慶長8年のこと。徳川家康が征夷大将軍になったという知らせは  
全国を揺るがした。それまでは一応は豊臣家が天下の主で、家康は  
その家臣筆頭として天下の采配を握っているという建前だったが、  
今やそれすらも完全に崩壊し、家康=天下へと変わったのだ。  
そしてその知らせは直ちに大坂にももたらされた。  
 
「なんということ・・・。これでは秀頼君の立場はどうなる!?」  
怒りに満ちた声をあげたのは大坂の幼主・秀頼の母淀殿であった。  
彼女は浅井長政とお市の方夫妻の長女にして、太閤の側室だった  
女である。かつての覇者・織田信長は伯父にあたる。  
「これは君臣の道を外した所行、断じて許すまじ!江戸征伐を!」  
吠えたのは大野主馬。淀君の乳母の子である。  
「されど・・・蜂須賀、細川、黒田らも江戸へ参勤したといいますぞ。今江戸と事を構えるは剣呑。とりあえず秀頼君が  
成人するまで待ち、その折に改めて将軍位について話を切り出せば・・あるいは秀頼公に譲位いたすやも知れませぬ」  
慎重な意見を述べたのは片桐且元であり、結局その場は片桐の慎重論で収まった。だが、無論淀君の家康への疑念と、何よりも天下は我がものとばかりに振る舞う家康への怒りは消えなかった。  
そしてその日の夜のこと。一人の男が淀君の寝所を訪ねていた。  
・・・・大野修理亮治長。主馬の弟にして、淀君の乳母子にあたる、  
豊臣家第一の側近であった。  
 
「修理亮でござる。ご母堂様のご無念をいくばくかでもお鎮めできる  
かと思い、かねてより取り寄せていた名酒をお持ちいたした」  
修理は酒を持って来ていた。入るがよい、という淀君の声を聞いて  
のち、修理は寝所へと足を踏み入れた。  
 そこには白い小袖に打ち掛け姿の淀君が机の上に書状を広げて、  
何やら文章を綴っていたが、どうにもうかくいかず、丸めた紙が2、  
3枚見られた。  
「おお、修理か。わざわざ妾のために酒を持って来てくれたのか」  
「ははっ。関東の所行に、心中穏やかならぬご様子でしたので」  
この修理という人は、淀君にとっては幼馴染みとでも言うべき存在で、  
なかなかに気の利く所がある美男であった。  
「これは、書状・・?」  
「うむ。気を紛らわそうと、若狭におる妹(お初の方)夫婦に  
文などしたためようと思うたが、やはりそうもいかぬ」  
淀君は相好を崩しながら筆を置いて修理と向かい合った。本来ならば  
淀君は既に眠りについている頃であり、すでに布団が敷かれている。  
淀君は布団の上に座り、修理と杯を交わた。  
「しかしそなた、何故妾がまだ起きてるとわかった?」  
「あなた様が童のころから我が母ともどもお仕えしているのです。  
‘いつものこと’でございます。心中、お察しいたしまする」  
修理は淀君がお茶々と言われた頃からの縁である。ゆえに、彼女の  
気持ちはすぐにわかった。今夜も、専横極まった家康の所行にきっと  
憤っているであろう事は容易に想像がついた。  
「そうじゃ。わが秀頼君こそが天下の采配を握るお方じゃ。それを  
大老の分際で天下を弄び、挙げ句忠義をつくした治部(三成)を誅し、  
挙げ句の果ては公方と?あの狸め・・・許せぬ・・・・」  
淀君はやがて酒もあってか修理に己の心情を吐露していた。これも  
毎度の事である。修理はそれを酒を交わしながら聞き手に徹する。  
「・・・・妾は悔しい」  
やがて淀君はそういいながら修理の胸元にもたれ掛かっていた。  
「・・・修理。お願いじゃ。妾を慰めてたも・・・」  
修理は無言のまま、淀君を布団の上に横たえた。  
 
修理は淀君の打ち掛けを引き下ろし、白無垢の小袖姿にした上で、  
淀君の唇を吸った。すると淀君はその舌をするりとのばし、修理の  
舌と絡め合わせた。そして、修理の手は淀君の懐にあり、その豊かに  
実った乳房を揉み始めた。  
「ん・・・んむぅ・・・・」  
やがて淀は甘い声をあげ始め、息も荒くなってきた。修理は唇を話し、  
今度は淀の耳元に口を近づけ囁いた。  
「なに、あの狸めも、そう易々と手は出せまい。ご案じなさり  
ますな。時がくるのを待つが上策。・・・・いまは某との閨を  
お楽しみくださいませ」  
「さ、されど修理・・・関東はこのま・・あっ、ああ・・・・」  
淀はなにか言おうとしたが、修理は彼女の耳に舌を這わせた。  
「いまは、何も考えず、某にお身体を預けなされませ」  
修理はさらに、淀の胸元に這わせた両手を彼女の下腹部に回した。そし  
て、彼女の背中や腰、尻を撫で始めた。なめらかな、何とも言いがた  
い魅力を持つ肢体であった。淀はたまらず声をあげた。  
「・・・あっ、ああっ。しゅ、修理・・・んんあぁ・・・・」  
修理は白無垢も脱がせて、淀を全裸にした。行灯に彼女の美しい  
裸体が露になった。肌はなめらかで美しく、白い肌が行為の予兆に  
よって興奮し、色づき始めていた。乳房も大きく豊かで、生前の太閤  
に抱かれていたためか、適度に熟れている。尻も豊かでたるみもなく、  
美しい事で知られた母を彷彿とさせた。だからこそ太閤も彼女を  
求めたのであろう。  
修理はその裸身に酔いしれながら、右手で胸を揉みしだき、左手で  
腰を撫で尻を掴んだ。そして、首筋を吸っていた。淀はというと、  
与えられる快感の波に悶えながら、修理を強く抱きしめていた。  
「あっ・・・・はあぁ・・ひあぁ・・・・ん、んんぁ」  
女の嬌声が閨に響く。  
 
「ふふ、どうですご母堂様?」  
修理が淀の乳房をもみ、内股に指を這わせながら囁く。  
「・・・・ああ。堪りませぬ。気持ちようて、妾・・・あッ」  
修理の指は内股から這い上がり淀の股間を  
押さえていた。恥毛はは揃えられ、大切な部分の周囲は綺麗に手入れ  
されている。そして、その秘所に堂々と、天下を睥睨するがごとく  
勃起している陰核を指で挟んでしごくと、たまらず声が大きくなる。  
「・・・ああッ、そ、そこ、あああ、ああ、んひぃ、ヒっ」  
「ふっ。いつもながら可愛らしいお声。無き殿下の閨でもかような  
声をあげられていたのですかな?」  
修理がいたずらっぽく囁いた。  
「そ、そんなこと・・・ああ・・・い、意地悪ぅ」  
息をますます荒くさせる淀であったが、確かに太閤によってある程  
度は仕込まれていた。しかし太閤は秀頼が生まれた頃には体力も落ち、  
あまり閨へは上がらなくなっていた。そして、その寂しさを埋めるが  
如く、このころから修理と関係を持つようになっており、実際に  
彼女の身体を「女体」として育てたのは彼である。  
修理は彼女がどうすると歓ぶかを知っている。再び接吻すると、今度は  
陰核を指で扱きつつ、さらに淫穴に指を入れて責め立てた。  
「ああっ、ああ・・・ヒっ、おおお・・・」  
身体を震わせ、淀は快感に酔いしれた。そろそろと判断した修理、  
「そろそろですかな?ご母堂さま」  
「・・・・・はぁ・・い、入れて・・・。妾を、抱いてたも・・・」  
淀の哀願を聞き届けた修理は己の屹立した一物を突き立てた。  
 
修理は己の槍を突き立てると、たくみに腰を動かし、自分の快感  
云々よりも、自分に身体を預け、手足を絡めている女主人のことを  
念頭において行為を進めて行った。  
腰の動きに加えて、左手で淀の乳房をこね、右手を彼女の腰や尻に  
まわして、たくみに愛撫を加えた。淀は動きがあるたびに修理の  
うでの中で甘い声をあげている。修理は右手をさらに動かし、淀の  
美しく張りのある尻の谷間に手を滑り込ませ、菊門を押さえた。  
そこは彼女の流した淫液によって濡れ、丁度修理からは死角になって  
いるものの、行灯の光を受けて卑猥な雰囲気を放っていた。  
そこへ修理は指を這わせ、菊門の上から愛撫を加えた。  
「・・・っ、ヒっ、はぁっ・・・!」  
さすがの淀もこれは予想していなかったらしく、思わず身体をビク  
つかせ、荒い息を漏らし、甲高い声をあげた。  
「・・・いかがです?それがしの槍働きは」  
再び修理が耳元で囁く。  
「ああ・・・!た、たまらぬ・・・・しゅ、修理・・・そなたが・・・  
妾を・・・・抱いて・・・あああ・・・嬉しい・・・」  
「ご母堂さま・・・ありがたきお言葉・・・」  
修理の動きや愛撫も一段と気のこもったものになる。  
「母堂・・・などと・・・のう、二人だけなのじゃ、茶々と・・・  
あああ・・・・呼んで・・・たも・・・」  
切れ切れに淀が訴えてくる。  
「お茶々さま・・・!」  
修理はその昔、まだ淀たち姉妹が幼い頃、修理たちの母が乳母であった  
ころのように彼女をその名で呼んだ。普段から淀は太閤遺児の母と  
して、また大坂の実質的な主として常に神経を張りつめ、誰にも弱みを  
みせることなく振る舞っていた。今回もその前も、家康の専横や兵乱に  
対して毅然とした態度であたり、家臣たちの前でも凛とした姿を見せ  
ていた。そのことを修理は案じ、また憐れに思って来た。  
しかし、彼女は自分の腕の中でだけは女として振る舞い、弱さや甘えも  
ありのままに吐露してくれている。それだけに、修理の淀への愛情は  
深まって行くものがあった。  
 
「茶々様・・・それがしの前でだけは、泣いても甘えても  
よいのですぞ・・・」  
「あああ・・・・しゅ、修理・・・」  
大坂方の当主からひとりの女へと戻った淀は、修理の腕の中益々  
息を荒くしていった。修理が愛撫を加えていた菊門に指をすっと  
押し込んだ。秘部から溢れ出て来た液体にのおかげで、すんなりと  
指は入った。  
「ああ、あヒぃぃッ」  
女の声がさらに響く。あとは一気に上りつめて行くだけである。  
修理も腰の動きや愛撫を一層盛んにし、また色っぽいうなじの  
ある首筋や、豊かに実った胸元に唇を這わせた。  
「あっ・・・あっ・・・あっ・・おおお・・」  
身体の殆どの敏感な箇所を同時に攻められてはさしもの淀もたまら  
ない。目を潤ませ、涎をたらしながら修理に抱きつくしかない。そう  
しているうちに、淀は絶頂に達そうとしていた。  
「・・しゅ、修理・・・妾・・・もはや、我慢できぬぅ・・・・  
い、いきそう・・・・あああ・・・はああぁ・・」  
修理は最後の仕上げにかかり、一気に攻め立てた。  
「あああ・・・あああ!わ、妾・・・いけり・・・・ああ、ああ、  
あひいぃぃ〜っ!!」  
淀が絶頂に達したのを見届けると、修理もまた、絶頂に達した。  
しばらくは荒く息を切らせていた淀であっらが、修理の胸に頬をよせ  
しばらくすると、うとうととし出し、ようやく眠りについたのだった。  
修理は妖艶さとあどけなさを兼ね備えたその寝顔を見とどけて、  
ようやく下城していったのだった。  
 
 
そして翌日  
「家康の将軍就任は断じて許せぬ・・・許せぬが、しばらくは様子を  
みるしかないであろう。しかし、もし関東が秀頼君に害意これ  
あるときは・・・・修理!そなたが将兵を集め、指揮するのじゃ。  
・・・・よいな!」  
「御意」  
淀のこの一言で当面の対応がきまった。評定に集まっていた速水甲斐、  
織田有楽、片桐市正ら諸将も、その毅然とした態度に、腹の存念は  
ともかく、威儀を正した。しかし、このとき淀と修理の交わされた  
視線が一瞬だけ男女のものとなったのに気づいた者はいなかった。  
 
おわり  
 

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