京都壬生・前川邸・・・
副長室の文机の前で新撰組副長の土方が執務を行っていた・・・。
蛤御門の変以来、京都の治安は落ち着くかに思えたが、近頃不逞浪士の活動が再び
活発になってきている。至急、対策の建白書を幕府に提出する為、土方は案を練って
いた・・・。
ドタドタドタ・・・、廊下の足音が響く・・・。
(あの足音は島田か・・・、あいつぁ、まったく繊細さってものがカケラもねぇ・・・)
足音は、土方の部屋の前でピタっと止まった。
「副長・・・」
「入れ・・・」
障子がガラッと開いて、監察方の島田が入ってきた。
「何だ?・・・」
土方がぶっきらぼうに問いかけた。
「寺田屋のおりょうを捕らえました。今、蔵の中に縛り上げています」
「勝手に引っ張って来ちまったんじゃねえだろうな?・・・」
いくら新撰組でも、何の容疑もない婦女子を勝手に引っ張ってくることは出来ない。
それなりの嫌疑が必要なのである。
「大丈夫です。長州者の止まっている宿から出て来て、ずっと後をつけていったところ
やっこさん、途中で手紙を落としまして、その手紙を山崎が拾い上げました」
島田が折りたたまれた手紙を土方に差し出した。手紙は案の定、長州の桂小五郎から
坂本龍馬への連絡の手紙だった。
土方は手紙を読み上げると、ニヤッと笑いながら声を出した。
「こいつぁ面白ぇや、すぐ蔵まで行く・・・」
蒸し暑さとほこりが充満する蔵の中心に、一人の女が腕を高く上げて吊るされていた。
女は湯文字の上半身を脱がされ、豊満な胸をさらけ出している。下半身は力なく崩れ
裾から肉付きのよい太股がはみ出していた。腰から下の大事な部分だけがかろうじて
帯を締めた湯文字によって隠されている。
女の名前はおりょう。言わずと知れた幕末の英雄、坂本龍馬の愛人である。
「ご苦労!・・・」
突然、蔵の中に大きな声を響かせて、土方が入ってきた。
おりょうの廻りで休憩していた隊士たちが慌てて立ちあがって、土方に礼をした。
「やっこさん、随分と参っちまってるじゃねぇか。お前ぇら何をしたんだ?・・・」
土方は傍らの新参者の隊士に問いかけた。
「はいっ・・・、なかなか坂本の居場所を吐かないので、竹刀でぶっ叩いて、
気絶したら水をぶっかけましたっ!・・・」
隊士は得意げに答えた。
「ばかやろうっ!!・・・、女を堕とすにゃあな、それなりのやり方ってぇもんがあるんだっ!」
返答した隊士に向かって、土方は怒鳴り上げた。いきなりの土方の怒声に、隊士は
すっかり萎縮してしまった。
「お前ぇら、もういい。外回りに出な・・・」
隊士達はすごすごと蔵を出てしまった。蔵には土方とおりょうだけが残された。
土方は吊り上げられたおりょうの目の前に立った。
町娘の形に結った髪はほつれて頬にぺっとりと貼りついていた。あごの先から、
玉のような水のしずくが落ち、ふくよかな胸にしたたり落ちた。先程の拷問で隊士に
かけられた水は、蔵の中の蒸し暑さのせいで、ほとんど乾いているようだった。それとも、
張りのあるおりょうの肌が水を弾いてしまったのかも知れない。おりょうの滑らかな肌には
わずかにぽつぽつと水滴が浮かんでいるだけであった。
蔵の上部には、小さな窓が開いていた。そこから、斜めに眩しい光が差しこみ、おりょうの
髪と張りのある肌をキラキラと輝かせていた。
土方はうなだれていたおりょうの頬をぐいっと掴んで、引き上げた。
(・・・ほう・・・)
つぶらで大きな瞳が、土方を睨んでいた。
新撰組の土方歳三と言えば、池田屋事件以来、京都では泣く子も黙る鬼副長として
知らない者はいない。今の京都で自分を睨みつけるとは、よっぽど肝っ玉の座った女だ、
と土方は妙に関心した。その関心が、土方を微笑ませた。
歌舞伎役者にも引けを取らないと祇園や島原で噂された微笑みがおりょうを捕らえた。
おりょうは、視線が交わされた瞬間わずかに身体をびくつかせ、顔を背けた。
土方は、その顔を再び強引に正面に向かせた。
「さすがは、天下の浪人坂本龍馬の愛人、おりょうだ。こりゃあ、かなりのべっぴんさん
じゃねぇか・・・」
まるで村祭りで女でも引っ掛けたような調子で、土方はおりょうに語りかけた。
おりょうの顔は、頬を土方の手に掴まれてわずかにゆがんでいる。唇は肉付きのよい
身体と同じように、ぽってりと厚く、牡丹の花のように赤かった。
その、おりょうの口から、
「触るなっ!幕府の犬がっっ!!」
と、美しさとは正反対の激しい言葉が飛び出した。
「別に、取って食おうなんて思っちゃいねえよ」
土方はますます顔をほころばせながら言った。
「殺せっ!・・・、早く殺してっっ!!」
おりょうはまったく聞く耳を持っていなかった。
土方は困ったような顔をして、おりょうの顔に近づき、
「だから言ったろう、別に取って食うわけじゃねぇって・・・。ただ、お前ぇさんにちょっと
聞きたい事が・・・」
と言い終わる寸前・・・、
べッッ!
土方の顔におりょうの唾が引っかかった・・・。
土方は、興ざめしたように顔を離し、懐から懐紙を取り出してゆっくりと顔を拭いた。
そして、今までとは明らかに異なる冷たい微笑みを浮かべながら、
「嫌いじゃないぜ・・・、お前ぇさんみたいな鼻っ柱の強えぇ女」
そう言うが早いか、グッ!と激しくおりょうの頬を掴み、唇に吸いついた。
「・・・むうッ!、・・・むぐぐっっ!・・・」
土方の薄い唇が、おりょうの肉厚な唇をこじ開けていった。
わずかに開いた唇の隙間に、土方は舌を差し入れた。
おりょうの口の中に侵入するまでは、土方の舌は強引だった。しかし、一端侵入すると、
優しく、ゆっくりと口の中をほぐし、掻き回していった。
「・・・むぅあぁッ、・・・ッぷッ!・・・」
舌は、歯の裏を舐め、上あごを突つき、じっくりと口の中で暴れまわる。
その間、おりょうの舌は、おびえたように口の奥に引っ込んでいた。
土方の舌は、そのおりょうの舌に狙いをさだめた。
「・・・むぷッッ!、・・・んぷっっ!」
おりょうの舌に、ねっとりと土方の舌が絡みついた。おりょうの舌は必死で逃げようと
口の中でもがいていた。しかし、土方の舌はそれを許さなかった。
土方はおりょうの舌を絡めとると、自分の口の中に吸い込んだ。
「・・・んぷぅぁッッ!、んんっっ!・・・」
おりょうの身体からゆっくりと力が抜けていった。
おりょうは全てをあきらめたように、土方に舌を吸われていた。
ありょうの舌は、土方の歯に甘く噛まれ、舌先で弄ばれた。
やがて、土方はおりょうの舌を開放すると、口の中に唾を流し込んだ。
土方の唇は静かに離れ、続いておりょうの喉がコクリ・・・と動いた。