地下を行くマーク達を追って下水を進んだはいいが、案の定迷って逸れる。  
シンディの手を引きながらどうにかこうにか地上へのハシゴを見付けた。  
多少外れ掛けたマンホールの蓋をずらし、2人して地上の地獄へと舞い戻る。  
ハ「ここはどこだろう・・・・」  
シ「あ、見てジョージ。私たちアンブレラ社の敷地の裏手にいるみたい」  
ハ「そのようだな。・・・・・彼らはどこへ向かったのか・・・・」  
私は落ちている棒切れを背中越しに後ろへ投げ、振り返って棒切れを見た。  
ハ「棒は森を指している。今はこちらに向かうのが安全なのかもしれない」  
シ「ャ! ジョージ! うふふっ! 何だかジョージらしく無い決め方!」  
こんな事態だと言うのに、身を捩って笑い出したシンディの零れんばかりの  
笑顔に、私の緊張も解されて行く。私はシンディを抱擁してキスを交した。  
ハ「君が無事ならそれでいいんだ」  
 
森に入ってみよう。確か隣町への抜け道があった筈だ。うまくすれば、或いは。  
少し行くと山小屋があった。私たちは躊躇わずに中へ入る。銃を携えて、だ。  
シ「イヤァッ!!」  
中に入り目に入ってきたものは、大口を開けて高いびきのアリッサだった。  
相当に疲れているらしい、唾液で頬が濡れている。私はアリッサを揺り起こした。  
ア「・・・・・フン・・・・・? ・・・・・SHIIIIIIT!!!!!」  
彼女は身を起こすなり私に銃口を突き付ける。シンディがしゃがんで身を守る。  
ハ「お・・・・落ち着いて・・・・・私だ。撃たないでくれ」  
ア「驚かさないでッ! ノックぐらいしなさいよ!」  
 
私たちは彼女の差し出すカンヅメを頬張りながら、情報交換する。どうやら  
アリッサはこの先の廃病院に行った事があるらしい。しかし記憶が不鮮明だとか。  
人は大きなショックを受けると安全装置が働いて、一時的に記憶を失う事がある。  
脳にかかるストレスの過負荷から守る為だ。その昔彼女の身に何かあったのだろう。  
ヨーコもそうだが、無理に思い出さない方がいい時もある。だがアリッサは・・・  
ア「廃墟へ行くわよ。悪徳医師の悪事を暴かないとね」  
 
私たちはずんずん進んで行くアリッサの後を必死で追って行く。  
陰気な森・・・・ぼろぼろの吊り橋・・・・・そして・・・・廃墟。  
アリッサは時折立ち止まって、こめかみを押えていたようだけど・・・。  
何か思い出してたのかしら・・・・・? ───草いきれを掻き分け病院へ入る。  
ハ「やはり不気味だな・・・・」  
シ「ええ・・・・・」  
ア「行くわよ」  
アリッサが歩いて行く。その時、前方のドアが予告も無しに開いた・・・。  
シ「な・・・・なにッ!?」  
ハ「何だあれは・・・覆面? ・・・只ならぬ殺気を感じる、逃げるんだ!」  
シ「アリッサ早くッ、こっちに!」  
でもアリッサは2階へ上がろうとする私たちの方へは来ないで、何食わぬ顔で  
ポケットからスタンガンを取り出すと、覆面の男の胸に押し付けた。  
「アアウッ!!」  
ア「More?」  
アリッサは斧男を壁に押しやり、バチバチ言うスタンガンを当てっぱなし・・・。  
「フアアアーーーーーゥゥッ!!」  
ア「More!?(もっと!?)moreeeeeeeeeeeeeee!?(もォーーーっとォ!?)」  
 
斧男はあちこちの壁にぶつかりながら斧を振りかざしたまま、行ったわ・・・。  
ア「フン! たわい無いッ」  
ハ「ア・・・・・アリ・・・・・・アリ・・・・・・・」  
ア「いい? あんた達。真実を求める時はいつも命懸けなものよ。こんなの茶飯事」  
シ「ア・・・・・・ア・・・・・」  
ア「行くわよ。何やってんの! 早く来なさいッ」  
私たちは訳もわからず、アリッサの後について行く。アリッサは行く先々で  
メモや書類等、手掛かりになる物を見付けて行った。ものすごい探究心・・・・。  
 
ハ「ん・・・? 何だろうこれは・・・・」  
お上品ぶった医者が注射器を拾ったわ、何かの薬液が入ってる。そして  
ジョージは、あたしの行く手を阻むこの粋がったツタをジィっと観察する。  
患部がどうとかぶつぶつ呟いて、ツタの脈打つ剥き出し部に薬液注入。  
お見事! ツタはしなしなと枯れたわ。アラあんたやるじゃないの。先へ進む。  
 
空瓶や注射器に特殊溶剤を入れてる合間に、ジョージが棚の薬で抗ウィルス剤を  
大量に造った。期限切れで服用向きでは無いとかどうとかぶつぶつ。先行くわね。  
薬品庫で拾った別棟の鍵を使い、ドアを開ける。はあ・・・ツタ、白衣、毒、斧。  
何これ? 舐めてるわね、あたしを。とにかく邪魔、今は真相が知りたいだけ。  
ア「そんなのほっといて! 行くわよ」  
シンディがグリーンゾンビに薬瓶を投げる。ジョージはカプセルシューターで  
お化け花に撃ち込む。何だかんだあんた達、あたしのフォロー勤まるじゃない。  
 
5Fでまた斧さんと遭遇。ハン! ロッククライマー? 壁を登って来たみたいね。  
ア「撃退して。頼んだわよ」  
ハ「理不尽にも程があるッ!」  
シ「何なのッ!?」  
とか言いながらもこの2人、ちゃんとしたいい働きっぷりを見せてくれる。  
シンディの松葉杖で怯んだ所を、ジョージのシューターが連射される。まさに  
鬼畜医師ってとこね。そうして簡単に追い返す。奴は大きな穴に飛び込んだわ。  
あたしは屋上に出て蜂を撃ち落とす。これだけ巨大なら、蜂の子とか蜂蜜とか  
ローヤルゼリーとか蜜蝋とか剥製とか、利用方法色々あったでしょうに、残念。  
 
あたしは屋上の花の核に注射する。ツタが萎むと同時に、建物への支えが無くなった  
一部が緩くなり、崩れて落下する。そこに穴が開き、下に飛び降りる事ができた。  
 
彼女の行動力には凄まじいものがある。私たちはただ、行くわよ! の声に  
背筋をぴしゃっと叩かれるばかりだ。───三つ目の核にも注射をする。  
何と言うのだろう・・・・? 建物全体から声にならない悲鳴がするようだ。  
ア「まだくたばんないって言うの!? いいわ、あたしがケリ付けたげるッ」  
駆けて行くアリッサ、ついて行く私たち・・・彼女は敵に回したく無いものだ。  
 
そして特殊病室だ。入ると大きな球根(玉葱?)が私たちを出迎える。  
ア「来てやったわよ! このバケモノ!」  
アリッサはグレネードランチャーを裂けた割れ目に撃ち込む。まるで容赦無い。  
私たちは落ちて来るガレキに当たらないよう、逃げ惑うだけ。助けてくれ!  
ア「カートを返してッ!!」  
誰? 今何て・・・? ・・・・・バケモノが崩れる間際に垣間見たアリッサは、  
見た事の無い悲しげな横顔だった。きっと記憶の蓋が開いてしまったんだろう。  
バケモノがお仕舞を迎えると、割れ目からミイラがつるんと流れ出てきた。  
植物のバケモノと化してしまったものは、元は人だったのだ・・・・・・。  
 
ア「モタモタしないッ! さっさと逃げるのッ!」  
アリッサの一声に責付かれて私たちは駆けて行く・・・・・・が、斧だ。  
一筋縄では行かないらしい。通路を塞がれた。だが間髪入れず、アリッサが  
グレネードの残り弾を発射する。それをもろにくらい斧男がたじろいでる隙に、  
シンディの持つ斧を引っ手繰り、縦に振り下ろす!! 斧男は致命傷を負った。  
私たちは急いで建物から走り去る。その直後に廃病院は崩壊した・・・・・。  
 
アリッサの傷口には触れないでおこう、きっと彼女も触れられたくない筈だ。  
ア「あんな植物風情に殺されるなんて、カートもヤワな男だったわね。フン」  
振り返りもせずにツカツカと歩いて行くアリッサを私たちは黙って追った。  
 
───Logcabinだ。入ると手負いの女がいる。娘とはぐれたって? そりゃ気の毒。  
おい何だこのペンダントは。俺がここに戻って来ると思ってるのか?  
第一どこにいるかもわからないのに、わざわざ捜して来るとでも?  
まあいいさ、先へ進むだけだ。・・・・・はぁ何てェかな・・・・・・薄暗い森だ。  
気味が悪りぃ。あちこちからチキチキと何かの鳴き声のようなのも聴こえる。  
さっさと行くとするか。俺はこの迷いの森をうろうろして、やがて川辺に出た。  
 
何だ、ガキ・・・・? あの女の娘だな。沢蟹を掴まえてきゃっきゃと喜んでる。  
おいおい、そいつはちょいとヤベェ。ジストマの宿主だ、待て口に入れるな。  
まったくガキってのは俺より脳が天気だな。街がどうなのか、知らないんだな。  
いや知らなくていい。俺は水遊び中の子供に女から預かったペンダントを渡す。  
「ありがとうおじさん」  
ケ「おじさんと行くか? ここにいてもママ来ないぞ?」  
「来るもん!」  
ケ「そうかい、じゃずっと待ってるんだな。おじさん行くぜ? じゃあなーっ♪」  
ガキは結局俺の後について来る。もちろんトロい、時々止まる。面倒になり、  
俺はガキを抱きかかえて走って行く。そこでまたきゃっきゃと大騒ぎだ。  
いつになくオマワリらしい仕事をしてるぜ全く・・・・・・なあマービン?  
 
山小屋に戻って来た。女から礼の武器を受け取り、俺はまた森に出る。畜生め!  
状況がこんなじゃなきゃあの女と一発やってるんだがなあ! 未亡人であればだ。  
子持ちなら尚の事・・・・・。子供産んだ女ってのは肌が違う・・・・何というかな、  
吸い付くようだ。若いのもいいが、あれはあれでイイ。なぁんて場合じゃねぇよッ!  
何だよあのでっけぇハサミムシは! 遂に森までもがおかしくなったって訳か。奴ら  
穴掘って移動だ。あそこまででけぇと可愛い気がねぇよなちっとも。不気味だ!  
元々可愛いかねぇが。あいつはちょいと厄介だな、毒持ってるんだよな確か・・・  
刺されりゃ3日は高熱だ。ン? 違うな、そりゃヤスデか? 俺もガキの頃はあいつに  
成績表を噛み切らせてたりしたっけな。ン? 違うな、そりゃカミキリムシか?  
まあいい。跳び付かれて押し倒される前に抜けよう。あんなものはゴメンだ。  
 

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