悪夢の南極からの生還………
爆発する南極基地からの脱出、全てが一段落付いたかに思えた。
だが終わってはいなかった、2人は気づかなかった。脱出時に搭乗した戦闘機に
最悪のBOWが潜んでいた事に………。
兄のつてで空軍基地に戦闘機を乗り捨て、家路に着く。兄クリスはアンブレラとの
決着に備え地下に潜った。本当は行って欲しくない、だが仕方が無い。当然私だって
人としてアンブレラは許せない……スティーブの命を奪った連中を。
だが、今は疲れた。ベッドで休みたい………………………
その思いと共にクレア・レッドフィールドはベッドに倒れこんだ。
クレアが目を覚ましたのは夜中の2時を回った頃だった、床に就いた時間からすれば
対して眠れてない。
ふと喉の渇きを覚えキッチンへ赴く………この時ラクーン市・絶島の刑務所・南極
と言う異常な状況下のままなら、クレアは気づいたであろう………アレクシアの攻撃に。
「………!?」
気づいた時には遅かった。アレクシアの触手はクレアの足に絡みつき、彼女を床に
叩きつける。
「……そ…んな、倒した筈…なの…に」
「こんなに簡単にいくとはね、何故私もお兄様もこんな下賎な者に遅れを取ったの
かしら」
意識も朦朧とし、ろれつも旨く回らなくなっているクレアとは対照的に、勝ち誇った
笑みを浮かべ、アレクシアは呟く………そしてクレアの足に絡みつかせている触手を、
首へと撒きつけ力を入れる。
「っく……か……ぅ………んぅ…」
触手が頚動脈を締め付ける、意識が混濁し始める………………兄クリス・レオン・シェリー
…………スティーブ……親しき人間の顔が頭に思い浮かぶ。
この時思った
『ああ……私、死ぬんだ………』……と
そのままクレアの意識は混濁していき、やがて…………………………
「………う……ぅ…ん」
クレアが混濁する意識下から目覚めた時、首にはアレクシアの触手は絡み付いては
いなかった。ただ、首にハッキリと残った痣が先刻の出来事が夢では無い事をクレア
におぼろげながらも伝える。
「………!!」
意識がハッキリとしてきた時、クレアは咄嗟にキッチンへ置いてある包丁へと手を伸ばす。
そして、自分の背後に在ろう影に思い切り刃を突き立て………ようとした手が止まった。
アレクシアは気を失っていた、加えて先程までのオゾマシイ化物の容貌では無く、クレアと
同じ女性の姿で………そして、クレアは思う
『今なら殺せる』と。
南極での悪夢が蘇る、自分を好いてくれた者への人体実験、それによる彼の怪物化。
そして彼は攫われた……今度はアンブレラとは違う組織に。
彼の人生はこれからどうなる?もう人間としては歩めない?何故?
そう考えると憎しみが込み上げてくる。彼の人生を終わらせた目の前の女に……そして
その女を目の前にして、手を止めた自分に対して。
「………スティーブの……仇!!」
刃を持つ手に力が入る、後は簡単だこのまま手を振りかぶり、力に任せに振り下ろす………
それで全てが『本当に』終わる
クレアは刃を持つ手を振り上げ………………
「………………………………」
アレクシアは事態が飲み込めなかった。気を失う直前の事は良く覚えている。あの女の首に
触手を巻き付け力一杯締め上げた、あの女の苦しむ声が何よりも私の苦しみ・恨みを和らげた。
後一歩だったのだ、後一歩であの女は窒息死し私は復讐を遂げる筈………だった。
突然の事だった、体中から血が飛び散ったのを記憶している。今思えば私だって無傷という訳
では無かったのだ、当然だ……リニアランチャーの直撃を受け無事でいられる筈が無い。
それなのにまだ生きているとは、あの兄妹への怨嗟の念が余程強かったのか、それとも始祖ウイルス
のおかげか。
「力が……入らない」
歯痒い、あの憎らしい女を前にして指一本動かす事に苦労しようとは……だが不可解過ぎる
『何故あの女は私を助けた?』
絶好のチャンスだった筈だ。気を失っている女一人、どうとでも出来たのに、私はあの女の
ベッドで横たわっている。アンブレラの事でも尋問する気か……それとも意識がある状態で殺す気か……
どの道私に残された道はろくな物ではあるまい。
「気づいた……のね」
視線の先にはあの女がいた。憎んでも憎み足りないクレア・レッドフィールドが