹だるような暑さには、これだけで気持ちイイ。  
きっと、向うで回ってるスプリンクラーが芝──オレ様が刈ってやった芝──に水撒いたおかげで、風が起きたんだろう。  
・・・・・・オレの頭もだんだんクールになって来た・・・・・。  
風に乗ってベルの音が聞こえる。  
 
ああそうだ・・・・・・あれ・・・・・・・。  
 
あれは、妙なシダ植物に付いてる鐘の音だ・・・・・・。  
風が吹くとカードが揺れてベルを鳴らす仕組みのやつだ。  
・・・・・そう言えば、ヨーコの手伝いしたっけなぁ・・・・・。  
 
台を持って来ないとヒサシに手が届かないってんで、オレが取ってあげたんだ。その吊るしてあるシダ。  
んでそいつを、バケツに汲んだ水にドボンと入れて浸す。  
びしょ濡れのそれをそのまま吊るし直す、と。  
旦那の代わりにオレがやってたんだ。  
オレ、ヨーコに必要とされてたのに・・・・・・・旦那が帰って来たばっかりに・・・・・。  
 
オレはじりじりと照らす太陽を仰いだ。  
 
日差しの角度を見て、そこでまたいろいろと思い出した・・・・・。  
そろそろプールの鯉におやつをやる時間だからだ。  
生きたミミズ。  
長くて活きが良くてぶっといやつ。  
ヨーコが嫌がるからオレ様がやってあげてた。  
それだって、ここのうちでのオレの「仕事」だったんだ・・・・・。  
 
あーチクショー・・・・・プールでまた思い出した・・・・・。  
 
鯉の一本釣り大会を開くとか言う話があったな・・・・・・・・。  
本来なら夏が来る前にプール掃除がてら、やってたらしいけどね。  
旦那が出張のせいで、今シーズンはまだなんだ。  
その釣り大会には大勢人を呼んで、随分と賑やかになるとか。  
ヤヴェ、そういうの大スキ・・・・・。  
近所の配管業者、外科医夫妻、BBQ一家、会社の同僚達・・・・・・・・・・つかオレを始めに呼べ!  
 
んでその釣った鯉を焼いて食うとか。  
なんかカラフルなのもいたんだけど・・・・・・赤いのとか金のとか銀のとか・・・・・。  
それも食うんだろ旦那?  
・・・・・なんか楽しそー・・・・・オレも鯉BBQ一緒にやりてー・・・・・。  
 
オレもう、いろんな考えが頭ン中回って心が砕けちゃいそうだよ・・・・・・。  
ハートブレイク。  
だからってヨーコを諦め切れない、手に入らないと思うと余計に欲しくなる。  
でも旦那には敵わない・・・・・なんか腕っ節も強そうだし・・・・・畳まれそう・・・・・。  
 
じゃあオレ、大人しく帰んの?  
じゃあ今までのヨーコとの思い出はどうすんの?  
そんなに簡単に割り切れんの? オレ?  
 
・・・・・・・割り切れねーヨ・・・・・奥さん・・・・・。  
 
現実なんか認めたくねー・・・・・・・。  
ただのオレの横恋慕だもん。  
強引な思い込み。  
夢見させて貰ってただけ・・・・・いっときイイ思いさせて貰ってただけ・・・・・・・それだけ。  
真っ暗な部屋、散らかった部屋に戻って明日の為にさっさと寝るだけ・・・・・それが現実・・・・・・。  
 
「ああそうか」  
 
旦那が呟いた。  
うな垂れて、足元に視線を落とすオレの様子を見ていたらしい。  
ワックスをかける手を止めるとオレの方に歩いて来た。  
旦那はジーンズのケツポケに手を入れ、2つ折りにされた紙幣を取り出す。  
そして札用のクリップを外すと、無造作に札を数え始めた。  
 
「いくらだ」  
 
ってアブねーよ!  
財布持ち歩けよ! 無用心だな! スられても知んね!  
 
「・・・・・・・・・・・・」  
 
旦那は札を数えるのをやめ、オレのポケットに全部突っ込んだ。  
え? え!?  
 
「ヘルスにでも行って抜いて貰え」  
 
あ、これって・・・・・?  
もしかしてオレの事、金が無くてもじもじしてるように見えた・・・・・とか・・・・・?  
 
「もう戻ってくんなよ」  
 
旦那はガレージに戻るとワックスの続きをやる。  
こんな金ッ!  
旦那の金なんかッ!  
あんたから貰った金なんかい・・・・・・・・・・・・・・・・りますはい。  
 
また涙・・・・・もう本格的に泣けてきた。  
 
形容しがたい謎の感情の嵐で胸がいっぱい・・・・・・。  
オレに背を向けて、車の屋根を拭くのに夢中になってる旦那。後ろ腰には銃。  
 
 
──気付くとオレ、走ってた。  
自分でも何やってるかわかんない! 旦那の銃を奪う!  
 
「あんたを殺してオレも死ぬううぅッ!!」  
 
Safety catchを解除し旦那に銃口を向け、目を閉じたまま発砲ッ!  
 
ダァンッ!!  
 
・・・・・・・と、行く筈だった・・・・・。  
旦那が銃ごとオレの手を背中に捻り上げる。  
 
「いでででででででッッ!!」  
 
オレの手から銃を取り上げると、また後ろ腰にさし直した。  
てかリロード!  
マメにリロードッ!  
リロードしとけよゥッ!  
 
「行けと言った時に行っとくもんだ」  
「あだだ、あだッ! ぅヶ゛! ぃττττ! ぃτぇょ! ぉぃ! 許してェッ」  
 
もしや!  
 
・・・・・・そうか!  
旦那のヤロー鎌かけたな!? 試したんだなオレをッ!?  
 
「わざと弾抜いてきたんだろッ! あんたッ!!」  
「おう、鋭いな」  
「ちっっっっきしょおおォォォォォォ〜〜〜〜ッッ!!!!」  
 
 
で、またあのロープで縛られる。  
今度は足も縛られてガレージで腹這いになった。  
 
「許して許して許して許してッ!!」  
 
旦那はFRのトランクを開けて、頑丈そうなグローブを取り出して着ける。  
それから棚の横に立て掛けてある鉄パイプを手に取ると、ガンッガンッとコンクリートに打ち付け始めた。  
そのうちにパイプがくの字に曲がってくる。  
旦那はそれをオレに握らせ、オレの指紋をべたべたと付けると芝生に転がした。  
 
「待て! 待てよう! 待てって!!」  
 
旦那は棚の空き缶を取り、家の中へ戻って行く。  
きっと通報しに行ったんだ・・・・・。  
 
───パトカーが次々に到着する。  
 
でもおまわり達は現場検証するでもなく、旦那とずっと話してるだけ。  
聞こえてくる会話によると、旦那はsirと呼ばれてる。  
ってあんた!  
おまわりかよ!  
おまわりなのかよッ!  
こんなおまわりは嫌だァッ!  
 
どうやら部下達を呼んだらしい。  
多分オレ、スゲーひでー目に合うんだ・・・・・。  
やつらは旦那を残してプールの方に歩いて行った。  
多分、鯉を見に行ったんだろう。  
旦那はオレの方に来て、手のロープをほどくと手錠をかける。  
 
遂に御用になった・・・・・。  
 
「望み通りブタ箱にブチ込んでやる」  
「何でッ! 何でヨーコを悲しませるんだようッ! この浮気男ッ!!」  
「?? ・・・何の話だ」  
 
オレは旦那に「オレ設定」をぶちまける。  
だが現実はオレが思っていた設定とはかけ離れてた。  
旦那の言う事には、ジャパニーズマフィアが芋づる式にあがったんで、忙殺されてたとか。  
 
それホントかよ。  
 
通訳を呼んでくれと言ったものの、経費削減だとかウタわせろとか色々あって、護送先にまでついて行かされたらしい。  
何だかんだ面倒はあってもそれなりに成果は上がったし、日本の女についても色々聞けたんで、結果オーライだと言う。  
今回頑張ったおかげでポストも上がって、だいぶ休みも取れるようになったんだと・・・・・・。  
 
「ウソだッ!!」  
 
まだ信じたくないオレ。  
女のとこにシケ込んでた事にして欲しいオレッ! しつこッ!!  
だって本来ならオレが・・・・・ヨーコと・・・・・。  
 
「オレ達は深く愛し合ってたんだッ! なのに、なのにッ・・・・なのにあんたがァッ・・・!!」  
「お前の愛とやらに幸あれ」  
 
 
プールの方からイケメン風味の部下が1人戻って来て、足のロープを解く。  
オレはパトカーに乗せられて、怖い所に連れて行かれた。  
 
オレに関する書類は全て捏造され、めでたくメシウド。  
高い塀の中、檻の中のくらし。  
ここに入る時あの色男が言ってた。  
一年で出られるって。恩赦だって。オレがいい子にしてたら前科もんにもしないって。  
ほんとかなあ・・・・・。  
 
まあ慣れるしかない。  
 
なぁんて言わない。  
 
実はここのくらし、かなーり気に入ってるんだ。  
メシもある、個室も、服も、奥の虫歯も治療して貰った。  
至れり尽せり。  
ま、夜は消灯早いけどね。  
やる事無いから警官夫妻のファックをズリネタに、日に4回は抜いてる。  
こんな暮らしも慣れると楽しいもんだね。  
 
──ある日仲間が耳打ちして来た。  
 
シャワーを浴びながらそいつが教えてくれる。「Sister(おネエ)には気を付けろ」ってね。  
一体何の事かサッパリだったけど、その直後に意味がわかった。  
そいつをはじめ他の奴らもそそくさとフロを出る。  
ヘンだなあと思ったけどオレは気にもしなかった。目を閉じて頭を洗い続ける。  
すると足元に石鹸が滑って来た。  
 
「石鹸、取ってくれる?」  
「ああいいよ」  
 
オレは屈んで石鹸に手を伸ばす・・・・・ッヒグウゥッッ!!  
ケツになんか入った!  
 
「あんた、かわいいじゃない」  
 
気を付けろってコレか!!  
もうおせェーッ!  
オレはおネエにズッコズッコやられた・・・・・。  
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・で、目覚めた。  
 
それからはもう猿のようにヤリまくり。  
人目も憚らず、図書室でいちゃいちゃ、トイレでちちくり、洗濯場で逢引き、食事も隣同士。  
今じゃ目で会話ができる。  
おネエは見た目はまったくの女で、おキレイ系だ。  
でも下には暴れん棒が付いてる。  
新顔達の間では用心棒なんて呼ばれて恐れられてるけど、心配無い。オレ専用だから!  
 
そんな幸せな日々も長くは続かなかった。  
 
一年なんてあっと言う間だ。オレのお勤めが終わる時が遂に来た。  
・・・・・おネエともお別れ・・・・・。  
オレ達約束をした。  
ここを出て外で会ったらまた愛し合おうって。  
そして、お互いの気持ちを確かめ合う合言葉も考えた。  
 
──奥さん米屋です──  
 
心変わりしないでまだ好きだったら、そう言う。  
それを聞いた方もまだ好きだったら、こう言う。  
 
──お米屋さんをくださいな──  
 
また会って突き合いたい。  
おネエの熱い体が忘れられない・・・・・・。  
そうだ!  
おネエが出所したらオレ、プロポーズしようッ! 驚くかな!?  
 
 
オレはムショに斡旋して貰った印刷会社でマジメに働く。  
その傍ら短期のバイトを見付けては寝る間も惜しんで働いた。  
 
金を貯めたい。  
 
とびっきり豪華な指輪をプレゼントして、嬉し泣きさせてやるんだ!!  
その為には金だ。  
今日も刷る前の求人広告に目を走らす。もう日課。  
 
あ!  
 
コレ・・・・。  
これはスゴい・・・・・。  
・・・・・コレだ!  
早く応募しないと・・・・・・!!  
 
それはアンブレラ製薬の求人だった。  
若くて健康な男性若干名、とあとは途方も無いギャラだけ書かれてる。学歴不問。  
これだ! これしかない!  
 
オレは腹イタを起こして早退し、アンブレラに電話をかけた。面接の話をする。  
すると、先方は来れるならすぐ来てくれと言う。  
オレ様大急ぎで傘社に向かった。  
 
面接はハイ、イイエだけだった。  
 
金の事だけしか頭に無いオレは、ほぼハイで面接通過! 採用!  
なんか細かい文字でザーッと書かれてる書類にサインして拇印を押す。  
人体実験がどうとか言ってたけど、それって新薬飲むだけでしょ?  
なぁんて事無い。  
何でも来いってんだ!  
 
健康診断をすると言うんで、服を全部脱いだ。  
次に、なんかヘンな色の液体を飲まされてから、MRIみたいなのに入る。  
するとそのうちにものすごく眠くなって、オレの意識は夢の世界へ飛んで行った・・・・・。  
 
 
───気付くとオレは、筒状の水槽の中にいた。  
 
管とかいっぱい付けられてる。  
・・・・・な、なにコレッ!? なんの冗談!?  
 
「だ! 出してくれ〜〜ッ!!」  
 
と言ってはみたもののオレ水の中だし、室内は薄暗いし誰もいない。  
はッ! そうだッ!!  
今日っていつ?  
どれぐらい時間経ってんの!?  
と・・・とにかく出なきゃ・・・・・。  
オレは力一杯水槽を叩くと、そのブ厚い水槽は簡単に割れて出る事ができた。  
 
「ゲホッ・・・・・ゲホッ・・・・・」  
 
・・・・・・オレきっとなんかの陰謀に巻き込まれてる・・・・・・・。  
オレの頭脳に目を付けた機関が、オレを利用しようとしてるんだ!  
ヤバイッ!  
逃げなきゃッ!  
 
オレはいろんな物をぶっ壊しながら建物の外に出た。  
 
今は夜、車通りも少ない。ってアブねッ!  
納品を急ぐトレーラーが後ろから迫って来た!  
オレは咄嗟に地面に寝転がって、何とかやり過ごす。  
パパーンとか鳴らしながら通り過ぎるトレーラー。  
 
・・・・・・・・ふう。  
 
って!  
立ち上がれば今度はセダン、車高低め。オレは反射的に大ジャンプをかました!  
 
「うっひょェアァ〜〜〜ッ!!」  
 
何 で す か コ レ は !??  
 
オレすげー〜〜跳んでるぅッ!? 甲羅脱いだみたい!  
びよ〜〜〜ん! びよ〜〜〜〜んて!  
これダンクしまくれんじゃん!  
転職しなきゃ!  
 
オレはぴょんぴょん跳びながらアップルインの通りまでやって来た。  
 
ヨーコに復讐しようか考えて一休みしてたら、通りに車が停まってS級のイイ女が降りて来た。  
へへ。  
とにかく声掛けようとした。  
 
「エエエッ!?」  
 
おネエじゃん!  
おネエもう出れたの!?  
言ってくれよう!  
 
ワインレッドのスーツ着て、胸にはネームプレート。新聞記者になれたみたいだ!  
良かった! 夢が叶ったんだね!  
獄中で言ってた。  
ここを出たら性転換と豊胸して完璧な女になって、記者になりたいって!  
 
「醇舛R! 遏ィヒ.).@ケ!!(おネエ! オレだよ!)」  
「? ・・・・・・・何こいつ・・・・」  
 
おネエは首をかしげ、オレの事を初めて見るような顔をした。  
 
「遏ィヒ.).@ケ_トwf!!(オレだって!)%ソ`@ノ!(そうだ!)」  
「どきなさいよ、ジャマよ」  
「lt;ミワr|ソ佗リイ儔タ Uトコx!(奥さん米屋ですッ!)」  
「2度は言わないわよ」  
「tセテ屑lt;ミワr|ソ佗リイ儔タ Uトコ菻!!(だから! 奥さん米屋ですってば!!)」  
 
何でおネエ気付いてくんないの!?  
 
オレの事見てわかんないの!?  
おネエは溜め息をつくと、めんどくさそうに車のトランクを開けた。  
 
「ヒマじゃないの」  
 
膝をついて、取り出したロケットランチャーを肩に構えると、何の躊躇いも無くオレに発射!!  
って!  
そんなもの持ち・・・・・・歩い────────────  
 
「ヴォオオオォォォォ────ッッ!!!!」  
 
 
アップルインに向かうおネエが見えなくなると、オレの視界も暗くなって来る。  
 
遠のく意識の中で、一瞬の間にとても長い夢を見た。  
幸せな夢だった・・・・・。  
あの閑静な住宅街の家々を回り、片っ端から奥さん方を孕ませていく夢だ。  
 
  ・・・・・次に生まれ変わる時は・・・・・  
 
 
              米屋になりたい・・・・・  
 
 神・・・サマ・・・・・。  
 
 
────────気付くと目の前に繁華街。  
 
ラクーンの一番賑やかで、華やかな通りだ。  
ただオレ、異様〜〜〜に視点が低い。  
いや、通り行くギャルのミニスカの中見えるのはいいんだけど?  
れれ?  
何かヘンだぞ・・・・・・。  
オレは足元から周囲から、注意して良く見てみた・・・・・。  
 
所々、地面にキスしてるヤツとか卵みたいの産んでるヤツとかいる。  
皆おんなじ顔!  
もしかして・・・・・・?  
オレは自分の両手と体を見回した。  
 
ウギャ───ッ!  
 
これは!!  
オレは!!  
ここは!!  
 
寝っ転がったホームレスの頭の上だあァッ!?  
 
シラミかよッ!  
シラミなのかよッ!?  
riceじゃなくてliceなのかよッ!? オレッ!?  
神サマちょっと! シャレはイラネ!  
 
「もうヤケ! あとは野となれ山となれだ!! キュンッ!!!」  
 
オレは開き直ってシラミライフをエンジョイする事に決めた。  
住めば都!  
宿無し・・・・・オレにとっては宿主の、クセェ頭に噛み付いて血ィ吸ってキュ──────────ンッ!  
そして、あたり一面にいる仲間の士気を上げるべく発破掛ける。  
お前ら皆、オレ様について来いッ!  
 
「皆の衆!! 噛め! 吸え! 産めよ殖やせよ! 世にはびこるのだあアァ〜〜〜ッ!!」  
 

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