「合ったわ」
クレア・レッドフィールドが、ようやく手に入れたハート型のキーを、ドアノブの下にある鍵穴に差し込み右へ回すとカチャリという乾いた金属音を立てて錠が解除された。
クレアは緊張感を保持したままドアを開けて先に進む。
「こんな所にグリーンハーブが。丁度いいわ」
ドアを開けた直ぐ鼻先に、体力の回復に特殊な効力を持つというハーブの鉢植えが無造作に置かれているのを目聡く見つけたクレアは、その場にしゃがみ込んだ。
一瞬出来た間隙を突いて、クレアの背後に忍び寄る怪しい陰。
独特の腐敗臭で背中越しに迫る危険を察知したクレアは、前方へ大きく回転して間合いを取ると、すっかり手になじんだブローニング・ハイパワーを抜きながらすっくと立ち上がった。
クレアは振り向きざまに続けて4、5回引き金を絞り、両手を大きく広げて迫りつつあったゾンビに9ミリパラベラム弾を叩き込む。
至近距離からの連射に、さしものゾンビもたまらず腐った血を吹き上げながら、その場に倒れ込んだ。
血の海に沈んだゾンビを尻目に、先を急ぐクレアだったが、廊下を左に曲がったところで再び4体のゾンビに行く手を阻まれてしまう。
「うぅっ。しかたがないわ」
突き飛ばして先へ進むには相手の数が多すぎるし、下手をすれば取り囲まれて逃げ場を失った挙げ句、嬲りものにされるおそれもある。
クレアは意を決すると、両手で把持したブローニングをゾンビの群れに向けて突きだし、連射を浴びせかけた。
「こんな事だったらグレネード・ガンを持ってくるべきだったわ」
クレアは今更ながらに強力な破壊兵器であるグレネード・ランチャーを保管庫に置いてきた事を後悔した。
ようやく進路を確保した時、クレアの持っていた予備のマガジンは1本のみになってしまっていた。
「残弾が20発を切ってしまったわ。これからは慎重にいかないと」
クレアは二度目の死を迎えた4人の警官の体を避けながら廊下を先へと進んでいく。
クレアが行き着いた廊下の先は、地下へと通じる階段になっているようであった。
先の見えない暗闇に、クレアは本能的な恐怖を感じたが、年端もいかない少女の面影を脳裏に思い起こすと、勇気を振り絞って階段を降りていった。
階段を降りきると足場は湿気にぬかるんだ粘土質の地面になっていた。
クレアは足元を取られないよう、慎重に進んでいく。
「・・・・・何かしら」
クレアは自分に対して近づいてくる物音に気付き立ち止まった。
「またゾンビなの?・・・前後にしか動けないこの狭い通路で戦ったら自由度が少ないから不利だわ」
左右にゆとりのある通路なら、動きの緩慢なゾンビを相手に有利に戦闘を展開できるし、場合によっては攻撃をせずに済ませることが出来るかも知れないと戦術判断を下したクレアは、思い切って広い通路側へと飛び出した。
戦いのイニシアティブを取るための思い切った行動であったが、賭はクレアにとって裏目に出てしまった。
「・・・・」
クレアを待ち受けていたのはゾンビなどではなく、もっと危険な存在であった。
そこにいたのは、明らかに警察犬として普通に警察署内で飼われているドーベルマンであった。
ただ普通と違ったのは、剥き出しにした歯列の間から垂れ流しになっている狂犬の様な涎と、眼窩から飛び出たままになっている眼球が、真っ当な警察犬に似つかわしくないという事であった。
一目でその犬がゾンビ化していると判断したクレアは、ブローニングの先制攻撃を放った。
「キャインッ」
悲鳴を上げてもんどりうって倒れたゾンビ犬。
クレアにホッとするゆとりも与えず、ゾンビ犬は素早く身を起こして再び戦闘態勢を整える。
「こいつ不死身なのっ」
焦ったクレアは次弾を送り込んだが、ゾンビ犬の素早い動きに翻弄されて命中弾を与えられない。
動物相手に運動能力面の不利を悟ったクレアは、身をひるがえすと脱兎の如く逃げ始めた。
攻撃本能を剥き出しにしたゾンビ犬が逃げるクレアに追いすがり、全身のバネを使って飛び掛かる。
「今っ」
敵の動きを予測可能な直線運動に誘い込むクレアの戦術が見事に決まり、空中で被弾したゾンビ犬は悲鳴を上げながら地面に叩き付けられた。
してやったりと前を向き直ったクレアが見た物は、前方の曲がり角からうなり声を上げて突進してくるもう1匹のゾンビ犬の姿であった。
2匹目のゾンビ犬は猛然と飛び掛かると、ヘビー級の体を使ってクレアに体当たりを食らわせた。
「キャアァァァッ」
加速度を付けた重量物の突進に、クレアは見事に吹き飛ばされて、コンクリート製の壁に叩き付けられた。
「あぅぅぅ・・・」
全身の筋肉をさいなむ激痛に耐えながら立ち上がろうとするクレア。
そうはさせじと1匹のゾンビ犬がクレアのホットパンツのベルトに噛み付くと、全身の力を込めて首を左へと振るった。
「ギャッ」
コンクリート壁に頭部を打ち付けたクレアが悲鳴を上げる。
意識を失い掛けたクレアの体がぐんなりと弛緩するが、弾丸の洗礼を浴びたゾンビ犬の怒りは収まらず、ベルト部に噛み付いたまま猛然とクレアの体を振り回し続けた。
そのうちベルトが千切れ飛んだため、パンツ自体に噛み付き直したゾンビ犬は更に荒々しい攻撃を加える。
ようやくゾンビ犬の攻撃が収まった時、哀れクレアのピンクのホットパンツは薄いパンティごと、膝の辺りまでずり下がってしまっていた。
下半身の全てを剥き出しにしたままで、尻を高々と上げた四つん這いになった惨めな姿を余人に晒さずに済んだことがクレアの幸運であった。
高校時代にバージンを喪失したとは言え、経験の少ないクレアの秘裂。
その秘裂から発する生命の証である生々しい臭いがオスであるゾンビ犬をいたずらに刺激してしまう。
低いうなり声を上げながらクレアの後ろに回り込み、両足の間に忍び寄っていく2匹のゾンビ犬。
クレアが下半身にむず痒いような感覚を感じて徐々に意識を取り戻す。
「ヒィッ。あたし、犬に・・・犬にアソコ嘗められてるぅっ。イヤァァァァーッ、臭いを嗅がないでぇ」
2匹の化け物が争うように鼻面を寄せて自分の秘密の部分を嘗め回している事に気付いたクレアは、恐怖のあまり股間から小水を迸らせながら絶叫を上げた。
しかし抵抗しようにも全身打撲の体は言うことを聞かず、愛銃は最初の体当たりでどこかに落としてしまっている。
犬の長い舌は人間など及びもつかない様な器用さでもって、クレアの敏感な部分に付着した塩分を余すことなくこそげ取る様に丹念に嘗め上げるのだが、その度ピチャピチャといやらしい音を立てる。
「いやぁっ、そんな所。そこは・・・駄目ぇっ」
クレアは菊の形をした肉の窄まりにまで犬の攻撃が及ぶに至って、未経験の恐怖を感じて身を震わせておののいた。
アナルファックは知識としては知っていたが、経験も興味も無かったクレアにとって、その部分への刺激は本能的な恐怖を思い起こさせた。
「なっ・・・なにっ?あぁっ・・・変だわ」
未経験の恐怖は未経験の快感に変わり、秘所からは小便とは明らかに質の違う透明の液が滴り始める。
「いやっ・・・犬の舌なんかでイッちゃうなんて・・・イヤアァァァッ」
頭の中では絶頂を拒否しているのにもかかわらず、体の方は本能に対して余りにも弱く、また正直であった。
「イヤァァァァーッ」
激しい絶叫を上げたクレアは、一旦全身の筋肉を硬直させ、激しく短い痙攣の後で再び弛緩した。
「あたし・・・あたし、犬の舌にいかされちゃったわ・・・あぁっ、またイクッ?」
やがてクレアの上げる嬌声とメスの臭いに生殖本能を刺激されたゾンビ犬共は、体内に隠し持った生殖器官を露出させた。
「ヒィィッ、それは嫌っ。イヤァァァァーッ」
ドクドクと脈打つ灼熱の肉棒の巨大さに恐怖したクレアは我に返ると、事態の重大さを認識して悲鳴を上げた。
その姿を武器庫の陰から見ている1人の女の姿があった。
「うふふっ。あの娘、犬なんかにいかされちゃって。」
スパッツの上にノースリーブの赤いボディコンスーツを着たその女性は、東洋的な顔立ちをした美貌を嗜虐的に歪めた。
「ワンちゃんの精液を注入されたらウィルスの感染は確実だわ。さてお手並み拝見といかせて貰おうかしら」
エイダ・ウォンのコードネームを持つその女スパイは、ここは見物とばかりその場にしゃがみ込むと、ポーチを開いてポケットティッシュを取り出した。
※
同じ頃、潜伏場所を脱出したジル・バレンタインは、ゾンビ包囲網の突破口を開き、脱出路を探すべくラクーン市街をさまよっていた。
素早く移動するスーパーゾンビに対してジル専用のカスタムガン、サムライエッジの必殺弾が打ち込まれる。
もんどりうって倒れるゾンビなどには目もくれず、ジルは一軒のブティックに入っていった。
「戦いにくいったらありゃしないわ」
ジルは潜入捜査用に着用していた青いチューブトップとミニスカートという超軽装がお気に召していなかった。
「そりゃ、私だってまだまだイケるけど。こう露出が多いと・・・」
鏡に向かってウッフンポーズを気取ってみるジル。
ゾンビ達に見られて困るというものでも無いのだが、肌の露出は破片等による負傷を過大なものにしてしまう危険性が高い。
「ロクなのが無いわね」
ジルは店内に展示された服を一通り見回して悪態をつくと、引っかかりの部分が全く無く、一番機動性に富んだと思われるレッジーナ・スーツを選び身に付けた。
体の線は全部出てしまうが、自他共に認めるナイスバディの所有者であるジルには全く気後れなど無かった。
「見られて減るもんじゃなし、見たけりゃ幾らでもどうぞ。って感じ?」
ジルは鏡の中の自分に笑いかけると、カウンターに置いていたサムライエッジを握りしめ、再び己の戦場へと戻っていった。
「熱ぅっ」
天井からいきなり降り注いできた粘つく液体を、肩口に受けてしまったクレアは、反射的に右肩に手を当ててしまった。
途端にブスブスと煙を上げて革製の手袋が腐食していく。
「ヒッ・・・?」
こわごわと下水道の天井を見上げたクレアが見た物は、逆さまに張り付いて4対の触手を蠢かせている巨大なクモであった。
「イヤァァァァーッ」
クモ恐怖症のクレアは逃げることも忘れて、手にしたグレネードガンを狂ったように連射する。
ろくに狙いも定めずにめくら撃ちしたため、弾倉に詰めていた火炎弾はあっという間に撃ち尽くされてしまった。
更に逆襲の強酸液を浴びせかけられ、激しくむせ返るクレア。
それでもナパームオイルを燃料とする炎と高熱は、クモを牽制するには充分な効果があったと見え、危険を感じたクモはブロックの裂け目に身を滑り込ませて消えていった。
これ幸いとその場を逃げに掛かったクレアだったが、体が重く言うことを聞かない。
「どっ、毒にやられたんだわ。このままじゃ体中に回ってしまう」
クレアは痺れ上がった体を引きずるようにして下水道を進み、やがて通路の入り口に辿り着いた。
下水道の行き止まり部分を塞ぐようにして不自然な滝が流れ落ちているが、今はそれを調べている暇はない。
必死の思いでドアを潜ったクレアの目の前に、天からの恵みのようにブルーハーブのプランターが飾られてあった。
クレアは震える手でハーブを一握りむしり取ると、仰向けに寝ころび、茎の断面からしたたり落ちる滴を口へ持っていった。
「あぁっ・・・兄さんから貰ったベストが・・・」
毒消しの成分が効いてくるまでの間、クレアは強酸の毒液を浴びたベストやスパッツがボロボロに腐食していくのを黙って見ているしかなかった。
ようやく体の自由を取り戻したクレアが立ち上がった時には、既にベストもインナーも着衣の形態をとっていなかった。
「アンブレラ・・・許さないわ」
クレアは体にまとわりついていた被服の残骸をむしり取りながら、アンブレラへの対決意思を強固なものにした。
今や身に付けている物といえば、焦げ茶のブーツとウエストポーチの他は、薄手のパンティ一丁となってしまったクレア。
クレアが一歩駆ける度に、巨大なバストが左右にプルルンと柔らかく揺れ、走りにくいことこの上ない。
薄い木綿のパンティは下水道を抜けた時に濡れたままであり、意外に濃いアンダーヘアは透けて見えてしまっている。
ゴミ集積所へ続く通路で、クレアは頭の裂けた巨大な爬虫類の死骸を見て慄然とする。
「これはレオンのお仕事ね・・・」
先にここに到達したのがレオンじゃなく、自分だったら無事に通過できたものか。
「レオンと出会う前に着替えを手に入れなくっちゃ。はしたない娘だって思われちゃうわ」
兄一辺倒だった自分が、知らぬうちにレオンを男として意識している事に気付いて、複雑な表情を浮かべるクレア。
集積所の監視室で大鷲のメダルを手に入れたクレアは、バルブハンドルを使って換気ファンを一時停止させると梯子を登っていった。
クレアは通気口の中を見通して、危険が無さそうなことを確認してから中へと進入する。
「ここを抜けると下水道まで近道できるはずだわ」
これまでの道程を脳裏に地図にして描いたクレアは、確信を持って仄暗いトンネルの奥へと歩を進めていった。
ガサガサッという何かが這い回る様な音を耳にしたのは、クレアがトンネルの中央部付近まで来た時であった。
「何っ?・・・なんかいる」
足を止めてブローニングを構えるクレア。
ブゥゥゥ〜ンという羽音がしたと思った次の瞬間、クレアは太股の辺りに軽い衝撃を感じた。
剥き出しの太股にしがみつき、いやらしい触覚をレーダーアンテナのように蠢かせているのは、黒光りする羽を持ったラージ・ローチであった。
「イヤァァァァーッ」
クレアは肺中の空気を絞り出すような絶叫を上げながら、太股から下腹部へと這い上がってこようとするラージ・ローチを払い落とした。
しかし不気味な羽音は次から次へと飛来し、ラージ・ローチはクレアの柔肌にたかっていく。
「もうイヤァァァーッ」
クレアは半狂乱になりながら淫虫を振り払い、手にしたブローニングを乱射するが的は余りにも小さく、余りにも多かった。
パイプ状の壁に当たった9ミリ拳銃弾が跳弾となって、運動エネルギーを喪失するまで虚しく火花を散らせる。
「トンネルを抜けさえすれば」
走り出したクレアだったが、ラージ・ローチの死骸を踏みつけたブーツがヌメリで滑り強かにお尻を打ちつけてしまった。
倒れ込んだクレアの全身に一斉攻撃を仕掛けるラージ・ローチの群れ。
「ヒィィィーッ」
全身を苦手な淫虫の節足に這い回られるおぞましさに、クレアは失神寸前に追い込まれた。
口を開けるとラージ・ローチが体内に侵入を図るので、クレアは助けを呼ぶどころか、悲鳴を上げることさえ出来ない。
図々しくもパンティに潜り込んできた一団は、先を争ってクレアの前後のホールからの侵入を試みて入り口をまさぐる。
「くっ・・・くうぅぅぅっ」
ラージ・ローチに体内への侵入を許せば、摘出することは困難なので、クレアは括約筋に必死の力を込める。
しかし敏感な腋の下や乳首をまさぐる別の一隊の攻撃で、気を許せば直ぐに体を弛緩させがちになってしまう。
虫の群に肌をまさぐられるというおぞましい状況下にあるのに、体の生理は正しく機能し、クレアの秘所からは潤滑油の用途を果たす体液が滲み出てくる。
「うぅっ・・・虫なんかに感じさせられてる・・・」
余りの惨めさに、固く閉じたクレアの両目から涙がこぼれる。
もう数秒でジ・エンドとなろうと言う時であった。
ギギィ・・・ギィィ・・・と音を立てて、一時停止していた換気ファンが回転を再開し始めた。
その音を合図にラージ・ローチの群れは、一匹残らずクレアの体を離れると、天井部にある窪みへと素早く移動した。
ファンの回転時には窪みの部分に身を潜めていないと、体重の軽いラージ・ローチは簡単に吸い出されてしまう事を経験で知っていたのである。
九死に一生を得たクレアは、まだスピードの乗っていないファンを手で止め、ふらつく体でハシゴを降りていった。
一方のジルは、ようやくRPDの正門前に辿り着いたところであった。
「部屋に戻れば、武装を強化できるわ」
S.T.A.R.S.執務室の武器ロッカー内に格納されている、マグナムやグレネードガンの破壊力を思い起こしながらジルの口元が弛む。
「化け物相手にグレネードガンぶっ放すのは、久し振りだわ。今に見てらっしゃいよ」
ジルは嬉々とした表情で門扉を開けると、玄関前に入っていく。
ジルの目の前には通い慣れたラクーン市警察の正面玄関があった。
辛かった新任時代、初めての逮捕劇、そして特殊部隊選抜試験に合格した時の嬉しさ、数々の思い出がジルの胸に去来する。
見慣れた本署の建物も、これが見納めになるかも知れないと思うと、ジルも流石に感傷的になる。
しばし佇んだ後、再び歩み始めたジルの背後で、いきなり門扉が乱暴に開かれた。
「ヒッ?」
ジルが制式拳銃を構えて振り返ると、照星と照門の合わさった先に、オレンジ色の防弾ベストを着用したブラッドの姿があった。
「ブラッド、脅かさないでちょうだい。撃ち殺すわよ」
ムッとした表情で銃を下ろしたジルであったが、ブラッドの様子が少しおかしい。
「ジ・・・ジル・・・」
弱々しく歩み寄ってくる同僚の顔には生気はなく、体のあちこちも傷を負っているようである。
「ブラッド」
ジルがブラッドに駆け寄ろうとした時であった。
音も無く飛翔した黒い固まりが、ジルとブラッドの間に割り込むように落下した。
「オワァオォォォーッ」
ゆっくりと立ち上がった黒い物体を見て、ブラッドが恐怖の余り絶叫を上げる。
黒い物体は皮のコートを着込んだ、身長2メートル半はある巨大な男であった。
「ブラッド?」
しかしジルの声に反応して振り返ったその顔は、男が明らかに人外の存在であることを証明していた。
「S.T.A.R.S.・・・」
男はくぐもった声でそう呟くと、やにわにブラッドの顔面を掴んで宙に持ち上げた。
「ジッ・・・ジルッ。ヘルプ・・・ヘルプ・ミーッ」
唯一自由になる両足をばたつかせて、ブラッドが必死に助けを乞う。
「ブラッドを離しなさい」
警察官らしく暴漢に対して一応の警告を発し、それでも台詞を言い終わらないうちに、サムライエッジをぶっ放し始めるジル。
「・・・・?」
威力充分の9ミリ弾が確実にヒットしたにもかかわらず、巨人は蚊に刺された程の反応も示さない。
「皮コートに防弾性能が?」
それでも巨人は手負いのブラッドより、火器を所持するジルの方を脅威と捉え、攻撃優先順位を入れ替えた。
「S.T.A.R.S.・・・」
巨人はブラッドをゴミ屑のように投げ捨てると、ゆっくりとジルに向き直り近付き始めた。
銃器は通用せず、体力差も明らかな敵を相手にしなければならなくなったジルは一瞬躊躇する。
取り敢えず警察署の中に逃げ込むか、それともこの化け物と戦うか・・・考える時間は殆ど無い。
「仲間を置き去りにして逃げる事なんて出来ないわ」
それは洋館事件の冒頭で、ゾンビ犬に襲われたアルファチームを置き去りにして、ヘリで逃走してしまったブラッドへの痛烈な皮肉であった。
ジルは真正面から両手を広げて掴みかかってくる巨人の脇を前転で逃れ、死角から拳銃弾を浴びせかける。
「グオォォォ~」
巨人はくぐもった唸り声を上げて一頻り苦悶すると、今度はジルに向かって肩を突きだし突進してきた。
それをギリギリまで引き付けたジルは、横っ飛びで男をやり過ごす。
つんのめった巨人に対してジルの容赦のないサムライエッジが火を噴く。
「いけるわっ」
充分な広さのある玄関前で、距離さえ取って戦えば勝機は充分にある。
自信を持ったのも束の間、巨人がコートの下から取り出したロケットランチャーを見たジルの表情が凍りついた。
「ウワァオォォォッ」
飛来したロケット弾をすれすれでかわしたジルであったが、至近弾の衝撃波で吹っ飛ばされる。
コンクリート製の地面に叩き付けられたジルは上半身を起こしに掛かるが、鼓膜は悲鳴を上げ、平衡感覚も戻ってこない。
そのジルの頭部を狙って、化け物のロケットランチャーが1度2度と容赦なく振り下ろされた。
「ギャッ」
とっさに出したアームブロックで頭部への直撃は逃れたものの、余りの衝撃にジルは失神してしまう。
「S.T.A.R.S.・・・」
化け物は勝ち誇ったかの様な唸り声を上げると、ロケットランチャーを地面に放り出して、仰向けに倒れているジルの足元に近付いていった。
そしておもむろにコートの前をはだける。
その股間には、およそ人間の男など及びもつかない程の逸物が隆起していた。
既にスタンバイ状態に入ったグロテスクな『それ』は、縦横に浮き出た血管や正体不明の分泌腺の管で覆われ、本体とは別の独立した生物の様に脈動を繰り返している。
怪物は脳髄に書き込まれた創造主からの指示〜S.T.A.R.S.女性隊員の子宮に精液と共に新開発のウィルスを注入して、新種のBOWの胎児を得る事〜の実行に移った。
だらしなく地面に横たわったジルの両足の間に割って入った化け物は、彼女の両足首を握り、大きく左右に開いた。
何の苦もなく一杯に開かれたジルの両足が角度の浅いVの字を描き、股間は無防備に晒された。
怪物は脳髄の記憶している精巧な人体解剖図から、目標である子宮への理想的な侵入口を検索し、やがてそれを股間に発見する。
「S.T.A.R.S.・・・」
化け物は呻きながら一旦腰を引くと、勢いをつけて生殖器官をジルの股間の中心に突き立てた。
鉄板すら貫こうかというその一撃は、ジルの着衣ごと股間を割り、深々と子宮口に達するはずであった。
「グゥオワァァァァ・・・」
しかしジルの着用していたレジーナ・スーツは、見事に化け物のペニスを食い止め、女主人の貞操を守り抜いてみせた。
政府特殊部隊の女性隊員が着用する特殊潜入被服、通称レジーナ・スーツの名で知られるこの革製のレオタードは、本来男女混合チームに組み込まれた女性隊員が、味方からの強姦を防止するために作られた、いわば全身貞操帯であった。
革とケプラー繊維で作られたこのスーツの強靱さは折り紙付きであり、お陰で男性隊員も作戦遂行に集中できると、政府の評判も上々であった。
あくまで噂の域を越えないのだが、恐竜のペニスすら貫通を許さなかったという伝説のレジーナ・スーツの前に、化け物のペニスもまた一敗地にまみれた。
「S.T.A.R.S.・・・グォアァァァァ~」
化け物は狂った様にジルの体を両手でまさぐり、レジーナ・スーツを脱がせに掛かるが、生憎女性の服を脱がせるという技術は、彼の知識にはまだインプットされていなかった。
「うっ・・・うぅ〜ん・・・」
体を揺さぶられる刺激にジルの意識が戻ってくる。
「はっ・・・いやぁぁぁぁーっ」
目を覚ましたジルは、股間を割ってのし掛かっている化け物の姿と、その股間に屹立した逸物を見て、自分が何をされ掛かっているのか直ぐさま理解した。
「このジル様を、そこいらの小娘と一緒にしないで頂戴」
ジルは両膝を立てて化け物の腹部に宛うと、ボトムポジションから化け物の体を巧みにコントロールする。
そしてブーツの底で化け物の逸物を挟み込むと、一気にこね回し始めた。
「このぉっ」
理解不能の、しかし本能が全面肯定する不思議な感覚に、化け物の体が一瞬硬直したかと思うと、次の瞬間、激しい痙攣と共に背筋が反り返った。
「今よっ」
がら空きになった怪物の股間にジルのブーツの分厚い底革が食い込んだ・
「グオアワァァァァ~ッ」
断末魔の唸り声と共に怪物が仰向けに倒れ、ジルは身体の自由を取り戻す。
怒りに燃えた復讐者が立ち上がり、最初に見たものは、自分が捨てたロケットランチャーを身構える生け贄の姿であった。
「公務執行妨害と婦女暴行の現行犯よ」
起死回生のショルダーアタックを試みてダッシュする怪物。
「判決は・・・」
距離が近すぎるとロケット弾は信管が作動しないため、ジルは横っ飛びに化け物をやり過ごして一旦距離を取る。
「・・・死刑ね」
冷たく言い放ったジルがトリガーを引くと、筒先から飛び出たロケット弾が、狙い違わず怪物に命中して炸裂した。
「S.T.A.R.S.・・・」
さしもの怪物もロケット弾の直撃には耐えられず、コートの下から収納していた武器ケースを落下させながら昏倒した。
怪物の痙攣が収まるのを待って、ジルはその死骸に近付いていった。
「何なのこいつは?」
ジルは死骸を検分しながら洋館事件の折りに遭遇した『タイラント』とか言うアンブレラの怪物を思い出した。
その思考を遮るように突然起こった拍手にジルが振り返ると、弱々しい笑顔をみせたブラッドが立っていた。
「ブラッド。大丈夫なの?」
「お陰様でね」
『逃げ』と並ぶ特技である『死んだふり』で窮地を脱したブラッドは、足をふらつかせながらもジルの元に近寄ってくる。
「それより、ジル。あんたスゲェよぉ〜」
ジルは白濁色の粘液にまみれた自分の服と、異様に膨らんでいるブラッドのズボンの前の部分を見比べる。
「見てたわね・・・」
途端に真顔に戻ったジルは、やにわにブラッドに飛び掛かり、ヘッドロックをかませた。
「ジッ・・・ジルッ?」
突然のことに目を白黒させて苦しむブラッドのこめかみに、サムライエッジを押し当てるジル。
「いい?誰かに喋ったりしたら・・・殺すわよ」
苦しさの余り、声も出せないでいるブラッドは、ただ頷いて今後の忠誠を誓うしかなかった。
エントランスホールに入った2人はカウンターのコンピュータ端末機を使って最新の警備情報を手に入れる。
それにより得たロッカーの施錠番号を元に、S.T.A.R.S.執務室の鍵を入手した2人は階段へと急いだ。
階段を登り掛けた時、ジルは体調に違和感を覚えた。
「ジル・・・どうしたんだ?」
ジルの体調の変化にブラッドは慌てて肩を貸す。
「ごめん。もう限界が来たみたい・・・」
優れた防弾性と気密性を誇るレジーナ・スーツだったが、その反面、皮膚呼吸を妨げるという欠陥も併有していた。
そのため、特殊な訓練を積んだ者でも5時間、普通の女性なら安静にしていても30分が連続着用の限界とされていたのである。
市街から警察署まで戦いながら2時間、専用の訓練も積まずにここまで来れたジルは、むしろ流石と言うべきであった。
「それなら、そこの鑑識室に着替えがあるぜ」
ブラッドはポケットからロッカーのスペシャルキーを取り出しながら笑いかけた。
「へへっ。これで一個貸し、なっ・・・あぐっ・・・」
最後まで言い切らぬうちに、ブラッドの顔面にジルの右ストレートが炸裂していた。
昏倒したブラッドが意識を取り戻した時、ジルの服装は、ブルーも鮮やかなS.T.A.R.S.専用制服に替わっていた。
「・・・汚ねぇぞ、ジル」
「ふんっ。どうせ覗こうと思っていたくせに・・・いやらしい」
ジルが軽蔑しきった様な目でブラッドを見下ろす
「なんで、決めつけるんだよぉ」
図星を突かれたブラッドが真っ赤になって否定する。
「ともかく、これで貸し借り無しよ。いくわよ」
疲労を回復させたジルは足取りも軽やかに階段を駆け上がり始める。
「あっ、待てよ。ジル」
ブラッドは慌てて立ち上がると、ブルーのスパッツに覆われ、左右に躍動するジルのお尻を追って階段を上がっていった。
「レオン・・・お腹が痛いよぉ・・・」
敵の正体を掴むため、一刻も早く先を急ぎたいレオンであったが、幼いシェリーの手を引きながらでは、それもままならない。
かといって手を離して走り出せば、シェリーは直ぐにその場にしゃがみ込んでしまう。
その上、今度は体調不良を訴えかけてくる。
「全く・・・女の子って奴は・・・」
なんて手の掛かるものだろうとレオンはうんざりする。
レオンはラクーン市警察に配属が決まり、いよいよ出立前夜のこと、つきあい始めたばかりだった彼女との別れ話を思い出してしまう。
長距離恋愛を是としない彼女の意見を受け容れ、結局は破局してしまった短い恋愛。
童貞を捨てることは叶わなかったが、RPDへの赴任が遅れたお陰で、少なくとも今は生きている。
運命なんて分からないものだと考えながら、レオンはしゃがみ込んだシェリーの腹部をさすってやる。
ふとシェリーの額に手をやったレオンは、余りの高熱に驚いた。
「シェリー。凄い熱だ・・・」
シェリーの眼は虚ろになり、呼吸も荒くなっている。
「とにかくどこかに寝かさなくては」
レオンはシェリーを抱えると手近のドアを開けて中へ入り込んだ。
そこは警備員待機室であったらしく、運のいいことに仮眠用のベッドが備え付けられていた。
「お腹が・・・痛いよぉ・・・」
荒い呼吸の下からシェリーが途切れ途切れに訴えかけてくる。
「ここか?シェリー、しっかりしろ」
医学知識など殆ど無いに等しいレオンは、取り敢えず痛む腹部をさすってあげることくらいしか出来ない。
「・・・もっと・・・もっと下なの・・・」
シェリーの訴えに従い臍の下辺りに手のひらを移動させるレオン。
「違う・・・の・・・おしっこが・・・出るとこら辺・・・」
「なにぃっ」
いきなりの台詞にレオンは絶句してしまう。
「みせて見ろ・・・」
レオンは緊張に震える手でシェリーのキュロットスカートを下ろしてみる。
シェリーの履いていた、色気も何にもないお子様パンティーの、三角形の頂点付近が真っ赤に染まっているのを見てレオンは息を飲む。
12歳のシェリーに既に初潮が来ているのかどうかは知らないが、その赤色は明らかに血管から直接出ている鮮血であることはレオンにも判断できた。
「シェリー・・・」
おそるおそるパンティを下ろすレオン。
やがて現れたまだツルツルのぷっくらした恥丘、そして続いて現れた真一文字の縦溝。
哀れ、神聖不可侵であるはずのシェリーの秘密の花園は、既に不当な侵入者の手によって踏み荒らされていた。
ともかく裂傷だけでも治療しなければならないとレオンは周囲を見回す。
運良く救急スプレーを見つけたレオンは封を破って、ノズルをシェリーの股間に向けると内容液を噴射した。
消毒成分を含む外傷薬の他に、鎮痛効果を含有する薬液のお陰でシェリーの裂傷による疼痛だけは一応収まる。
「お前、いったい誰に・・・」
「わかんない・・・ゴミの一杯溜まってるとこに落ちて・・・その後・・・」
苦しげな呼吸をしながらシェリーは弱々しく首を振る。
「まさか・・・」
レオンは警察署の地下留置場で、情報に対する対価と称してエイダをバックから犯していたベン・ベルトリッチが、いきなり体を真っ二つにしながら変死した光景を思い出した。
二つに裂けたベンの体内から出てきた奇怪な生物・・・。
「シェリーもアレに寄生されたのか?」
とすれば一刻の猶予もない。
「シェリー。少しの間我慢しろよ」
涙を浮かべながら気丈に頷くシェリー。
レオンはシェリーの両足をMの字に開かせると、左手の人差し指と親指を使って、未発達の大陰唇を強引に広げる。
「はずかしいよぉ・・・」
シェリーが流石に顔を赤らめるがレオンの耳にはもう届いていなかった。
「こっ・・・これが・・・女の・・・」
生まれて初めて生の女性性器を目の当たりにしたレオンは、生唾を飲んで食い入るように見つめる。
レオンの眼の色に恐怖を感じたシェリーだったが、体の自由が利かない今、脚を閉じることもままならない。
小陰唇から指を挿入して、おそらくシェリーの子宮に巣くっている寄生虫を掻き出そうというレオンであったが、今の状態では膣道を傷つけてしまうおそれがある。
「しかたがない」
レオンは覚悟を決めると、ポルノムービーで仕込んだ知識を使い、シェリーの秘密の部分を舐め始めた。
「いやぁぁぁ〜ん。そんなとこ・・・」
羞恥の余り、身をよじってレオンの舌から逃れようとするシェリー。
「大丈夫。救急スプレーで消毒してるから」
シェリーの抗議を自分勝手に解釈したレオンは、更に激しく舌を動かし始める。
「はぁぁぁんん・・・はぁぁぁ〜・・・」
それに伴い、シェリーの喘ぎの音質も変化してきた。
「じ・・・自分でするより・・・気持ち・・・いい・・・あぁっ」
夜中に両親の夜の睦み合いを偶然盗み見てしまった日から、自慰行為はシェリーが独りぼっちの時の唯一の楽しみとなっていたのだ。
最初始めたばかりの頃、不思議なだけだった感覚も、今ではハッキリ快感として捉えることが出来るシェリーであった。
ソコが充分な潤いに満ちたことを確認したレオンは、ゆっくりと指を挿入してみる。
一瞬、ビクッと震えたシェリーの体にレオンは石化するが、意を決したように更に奥へ奥へと指を進めていった。
「あぁ〜ん、勝手に締め付けちゃうぅ〜・・・はずかしいよぉぉぉ」
大事な部分に侵入してくるレオンの指をはっきりと感じ取った膣道は、別の生き物のようにシェリーの意思に関係なく収縮を繰り返し、その度に可愛らしい肛門もひくついてしまう。
「シェリー。もっと体の力を抜いて」
「知らないもんっ」
シェリーは泣きそうになった顔を両手で覆い隠す。
「シェリー。ここか?この辺りか?」
レオンはデリカシーの欠片もない言葉を吐きながら、シェリーの体内を掻き回す。
「あぁっ・・・レオン・・・そこっ・・・アァァァーッ」
入り口周辺をまさぐるだけの幼いオナニーでは決して味わえなかった強烈な快感に、シェリーはたちまち登り詰めてしまう。
レオンの見当違いの指が、偶然シェリーのGスポットを捉え刺激した。
「あくぅぅぅ〜っ」
最大の泣き所を責められたシェリーは激しい痙攣に捕らわれ、背中を反らせたかと思うと、尿道口から小水を吹き上げた。
生まれて初めての快感に、失神したシェリーは、それでも時折体をひくつかせて無意識に余韻に浸っている。
「弱ったな・・・指じゃ届かないよ」
幾ら指より長いといってもデザートイーグルの銃身は余りにも太すぎる。
「しかたがないか・・・」
レオンは仕方がないといった風に肩をすくめると、もう1丁所持していたマグナムをズボンのジッパーから取り出した。
そしてベッドに腰掛けると、失神したままのシェリーを抱き上げ、その股間を自分の屹立したモノの真上に持っていった。
出来るだけシェリーの体に体重を掛けなくても済むことと、万が一、寄生虫が自分のモノに食いついた時に、一瞬でも早く抜けるようにと選択した対面座位であった。
シェリーの両脇を抱えたレオンは注意深く、彼女の膣口を自分のペニスに導き、ゆっくりと沈めていった。
ペニスの半ばまでがシェリーの体内に飲み込まれたと辺りで、先端が何かにつかえた。
「Dead end」
行き止まりを認めたレオンは、寄生虫を誘き出すように上下動を始めた。
その振動で失神していたシェリーが意識を取り戻す。
「あぁっ・・・パパがやってたのと同じ・・・」
○学校の性教育の授業では、こういう事は愛し合うゆえの行為と教えて貰ったシェリーは、教師の言う綺麗事を真面目に受け取っていた。
「レオン・・・あぁ、レオン」
誰からも愛されず、ずっと独りぼっちだったシェリーは、ようやく現れた『自分を愛してくれる男』を愛おしく思った。
そしてレオンの首筋に抱きつくと、自らも腰を使ってレオンの愛情に存分に応えた。
「俺っ・・・今、女の子とやってる。これで童貞ともおさらばだ」
次にクレアと再開した折りには色々と、と考えていたレオンは、童貞を捨てることによってようやくクレアと対等に立てたと充足感に満たされていた。
笑ったクレアの唇、剥き出しにした白い太股、走り去る後ろ姿のプリプリしたお尻・・・それらを脳裏に描いたレオンは一気に登り詰めた。
「クレアァァァーッ」
レオンは無意識に絶叫をあげて、分身の先端から熱いものを迸らせた。
※
数分後、ようやく呼吸を整えたレオンは、壁の方を向いて簡易ベッドに横たわったままのシェリーの様子がおかしいことに気がついた。
「おい、どうしたんだ」
呼びかけにも返事をしないシェリーを心配したレオンは、彼女の体を揺さぶった。
「おいって」
シェリーはレオンの手を冷たく振り払うと、ようやく口を開いた。
「あたし・・・クレアじゃないもん・・・」
レオンはシェリーの涙混じりの返事に、ようやく自分のしでかした大失敗に気付いたが既に手遅れであり、この先しばらくシェリーは口もきいてくれなかった。
レオンは自分の迂闊さを悔やんだが、彼が犯した失敗はそれだけでは無かった。
シェリー自身も知らなかったことであるが、彼女は本日・・・いわゆる危険日であったのだ。
※
同じ頃、再びラクーン市警察ブライアン・アイアンズ署長の手に落ちたクレアは、剥製処理室の台座の上に寝かされ、大の字に手足を縛り付けられていた。
ラージ・ローチの体液に汚れたクレアの体に、直接エチルアルコールをぶっかけて、消毒を行うアイアンズ署長。
「あぐぅぅぅっ・・・うぅっ・・・」
クレアの体中に出来た幾多の負傷箇所にアルコールが染みて、焼け付くような痛みに、猿轡を噛まされた口元から呻き声が漏れてしまう。
クレアの体から流れ落ちたアルコールは台座の溝を通って、四隅に開けられた穴から床の排水溝へと流れ出していく。
「フッフッフッ。痛いか?クリス・レッドフィールドの妹よ。しかし儂がクリスの奴から受けた痛みはこんなものでは無いぞ」
クレアは署長の目に狂気の光を読んで取る。
「儂の剥製作りの腕前は承知の上だな」
クレアは署長室で見せられた数々の動物の剥製を思い出す。
「今夜お前を剥製にして、馬鹿兄貴に送りつけてくれるわ」
今や完全に狂人と化したアイアンズは、舌なめずりをしながらメスやハサミなどの医療器具の他に、明らかに責め具と分かる怪しげな形をした器具をカウンターに並べ始めた。