シェリーは小さな礼拝堂でうずくまって震えていた。  
 時折、ひた、ひた、という濡れた音がどこからともなく聞こえ、少女はその度に、 
幼い肩をびくり、と引きつらせる。  
 一人でも大丈夫、などと強がったのが間違いだった。実際大丈夫だと思ったのだ。 
化け物には、もう見慣れていたから・・  
 ひた、ひた・・音が少し近づいたような気がする。それは恐怖による錯覚かもしれな 
いが、そうでないかもしれない。シェリーは、自分の幼さと、目に見えない恐怖とい 
うのがどういったものかを痛感していた。  
 しかもこの音は、鈍臭なゾンビなんかではない。多分・・長い舌の化け物だ。  
 ガタッ!  
 天井裏ではっきりと聞こえた。  
 も・・・・もうだめ!  
 シェリーはそこから逃げ出すために立ち上がった。同時に何か大きなものが、音を立 
てて少女の後ろに落ちて来る。走って逃げようと、少女が反射的に一歩踏み出した瞬間、 
なぜか腰から力が抜けて、体ががくがくと崩れた。事もあろうに、驚きで腰が抜け、立 
ち上がることが出来なくなってしまったのだ。  
 それでも這って逃げようとするシェリーの背中に、濡れた、冷たいものが覆いかぶさ 
って来た。  
 た、食べられちゃう!!  
 シェリーは目を閉じて、終わりを覚悟した。今まで警察署の中で見てきたいくつもの 
死体・・動くものも、動かないものも・・。自分もそれの一つになるのだろう。  
 ・・・・・・お父さん、お母さん・・。レオン・・クレア・・・・  
――あれ?  
 シェリーははっと我に返った。死は訪れていない。凄まじい恐怖と、死の覚悟が過ぎ去 
ると、妙な冷静さが訪れた。  
 背中に何か生き物が張り付いているのは間違いない・・『舌の化け物』だと思い込んでい 
たが、それにしてはあまり重さが無い。せいぜい学校に持っていく鞄の重さだ。  
 見たくないと思いつつも、シェリーはそっと自分の背中を見た。  
 そしてすぐに前に向き直ると、湧き出てきた冷静さはもう姿を失い、凍りついたように 
歯をがちがちと鳴らした。  
 やっぱり――『舌の化け物』だった・・!  
 窓から挿し込む月明かりに浮かんだ、瞳を持たない顔・・・・。  
 時折、うじゅる・・と濡れた音がする。そいつはシェリーの横に顔を近づけ、いやらしい 
口から舌を覗かせた。  
 
「ううっ・・・・・・は・・・・はっ・・」  
 化け物の口臭に、『歯ぐらい磨きなさいよ!』と強がりたかったが、どうしても声が出 
ない。  
 シェリーよりも小さい体のそれは、しかし強い力でシェリーの細い胴体を、抱きしめる 
ように羽交い絞めにし、振り解く事はとても出来そうに無かった。  
 シェリーは、無理に動いて化け物を興奮させないように、辺りに目をやった。何か武器 
になりそうなものは無いかと思ったのだ。  
 それにしても・・とシェリーは思った。今まで襲ってきた『舌の化け物』はもっと巨大で、 
性質もずいぶん獰猛なように思えた。しかし今、自分の背中に張り付いているのは、殺意 
を持っているのかどうかさえもよく分からない。その時、シェリーははっとした。  
 ここの化け物たちは、元は普通の人間や動物だったはずなのだ。ということは・・ 
小さな体――子供・・?  
 少女が、恐怖の中にかすかないたわりを持った事を感じ取ったのだろうか。『舌の化け 
物』は、少女を締め付ける力を少し緩めた。そしてもう一度顔をシェリーの頬に近づける 
と、そっと自分の顔を触れさせた。  
 シェリーは化け物の意外な行動に驚いた。今まで化け物に持っていた、『食欲』だけを 
行動の意味とする、獰猛で直線的なイメージとは違う、『人間的なもの』を――いい気持 
ちはしなかったが――感じた。  
 その時、前方の部屋の隅で何かが動いた。一瞬びくりとしたが、冷静に良く見ると、そ 
れは背中にいるのと同じぐらいの『舌の化け物』だった。それはぴたぴたと音を立てて 
シェリーに近づいてくる。少女は殆ど動きが取れなかったし、その化け物がどうするか、 
興味もあったので、逃げようとはしなかった。殺されるなら、とっくに殺されているのだ。  
 本来なら非常に薄いはずの期待が現実となった。近づいて来た『舌の化け物』は、シェ 
リーの顔を興味深そうに(表情は無いが、動作がそう感じさせた)眺め、最初の一匹がした 
ように、そっと頬に触れたのだ。  
 
 何がなんだか分からない。シェリーは、困惑していた。少女は知らなかった。アンブレラ 
社がウイルスの人体実験を行う為の被験者を確保するために、『原住民狩り』を行ったこと 
を・・ウイルス投与に関する記録が比較的充実していた大人は、子供達の見ている前で、『ハ 
ンター』と呼ばれる生物兵器と、戦闘データの為に戦わされ、ぼろきれのようになって死ん 
だこと、そして子供達はその後、ウイルスに対する成人との反応の違いを調べるために、 
『T-VIRUS』と別の生物のDNAを投与され、強制的に化け物『リッカー』として変化させら 
れ、飼育されていたということを・・  
『子供達』の『飼育係』は日誌にこんな事を書いていた。  
 こいつらは他の化け物とずいぶん違う。他の奴らは生きている獲物を好むのに、こいつら 
はすでに死んだ肉でないと絶対に食べないのだ、と・・  
 地獄のような記憶によって、怪物になった後でも持っていた、死に対する絶対的な拒否。 
そして孤独。この『子供達』はそれを今でも持っていたのだった。  
 ひた、ひた・・いつの間にかシェリーを何匹ものリッカーが取り囲んでいた。  
 恐怖は、もう殆ど無かった。怪物たちに対する信頼などは到底もてなかったが、とりあえ 
ず生命が助かったことに対しての安心感が、恐怖を一時的に忘れさせた。  
 その時だった。リッカー達が、今までと違った行動を起こしたのだ。  
 シェリーの背中に抱きついているリッカーが、締め付けを緩めると、右手でシェリーの右 
胸に触れる。心臓の鼓動を求めているのかと思ったら、そのまま、服の上から、幼くも柔ら 
かい膨らみを優しく掴んだ。  
「あっ!!」  
 シェリーはぴくん、と体を震わせる。同時に、脚のところにいたリッカーが、シェリーの 
短いジーンズに手をかけると、それをするすると、器用に下ろした。現れた、真っ白な、可 
愛らしい女の子用のパンツも邪魔に思ったのか、同じように脱がせ、透明感のある、少女の 
小さな尻や秘所が露になる。  
「えっ・・な、なんで・・」  
 怪物達が、少女の柔らかさや、肌のぬくもりを求めていることなど知る由も無かった。  
 
 背中のリッカーが、シェリーの胸の感触が気に入ったのか、掴んでいた小さな膨らみを、 
そっと揉み始める。  
「・・・・・・あんっ・・!」  
 少女は思わず甘い声を漏らしてしまい、顔を赤らめた。緊張感はいつの間にか解れ、シェ 
リーは不思議な気持ちに包まれていた。  
 脚のところにいたリッカーが、少女の尻を濡れた両手で撫で始める。  
 怪物たちに『人間性』を感じたせいだろうか。シェリーは、臀部や秘所を見られているこ 
とに、恥辱を覚え始めた。  
「だめ・・離れ・・て・・・・ああっ!!」  
 左の胸も掴まれて、シェリーは言葉の途中で再び声を漏らした。  
 リッカーに揉まれている両胸から、熱く疼くような感覚が沸き起こってくる。冷たい手で 
撫でられている尻にも、心地よさを感じ始めた。  
 そして、リッカー達は、あるものはシェリーに擦り寄り、あるものは頬や腕、脚を長い舌 
で嘗め、戯れ始めた。  
「こ・・こんなっ・・はあっ・・はあっ・・・・あっ・・」  
 悪く無い感覚にシェリーが息遣いを荒くし始めると、尻を撫でていた手の動きが止まった。 
そして・・  
 パシィッ!  
「・・あっ!!」  
 左の臀部に走った、熱い衝撃と、その下に隠れる、例えようも無いような甘い感覚に、 
シェリーは体をビクッ! と震わせた。  
 尻を撫でていたリッカーは、小さく、張りのあるシェリーの尻が気に入ったらしく、続け 
て二、三度そこを叩いた。  
 
「あっ、痛っ・・! ああっ・・!」  
 ぞく・・シェリーの肩に鳥肌が立つ。  
 リッカーは断続的に、パンッ! パンッ! と、少し強めに、交互に両方の尻を叩く。白 
かったそこは桃色に染まり、じんじんと熱い感覚をシェリーに送り込んでいた。  
「はっ・・あっ、あうっ・・! あっ・・ああっ」  
 シェリーはトロンとした瞳で、声を漏らし続けた。胸を揉まれる心地よさも、すでに先ほど 
の比ではない。その息遣いは切なげで、叩かれている尻の、少し下の中央にある、少女の愛ら 
しい膣口は欲情し、そのぴたりと閉じられた割れ目から、リッカーの体液のようにとろりとし 
た液体が、太ももまで垂れ、流れていた。  
 リッカーは本能的に、少女が何らかの――苦痛ではない――峠に差し掛かっていることを感 
づいていた。そして少女自身も、快楽を自覚し、腰を僅かに蠢かせて、無意識にそれを求めて 
いく。  
 リッカーは、続けざまに、シェリーの両方の尻を叩いた。少女はたまらなそうな声を上げ、 
同時に濡れた股間の割れ目から、ぴちゅっ、と愛液が飛び出す。そして、手ではなく長い舌を 
使って、同時に左右の臀部を叩いた時、少女は震えた。  
「ふぁっ・・あっああっ・・わ、わた・・しっ・・あああっ!! あっ・・あっ・・!」  
 シェリーは、下腹にこみ上げてくる何かを、必死に押さえ込もうとした。しかし、それは本 
人の意思を無視して、どんどん高まっていく。そして・・  
「い、いやっ!! 気持ちっ・・!! あっ、あっ、止まら・・な・・・・いっ・・  
 あっ・・ふあぁぁぁ〜っ!!!」  
 ぷっ、ぷちゅっ・・ぴゅっ・・  
 ヒクヒクとひくつく膣口から、先ほどよりも多量の愛液が噴き出る。  
 たまらなく甘い声を上げ、体中に鳥肌を立てながら、シェリーは生まれて始めての性の絶頂 
を迎えた。  
「はあっ・・あっ・・・・はあっはあっ・・・・」  
 シェリーの口元から、涎が顎を伝い、床に糸を引いて落ちた。体を支えていた腕から力が抜 
け、倒れるように濡れた頬を床に着けた。  
 
 休む間は無かった。尻を叩いていたリッカーが、液体を噴き出した膣口に興味を示し、その 
割れ目を舌の先で嘗め上げたのだ。  
「ああああっ!!!」  
 初めての直接の刺激に、シェリーは再び嬌声を漏らした。その声が引き金となったようだっ 
た。今まで、周りで遠慮がちに触れていたリッカーたちが、たちまち群がってくる。  
 床に投げ出された細い腕に絡みつく者。その先の、手の甲や指を嘗める者。さらにはシェ 
リーの顔を覗き込み、舌を出すと、少女の開かれた唇にそっと差し入れる者――  
 唇にリッカーの舌が差し入れられ、少女の舌を求めるように口の中を優しく嘗め回す。そして、 
その柔らかなものを見つけると、ぬるぬると嘗めずり、絡みつかせた。  
「ん・・んっ!! ん・・ふーっ・・・・・・んっ!! んーっ!!」  
 ビクン!! 少女の体が震える。意外なほど優しい舌への愛撫、怪物との濃厚なフレンチキ 
スに、軽く達してしまったらしかった。  
 快楽の波に打ち震えていると、のるん、という下半身の奇妙な感触と共に、強烈な性の刺激 
が訪れる。  
 尻のところにいるリッカーが、舌をシェリーの膣口――処女膜の穴に挿し込んだのだった。  
さらに、細く柔らかなリッカーの舌は、処女膜を傷つけることなく、敏感極まりないシェリー 
の膣の粘膜を刺激しながら、少しずつ這い登ってくる。  
「んっ、んっ!! んっ・・・・!!」  
 早くも昂ぶりを迎え始めるシェリー。それが極みに差し掛かった瞬間、つぷ、という妙な感 
触と、数段上の強烈な快感に、シェリーは一気にエクスタシーにまで押し上げられた。  
 快感が爆発する寸前、リッカーは子宮口に浅く挿し込んだ舌の先端を、うねうねと蠢かせ、 
にゅうう、と少し強引に、しかしゆっくりとそこを押し広げて、少女に追い討ちをかけた。  
 そして――  
「ん・・〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!」  
 シェリーは声にならない叫び声を上げた。  
 
 体をビクン! ビクン! と跳ねさせ、自ら無意識に、口内のリッカーの舌を愛撫し、股間 
に差さっているリッカーの舌との隙間から大量の愛液を噴き出す。  
 たまらない性の快感の中で、少女は安心感に包まれていた。そして気が抜けたせいか、にゅ 
るんっ、と舌が子宮口から抜けた瞬間、その壮絶な快感の波に小さく叫び、意識を失ってし 
まった。  
 
 ガタンッ!  
 扉を開ける音に、シェリーは跳ね起きた。  
「シェリー!」入ってきたのはレオンだった。レオンは、シェリーの周りにいるもの達を見て、 
血の気を引かせた。  
「レオン! 大丈夫よ、この子達は・・」  
 シェリーのそばに、一匹のリッカーが寄ってくる。レオンはM-60の銃口をそれに向けた。  
「レオン、やめて! ・・本当に、本当に大丈夫なの・・。ほら・・」  
 シェリーは、側に来たリッカーの顔に手をやった。リッカーもシェリーの手に顔を摺り寄せる。  
 レオンはしばし呆然としていたが、肩をすくめると、銃口を下ろす。  
「どうなってるんだ?」  
「私も・・わからないわ。なんか寂しそうで・・」  
「何にしろ、ここにいるわけにはいかない。早く脱出しなければ・・」  
 シェリーは、小さく頷いた。  
「さあ、服を着けて、早く来るんだ」レオンは、目を背けて言った。シェリーは下半身が露に 
なっていることを思い出し、顔を真っ赤にしてしまった。  
 レオンは、このリッカーたちが何なのか知っていた。研究所で、ある研究員の記録を見た為だ。 
そして、この『子供達』にとって何が一番幸せなことかも・・。  
 しかし、どうしようも無い。シェリーの目の前で撃ち殺す訳にも行くまい。  
 レオンは、服をつけ、立ち上がって、それでも名残惜しそうにしているシェリーの手を引っ 
張って礼拝堂を後にした。シェリーは歩きながら後ろを一度だけ振り返り、小さな声で、あり 
がとう、と言った。  
 

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