クレア・レッドフィールドは薄暗い警察署内を歩いていた。  
兄でありS.T.A.R.S隊員でもあるクリス・レッドフィールドの消息を追い、インターステートハイウェイを  
バイクに跨り一路、このラクーンへ辿りついたという訳だ。到着した頃には既に月明かりが街路に差し込んでいた。  
 
市に入ったクレアは、人気の無いその街のあるバーで人食いに遭遇する。だが、そこに現れた  
レオンと名乗る男によって危機を脱する事が出来た。レオンが話す所によると新人警官としてこの街に  
赴任した直後であり、その初日からこのような事態に巻き込まれたのだという。  
クレアはレオンの指示により銃を携帯するように言われ、爆炎に遮られた二人は別々のルートから、  
警察署で落ち合おうという事になっていたのである。  
 
警察署に到着したクレアはここも異常な状況である事を悟った。バリケードに遮られた扉、窓、そして、  
瀕死の重傷を負ったマービンという警察官。一刻も早くレオンと落ち合う必要があった。  
度重なる異常な事態に、さすがの彼女も疲労が見え始めていた。辺りには血の臭いや硝煙の臭いが  
立ち込め、人間の姿は忽然として消えていた。そして立ち塞がった舌の長い怪物。しばらくの激しい戦闘により  
傷を負った彼女は逃げるように、バリケードの残骸で犇く廊下を壁伝いに進んでいった。  
 
呼吸で肩を揺らしながらバリケードに手を突くと、生乾きの血飛沫や埃が指に絡み付いてくる。  
彼女は思った。  
兄は、本当にこの街にいるのだろうか、と。  
最悪の結果を考える事は無かった。あの強い兄が、いつでも自分を守ってくれた兄が、  
こんな事では決して屈したりはしないのだと。きっとどこかで生きているのだと。  
クレア自身も負けられなかった。そんな兄を思うだけで、前に踏み出す勇気がどこからか沸いてくるような気がした。  
 
 
その時突如、バリケードの隙間から無数の手が伸び、彼女の体に纏わりついてきた。  
クレアは叫び、その手を振り解こうともがいたが、如何せん数が多すぎた。数え切れぬ程の指に  
捕らえられ、彼女はあっという間にバリケードに磔(はりつけ)になってしまったのである。  
 
その節くれだった白い指は彼女の全身を這い回り、脇腹、首、腕をはじめ太腿や股間、胸にまで  
食い込んでくる。クレアはいやいやと首を振ったが、思うように力が入らず逃れられない。  
両脚を閉じたが、すぐに脚を開かされるとそのまま思い切り開脚させられる。  
彼女の体は臀部から持ち上げられ、宙に浮く格好となってしまう。  
 
やがて服の隙間から、指が彼女の皮膚を蹂躙し始める。  
 
クレアは引き攣った声をあげ、じたばたと体を振らせた。  
指は彼女の乳房の形を変え、頂点の蕾を弄り回す。脇の下を弄び、膝裏を指でなぞり、耳の穴にまで  
その手が及ぶと、股間に入り込んだ手が彼女の秘部をまさぐり始めるのだ。  
更には後ろから臀部を撫で回し、その窪みに沿って指をなぞらせるものも居たものだから堪らず、  
彼女は悲痛な喘ぎを漏らした。  
 
一際甲高いその声はどこか戸惑うように、また焦燥するかのように感じられる。  
その声に興奮を増したのか、バリケード向こうから伸ばされる手の主達はさらに彼女の体の柔らかな女肌の感触を欲した。  
 
バリケードの向こうから、荒い鼻息が無数に聞こえてくる。  
クレアは恐怖に強張り、歯をかちかちと鳴らしていた。闇雲に火照らされた体から、冷や汗が滲み出る。  
呼吸が乱れ、クレアは顔を背けながらも自分の体で蠢く手をじっと見つけていた。  
 
隙間なく這わされた白い手は、彼女の体を隙間なく覆いつくし、蠢いていたのだ。僅かに見える服がごそごそと  
隆起しており、その光景に彼女は意識を失いかけた。力を失った彼女の体は宙でゆさゆさと揺れ、時折  
漏らす呟き声のような呼吸はか細く、背後の呼吸音の群れに呑まれて霧散した。  
股間に伸びた指が陰唇を押し広げ彼女の内部へと侵入して来た。何度も指の抽送を繰り返し、かき回す。  
クレアは首を横に、一層悶えた。次第に彼女の奥底から愛液が滑り始め、指を濡らしていった。  
 
全身を撫で擦る愛撫に、彼女はくらくらと眩暈がするほど感覚を研ぎ澄まされ、目の前が曇っていった。  
吐息は自然に熱く熱を帯び、頬は紅潮してくる。徐々に艶色を抱き始めるその声が、如実に物語っていた。  
 
彼女の唇に行き場の無くなった指が殺到する。そうして差し込まれた指に彼女は懸命に歯を立てるが、  
何本も口内にねじ込まれた指はクレアの歯をこじ開け、舌に絡みついた。クレアは苦しそうに唸ったが、  
もう目の前の視界も指に覆われて何も見えず、彼女はくたっと顎を揺らせるだけだった。  
 
その時だった。バリケードがみしみしと音を立て、亀裂が入ったかと思うと一気に砕け、彼女の体は外に  
引き出されてしまった。  
外に見えたのは、ゾンビの大群だった。  
クレアの声を聞きつけて群がってきたゾンビの群れは隙間なく押し寄せ、箍(たが)が外れたかのように  
一斉に手を伸ばし、彼女の体に掴みかかったのである。  
 
クレアは悲鳴をあげながら、ゾンビの間に埋もれ、波に飲まれ、そして見えなくなった。  
ゾンビ達は舌を伸ばして我先にと地に群がった。びりびりと何かを裂く音が聞こえ、やがて彼女の着ていた  
ジャケットや下着、ブーツなどがゾンビ達の塊中央から放り出された。  
その中から彼女の悲壮な叫び声が微かに、そして何度も聞こえてくる。  
一度目は一際高く、二度目に哀願を訴え、そして三度目は、絶叫だった。  
 
 
 
 
そこには兄も警官の姿もなく、ただゾンビ達が蠢くだけの光景である。  
クレアの悲鳴はゾンビ達がその場を去るまで、ラクーンの闇に溶けていったのだった。  
 
 

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