まあ・・・・・・・・夜勤だ。仕事も退けたんでJ'sバーで飲みながら  
ウィルとバカ話をする。この時間にしちゃ珍しく、いつもより客の入りが  
あるようだ。テレビじゃ速報で物騒なニュースをやってる。暴動だって?  
ちょっと見てみるか。とその時ウィルの表情が少し固まり、ドアを見る。  
妙な客が入って来たからだ。オイまさかポン中なのかよ? 面倒だな・・・。  
ケ「行こうか? 行くぜ」  
ウ「いえ・・・・大丈夫です、自分が行きます。ごゆっくりどうぞ」  
ウィルは俺に手間を掛けさせまいとしてか、ポン中を追っ払いに行った。  
 
充分に注意してけよウィル、錯乱起こすからな。そうなったら俺も行く。  
俺はグラスの黒ビールを飲み干してカラにすると、奴らの様子を見た。  
すると、ポン中はあろう事かウィルに噛み付きやがった! マジでかよ!?  
助けに行く間も無い、一瞬の出来事だった。シンディの悲鳴が店内に響く。  
シ「ウィル! ウィルッ!! イヤアァァーーッ!!」  
何か様子が変だ・・・・・何だ外の奴らは・・・・・目がおかしいぞ・・・  
暴動がこっちに流れて来たのか・・・? やべえ、とにかくここは危険だ!  
ケ「おいッ! みんな! 上に行くぞ! 上がれ上がれッ!!」  
 
ジ「かかかかか鍵がかかってるヨオ〜ッ!」  
いち早くstaff roomのドアノブを回した男が裏返った声で叫ぶ。  
ア「ちょっと貸してみなさい!」  
スーツの女が男を突き飛ばし、何やら専用の小道具で鍵を開けようとする。  
が、手が震えて上手くいかないらしい。焦りながらしきりに舌打ちする。  
ケ「シンディーッ! 鍵はどこだッ!?」  
シ「ウィ・・・ウィル・・・ねえ・・・・ウィル・・・?」  
ダメだ! パニクッてやがる、のびたウィルを揺すって起こそうとしてる。  
ケ「そこから離れろシンディ! このままじゃそのドア破られるぞッ!」  
 
ハ「これではないか?」  
オペ後で消毒液臭いジョージが鍵を持って来た。俺はそいつで鍵を開け、  
具合の悪そうな連れに肩を貸している警備員を行かせる。  
ケ「ジョージ、ついて行ってくれ!」  
ハ「ああ、任せてくれ」  
ア「あたしも行くわ!」  
ハ「頼りにしてるよ!」  
ジョージとスーツの女が警備員を誘導しながら上へ上がる。  
ケ「オイあんちゃん! お前だッ! そこの!」  
俺は腰が引けて店内を右往左往してる若いのに呼びかける。  
ケ「トイレに行って人が居ないか見て来い! シンディーッ来いッ!!」  
シンディが泣きながらヨロヨロとこっちへ歩いて来る。  
シ「ウィルが・・・ウィルがぁ・・・・」  
ウィル・・? とうに事切れたかと思ったウィルがむっくりと立ち上がった。  
そして手を突き出し、シンディに噛み付こうとする。死んだ筈だろ・・・?  
ジ「ヤヤヤ、ヤヴァイんじゃないの・・・?」  
トイレに向かおうとしたあんちゃんがカウンターの銃を手に取り構える。  
震えながら安全装置を解除し、目をつぶって撃とうとする! オイッ!!  
あんちゃんッ! それじゃあシンディにジャックポットしちまうだろ!!  
と、それを横取りし、ウィルの額に片手で鉛弾を打ち込む男がいた・・・!  
ヴィンセントだかデビットだか言うツナギの作業員だ。奴は銃を返すと  
脇からナイフを取り出し店内入口に向かう。フッフッフ! おいあんたッ!  
眉一つ動かさねぇとはな! 大したタマだ。人を撃った事があるな? わかるぜ。  
ケ「ロッケンローッ!」  
俺もそこへ行き樽を押し始める。トイレの人も崩れそうなシンディも  
全員誘導されたらしい。許せウィル・・・・俺たちは足早に上へ向かった。  
 
一同はスタッフルームを抜けて上へ行ったようだ。見事なまでに迅速だ!  
これもジョージ達が誘導してくれてるおかげだろう。感謝するぜ。  
俺は配管工を上に行かせるとドアの無い所に合板を固定し、釘打機で  
この先進入できないように固めた。上からは「フォークよ!」「鍵鍵鍵!」  
「シャッターを!」などのやり取りが聞こえる。バタバタと行き来していた  
足音もしなくなった。俺はスタッフルームの全部屋に、逃げ遅れがいないか  
チェックしてからその足で急いで上に向かう。  
 
ワイン庫にも人が居ない事を確認して、額の嫌な汗を拭った。マジで面倒だ。  
あのあんちゃん、女子トイレもちゃんと見たんだろうな? たしか  
東洋人のメガネっ娘がそっち歩いて行ってたような・・・・・? 背格好が  
知ってるjapのbitchに良く似てた。I don't care! んなこたどうでもいいさ!  
・・・・・俺から逃げやがったんだ。違う、死んだんだったな・・・・・。  
大体プレゼントに自分のクソを贈りつけるような女とおんなじ名だ、  
ロクなもんじゃねぇ。・・・どこか遠い街で就職でもしてればそれでいい。  
この街は・・・今は・・・・やべェ・・・・・・・ここにいなくて良かった。  
 
俺の横で酒瓶が落ちる。俺も早いとこ屋上に抜けるとするか。  
ケ「しかしありゃ何だ・・・? 流行り病か何かか・・・・・?」  
俺は45オートの弾数を確かめる。すると向うで人の声がした。  
「・・・u? ・・・・・Can you hear me・・・・?」  
ケ「オイまだ誰かいたのか!? 上だ! 早く行け!」  
「ケビン・・・・? ケビンなの・・・・?」  
ケ「Who is it!」  
俺は思わず固まった。  
ヨ「ヨーコです・・・・」  
 
何だヨーコか。ヨーコね、ヨーコ? フーン。・・・・・あ゛あ゛ッ!?  
ケ「何だって!!!!」  
俺は急いで声のする方へかけて行く。  
ヨ「ケビン・・・!」  
ヨーコがハシゴから降りて来る!? そこでまた俺はフリーズだ。  
エエェッ!? ヨーコ!? ヨーコなのか?? ヨーコてンめえぇーーーッ!!  
ケ「ヨー・・・・」  
ヨーコがトコトコとかけ寄って、ひしと俺に抱き付く。  
ヨ「会いたかった・・・・!」  
・・・・・・・言うに事欠いてイケしゃあしゃあ!! 俺は不完全燃焼で  
生ガス吐きまくりだったってのに! ・・・・どこ行ってたんだ・・・・。  
ケ「・・・・・・お前何やってんだこんなとこで」  
ヨ「逃げてるの・・・・!」  
俺からな。  
ヨ「ケビン、どうしてここにいるの? 引っ越したんじゃなかったの?」  
ケ「帰って来た」  
オイちょっと待て。何で知ってる。  
ケ「こんな事してる場合じゃないぜ・・・・・」  
と言いつつも俺はヨーコにブチュッとやる。畜生め! クヤシイが  
The old love blazed anew between themって訳だ。このやろうッ!  
ヨ「ケガは無い・・・?」  
少しやつれたなヨーコ・・・。  
ケ「いいか、何があってもここから抜け出す。死んでも生き残るぞ!」  
ヨ「ええ!(・・・・死んでも・・・)」  
ケ「いい返事だ」  
・・・・・ここから出て安全な所に落ち着いたらたっぷりとお仕置きだ。  
俺達はシャッターから屋上へと抜けた。悪夢はまだ始まったばかりだ。  
 
ケビンの後について屋上に抜け出ると、顔色の悪い警備員のかたが  
自分のこめかみに銃口を突き付けていました・・・・。  
ケ「見るな」  
ケビンは私の視線の先を、背中で塞いでくれましたが・・・・・・  
この先々で、イヤという程惨劇を目の当たりにする事になるのです。  
マ「Oh・・・ボブ・・・・ボブ・・・・・ボーーーーーーブッ!!」  
仲間の人の悲痛な叫びが辺りに響きます。  
デ「マークッ! こっちだ、急げッ!」  
向こうで作業服の人が彼を呼びました。マークは力無く立ち上がると  
行こうとします。そこへケビンが、コンクリートに血を広げ続ける遺体から  
銃と弾丸を取り出すと、マークを呼び止めました。  
振り返ったマークは泣いているようにも見えます。  
ケ「忘れ形見だ」  
マークはケビンから遺品を受け取ると背を向け、顔を拭うと銃を装備して  
カラスを2羽撃ち落とし、そして一瞬立ち止まってから駆けて行きました。  
 
辺りはあちこちから悲鳴や車の衝突する音、銃声などが引っ切り無しに  
聞こえてきます。私は震え出しそうなのを必死で抑えました。  
フェンスが倒れた所から看板の後ろに回りま・・・・・え・・・待って・・?  
ケ「ちょっとした度胸試しだな」  
そう言うとケビンは隣接したビルに軽く飛び移りました。嘘でしょう・・・?  
ケ「ヨーコ、そら来い!」  
ケビンは片手を私に差し出して言います。そんな簡単に言わないで・・・!  
ヨ「待って・・・! こんなのムリよ・・・! できないわ・・・・怖い・・!」  
ケ「いける! 下見るな」  
ケビンにとってはビルを飛び移る事なんて造作も無い事かもしれないけれど・・。  
 
ヨ「ケビン・・・! 怖い・・・! イヤァ・・・・」  
私はかぶりを振ります。  
ケ「いい、いい、怖くない。来るんだ、落ちても引っ張り上げてやる」  
落ちてもなんて言わないで・・・・! 足がすくんで・・・・イヤ!  
ケ「ヨーコ、まずはそのリュックをよこせ。身軽になってからだ」  
私は背負ったナップザックをケビンに放って渡します。ケビンは  
それを置くと両腕を広げて言いました。  
ケ「さあ来いッ! ヨーコ!!」  
・・・・・もう行くしか無いのです。転んでも落ちても泣きません。  
私は少し助走を付けて、やや高くなっているビルに飛び移りました。  
ケビンの胸に飛び込んで行くつもりで・・・・・私にもできました。  
勢い余って前のめりになった私をケビンが支えてくれます。  
ケ「よし上出来だ!」  
私はナップザックを背負い直すとケビンの後について走りました。  
 
どうやらここはアパートのようです。私達はエレベーターの前に来て、  
顔を見合わせました。ケビンは足から銃を引き抜くと私を後ろ手にして、  
エレベーターを呼びます。エレベーターが屋上に着くとドアが開き、  
中から女の人が両手で空を掻きながら飛び出て来ました。すかさず  
ケビンは私の手を引いて中に入ります。私はもう膝が笑って・・・・  
肩も・・・・・止まらない・・・・震えが止まらない・・・・・・・・。  
ケビンはそんな私の肩を黙って抱きました。そうよ、こんな時こそ  
しっかりしなくちゃ・・足手纏いにならないように、私にできる事を。  
アパートから外に出るとバーの前通りでした。バーに居た人達が  
先に来ていて、かけつけてくれたお巡りさんに協力しています。  
私達も急いでパトカーに駆け寄り、力を合わせてパトカーを押しました。  
 
ある程度暴徒を足止めするとお巡りさんは大きな扉の鍵を開け、  
私達を誘導します。しかし、その先の扉も鍵がかかっており、  
お巡りさんが散弾銃で扉を壊し終わるまで、私達は暴徒をくい止めました。  
けれどもやっとの事で道が開けたというのに、お巡りさんは私達の目の前で  
暴徒に噛み殺されてしまったのです・・・・なんて事なの・・・・・!?  
こんな事が・・・・こんなひどい事が・・・・信じたくない・・・・。  
タンクローリーのリアのバルブを握った、スーツの女性が私達を呼びます。  
ア「みんなこっちへ来て!」  
みながタンクローリーの横に集まるとすぐに中の燃料が撒かれて、  
ウェイトレスの女性がライターに火を付け引火させました。  
ハ「さあ飛び込むんだ!」  
私達は巻き添えになる前に、下水に飛び込み事無きを得ました。  
 
暗い、湿った、ねずみの住処を抜けるとそこはホテルの前通りでした。  
かろうじて生き延びた人々と私達は、警察車両に乗って移動しましたが、  
どこもかしこもバリケードで仕切られていて、立ち往生しました。  
ケビンがお巡りさんと何か話をして、それが終わると私の所に来ます。  
ケ「俺とマーク、ジム、デビットはこの先の様子を見て来る事にした。  
お前らはここで待て。ジョージ、みんなを頼む」  
ハ「ああ」  
ヨ「ケビン、これを持って行って・・・・」  
私も何か役に立とうと見境無く集めた武器弾薬の中から、シルバーの  
銃身の重くて大きな銃と、その弾をケビンに渡しました。  
ケ「マグナムリボルバー・・・・・か! こいつはいい・・・・・俺向きだぜ」  
ケビンは上機嫌で口笛を吹くと、みなを連れて行ってしまいました。  
お巡りさんはケビン達の帰りを待たずして、私達を車に乗せます。  
車はラクーン署、R.P.D.へと向かいました。神様どうか彼を護って・・・。  
 
暴動だと・・・? これがか? 歩道橋から見たリビングデッドの山、山、山。  
・・・・・遂に世界の終焉が来た訳か。いつか来るとは思っていたが、  
昨日今日とは思わないものだ。フン、上等だ。面白い・・・・やってやる・・  
何もかも・・・・・ぶっ壊してやる!! 俺は倒れた警官の仕事の続きにかかる。  
デ「ケビン! 援護しろ!!」  
ケ「おうッ!!」  
転がった起爆装置を拾う俺の横で、ケビンが片っ端からゾンビをブチ抜く。  
マークもゾンビを引き付け誘導する。うるさい奴はわめいて駆け回る。  
ジ「あああああああんた! 何ニヤニヤしてんだヨ! こんな時にッ!!」  
ケ「ヘヘッ・・・やべえ状況だってのにワクワクするじゃねぇか・・・・・  
鳥肌立つくらいにな!! そうだろッ!? なあオイッ! ディヴィッ!!」  
デ「フッ・・・・クソが。いいから護衛しろ」  
ケ「Yeah yeah!!」  
ジ「あんたらッ! おかしいおかしいおかしいヨッ! 狂ってる! オオオオ  
オレのこのふふふふふ震えはむむむむむ武者震いじゃないからなッ!  
ででででもオオオオレ様ララララッキーに関しちゃひひっひ百人前なんだぞ!  
ああああんなゾンビなんか目じゃない、イイイイチコロさァはははぁッ」  
デ「能書きはいらんッ」  
ケ「Do!! Shoot!!! お前の持ってるそれは何だッ!! モデルガンかッ!!」  
ジ「ち、ちちちがわいッ・・・・キュンッ!」  
うるさい奴がやっと撃ち始めた。おい、目を開けて撃て! 味方を殺す気か!  
 
起爆装置ができあがり、倒れた警官の傍らのセットで派手に爆破させる。  
吹っ飛べ! クソども! 口数の多い奴が爆風で後ろに吹っ飛んだ。・・・フン、  
腰が据わって無いからそうなる。覚悟を決めろ、世界が崩壊し始めたんだ。  
俺は三人を来た方へ戻らせると通りのマンホールを開け、飛び降りた。  
地下はどこにだって繋がっている。むしろ俺にとっては地上より安全な位だ。  
 

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