俺達は数々の危険をくぐり抜けてここへ辿り着いた。  
ここはラクーンシティの超巨大ショッピングモール。  
いつも通り街が平和なら、今日は「定休日」って呼び方をする。  
だがもう定休日は無い。デパートではなくなり、俺達の最後の  
砦となるからだ。  
 
俺達はバカ広い駐車場を突き進み、開いてるドアを手分けして探した。  
なるべくみんな離れすぎないように注意しながら。  
ジ「・・ダメだよォ〜・・どこも開いて無い・・・・。  
ちくしょーどーすんだよ〜、窓でも割って入んのか〜?」  
マ「いや、このガラスは防犯用の特殊なガラスだ。  
ちょっとやそっとの力では割れん」  
ハ「誰かいないのかー?見てるのなら、見殺しにしないで助けてくれ」  
あちこちにある、監視用のカメラの一つに向かってジョージが訴える。  
シ「誰もいないの?警備の人ぐらいいるわよね?」  
ヨ「その人達も・・・もう・・・?」  
ケ「とにかく、中に入る手を考えようぜ」  
デ「・・・・クソが・・」  
ジ「誰かー」  
ア「ねえみんなこっちに来て」  
 
俺達は建設途中の「ペット館」横にいるアリッサの所に集まった。  
ア「この型の鍵なら開けられる。でも中にも「やつら」がいるかも  
しれない、護衛して」  
そう言ってアリッサは物の一分もしないで鍵を開けた。  
 
マークが俺の後ろで銃を構える。一同が息を飲み、うなづく。  
俺は45オート片手にゆっくりとドアを開ける。がらんどうの  
中を見回し安全を確認すると、みんなを中へ入れた。  
ア「いい?鍵を閉めるわよ」  
スーツにしがみ付くヨーコをそのままにアリッサが鍵を閉める。  
ハ「誰もいないようだな・・・」  
ヨ「やつら・・も・・?」  
ペット館は脚立と張りかけの壁紙一式以外は何も無い。  
昼間なので電気を付けなくとも窓からの光で室内が見渡せる。  
俺達はスタッフオンリーの扉を開けた。  
 
通路の途中に幾つかの部屋、トイレ、流し、倉庫と  
荷物搬入用のシャッターがあり、その隣にドアがある。  
ドアを開けると地下へ続く階段が伸びている。  
俺達は用心しながら降りていった。  
 
地下では通路が網の目の様にはりめぐらされ、モールのどこにでも  
出られるようになっていた。俺達は本館に抜け出る事ができ、一息つく。  
ケ「見事なまでに誰もいないな」  
ア「まだやつらに知られてない、秘境ってとこね」  
マ「みんな来てくれ、こっちに警備室があった」  
そのバカでかい警備室には、数え切れないぐらいのモニターがあり、  
居ながらにして全ての様子がわかる。  
ヨ「・・・やっぱり誰もいない・・・」  
デ「警備員も逃げ出したか・・」  
 
シ「助けを呼んでみましょう」  
電話や無線をダメとわかっていて使ってはみたが予想通り、  
うんともすんとも言わない。  
ジ「ここって、身を守る物は?銃とか売ってんのかあ?」  
ア「デパートに銃は無いわ」  
デ「さっきここへ来る途中にガンショップを見かけた」  
 
俺達は一人ずつ警備員の無線を持ち、貸し出し用の2t車に  
乗り、ガンショップへ向かった。留守番のジム、ヨーコとは無線で  
連絡を取り合い、帰り着く頃に鍵を開けてもらう手筈だ。  
マ「日が沈まないうちに早く済ませよう」  
ア「ジム。すぐに鍵開けるのよ、何があるかわからないんだから」  
ハ「やつらに気付かれて付いて来られるかもしれない・・」  
ジ「ヲイ!やな事言うなよジョ〜ジィ〜」  
デ「行くぞ」  
 
ガンショップに着いて、家主を呼んでみたが返事が無いので  
アリッサに開けて貰う。運転手のマークを残して中に入った。  
ア「ここもカラね」  
シ「ねえ?見てこの手紙」  
事務机の上の置手紙を読んでみる。  
”ハニーへ  いきなり襲い掛かってきた浮浪者に噛まれた  
傷跡が、何かおかしくなってきたみたいだ。病院へ行ってみる、  
夕前には帰るよ。  君の夫アンディより愛を込めて ”  
手紙の日付は2日前になっていた。  
 
ハ「もう・・」  
ケ「生きちゃいまい」  
デ「全部持って行くぞ」  
ア「さ、始めましょ」  
俺達はあらゆる銃火器、弾を、急いで全て積み込みモールへ戻った。  
マ「ジム、ヨーコ、戻ってきたぞ。開けてくれ」  
ジ「オーケ〜イ、ほうらよっ、いらっしゃいませ〜」  
 
デ「電気もいつまでも使えるとは限らん」  
俺達は帰って来て武器を降ろし終えると、休む間もなく  
B2Fの食品売り場の生ものを全て冷凍庫へ移動させた。  
長期戦に備えての気休めだ。長期戦?生存者が大勢来る?  
電気がずっと使える?どれも先の事はわからない、だが  
何もしないよりはいい。その間ジョージは薬局にある薬を調合し、  
抗ウィルス剤を沢山作ってくれた。俺達はそれを一定時間置きに  
服用し、ゾンビ化を防ぐ。みな傷らしい傷も無かったが、  
ヨーコの情報によるとゆっくりでも空気感染するらしい。  
言われてみれば、ここ数日何だか疲れが取れない様な、  
だるいような感じがする。  
 
夜が来て夕食を済ますと、俺達は会議を始めた。  
ケ「自然に治りはしないのか?ウィルスをどんどん  
食う免疫が勝手に出来たり」  
ヨ「・・それは難しいわ・・・、それに、ウィルスを消す薬も  
開発されていなかった・・」  
 
 
次の日の朝、留守番のジムとシンディを残して出掛けた。  
そして俺達はモール裏手にある研究所へと向かった。  
この地区の人間はみな、市の放送に従って避難したらしく  
誰も居ない。研究所にも生きた人、死んだ人両方居なかった。  
俺達は研究所の中に入り、入り口周辺を見張る。ゾンビ供は  
いつ来るかわからない。今はジョージとヨーコに望みを  
託すしかない。ウィルスや、免疫についての研究をしていた会社だ、  
ハ「何とか特効薬を作れないものか・・・」  
そう言うジョージの専門知識と、ヨーコの断片的な記憶で  
奇跡が起きて欲しい、みんなでそう願っていた。  
 
それから何日か経った。昼間はシンディが「植物館」で取ってきた、  
香りの強いハーブをしがんでウィルスの進行を止め、  
シ「このハーブはペストの予防にもなったのよ」  
夜は数時間分のカプセルを飲んで眠る。起きても疲れが取れない。  
研究所に入り浸りっきりの2人の為に、俺達は交替で寝泊りの護衛をする。  
俺達は定期的にジョージに血を抜かれ、感染具合を調べて貰ってる。  
そして出来上がる新薬を、片っ端から試す。  
ウィルスの進行を前と比べると、かなり研究が進んでるようだ。  
 
日が経つにつれてポツポツと迷いゾンビが増えてきた。  
死にたてのやつは活きが良く、全速力で走って来るが、時間と共に  
のろくなるようだ。それとやつらは誘導にひっかかる。動いて  
音のする方へ来るらしい。マジックミラーで出来てる植物館で、  
窓際に立っているシンディに誰も気が付かない。死人も長く  
やってると鼻がきかなくなるようだ。  
 
研究も大詰めになってくる頃には、護衛の人数を一人に減らした。  
気候のせいかゾンビどもは傷みが早く、動きが緩慢な為  
俺たちは簡単に逃げられるからだ。ウィルス値を一定量  
下げる薬が出来た頃、研究所に泊り込むのをやめて、  
朝向かい、夕方帰ってくるようにした。2人ともだいぶ  
疲れが溜まってるからだ。夜はしっかり寝てもらう事にした。  
 
朝、家(ほんとにでかい家だぜ!)を出る時は地上部の護衛2人と、  
屋上からのアリッサの射撃で、ゾンビの露払いをして貰いながら出勤する。  
ワンボックスをジョージが運転し、助手席のヨーコと  
護衛の者がサンルーフからゾンビを撃つ。夕方帰る時も同じだ。  
俺達は生き残る為に、何でも協力し合い助け合った。  
 
マークのアイデアでそれぞれが担当を受け持つ事に決まった。  
ジムは給仕係だ。マークから教わった料理をアレンジしたりして、  
なかなか美味い物を作る。本屋にある料理本も参考にしてるようだ。  
ジ「デービッ、ちょっとこれ味見してくれよ、  
オレ様の自信作さ!ジムスペシャルだっ!どう?どう?」  
デ「・・・・・・・・・・塩角が立つ・・・」  
ジ「!」  
ア「デビット!!ジムをからかわないで。意外とシャイなのよ?」  
デ「フッ。・・・・・いけるな」  
ジ「・・・・・・」  
後はおもちゃ館のプラモのヘリを作り、買い物袋に入れたマガジンや  
弾をヘリで運び、地上部や屋上に届けてくれる。これが無かったら俺ら  
逃げ回るだけだったろうな。  
 
シンディはハーブ係だ。植物館のハーブに水をやり育て、増やす。  
それを俺達のウィルス抑制に使ったり、薬の研究に使ったり  
ジムのサラダに使ったりと重宝している。出勤前のひと仕事時に、  
迷いゾンビが多い日は誘導もしてもらう。植物館の二階の窓から  
ゾンビを呼び、引き付ける。奴ら面白いようにシンディの方へ行く。  
シ「こっちへいらっしゃい。やわらかくて、おいしいお肉があるわよ」  
あとは生活上の共同箇所の掃除や、後片付けやゴミの処理、  
皆がリラックスできるインテリア作り等をすすんでやってくれてるようだ。  
そして、髪が伸びれば「シンディ美容院」を開いてくれる。  
マークとデビットはほとんど利用してないようだが。  
 
俺とマーク、デビットは主に地上部の護衛だが、研究所勤務でない  
時は、それぞれが好きな事をしている。俺はバイクで近所の  
スタンドまで出掛け、燃料入りのトレーラーに乗って帰って来たりする。  
もちろん流れ弾に当たらないよう、地下駐車場にとめている。  
あとはマークが乗るいろんな重機を持ってくる。そして重機で  
一仕事するマークの護衛。  
 
デビットは家や研究所が機能を維持する為の見回りとメンテ、  
電気の供給がストップした際に備えての改造、ソーラーパネルや  
発電機の設置。車の修理、無線の改造、ラジコンヘリや飛行船の改造、  
キッチンや風呂場の設置etc。まあとにかく、何でも屋だ。  
 
マークは重機を使って「城」の周囲に城壁を造る。  
プレハブを積み重ね、庭の周りを塀で囲む。そして正門と  
裏門には重機をとめておく。このおかげでレミングのように  
ただ突き進むゾンビを、かなりブロックする事ができた。  
隙間を縫って入ってくる奴もいるが、少数だ。  
庭で往生した死体は重機でかき集め、塀の外へ捨てる。  
全く本当に余計なお世話だが、マークあんた、  
警備員より重機乗りのがサマになってるぜ?  
 
アリッサは主に地上部の援護。朝夕、そして俺達が  
出掛ける時や、マークの庭仕事の時に活躍している。  
朝は誰よりも早く起き、ゾンビ共を一掃する。俺達が  
外に出てくると、無線で(全体放送で皆に聞こえるように  
してある)上から当たらない場所にいる奴を教えてくれる。  
目がいいらしく、家の陰や塀の陰に隠れて様子を窺ってる奴も、  
すぐに見付けるようだ。  
ア「あんたたち、今日もシメて行くわよ!」  
朝一でビシッとしたアリッサの声を聞くと、背中に一本  
気合が入り、俺達は士気が上がる。  
ケ「おっしゃまかせろ!ハデに暴れてやるぜ!!」  
 
オレたち、豪邸を手に入れてそこで暮らし始めたんだ。  
家には何でもある。食料生活用品衣類薬本雑貨電化製品おもちゃ  
靴靴靴靴靴靴靴靴靴靴靴靴靴・・・・・ああそれと、靴。フゥ。  
もう天国!?ウィルスさえなけりゃ、ネ。オレたちは、ヨーコ  
ジョージの2大先生の薬の完成を待った。オレたちみんな、  
ウィルスに侵されてる、でもそんな中でも希望を無くさない。  
人って環境に順応するもんなんだね、皆、新居での暮らしを  
エンジョイしてる。あ、もちろんオレが一番に楽しんでるんだけど。  
 
スポーツ館の服ったらイイ!もうお気に入りさ。最新のデザインや  
憧れの選手が愛用してるブランド、何でもアリだ!も、サイコー!  
シンディは休日のショッピングといった服装を好む。もっとも、  
クソ暑い植物館にいる時は、白いブラジャーだか水着だかわかんないような  
薄着をしてるけどね。ぷりぷりしたオッパイを拝む為に、冷たいお菓子を  
作って持って行くと喜んで食べてくれる。女のコって甘い物好きだよな。  
 
アリッサはブランド物のスーツや露出の多いドレスが好きみたいだ。  
ジュエリーコーナーの物も良くコーディネートして渋くキメてる。  
屋上での「仕事」が一段落するとトレーニングジムへ行って汗を流し、  
そこのプールで泳ぎ、ジムのフロ場でシャワーを浴びる。毎日体力作りを欠かさない。  
ある朝なんかオレ早く起きちゃって、アリッサがデビットに作らせた  
洗面所で顔洗ってたんだ。そしたらアリッサが仕事しに屋上へ向かって行くんだ。  
ジ「オハヨ〜、アリッサ。早いね〜・・(重そうなバッグだな)」  
ア「じゃ、行ってくるわね」  
振り返ってオレを見るアリッサの眼!殺し屋だ!殺し屋の眼だ!!  
デビが変な事教えるから、アリッサすっかり殺し屋が板についたよ・・・。  
 
ジョージは研究所では白衣着てるみたいだけど、こっちではほぼスーツだ。  
Yシャツにスラックス、高そうなヤツね。それと時計も好きみたいだ、  
皆に持たせたがる。最初は皆にナース用腕時計とピルケース  
腕時計を持たせていたが、完成間近の薬が出来た頃は、  
オレにはスポーツウォッチ、ケビンにはレーシングウォッチ、  
マーク、ヨーコには普通の革バンドのやつ、デビットには  
防水高度計付き方位付き糸ノコ付(ryのアウトドア仕様のやつ、  
アリッサ、シンディには女物の洗練されたデザインの物。  
自分は一番高いエンペラーのをしてるみたいだ。  
 
マークはこれといって個性も無いゴルフウェアのようなのを  
好んで着てる。デビットはバイク館にあるバイカーブランドの  
ものが好きなようだ。革パンと炎プリントがされたような  
タンクトップ、ワイルド系が多い。ケビンは好き嫌い無く  
何でも着てる。朝の仕事始めの時にグラサンにアロハといった  
いでたちで、マークに眉をひそめられたりしてる。まるで  
気にしちゃいないようだけど。  
 
ヨーコは春のそよ風を思わせる、淡い色の服が好きなようだ。  
どっちかっていうと清楚系が多いかな、是非思い切った  
ミニスカートとかはいてもらいたいんだけど・・・。  
どうもオシャレに関してオクテなようでネ。オレ様と同じでサ!  
 
俺たちは無力では無かった。手に手を取り合い、冥府の底から  
這い上がってきた。どこかのバカが地獄のフタを開けたお陰で  
地上には亡者どもがはびこり、我が物顔で街を闊歩する。  
ここに辿り着くまで実に散々な目にあった。平和が一瞬にして  
血と悲鳴の世界に変わり、精神が沸騰する。正気など当に捨てて  
いたが、自分が本気で狂ったのかと疑ったほどだ。だが  
狂っていたのは世界の方だった。  
 
新たに住み着くヤサを手に入れ、俺たちは死に損ないどもを  
毎日地獄へと送り返す。奴らはアシが速く、日に日に腐臭が  
強くなって行き、胸が悪くなるような悪臭を撒き散らす。  
マ「これでも遅い方だろう、一昔前の仏はもっと腐敗が早かった」  
ハ「最近は食品添加物や抗生物質などの関係で、保存が利くようだ」  
塀の裏でもがいている奴を双眼鏡で観察すると、徐々に色が  
変わっていくのがわかる。赤になり青になり黒になり・・骨になる。  
 
庭へはあらゆる客が来る。腕の無い者、足の無い者、  
腰から下の無い者、魂に至ってはどいつも持ち合わせてはいない。  
アリッサは招かざる客を、上からの一撃で成仏させる。  
アリッサの機嫌が悪いかどうかは、ゾンビのバラされ方でわかる。  
特に腐敗の進んだ奴を選んで首を狙って撃ち、頭を切り離す  
やり方の時は注意が必要だ。もっと悪いのは、果てしなく  
ほふく前進してる奴の腕を狙う時だ。ケビンが見かねてとどめを刺す。  
ケ「おいデビット!適度に抜いてやれ!次は俺に当てるつもりだ!!」  
そんな日は大体シンディと取っ組み合いの喧嘩をする。だが、  
半日もすればもう仲良く化粧し合っている。女はわからん・・・。  
 
遂に薬が完成した。小躍りしながら帰って来た博士2人を  
迎え、我々は早速新薬を使う事にした。まず、顔色の悪い  
ジムから打つ・・・・。ジムは時々、火が付いたように体を  
掻き毟る事があったので、いち早く回復させてやりたかった。  
3時間経ち、血を抜いて調べると見事ウィルスは消滅していた!  
何と言うことだ、彼らは天才か?それとも、人が作ったものには  
限界があるのか・・?とにかく、上には上がいるという事だ。  
我々は新薬を投入し、ウィルスを消滅させた。  
あとはこの腐った街から脱出する事を考えよう。  
 
夕食後に会議を開き、様々な意見を出し合う。その中で、一つの意見が  
採用された。そのアイデア遂行の為には少し時間が要るようだった。  
デ「まず武器を補充するべきだ」  
モールの先、ちょっとした郊外に、武器弾薬の一時保管倉庫がある。  
軍のラクーン駐屯地や、ガンショップに卸すような物をここに置いておくのだ。  
我々は翌日コンテナトレーラーに乗って倉庫へ向かった。  
 
あらかじめ下見はしてあった。ジムの作ったラジコンヘリコプターに  
デビットがカメラを取り付け、道中安全に行って帰って来られるか  
試しにヘリを飛ばし、シミュレートしたのだ。皆、警備室で固唾を飲んで見守った。  
シ「これなら行けそうね」  
ジ「行ってみようぜい!」  
 
ウィルスの問題が解決したと同時に、電気の供給もストップした。  
だが、先を見越したデビットがあらかじめ色々と用意しておいて  
くれたおかげで、我々は何も困る事が無かった。  
 
私達は無事、倉庫から戦利品を持って帰って来ることができました。  
コンテナに目一杯の武器弾薬・・・。こんなにたくさん・・。  
マ「使い切れんな」  
デ「それぐらいがいい」  
ハ「それはそうと、街の様子を見てみないか」  
シ「そうね、気になるわ」  
ジ「それじゃちょいと、窓際へ行ってくるよ」  
ア「頼んだわよ」  
ジムが操縦するおもちゃのヘリコプターの映し出す画像を、  
私達は警備室の大画面で見ていました。  
 
ケ「奴ら、同じ方向へ歩いてるな」  
シ「随分たくさんいるのね・・・」  
ハ「ああ・・・街中の人間が感染しているんだ・・・」  
ヨ「・・・怖い・・・」  
デ「・・・ン?」  
マ「待てジム、さっきの所でホバリングだ」  
ジ「あいよ、ここかい?」  
マ「少し降りてくれ」  
 
ゾンビ達は街の中心の一番大きくて、高いビルに向かっていました。  
3Fまでが高級スーパーになっているビルで、あとはテナント、  
上のほうは会社のオフィスがあったり人も住んでいるはずです。  
ビルの周りには気が遠くなる位の数のゾンビがいました。  
ア「もしかして生存者がいるの?」  
ハ「そのようだな」  
 
マ「本当に人がいるのか?もしそうだとしたら・・・」  
シ「試しに屋上に手紙を落としてみない?」  
ケ「待てよ様子を見ようぜ」  
ヨ「・・・様子?」  
ハ「私もそれは賛成だ」  
デ「・・・・・俺もだ」  
マ「どういう事だ?」  
ハ「まず、自分達の守りを固めた方がいいと思うのだが。  
ウィルスは消滅したが、弱った体は回復しきってはいない。  
体力を回復させて、この大量のゾンビが押し寄せて来た  
場合に備えての準備をしておきたい。外部とコンタクトを  
取るのはそれからでも良いのでは無いか?」  
ア「それもそうね」  
通路の向こうの窓際にいるジムも、リモコンに取り付けた液晶を見ながら  
驚いていたようです。無線の放送でジムが言いました。  
ジ「中の人も大変だネ。でも中の人が長生きしてくれれば  
あいつらこっちに来なくて済むな〜」  
マ「何とも複雑な心境だが、ジョージの言い分はもっともな話だ。  
ここは一つ守りに入るか」  
ケ「そうだ(守り専だったろあんた)」  
私達はコンテナの積荷を下ろす作業に取り掛かりました。  
私達が生き残れるのなら、あの人たちはどうなってもいい・・・  
私の心のどこかにそんな考えがありました。ひどい事だと  
わかっていても、それが私の本音なのです・・・。感染してる上、  
もしかしたら大勢・・・皆助け出せたとしても、大勢と行動を共にすれば  
私の命が危険に晒される事も・・・。神様・・どうか許して・・・・。  
 
私達はそれぞれが武器を手にし、お互いをまもり合った。  
そして城壁を密に固めなければならないので、  
護衛をして貰いながら資材館にある物で補強をした。  
ジ「にしてもこの匂い何とかなんないかな〜・・」  
シ「ほんと、ひどいわよね・・」  
ア「神経が参っちゃうわ」  
ケ「焼くか?」  
デ「火が移ったらどうする」  
マ「気休めにしかならんだろうが、発酵を進める菌でも撒いてみるか。  
たしか、農業・菜園館に置いてあったな・・・・。  
粉末がいいか、それとも液体がいいか・・・」  
ヨ「マーク!」  
ハ「・・・それだ!!全く天才だなマーク」  
マ「?」  
私とヨーコはまた研究所にトンボ返りした。  
 
ジムの作るスタミナ料理のおかげで、私達は元の元気な体に  
戻っていった。パワフルになるとあちこちで小競り合いが起こるものだ。  
ア「ジーム。もう雑音はやめて、飽き飽きよ。朝から晩までゴチャゴ・・(ry」  
ジ「アリッサ、これが本当の音楽ってもんだろ?ラップ、Hip popはサイコーさ」  
ア「夕食時ぐらい静かにして。朝もよ。照準が狂うわ」  
ジ「全館放送なんだ、屋上だけ違うのはかけらんないよ」  
ア「ラップは嫌。ただ喋ってるだけじゃないの、センスを疑うわ。  
耳に出来たタコが墨吐いてんのよ、もうたくさん」  
ジ「じゃー何がいーのさー」  
ジムが唇をとがらせる。  
 
マ「ジャズがいい。ビッグバンド、それとスイングもいいな」  
ケ「ジャズゥ?ハッ!やめてくれよ、あの  
チーチキチーチキやってるやつだろ?勘弁だな」  
マ「ケビン、ジャズは全ての音楽の原点だぞ?お前の  
好きなのだってジャズから派生したにすぎんのだ」  
ケ「そんな事よりジム聞いてくれよ、お前、”ロック  
アンド ロール”っての知ってるか?」  
マ「ジム、ロック野郎の言う事は聞くな。ジャズだ、ジャズしか無い」  
ケ「苔が生えるぜ」  
マ「言うか若造!」  
ケ「うるせぇ!ジジイはすっこんでろ!」  
ア「いいじゃないジャズ、渋いわ。インストものがいいわね」  
ハ「クラシックなんてどうだろう?ああオペラも悪くない」  
シ「ポップ、それとクラブシーンのものもいいわ、あ、あと  
テーマパーク音楽」  
ヨ「イージーリスニングで・・・」  
ケ「でなけりゃサンバだ!」  
マ「デイヴお前はどうだ」  
デ「何でもいいが同じのを繰り返すのはやめろ」  
ジ「・・・・・・ゴメン・・・」  
結果的にはランダムになった。それぞれ思い思いのCDを持ち寄り  
ジムに渡す。音楽を聴いているとまるで、平和な世界に戻ったようだった。  
 
他にはこんなのがある。不思議とピークは大体夕食後だ。  
若いパワーのぶつかり合いが団欒を賑やかに彩る。  
ア「ちょっと!」  
アリッサの呼びかけにシンディはツンとそっぽを向く。  
ア「聞こえてるんでしょ?返事しなさいよ!」  
ジ「(アリッサ、オレが食卓にサプリ切らしたから怒ってんのかな・・)」  
シ「あ、そうだわ。みんなにお茶入れなくっちゃ♪」  
ア「かわいこぶってるんじゃないわよシンディ」  
シ「何ですって?私がいつ・・・」  
ア「あんたなんてこうよ、”どうやって撃つのかわからないわ”  
カマトトぶって!バカ女!!銃ってのはね、おしゃぶりするもんじゃあ  
無いの、媚売ってないでサクサク撃ちなさいよ!」  
シ「な〜〜〜によこの性悪女!とっちめてやるんだから!」  
ア「上等じゃない、かかってきなさいよ!あたしは負けたくないの!」  
ジ「ヒイイイイィィィィィ〜逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ!」  
ヨ「ケビン、2人をとめて・・・!」  
ケ「ほっとけよ、じゃれてるだけだ。明日にゃもう直ってる、  
いつものパターンだろ。お互い顔は狙わない」  
ヨ「でも・・・!」  
ア「これでどう!?」  
シ「痛いじゃない!髪の毛引っ掴まないでよ!」  
思い切り押し返されたアリッサがのんびり座っているケビンに激突する。  
ケ「うぐぁッ!!!何すんだアリッサ!!」  
デ「ケビン!・・・やめておけ・・・・!」  
ケ「いてェじゃねーかアリッサ!!」  
ア「うっさいわね!あんたもはったおされたい!?」  
 
マ「元はと言えばジョージ、お前が原因だぞ」  
ハ「私が??一体・・・」  
マ「アリッサに栄養剤か何か渡してただろう、あれだ」  
ハ「あれは・・・研究の息抜きに創ったサプリが、  
たまたまいいのが出来たので、折角だからアリッサにと・・・」  
マ「それだな」  
デ「・・・余計な事はするな・・」  
ドアの陰に隠れたジムがハッとする。  
ジ「だからだ!だからあんなにしつこくデビットを美容院に  
誘ってたんだ!おかしいと思ったんだよな〜」  
ヨ「その髪型・・・似合うわ・・」  
 
研究所にはあらゆるもののエキスが凝縮されたものが、試験管に  
入っている。人、動物、鳥、魚、土、鉱物、植物、果物、花それと微生物、  
カビ、発酵菌、腐敗菌、無重力で突然変異させたものetc.・・・。  
私とヨーコは色々な物を混ぜて、超強力な菌を創り出そうとした。  
生半可な菌じゃダメだ、あのウィルスを食って餌にしてしまうような  
ガッツのある菌がいい。抗ウィルス剤と、エキスを混ぜて創る事にした。  
 
ある朝ヨーコが、何か思う所があるような素振りを見せた事があった。  
その日にヨーコが完成させた菌が、最強のバイタリティを持っていたのだ。  
私達はこれをトレーニングジムの子供用プールで大量に培養し、その希釈液を、  
改造した家庭用農薬噴霧機に入れ、それをヘリに取り付け、塀の向こうの  
屍に振り撒いた。駐車場にも設置されているカメラで録画された物を  
早送りで見ると、みるみる死体が痩せていくのがわかる。  
人体には無害でも、腐乱死体には脅威の霧雨となった。  
 
倒したゾンビは大体3日ぐらいで骨になった。あたし達、ジムの  
ヘリや飛行船を総動員し、まだ歩き回ってるやつにもばら撒いたわ。  
昇天したやつらよりゆっくりではあるけど、確実に骨になっていく。  
こうしてどんどんゾンビを溶かしていき、家の近所の悪臭も消えた。  
そんな中調子に乗ったケビンその他がバカな遊びをやらかす。  
 
ケ「いいかジム、お前はサブマシンガンをぶっぱなして警備員をビビらせろ。  
デビットは運転だ、サツをまけ。俺は爆弾のスイッチを押す。  
金庫が開いたら積めるだけ積んで人質を連れてずらかる、いいな?」  
ジ「オゥケェ〜イ♪ギャングプレーサイコーたまんねー!」  
デ「フン・・・・バカバカしい」  
マ「縛られたら大人しく横になってればいいんだな?」  
ハ「私の金には手を出さないでくれ!」  
ケ「心配すんなジョージ。ラクーン銀行でも行くのはモール前支店だ、  
ジョージのは本店なんだろ」  
あのバカ達、ご丁寧にストッキングまで被って行った。やれやれだわ。  
ジ「どけどけぇ〜い!無く子も黙る大泥棒、ジム様の御通りだあ〜!」  
ア「それあたしに言ってるの?」  
ジ「ヒッ!!ごめんなさいごめんなさいご(ry」  
 
ケビン一味が帰って来た。ちょっと深めの幼児用プールに札束を入れ、  
中に入り札をかぶってはしゃいでる。涼を取る為にプールに入り、  
ビーチボールで遊んでいるあたし達の方にもヒラヒラと札が舞う。  
それをヨーコが一枚一枚拾い、窓に丁寧に貼り付けていく。  
マ「どれ。じゃあ俺も海パンに着替えてくるか」  
 
ケ「見ろよジョージ、ツケなんかいくらでも払ってやるぜアッハッハ!」  
シ「利子も忘れないでね?」  
ケ「ほらよ!好きなだけ持ってけ!アーッハッハハ!こりゃいーや!」  
ジ「デービッ、あんたの分け前もある。こっち来なって!」  
デ「フン・・・俺はあれでいい」  
そう言い、袋の山から一つ持って担ぐと、どこかへいってしまった。  
 
菌の働きのせいか、ビルに群がるゾンビ群もだいぶばらけてきた。  
ヨ「・・・(中の人は・・・きっと・・・もう・・・)」  
ジ「もう少しで街中の死体を葬儀し終わるな。ッフ〜!長かった」  
デ「気がかりがある。奴らの中に時々首無しや食われた後がある奴がいる事だ」  
ジ「見間違いだよ、最近遅くまで起きてるだろ?何か  
トンカントンカンやってさ。寝不足は良くないぜぇ〜?気のせいx2」  
ハ「それより皆知ってるか?今日が何の日か」  
 
ジョージのアイデアで、今夜は屋上で流星群を見るパーティーを開く  
事になった。夕食を済ませ、あたし達はめかし込んで屋上へ上がる。  
ヨーコは祖国の民族衣装のワフクを着たがり、付属のDVDを見ながら  
ユカタに着替えてる。ケビンも面白がってユカタを着る。デビットは  
エッチュウというのが気に入ったらしい。あたしにもすすめてくる。  
デ「・・・なかなかいい・・・・腹が座る。着けてみるか?」  
ア「結構よ!あたしはピグミー族じゃ無いの!!さっさと普通の着てちょうだい!」  
 
屋上に行くと、もうジムとマークが出来上がっていました。  
マ「ジム!もっと打ち上げろ、もっとだ!」  
ジ「ヒャッホォ〜イ!!この街はオレの街だ!おまいらみんな、  
オレ様にひれ伏せ!天下取ってやるぞーッ!!オレに続け!  
オレを称えろ!打ち上げだ!隕石よ降って来い!☆空に乾杯!!」  
ジムは引っ切り無しに花火を打ち上げ、マークは手を叩いて  
大笑いしながら皆のカクテルを作っています。フラフラして危ない・・。  
 
シンディとジョージは倒したイスをくっつけてそのイスに寝そべり、  
手を繋いで星空を眺めて、星が流れると指をさして仲良く  
おしゃべりしています。  
シ「星に願いを・・・」  
ハ「何かお願いしたのかい?」  
シ「ウフ!ヒミツよ!」  
ハ「じゃあ私のもヒミツだ」  
シ「あんダメ!教えて!」  
ハ「君が教えてくれたら教えるよ」  
シ「もう!ずるいわジョージったら」  
アリッサとデビットはフェンスに身を乗り出して宇宙を見ています。  
ア「たまにはこういうのも悪くないわね」  
デ「・・・そうだな」  
ア「ハァ〜・・マークの作るの、結構効くわね。酔っ払っちゃったわ」  
デ「・・・・・・アリッサ・・・どうだ・・・?」  
ア「なぁに?・・・・あら・・・!ステキ!!」  
デビットは連日連夜叩いて加工した腕輪をアリッサにプレゼントして  
いました。強盗したあの日、持って行ったインゴットで造ったようです。  
 
私は花火を大量に抱えたジムに、線香花火を探して貰いました。  
ケ「こいつはまた地味だな!」  
ヨ「ね?かわいいでしょ・・・?」  
ケビンはJ’sバーの名前入りライターで火を付けてくれました。  
ケ「ヤバい!球が落ちる・・・!」  
ヨ「じっとして、だいじょうぶ。・・・・・まだ続きがあるの」  
私達は花火を一通り終えると、イスに横たわり夜空を眺めました。  
 
ヨ「・・・・・ねぇケビン?」  
ケ「ぅん?」  
ヨ「あのね・・・私、あの菌が完成する日の朝方、変わった夢を見たの」  
ケ「どんなだ?」  
ヨ「・・・・私の国に・・・古い伝説があるの・・・・大昔の話・・。  
私のずぅー・・・っと前の祖先、私の国を創った先祖の話。ある夫婦がいて、  
・・・たくさん子供を作ったの。でもある日、奥さんは難産で  
亡くなってしまった・・・。その旦那さんはひどく悲しんで、  
黄泉・・・地獄に奥さんを捜しに行ったの。奥さんを見付けたのだけれど、  
連れて帰る途中、振り返ってはならないと言われるの。でも奥さんを  
愛していたので、旦那さんは出口で振り返って奥さんを見てしまう・・・。  
すると奥さんは激怒し、醜い死体になってしまった・・・、奥さんは侍女の  
ゾンビ達を仕向け、旦那さんと喧嘩をするの・・・。旦那さんは  
ゾンビ達に桃を投げ付けて逃げ、地上に戻って来た・・・・・  
そんな夢を見たの。そしてその朝、菌に桃の成分を試しに入れてみたら  
偶然に、ゾンビの天敵とも言える菌が出来上がったの、桃のおかげで。  
・・・変な話でしょ?どうして桃なの?わからないわ・・・・」  
ケ「桃ッ尻は好きだぜ?」  
 
私は夏の風物詩を思い立ち、シンディに聞いてみました。  
2人の間に割って入るのは、あまり気がすすまなかったのだけれど・・・  
私も酔っていたのかもしれません。  
 
ヨ「シンディ・・・?植物館の小川に蛍はいるの・・・?」  
シ「ホタル?それ何?花?」  
ヨ「虫よ。光る虫・・・点滅するの」  
シ「虫・・・はいないみたい、光る植物ならあるわ。光ゴケよ、  
すごく幻想的でキレイなの。ぜひ見に来てね」  
ヨ「光る苔?・・・見てみたいわ」  
ハ「今見てくるかい?それならこれを持って行くといい、  
ああケビン、君も行くのか?」  
ケ「そうだな、護衛がいなくちゃな」  
ハ「ならこれを、非常用ペンライトを使ってくれ。足元が良く見える」  
 
ジョージからペンライトを受け取ると、私達は植物館へと向かいました。  
向こうでは酔わされたデビットが、火薬を集めて何か細工をしています。  
私はフワフワした気持ちのままケビンに手を引かれ、階段を降りて行きました。  
シ「ねぇえジョージ。ああいうの送りオオカミって言うのよね?ウフフ!」  
ハ「シンディ、君はオオカミを誤解している。きっと君もオオカミを  
好きになるはずだ。オオカミなんていうのは、大人しいものだよ・・・  
人懐こくて、慣れれば良く番もする。体を張って身内を守るし、勇敢だ」  
シ「それなら試しに送られてみようかしら??」  
ハ「ん?それは私にオオカミになれって言っているのかい?  
構わないよ。喜んで」  
 
植物館に入ると、足元も暗いままにヨーコがかけて行く。  
ケ「ヨーコ、これを持っていけよ」  
オレはライターを点け、ヨーコに渡す。  
ケ「蓋を持つんだ、熱くなるからな」  
ヨーコはライターを受け取ると、いそいそと苔を探しに行った。  
俺は無意識に館の鍵をかける、ヨーコに逃げられないようにだ。  
辺りは熱帯植物やハーブが咲き乱れ、むせ返るような  
甘い香りが漂い、湿り気を帯びた空気が妙な気持ちにさせる。  
ペンライトに浮かび上がる原色の花と、静寂の中に小川の  
音しかしない。  
ヨ「あ、あったわ!これね・・・?・・・きれい・・」  
 
デビットが打ち上げた特大のド派手花火に照らされて、  
ヨーコのうなじが白く映える。俺はつい後ろから抱きつく。  
光ゴケもいいが、俺は転属先の海で光る波を見た。それより  
いいのが光り輝く若い肌だ。何が護衛だ、護衛なんて  
くそっくらえだ!俺は理性が吹っ飛んだ。  
 
ヨ「ケビン・・・!私・・帰って流星を見るの・・・ダメ・・・」  
ライターのオイルが切れて火が消える。いいタイミングだ。  
ケ「流星なら肩越しに見れるだろ。ほんのちょっとだ、すぐ済む」  
ヨ「・・・(すぐに済んだためしは無いのだけれど?・・・)でも」  
俺は何か言いたげなヨーコの唇を塞ぐ。そうして新しい  
プレーを開発した。星降る夜のシュンガプレーだ!こいつは燃える・・・  
一枚の布で覆ってる体が、徐々にはだけて行くのがいい。隠そうと  
するのがまたたまらねぇ。これは毒だぜ、クセになりそうだ・・・。  
 
ゾンビどもが減ってきた。マークの当初の計画通り、  
俺たちはラクーン駐屯地に出向きヘリに乗って戻り、屋上の  
ヘリポートに降りる。マークの指導のもと、俺たちはヘリの  
操縦を教わった。街脱出には4機で飛び立つ。1機に二人乗る  
予定だが、不測の事態に備えて全員が操縦できるようにしたい。  
今一つ怖がって乗りこなせないのがシンディとヨーコだ。  
ケ「せっかくだ、戦闘機で行こうぜ!」  
ア「エキサイティングね」  
シ「絶っっっ対にイヤ!」  
ヨ「・・・無理よ・・・!」  
ジ「オレ、一度ベイルアウトってのやってみたかったんだ〜!」  
デ「出てどうする」  
マ「ヘリで行く。ま、焦らずに覚えていけばいい」  
ハ「そう、落ち着きが肝心だ」  
 
ある晩目が覚めて、外の空気を吸いに行ったアリッサが館内放送をした。  
ア「みんな、起きて屋上に来て。お客さんよ」  
ぼやけた頭を抱えたまま、みな目を擦りながら屋上に集まる。  
ケビンについてはにやけたまま寝ているようにしか見えない。  
ハ「ん・・・?ジムはどこだ?」  
ケ「ポルノコーナーだろ」  
後から来たジムで全員が揃った。  
ジ「トイレだよ!」  
シ「何があったの・・・?」  
ア「あれを見て。・・・VIPルームへ案内しなくちゃね」  
 
ヨ「・・・・・・・ハンター!?」  
ケ「Wow!そいつはお客さんだな」  
ジ「やばいやばいやばいやばいやばいやばいよッ!」  
マ「何匹いるんだ?」  
デ「今の所は2匹だ」  
ハ「一体どうやって入って来たんだ・・・」  
ア「登って跳んでいらっしゃったのよ」  
そう言ってアリッサが1匹しとめる。この距離では二発使う。  
もっと強力にしなければな・・・。際限なく涎を  
垂らし続けていたもう1匹も、濁った叫びを上げて倒れる。  
マ「俺が見張っていよう。何かあったらすぐに放送する、みんな  
明日に備えてちゃんと休んでおくんだ」  
 
翌朝俺たちがハンターの死体を見に行くと、待ち構えていた  
かのように塀の裏に隠れていた奴が跳び入って来た。  
ケ「おいでなすったぜ。夜討ち朝駆けたァご苦労なこった」  
すかさずアリッサが1匹黙らせる。昨夜改造した銃だと弾は一発で済む。  
ア「あらいいじゃないこれ・・・・気に入ったわ」  
続けて3匹が一気に飛び降りる。ケビンが45オート3発で1匹倒す。  
俺とマークは残りをショットガンで始末する。また3匹入って来た。  
ア「そいつの爪には気を付けて!」  
重々承知だ。目の前で犠牲者が血しぶきを上げて事切れるのを  
ここに来るまでさんざ見て来た。ハンターは好んで返り血を浴びる。  
俺たちは防犯館の護身具コーナーの防弾チョッキ等で重装備している。  
その上革ジャンを着る念の入れようだ。ケビンはポリス時代の  
動きやすいのを着ているが、走って追わせる為だ。3匹をまとめる。  
 
結果的には全部で15匹を片付けた。暫らく様子を見ていたが  
もうハンターは出て来なかった。  
マ「緊急会議を開こう」  
 
ヨ「朝食が済んだら、ハンターの生態について話してもいい・・・?」  
ハ「ああ頼む」  
マ「塀を高くしようと思うが、同じ事か?」  
ヨーコのアイデアでプレハブ塀の間に鉄板を挟む事になった。  
ねずみ返しと言うらしいが。穴を掘って下から入って来ないように  
塀周辺にも分厚い鉄板を敷く事にした。朝メシの後の会議が始まる。  
 
ア「あいつら何食べてるの?」  
ヨ「主に生きた肉を好むけど・・・無ければ死んだ肉でも何でも・・・」  
ハ「ゾンビが減ってきたのでこっちに来たのか・・・」  
ケ「すきっ腹抱えてるな」  
ジ「エサ無くて怒ってるんだよ〜・・アワワワ」  
マ「どうやって増える?オスメスの区別はつくか?」  
ヨ「雌雄は無いの。・・・みんな卵を産んで・・・・一度に7、8個・・」  
シ「成長速度は?早いの・・・?」  
ヨ「大体20日で大人になって卵を産むみたい・・・」  
デ「鼠算式に増えていくな・・・」  
ヨ「どこかに巣があって・・・そこで増え続けて・・・イヤ・・!」  
ヨーコが言うには、奴らは互いに食糞し合う習性があるらしい。  
ジョージとヨーコはケツに火が付いたように研究所に向かった。  
 
ハンターは昼過ぎにやって来る。ブルル!始めは正面から勝負して  
きたけど、そのうち学習して四方から狙って来るようになった。  
殺した奴はいつものように塀の外に捨てて菌をかけとくけど、  
固い鱗のせいか肉の分解が遅い!気付くと他のハンターのエサになってる。  
ア「あの皮、バッグ向きね。・・・・・・・何よジム、冗談よ」  
 
今日の対ハンター戦が始まった。オレは屋上から地上へ武器や弾の  
支援をする。そっちにばかり集中してると殺し屋の手元に弾が  
無くなり、どやされる・・・・・。あんたハンターよりこえーよ!!  
デ「ケビン、ちゃんと体は鍛えてるか」  
ケ「おぅ!あんたの言いつけ通りな。ウェイトリフティング三昧だぜ」  
デ「Great・・・・!」  
ちょうどハンターの区切りがついた所で、デビットが無線でオレに言う。  
デ「ジム、あのマグナムをよこしてくれ。弾も間違えるな」  
ケ「ディヴィッ!何だか楽しそうな話だな?ワクワクするぜ!」  
はいはいはいはい。人使い荒いよ全く!アサシンの躾もなっちゃいないし。  
 
ケビンは咥えタバコに火を付けながらマグナムにローダを入れる。  
デ「おいケビン、お前何してる」  
ケ「食後の一服さァ、あんたもどうだ?」  
デビットは目の前に出されたタバコを、一瞬躊躇しときながら咥えた。  
デ「悪いな」  
ア「!」  
デビットはアサルトのマガジンを交換しながら火を付けて貰ってる。  
とその時、音も無く背後からかけ寄ったでかいハンターが、奇声を  
上げながらデビットに飛び掛る!気付いた2人は左右に避けようとした。  
 
ア「ケッヴィィィィインッ!?」  
アリッサだ!アリッサの凶弾がハンターのドタマを貫く!!  
ハンターは断末魔も上げずピクリともせずに逝かされた・・・!  
ア「あのバカ!」  
ガクガクブルブルガクガクブルブルガクガクブルブルガ※繰り返し  ッヒー!  
ア「ケビン。まずあんたをブチ抜くべきよね・・・」  
地上の2人は咥えタバコを落としそうになった。  
ケ「ヒーハーッ!!あんたの女いい腕してるぜッ!」  
デ「バカを言え」  
 
特殊マグナムが地上に届き少しすると、ハンターの第2群が来た。  
デ「・・・・・来るぞ!」  
フェイントで飛び掛ろうとするハンター2匹をアリッサが沈ませる。  
ア「な〜にがハンターよ!あたしをなめんじゃないわ」  
果敢にも真っ向からケビンに襲い掛かろうとする奴がいた。  
ケ「さぁてこいつの威力は・・・」  
弾がハンターの脳天で炸裂し、遠くまで吹っ飛ぶ。  
ケビンは両腕ごと少し後ろに反り返った。  
ケ「ーーーーーーーーーーーーーッ!!!!何だこりゃ!!?  
クレイジーだぜ!!!肩がいっちまう!!!」  
デ「お前なら使いこなせるだろう」  
デビットは短くなったタバコをプッと吐き捨てる。  
ケ「ウ゛ーア゛ーッ!!デビット!こんのガンスミス野郎ッ!  
いい仕事しやがって!!」  
デ「フン」  
ケ「さあ来いよトカゲども!!」  
 
今日の狩は今までに無い陣形を取り、大勢で押し寄せてきた。  
地上の2人の周りには、あっという間にハンターの屍の小山が出来上がる。  
それは背丈を越す程にもなり、山の後ろに隠れてる奴がわからない。  
屋上から殺れる奴はいいけど、当たらない死角に隠れているのはダメ。  
奴らは死角に何匹も集まって固まってる、山に囲まれた2人に  
いつ一斉に飛び掛って来るかわからない。そこへやっと  
重機チームがやってきた。何やってんの遅いわよ!  
 
重機を操縦するマークの横から身を乗り出し、シンディが  
グレネードで小山を崩していく。すかさずマークの落とす  
特大鉄球が固まったハンターをぺしゃんこにする。やるじゃない。  
そのチャンスにデビット、ケビンの2人は遠くまで走って来る。  
あとはマーク球が大暴れし、残りのハンターたちは巣へ帰って行った。  
 
あたし達は化け物の死体を塀に寄せ終わると、赤外線センサーと  
地雷をセットした。ジョージ達は今度はどんなのを作るつもり  
なのかしらね?帰って来たジョージ達を迎えて夕食についた。  
マ「それにしても奴ら、思った以上に学習能力があるな」  
ア「それはそうとケビン?戦闘中に一腹はやめて」  
ハ「(ただハイと言えばいいんだケビン)」  
ケ「俺達がヘマしても、上にゃ優秀なスナイパーがいるんだ。  
平気さ、そうだろアリッサ」  
マ「(バカが・・・女には逆らうな)」  
ア「気を抜かないでって話をしてるのライマンさん?デイビッ!あんたもよ!」  
デ「悪かった」  
ア「そんなに一服したいんなら、あたしが一服盛ってやるわよ!!」  
 
完成した新しい薬を持って帰り着くと夕立が来た。  
駐車場の白線のえび茶色のシミがきれいに洗い流されていく。  
翌朝は早く起きた。そして新薬をハンターの死体の何体かに打ち込む。  
それを塀の外に放って様子を見る事にした。今回出来た  
ウィルスは、体内に入ってから48時間後に活動を開始する。  
その潜伏期間中に出来るだけ広がってくれればいいのだが。  
 
シンディがヘリを乗りこなせるようになったので、2人で  
街なかを見て回った。高速の方に行くと一度倒したはずの目玉の  
化け物が復活して巨大化していた・・・・・何という事だ。  
デビットに頼んで改造した発信機を作って貰い、化け物に打ち込む。  
警備室で毎日チェックしていると、だんだんこちらに  
近づいて来ている事がわかった。何か手を打たなければ・・。  
 
ヨーコも何とかヘリを乗りこなせるようになった、ぎこちないが。  
そして最後の仕上げとして4機で飛ぶ練習をする。ついでに  
化け物を葬り去る事にした。確実にこっちへ向かって来ているからだ。  
マークを先導に4機で化け物の所まで飛び、フック付きワイヤーで  
化け物を引っ掛け、街の外れまで運ぶ。デビットが作った爆弾を  
アリッサが打ち込み、スイッチをジムが押すという手筈だ。  
マ「よしみんな、ワイヤーを外すボタンを押せ・・・・・外れたな。  
ジム、スイッチを押すんだ。離れすぎると電波が届かない。さあ帰るぞ」  
ヨ「ま・・・・・待って・・・!」  
マ「何だ?」  
ヨ「ワイヤーが・・・・外れない・・・・!」  
 
ケ「おいウソだろ?貸してみろ」  
ジ「エエエエェェェェェェエエエエ!?もう押しちゃったよ!!」  
ア「ヨーコ落ち着いて。ケビンもう一度やってみて」  
ケ「だ・・・・駄目だ・・・・故障してやがる・・・ヨーコ代われ」  
ケビンはヘリから身を乗り出し、ワイヤーを狙って撃ち始めた。  
ヨ「みんな、もう行って!早く!!早く行って!!」  
シ「ダメよヨーコ!」  
ヨ「今から離れないと間に合わなくなる!!行って!!」  
ケビンはワイヤーの同じ所を狙うが、45オートの弾が尽きた・・。  
ケ「・・・フッフッフ・・・・・・・お前ら行けよ・・・」  
デ「ケビン!!」  
ケ「いいから行け!!」  
その刹那、ケビンが撃って細くなった所をアリッサが撃ち断ち切った。  
ア「さっさとずらかるわよ」  
ハ「アリッサーーーーーッッ!!」  
ア「弾は多めに携帯するものよケビン」  
そこから少し離れると、ものすごい衝撃と共に化け物が終わりを遂げた。  
デ「少し強力過ぎたか・・・」  
 
ヨーコのヘリが屋上のヘリポートにきれいに着地すると、  
中からヨーコがフラフラと出て来た。アリッサとシンディがかけ寄る。  
ア・シ「ヨーコーッ!!」  
ヨ「私・・・・・・・・・・」  
ヨーコががくがくと震え出す。崩れそうなヨーコをアリッサとシンディが  
支える。ヨーコがアリッサの胸で泣き出した。  
ヨ「・・・私・・・・!」  
 
ヨ「怖かった・・・・怖かったの・・・!私・・・!」  
シ「ヨーコ、もう大丈夫。もう済んだわ・・・」  
ア「聴いて。ヨーコ、あんたを死なせはしない。あたしが守るわ」  
ヨ「アリッサ・・・・!!・・・・ううぅ・・」  
ジ「いいな〜、オレもあん中入りて〜〜」  
ケ「アリッサ、俺にはなんも無しかよ」  
ハ「ほんとによかった・・・・」  
マ「上手く飛べてたぞヨーコ」  
デ「フッ・・・」  
 
必要な物を積み込み、翌朝私達は4機で飛び立った。  
もうこの街ともさよならだ・・・。  
みなそれぞれの思いを胸に朝日に向かって飛び立つ・・・。  
さようならラクーン、私の街、もう死んでしまった街・・・・だが、  
ここに住んでいなければ彼らと出会う事も無かった。  
ありがとうラクーン・・・。  
 
俺達のヘリは軍のものらしきヘリや戦闘機に囲まれた。  
そして誘導されて、俺達は新しい街に降り立った。  
バカでかくて物々しい警護の建物に連れて行かれ、  
歳のいった男と話をする・・・・。オチはこうだ。  
俺達はこの街で新たに暮らし始める。家、仕事、その他  
身の回りの事は全て保証される。そして、俺達一人一人には、  
街一つ買えるぐらいの莫大な金が転がり込んだ。  
男「皮肉なものだな・・・今日が審判の日になろうとはな・・・」  
今日はラクーンが誕生した記念日だった。ミサイルが発射されて  
弾着し、きのこ雲が上がるまで俺達は無言のまま見守った・・・。  
 
俺達は国から好きな物を貰った。マークは空母、ジムは鉄道会社、  
ジョージは航空会社、デビットは潜水艦、アリッサはテレビ局、  
シンディは空港、俺とヨーコは小型宇宙船と軍事衛星を貰った。  
俺達はこの街で好きな事をして暮らした。マークは警備会社を  
立ち上げ、ホテル業をはじめた。街で一番でかい高級ホテルを建て、  
自分の警備会社でオーナー自ら警備をする。休日には  
空母のカタパルトで、家族揃って海上バーベキューをやってる。  
何ともムダに贅沢なバーベQだぜ。  
ジムは自分の鉄道会社の地下鉄で働く傍ら、電車やバッシュのデザインを  
手がけてる。趣味でパズル雑誌も出版してる、その名も  
「生き残りパズル」。難しすぎてマニアにしか売れないので  
受注生産にしたらしい。  
ジョージはハミルトン記念病院という病院を建て、恵まれない  
人には無料で利用できるようにしてる。その他に植物研究所も  
やって、珍しい花を開発してる。  
 
デビットは一旦ノースラクーンのアジトに帰ったが、アリッサの  
情報によると南国の無人島を買い、鮫を捕ったり蛇を食ったりして  
そこで暮らしてるらしい。その島周辺の珊瑚礁は貴重なものだという。  
 
アリッサは新聞社と出版社を経営してる。ジムの雑誌もここで  
出版される。そして普段は記者として特ダネを追いかけて  
飛び回っている。こないだ会った時にデビットの事を話してた。  
自宅に変な羊皮紙が送られて来たんで見てみたら、宝の地図だという。  
セスナでデビットの島に行くと、野生化したデビットが迎えてくれた。  
日焼けして、腰巻ルックにモリを携え、鮫の歯で作ったネックレスに  
ザンバラ髪といういでたちで呆れた、とぼやいていた。  
ア「これじゃリアルホームレスじゃない!」  
デ「家ならある。海の中にもな」  
地図の通りに宝箱を掘り起こしてみたら、中には白、黒、青、桃、金色の  
真珠とインゴット、磨いて飾るサンゴが入っていたという。何だノロケか。  
 
シンディはC'sバーというJ'sバーそっくりのバーを始めた。  
もちろんバニーデイもある、ダーツも、ライターも。俺達はよく  
ここへ集まってワイワイとバカ騒ぎをする。ラクーンを思い出すな・・。  
奇遇な事に、雇ったバーテンはウィルの親戚だという。数奇な縁だな。  
その他には植物園とハーブ園の経営をしてる。ジョージの所で作った  
植物も、ここでしか買えない。バーが休みの日はハーブ園でジョージと  
散歩して過ごす。憧れの家も手に入れ、ガーデニングを楽しんでる。  
よく俺達は食事に誘われる。ジムとシンディの合作は堪らなく美味い。  
俺はこの集まりが結構好きだ、モールでの支え合った暮らしを  
思い出すからだ。今となっては懐かしい、ほんの少ししか経ってないのにな。  
 
ヨーコはアンブレラの手の者のスカウトがしつこいので、  
記憶が全部無くなった事にして、俺の家で暮らしてる。  
普段はジョージの植物研究所で働いて、休みの日は  
会員制図書館の館長を務めてる。とは言っても、ただ  
本を読んでいるだけでいいんだが。  
 
俺はサツの仕事に戻った。これが一番ラクだからだ。  
上司はマービンの幼馴染だ。よく可愛がってくれる。  
胃薬の袋がどんどんでかく、大量になっていってるようだが。  
オフの日はブラブラして過ごす。せっかく貰った宇宙船に  
ヨーコを誘っても、怖がって乗りたがらない。  
たまには乗ってやんないと苔が生えちまうぜヨーコ?  
もちろん俺はヨーコに乗ってるがな。まあそれはいい。  
衛星は、クレーターになったラクーンを見る時に利用する。  
それ以外は衛星がとらえた映像を、よくアリッサが持っていく。  
スクープを独占し、他局を出し抜いてる。俺の衛星で。  
 
今日は仕事がオフなんで、シンディの植物園に遊びに来た。  
俺は芝生に寝転がり、あの激動の日々に思いを馳せる。  
俺達はあの発生の日、あのバーにいた。あそこを始まりにして、  
共に逃げたり離れたりしながら、またモールに皆が集まった。  
まるで見えない引力に引き寄せられるように、同じ場所に  
辿り着いた・・・。皆が結集したからこそあの戦場を  
生き抜くことが出来たんだ。俺達は生き延びるために  
お互いを求めて引き寄せ合っていたんだろう、今ならわかる。  
 
ジムのお得意の陰謀説もあながちウソでもないかもな。  
ジ「おかしいと思わないか?オレ達、ゲームの駒だったんだよ!  
唸るほどのカネ、これは生き残った賞金だ。宝くじやった事  
あるかい?当たりの人が多ければ取り分は減る、少なければ  
増える、だからこんなに貰えたんだ。口止め料も含まれてる  
んだろうけどさ。それにあのヘリ覚えてる?オレ達が  
モールに来て間もない頃、ガンシップが行ったり来たり  
してただろ?あれは生存者をチェックしてたんだ、まだ  
生きてる人がいればミサイル落とせないだろ?それに街を  
覆った壁!感染者を外に出さない為だ。何でこんな事  
やったのかって言うと、もちろん生体実験も兼ねてたんだろうけど、  
より優れた人間だけを選び出したかったからだ!どんな状況でも  
生き残る強烈な遺伝子を残したいからだ・・・・・弱い奴は  
強制的に淘汰される・・・。直感に優れ、危険を嗅ぎ分け、  
安全な場所、安全な場所へと逃げる「目覚めた」人間しか  
生き残れないんだ!!!そういう人間を選出していく・・・。  
そういう優れたDNAだけを掛け合わせて、より優れたのを作る。  
そうやって世界を作り変えようとしてるんだ!!」  
 
最後は大袈裟だけどな。奴はたまに鋭い事を言う。  
大金は次回のゲームに向けての準備資金でもあるのかもな。  
仕組まれた人災だろうが何だろうが、生き残ってやるぜ。  
事実俺はあの非常生活で随分鍛えられた。ジムの大好きな  
「秘密結社」を相手取ってどうこうしてやろうって気は  
さらさらねェが、また一騒ぎ起こす時は前もって連絡して  
貰いたいもんだぜ。次はこの街か?それまでは今の生活を楽しむ事にしよう。  
 
ヨ「ただいま」  
俺は帰って来たヨーコをソファーまで担いでいき、マッサージをする。  
ケ「おつかれさん」  
今日は「平和プレー」といくか!  
 

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