「残念だ」  
 
 
 
たった一言で私の想いは否定されてしまった。これでおしまいなら諦めもつくけれど彼は私の護衛。毎日顔を会わせるし冗談を言い合ったりする。  
…もう我慢の限界だった。  
毎夜彼を思い出しての自慰は悲しいし虚しすぎる。  
(たった一夜限りでもいいわ!)  
その後レオンが私を嫌がるならパパに言って護衛を他の誰かと交代してもらえばいい。  
その夜私は彼に…レオンにお茶を勧めた。  
「レオン、警備ご苦労様。お茶入れたんだけど」  
「君が入れるなんて珍しいな…ありがとう」  
 
お茶に入れたのは躰を麻痺させる媚薬。大学の先輩から貰ったものだ。これを飲めばいくら力のあるレオンだって動けないはず。  
 
お茶なんて誰が煎れようと大して味は変わらないのにレオンは美味しそうに飲んだ。  
 
 
 
その優しさが私の心をかき乱す事を彼は知らない。  
 
「おいしかったよ。ありがとう」  
 
「どう致しまして」  
私はそれでも嬉しくて微笑んだ。私の喜んだ笑顔を見てレオンも笑った。  
優しく軽く私の頭を撫でるとレオンは仲間に呼ばれて仕事に戻って行った。  
その去って行く後姿をぼんやりと私は眺めた。  
 
胸が痛い。  
 
…薬は即効性じゃない。完全に効くまで二時間はかかるらしい。  
今は十時。私はこれから起こる真夜中の事を思うと動悸が止まらない。  
 
 
今まで生きてきた中で一番長い二時間を私は過ごしていた。  
 
 
一人じゃ広すぎるベッドに身を放り出し自分の行動に早速後悔する。  
もう後には退けない。  
レオンは私を軽蔑するかしら?  
年下の癖に大人の男を襲うなんて幻滅するかも…  
 
しかも私は大統領の娘だったりする。はしたないにも程があると自分でも思う。  
こんな立場じゃ無ければレオンは私と付き合ってくれただろうか。  
 
 
(天井がくるくる回る…)  
 
私はシャワーを浴びることにした。  
 
 
十二時。  
私は息を呑んだ。  
緊張しつつ自室のドアをそっと開けた。隙間から覗くと、少し遠くの一階へ続く階段の側にレオンはいた。  
今日はパパもママも朝から欧州へ会談の為に出掛けていて警備も少ない。  
特にパパはレオンをあの事件以来凄く信用していて私の身辺はレオンだけに護衛をさせている。  
 
つまり今私達がいる二階にはレオンと私しかいない。  
薬の効果が出ているのかは分からないけどレオンは壁に寄りかかって遠くを見ている様だった。その横顔が鋭く光る刃物みたいに綺麗で思わず溜め息がでる程。  
覚悟は出来た。  
 
「レオーン!!!」  
レオンにだけ聞こえる程度に悲鳴を上げた。  
…こっちに走ってくる足音が聞こえる。  
心臓がヤバい。  
「アシュリー!!!」  
私は急いでベッドに潜り込んだ。  
と同時に勢いよくドアが開く。  
(早いよ!!)  
「アシュリー、どうした?」  
レオンはベッドに近付いて塞いでいる私の顔を覗き込もうとした。  
「アシュ…、うっ…っつ、」  
その瞬間レオンは苦しそうに顔を歪めた。  
「レオン」  
丁度薬が効いていて私は起き上がるとレオンの腕を引っ張りベッドに誘いこんだ。  
 
「アシュ…リー?」  
 
倒れ込んだレオンは理由も分からず不思議な顔をした。  
体が麻痺しているにも関わらず無理に起き上がろうとするのを私は馬乗りになって押さえつけた。  
 
「レオン動いちゃ駄目よ」  
「体が、動かない…アシュリーどういう事だ?」  
 
私はレオンのスーツを脱がしながら簡単に説明した。  
「麻痺の効果を持った媚薬をさっきのお茶に入れておいたの」  
「何故そんな事を…?!」  
 
平静を装ってるけど私は心臓が飛び出す位緊張し、興奮している。レオンは本当に動けないみたいでされるがままになっている。  
シャツのボタンを一つ一つ解いていく。  
 
「何故って…分からないの?…レオンを愛してるからに決まってるでしょ」  
 
すっかりレオンは上半身が裸になった。引き締まった体がとてつもなく愛しい。  
何だかここまでくるとどうでもよくなる。  
「貴方は私をフッたけど私はまだ諦める気なんてこれっぽっちもないわ!毎日貴方が振り向いてくれる様に色んな努力もした!でも、」  
「…………」  
「でも貴方は振り向いてくれなかった!もう我慢の限界なの!貴方がドア一枚隔てて近くにいるのにオナニーなんてまっぴらよ!!」  
 
私は爆発した。  
「…それで俺は今から犯されるのか」  
 
レオンの息が色っぽく上がっている。  
 
「…俺は女に振り回されっぱなしだな」  
 
皮肉を言いつつも苦しそう。ごめんねレオン、でもこんな生殺しの毎日もう嫌なの。はっきりしたいの。  
あんな恐ろしく死ぬ様な想いしたけど今よりずっとマシだったかも知れない。  
貴方は私だけを見てくれて守り通してくれた。  
無事二人で見た朝日が本当に綺麗だった。  
「大丈夫、私が気持ち良くするから」  
「…俺を満足させられるのか?今ならまだ間に合、あっ…」  
 
私はレオン自身に触れた。ベルトを外しチャックを開けて取り出す。  
「!」  
ところが勃っていない。媚薬が効いているはずなのに!  
 
「…レオンって性欲の訓練も受けてたの?」  
「…泣けるぜ」  
 
「きゃっ!?」  
 
と、いきなりレオンが私を引き寄せると逆にシーツに押し付けた。  
「…飲んだ後の舌に残る感触と苦さ。直ぐに神経系の薬だとわかった。解抗薬を飲んでこの通りだ」  
「!!そんな…!…今まで演技してたの?!」  
「お嬢様に恥かかせるワケにはいかないだろ?それに君の本音が聞きたくてな」  
 
「酷い!恥なら今とっくにかいてるわ!」  
レオンは私を押し付けて強引に服をたくし上げ胸を鷲掴みにした。驚いたけどこれはずっと私が望んでいたこと。  
「んっ…はぁっ」  
「君のパパにバレたらどうなるかな」  
 
執拗に胸を揉み先端を舌で舐めてくる。  
「レオン…はぁっはぁっ、意地悪っ」  
ワザと音をたて私は我慢出来ずに声を出した。とっくにあそこからは蜜が溢れている。  
「アシュリー…もう駄目か?」  
余裕の表情で胸を舐め上げるレオンも興奮して乗ってきたみたい。  
「ぁっ、ぅうっ!…はぁはぁ」  
物足りない腰が勝手にもぞもぞ動き出す。「あぁんっ!!」  
突然レオンがあそこに指を入れた。  
(ヤバイ…もうイきそう)  
ここでレオンは散々じらすものだから私はフェラをした。  
「っつ、アシュ…リー…んっあぁっ!」  
裏筋を舌先で何度もしつこく舐め上げる。玉をしゃぶり亀頭を甘噛みしてやっとあそこに入れて貰った。何度もイかされて私はとろける様に倒れた。ドロドロとレオンと私が交ざった証が流れ出ている感覚が気持ちいい。  
明け方になってレオンの胸でまどろんだまま尋ねた。  
「どうして抱いてくれたの?あの時は私をフッたのに…」  
「最初は立場上理性があったが必死に訴える君を見て…本気で俺を想う君を本当に可愛いと思ったんだ」  
レオンは優しく私の髪をいつもの様に撫でた。  
胸から、心から幸せという感情が弾ける。一斉に朝の輝く光が窓から差し込んだ。  
「嬉しい…!」  
 
「これからも今まで以上に君を守るよ」  
 
照れくさそうに言うレオンが本当に愛しい。光に照らされたレオンの頬にキスをして抱きつく。  
 
「でもレオン、さっきのセックスで中出ししたでしょ!赤ちゃん出来たらパパに挨拶出来るの?」  
 
「…………」  
 
私達にまだ問題は色々とあるけどあんな事件を乗り越えたんだから何とかなると思う。  
それよりパパ達は今日も帰ってこない予定だから今宵を思うと私は胸が踊った。  
 
 
終  

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