靄が晴れるように段々とジル・バレンタインの意識が戻ってゆく。
自分のいる場所は狭い部屋…ベッドの上に横たわっている。
(何故?大広間にいたはずなのに…)
精神と肉体の半分がまだ覚醒していない。
壁際に寄りかかっていた男がゆっくりと歩み寄ってくるのをぼんやりと知覚する。
人前では片時もサングラスを外さないその男はアルバート・ウェスカー。
ウェスカーはベッドに腰掛けてジルに声をかける。
「気がついたか?ジル…」
半身を起こし、必死に頭を働かせるジル。
「ウェスカー…ここは?…みんなは?」
「ここは…まあ安全地帯ってとこかな。それと2つ目の質問だが…」
黙り込み下を向くウェスカー。
「ちょっと…嘘でしょ?…ねえ!」
ウェスカーは自分の肩を揺さぶるジルを静かに抱きしめて言う。
「S.T.A.R.S.は我々2名を残し、全滅した。」
「あのクリスが?…バリー、エンリコ、レベッカ…みんな死んだっていうの?…」
ジルは虚空を見ながら呆けたようにつぶやく。
(嘘よ…そんなの嘘…)
「だ、だって…何故、大広間で意識を失った私が生き残って彼らが死ななきゃならないわけ?」
ジルはウェスカーの腕の中から逃れ、彼を問いただした。
「なあ、ジル…君は選ばれたんだ。」
「え?」
「君は俺と一緒にこの地獄から生き延びることができるんだ。
S.T.A.R.S.にとっては不幸な出来事だった。だが…もう忘れることだ。」
「忘れるって…ちょっとウェスカー?」
「俺はアンブレラの連中の使い走りで終わる気なんかない。
今や俺は求めるもの全てを手にすることができるんだ。
わかるか?…ジル。君のことにしてもそうだ。
もう誰に気兼ねすることもない…俺は思うままにやる。
完全に生まれ変わったんだ。」
もはや話しの内容に脈絡がなくなってきている。
「ウェスカー…あなた、本当にウェスカーなの?」
ジルはウェスカーのサングラスの下の瞬きすらしないその眼を見つめながら、
自分が蛇に睨まれた蛙のように動けなくなっているのを自覚する。
ゆっくりとベッドの上を這いよってくるウェスカーが語りかけてくる。
「俺は君が欲しい…だから…今から君を俺のモノにする…」
ジルの鋭い平手がウェスカーの頬を打ちサングラスを飛ばす。
ウェスカーはそれには何の反応も示さぬまま右掌底を一閃させ、
ジルのアゴの先端を正確に打ち抜く。
(うぐっ…)
少し口の中を切り、軽い脳震盪をおこしたまま
身動きの取れない彼女にのしかかり、彼女の特殊繊維で出来た
S.T.A.R.S.のユニフォームをゆっくりと丁寧に脱がしてゆくウェスカー。
制服の下の彼女の瑞々しい素肌が徐々に晒されてゆく。
胸から腹にかけての贅肉など微塵もないそのライン。
そして女性らしくくびれた腰から丸みを帯びた尻、鍛え上げられ締まった太腿、脛を経て素足へと至る線。
やがて上下バイオレットの下着姿に剥かれるジル。
激しい訓練によってシェイプアップされ、ほどよく締まったその肢体は
男を悩殺してやまないはずだが、ウェスカーは相変わらずの無表情でことを進めてゆく。
ジルには薄々解っていた。
自分がモノとしてあつかわれていることを。
彼は自分を欲しているし、性欲を抱いているのかもしれないが、
ただそれだけのことだということも。
ウェスカーは両手をジルの胸のスポーツブラに伸ばすと
無造作に引きちぎり、ほどよく実った両の乳房を露にする。
ジルが顔をゆがめ、屈辱に身をよじるたびに乳房とその尖端の薄桃色の突起が揺れるが、
それはおそらく男の嗜虐心を煽るだけだったろう。
もっとも今のウェスカーにそんなものがあればの話だが。
やがてジルの下半身の最後の1枚にウェスカーの両手が伸びる。
(い、嫌…)
ジルも必死に抵抗しようとするがさっきの強烈な一撃の
ダメージで体がまだ思うように動かない。
できるのはただベッドの上をずり上がり、ウェスカーの指から逃げようとすることだけだった。
そんなジルの腰をウェスカーは難なく捕らえ、
スポーツショーツに手をかけるとゆっくりとずり下げてゆく。
ジルの締まった腹筋の下、ブルネットの陰毛が見え隠れし、彼女は脚を閉じて抵抗するが、
やがてウェスカーは面倒になったのか、両手でその下着をを難なく引き裂いてしまった。
一糸纏わぬジルは羞恥に頬を染めながら両手でかろうじて胸と下半身を隠し、
部屋の隅に置かれたベッドのさらにその隅へとにじり寄る。
そんなジルを傍目にウェスカーはベッドの脇に立ち、悠々と自分の服を脱ぎ始めた。
全裸になったウェスカーの下半身に隆々とそそり立つモノを見たジルは、
これから自分がされることに改めて戦慄を覚える。
それにしてもジルには目の前のウェスカーが本物のウェスカーとはとても信じられないのだ。
目の前のこの男の眼は本能のままに動く爬虫類にそっくりだと思う。
その爬虫類の眼を持つ男がジルの片方の足首を掴み、ベッドの中央に引き寄せた。
「ひっ…」
思わず声にならない声をあげてしまうジル。
ウェスカーは素早くジルを下に組み敷くと、その頬に唇を寄せ首筋からさらに下の方へと舌を這わせる。
ジルは大蛇の舌で舐られているような錯覚を覚え寒気を感じる。
肌に粟のような鳥肌が立つのがわかる。
ウェスカーの舌がジルの左胸を這いまわり、彼の左手はジルの右胸を襲う。
頂点の薄桃色の場所には触れないまま執拗にジルの豊かな両胸を弄ぶウェスカー。
ウェスカーの左手の中で存分に形を変えながらも、
未だ触れられていないその頂点が尖ってゆくのがジルにもわかる。
ジルの内部にも火がついたのか、肌に赤みが戻ってくる。
突然ウェスカーがジルの左乳首を噛む。
「…ん…んんっ…!」
声を出し、背筋を反らせて反応してしまうジル。
同時にウェスカーは左手の指先でジルの可憐な右のそこを転がしている。
「はあっ…はっ…ぁっ…」
眼を閉じたまま息を荒げることしかできないジル。
ウェスカーはジルの両乳房を寄せ、交互に舌で責め嬲る。
ジルの下腹部や太腿にウェスカーの怒張したものが当たっているが
その舌に翻弄されるジルにはもはや知覚できない。
ジルの意識の中で過去の記憶がフラッシュバックしている。
* * *
ハイスクールの親友がジルの腕の中で泣いている。
「あたし…彼のこと…信じてたのに…無理やり…あんなのって…」
ジルは彼女を優しく抱きしめささやく。
「大丈夫…私がついてるわ。そんなの、そう…犬に噛まれたようなものよ。」
(犬に噛まれた…か。我ながらなんて陳腐なセリフ…)
ジルはその男に今度ハイスクールで会ったら習いたての柔術で腕の一本もへし折ってやろうと思う。
* * *
デルタ訓練過程最後の夜を同僚の男の部屋で明かすジル。
あっという間に果てた男はジルに腕枕をしたまま高いびきだ。
(もうちょっと気がつく人だと思ってたんだけど…避妊具くらい自分で用意したら?)
彼女は幸せそうな男の寝顔を見ながら思う。
どうして男って生き物は一度寝たくらいで女を所有できると思うのだろうかと。
* * *
S.T.A.R.S.の選抜試験に臨むジル。
面接の直前、洗面所の壁に掛けられた鏡の中の自分と向かい合う。
(そう…自分は正義が成されることを信じている。いかなる悪に対しても…)
* * *
やがてジルの意識は彼女自身も忘れていた記憶の奥底に辿り着く。
小さなジルは毛布を頭までかぶって耳をふさいでいる。
酔って帰ってきた父が酒瓶を壁に叩きつける音。
父が母を叩き、母の倒れる音。
ジルの部屋のドアが開き、灯りがつく。
毛布から出て見上げるジルの眼に写る巨大な父の影。
黄色く濁ったその眼と手に持った皮ベルト。
眼を潤ませ体を震わせる彼女のただ一つの願い。
(私、いい子にするから…お願い…ぶたないで!)
* * *
現在のウェスカーは2つの本能にのみ従って行動している。
生存本能ともう一つは、今行っている種存本能によるものだ。
彼の舌がジルの胸から腹、そして臍の辺りまで這ってきたところで
ジルの様子に異変が起こる。
体を小さく震わせ、焦点の合わない眼でウェスカーに懇願するジル。
「お、お願い…何でもいうこと聞くから…ひどいこと…しないで…」
幼児期退行をおこしたかのようなジルにウェスカーが静かに語りかける。
「ひどいことなんかするはずないさ…大事な母体に対してな…」
実際彼が今行っていることは結合に都合の良いように
ジルの体を潤わせるという、ただそれだけのことだった。
ウェスカーは無抵抗のジルの両太腿を肩に抱えるようにして、
その間に顔をうずめる。
薄めの陰毛のさらにその下、ジルの女性そのものの部分に対しても
やはり舌でその周辺部から責めてゆく。
太腿から這ってきた舌がジルの彼女自身の縁をなぞり、逆の太腿へと逃げてゆく。
ジルは恐怖と背中合わせの快感にただ身を打ち震わせるばかりだった。
今はただこの嵐が通り過ぎることだけを願ってウェスカーの為すがままにされている。
突然ウェスカーの舌がジルの包皮の中の突起を襲う。
触れるか触れないかという微妙なタッチで数度舐り上げたかと思うと、
舌先で器用に核の部分を転がしにかかる。
「…ん…んっ…ああぁっ!…」
下半身に電流を流されたようなショックを受け、
いやいやをするように首を振り思わずずり上がって逃げようとするジルだが、
ウェスカーはジルの太腿をがっちり抱えて離さない。
そのウェスカーの舌がとうとうジルの秘裂を侵してゆく。
「っ…!」
ジルの息の詰まるような声が漏れる。
舌先でジルの内部の感触と蜜の味を愉しむウェスカー。
頃合もよしとみたのか、身を起こしジルの長く白い両脚を脇に抱え直すと、
自身の怒張でジルの秘裂をこじ開けようとする。
ウェスカーの硬く赤黒い尖端がジルの濃い肌色の唇の抵抗を押し分け、
そのまま貫こうとしている。
下半身を襲う疼痛にジルの全神経が覚醒し、その眼に再び光が宿る。
(何…どうなってるの?…こいつは…ウェスカー?)
「…ウェスカー!……この!」
ジルの右の一撃がウェスカーの顔面を襲うがその寸前、ウェスカーは左手でそれを受け
人並み外れたパワーでジルの右腕を捻り、ジルの身体ごとひっくり返す。
うつ伏せに押さえ込まれたジルは捻られた右腕の関節の激痛に顔をゆがめながらも
最後まで抵抗を諦めない。
ジルの柳腰を両手で掴み自分の下半身に引き寄せるウェスカー。
暴れるジルの膣口をウェスカーの尖端が幾度も撫で擦る。
(嫌…こんなの…絶対に…)
必死に逃れようとするジルだったがどうしてもウェスカーの腕の中から逃れられない。
ジルが一息ついて動きの止まったその瞬間、ウェスカーの巨大なモノが強引にジルの秘裂を押し入ってくる。
「…っあああアァ!」
ウェスカーのモノは容赦なくジルの内部を押し拡げ、そこに自身の形を刻み込んでゆく。
自分の意志に反してウェスカーを受け入れ締めつけるジルの秘所。
ジルはぎゅっと眼を閉じ奥歯を噛み締め、両手でシーツを掴みながらこの蹂躙に耐えている。
自身を包むジルの感触に満足したウェスカーは一つ大きく息をついてから、
ジルの腰を抱えたままゆっくりと動き出した。
ウェスカーは少しでも長く愉しみを味わいたいかのような緩慢な腰使いでジルを責めている。
体内を往復するその肉棒が自身の蜜にまみれているのを感じ、
ジルは自分の身体の生理を恨めしく思う。
「……っ……うん……んっ……」
ウェスカーに突かれる度に息を乱すジル。
下を向いても形の崩れない両の乳房も揺れる。
やがてジルの白い肌に霧を噴いたような汗が浮かび始めると、
うなじのあたりから一筋の汗が上気した肌の上を滑ってゆく。
(クリス…)
ジルは自分でも意外な名前を思い出したことに驚く。
体力だけがとりえのあの唐変木。
一度デートしてそれっきりご無沙汰だけれど、今はあの広い背中が無性に恋しい。
ジルの瞳から溢れた一滴の悔し涙が汗にまぎれてシーツを濡らす。
(クリス…助けて…)
ウェスカーの抽迭のピッチが速くなってゆく。
ジルの尻の柔肉がウェスカーの腰骨を弾きかえす。
「あっ……あんっ……うぅっ……」
無様に腰から突き上げられ息を荒げながらも、ジルはこの獣に絶頂に追いやられることをかろうじて拒否している。
逆にジルの秘裂とその襞はウェスカーをキリキリと締め上げ最高の快感を与え続ける。
「……オ……オオ……ジル…!」
思わず声を漏らすウェスカーの肉茎が硬度を増し、大きく脈打ち痙攣する。
ウェスカーの白い奔流がジルの胎内を激しく叩いてゆく。
眉根を寄せ、唇を噛みながらも屈辱の時間の過ぎるのをひたすら待つしかないジル。
ウェスカーが放つ大量の精液がジルの胎内を満たし、溢れ出してゆく。
ジルは汚辱にまみれながらも気丈さを失わずに静かにそれに耐えている。
(う…支配だの…屈服だのって…そんなもの!)
存分に思いを遂げたウェスカーがジルを開放すると、ジルはシーツに崩れ落ち大きく息をついた。
ウェスカーは手早く自分の服を着ると、部屋の扉から出てゆく前にジルを振り返って言った。
「私はやりのこした仕事を片付けてくる。何か言うことがあれば聞くが?」
「生まれ変わったらしいけど…次の奥さんには逃げられないようにね。」
「……?」
「悪いけど…クリスのほうがよっぽど良かったもの…」
いったいあのクリスがどんな顔をして自分を抱くのか想像するだけで可笑しくなる。
「……また後で迎えにくる。」
皮肉混じりの微笑と投げキッスを返したその手の中指を立ててウェスカーを見送るジル。
正直ファックはしばらく御免だけれど。
(そう…この程度のことで…ジル・バレンタインをモノにする?…笑わせないでよ…)
度々よろめきながらもウェスカーの残滓を拭い去り、服を身につける。
今度この監禁室の扉を開けるのがウェスカーなら自分は本当におしまいだろうと思う。
沈黙の中で時間だけが刻々と流れる。
突然扉のカギの開く音がしたかと思うと大男が部屋に躍りこんできた。
「ジル! 無事だったか!」
「クリス!」
完