1685年、秋、オランダ、ハーグ―――
ビネンホフ宮殿の自室にメアリは引きこもっていた。
ベッドの中に伏して、全く動こうとしない。
その顔は涙でぐちゃぐちゃだった。
ウィレムと結婚してから8年が過ぎようとしていた。
メアリは23歳になっていた。
もうあの頃のような夢見る少女ではない。
辛すぎる現実を、あまりにも多く見せられてきたからだ。
オランダに嫁いできてから、メアリはウィレムを好きになろうと、愛そうと努力した。
メアリが大好きな物語の中で、妻は夫を愛するものとして描かれていたからだ。
苦痛だった床入りも我慢した。
何度も夜を共にすると、その行為も苦痛ではなくなっていた。
オランダに嫁いで数週間後、メアリは懐妊した。
メアリの懐妊の報せを聞いたウィレムは喜んだ。
メアリは自分が妊娠したことで、無表情で冷たいと感じていたウィレムが
喜んでくれたことが嬉しかった。
しかし、その2ヵ月後、メアリは流産した。
そのときは、初めての妊娠であったし、まだまだ望みを抱いていたので、
特に気にはしなかった。
けれども、メアリは流産を繰り返した。
何度妊娠しても、流産してしまう。
挙句の果てには、妊娠すらしなくなってしまった。
産婆や医師たちは、メアリに子を宿す能力が無いと言った。
父親のジェイムズから受け継いだ梅毒が原因だとか、2度目の妊娠のときに冒された
マラリア熱のせいだなどと告げられたが、そんなことはメアリにとってはどうでもよかった。
子を産むことができないという事実が重くメアリにのしかかった。
流産を繰り返すうちに、メアリは次第に病気がちになっていった。
ベッドで寝込む日が続いた。
一時は瀕死の状態にもなった。
その頃からだった。
ウィレムがメアリに全く何の関心も払わなくなったのは。
1年の半分は戦争に赴き、それ以外の時期でも朝早くから夜遅くまで、
仕事だといってウィレムは帰ってこなかった。
公務で行動を共にするときを除けば、メアリがウィレムと顔を合わすことはほとんど無かった。
メアリは戸惑いを隠せなかった。
読書や裁縫、カード遊び、散歩などをして、無気力な毎日を過ごすだけだった。
ある日、イングランドから友人のフランシス=アプスリーの手紙が届いた。
そこには心優しい男と結婚し、子供に恵まれた友人の生活が描かれていた。
メアリは羨ましくて仕方がなかった。
私も子供が欲しい。ウィレムとの子供が欲しい。
子供を宿せば、冷たいウィレムも自分に振り向いてくれるのではないか。
でも、一人では子供を産めない。
ウィレムが夜に部屋に来てくれないと、子供は出来ない。
メアリは孤独だった。
最近、メアリに驚愕の事実を伝える者がいた。
ウィレムがある女性と長い間情事を重ねているという。
しかも、その女性とは、メアリの女官の一人であるエリザベス=ヴィリアーズだという。
初め、メアリはそれを信じようとはしなかった。
けれども、ウィレムの情事は女官や下僕たちの間では周知の事実となっているらしい。
知らないのはメアリだけだった。
女官の一人、レディ・トレローニーに促されて、メアリは証拠を得ようとした。
ウィレムを騙すような行為をしたくはなかったが、
真実を知りたいという気持ちのほうが強かった。
3日前の夜遅く、メアリは一度寝たふりをして、後で自室を抜け出し、
エリザベスの部屋へと続く階段の影に身を隠した。
慎重に階段を上る足音。
こっそりと階上を見ると、蝋燭を持ったウィレムの背中がそのままエリザベスの
部屋に向かうのが見えた。
「ウィレム!」
メアリは何も考えずに夫の名を呼んでいた。
弾かれたようにウィレムは妻の声の方に振り向いた。
その顔は蒼白だった。
「…本当なの?ねえ…貴方、エリザベスと…」
無言でウィレムがメアリのもとに近づいてくる。
メアリは恐怖で何も言えなくなってしまった。
身体がガタガタと震えだす。
ウィレムの顔は、メアリが今まで見てきた中で、最も恐ろしいものだった。
「…何をしている」
ウィレムが地底から響くような声で問う。
「こんなところで何をしている!!」
大声でウィレムがメアリを怒鳴りつけた。怒りの表情は明らかだった。
悪魔のような形相でメアリを睨みつけている。
「あ…、私…」
メアリは必死で声を振り絞ったが、それ以上は言葉が続かなかった。
ウィレムの怒りに圧倒されてしまって、思考が麻痺してしまった。
「証拠など掴んで楽しいか?見損なったぞ、メアリ!
よほど私のことを信頼していないようだな。
おまえのような女を妻にしたことを恥ずかしく思うぞ!!」
大声でメアリをなじって、ウィレムはエリザベスの部屋へと消えた。
メアリは腰が抜けてしまったかのように、その場に座り込んだ。
放心状態だったが、次第に涙があふれてくる。
自分の部屋に戻り、ベッドの中でメアリは泣いた。
忘れたいと思っても忘れられない。涙が止まらない。
今まで生きてくるための拠り所としていた、オラニエ公妃としてのプライドも
ズタズタだった。
ウィレムに自分の存在を否定された。
涙を流せば流すほど、メアリは実感した。
―――私はウィレムを愛している。
だからこんなにも悲しい。だからこんなにも辛い。
メアリは今まで、ウィレムに対する自分の感情が何であるのか認識できなかった。
彼を愛そうと努力はしたが、本当に愛しているかどうかは
メアリ自身にも分からなかった。
しかし、今、ウィレムは他の女と情事を重ね、メアリに罵声を浴びせかけた。
皮肉にも、メアリはそのことでウィレムへの気持ちを確信した。
3日間、メアリは自室に閉じこもり、公に姿を現そうとはしなかった。
扉を叩く音がする。
「公妃様、私です。アン=ベンティンクです。ウィレム様から伝言を預かりました」
女官の一人、アン=ベンティンクの声だ。
アン=ベンティンクは、エリザベス=ヴィリアーズの妹だが、ウィレムの腹心である
ハンス=ウィレム=ベンティンクと結婚していた。
メアリはエリザベスのことは憎いと思っていたが、アンとは良い友人だった。
「扉は開いています、アン」
「失礼します」
アンが部屋に入り、メアリのもとへとやって来る。
「まあ…公妃様…」
メアリの涙で乱れた顔を見たアンは、言葉を失った。
「少しの間、お待ちください」
そう言い残し、アンは走って部屋を出て行った。
しばらくして、柔らかそうな綿布と、水の入ったデルフト焼の陶器を抱えて戻ってきた。
「公妃様、ウィレム様が書斎に来るように仰っておりました。
さあ、お顔を拭いてさしあげます。このままでは美しいお顔が台無しです」
水で濡らした綿布で、アンはメアリの顔を拭う。
「ありがとう、アン。…ウィレムは…怒っていましたか?」
「いいえ、公妃様。早く公妃様に会いたいと仰っていました」
「そうですか…。わかりました。参りましょう」
ウィレムが呼んでいる、そのことがメアリに動く力を与えた。
ベッドから離れ、オレンジ色のドレスを整える。
アンを伴って自室を出ると、メアリはウィレムがいる書斎へと向かった。
「ウィレム様、公妃様がいらっしゃいました」
「入れ」
書斎の中から聞こえてくるウィレムの声にメアリは身体を震わせた。
書斎に入ると、窓を背にしてウィレムが静かに立っていた。
「御苦労だった、アン。下がっていいぞ」
お辞儀をして書斎を出て行くアンを確認すると、ウィレムは自ら扉を閉め、
内側から鍵をかけた。
書斎にはウィレムとメアリ、二人だけだった。
「そこに座れ」
ウィレムに命令され、為す術もなく傍にあったソファにメアリは腰掛けた。
何を言えばいいのかわからず、メアリは黙ってうつむくしかなかった。
「何故あのようなことをした。私が他の女のもとへ通っているとわかっても、
おまえには何の益もないだろう」
ウィレムの質問はどこかズレている、メアリはそう感じた。
ドレスを握り締めて何も答えようとはしないメアリを見て、ウィレムは苛立たしげに
再び問うた。
「…では、質問を変えよう。誰から聞いた?誰にそそのかされた?
執事のコヴェルか?それとも、あのでしゃばりなレディ・トレローニーか?」
「そ、そんなことは問題ではありません!」
うつむいたまま、震える声で、しかしながらきっぱりとメアリは言い切った。
意図していなかったメアリの反撃に虚をつかれたウィレムは、
迸るようにあふれるメアリの感情的な言葉を止めることができなかった。
「どうして…どうしてあんなことをしたか、ですって?…あ、貴方こそ…どうして…
どうしてエリザベスなの?私では駄目なの?私のどこがいけないの?
子供を産めないから?どうして私と結婚したの?
イングランドの王座が目的なのでしょう?
それだけなのでしょう?それだけなのでしょう?!」
最後はほとんど言葉にならなかった。涙が溢れてメアリの瞳から流れ落ちる。
妻の涙を見て動揺したのか、ウィレムは困惑の表情を浮かべた。
「驚いたな…メアリ。おまえがそれほどまでに私とエリザベスのことを気にかけるとは。
このようなことは、おまえが育ったイングランドの宮廷では日常茶飯事だろう。
おまえの父親や伯父が良い例だ」
「ごめんなさい…でも…私は…貴方の妻です。私は…」
「メアリ」
ウィレムはメアリの言葉を遮って、メアリの隣に腰掛け、彼女の手をとった。
「おまえはまだ子供だな。もっと広い視野を持て。
私たちの仲を引き裂こうとしている奴等がいる。
私たちの不仲を煽って、おまえの父親と秘密裏に連絡を取っている者がいる。
知らないのか、メアリ。今年の春、イングランドの王位に就いたおまえの父親が、
おまえを私と離婚させ、新たにカトリックの男と再婚させる陰謀を図っていることを。
そのようなことはあってはならない。
ヨーロッパにおけるプロテスタントとカトリックの勢力均衡が崩れてしまう」
違う。私はそんなことが聞きたいんじゃない。
メアリは心の中で叫んだ。
「ウィレム…私…」
「何だ」
「私、貴方のことを愛しています。利用されるのは構いません。
貴方のためなら、何でもするつもりです。でも…ウィレムは…
ウィレムは私のこと、嫌いなの?」
涙をいっぱいに溜めて、ウィレムを見つめるブルーグレイの瞳。
ウィレムは心底驚いた表情をしていたが、途端に笑い出した。
今度はメアリが驚く番だった。
「メアリ、本当におまえには驚かされるよ。そんなことを気にしていたのか」
「私にとっては大切なことです!」
「ああ、すまない。しかし、それは杞憂だ。私はおまえのことが気に入ったから
結婚した。その気持ちは今も変わっていない」
「それなら、どうして私に会いに来てくれないの?」
「公務で忙しいのだ。わかってくれ、メアリ。ヨーロッパにおけるプロテスタント信仰を
護ること、それは神から与えられた私の義務だ。
私はその義務を果たさねばならん」
「エリザベスとは会う時間があるのね」
そう言った後で、メアリは後悔した。
強烈な皮肉がウィレムの気分を害したのではないかと恐れたからだ。
しかし、予想に反してウィレムは微笑んでいた。
普段からめったに笑うことがないウィレムの微笑みは、奇妙ではあったが、
今のメアリの心を慰めるには十分すぎるほどに効果があった。
ソファに座ったまま、ウィレムはメアリを抱き寄せて信じられないくらいに優しいキスをした。
「すまなかった、メアリ。でもこのことだけは忘れないでくれ。
私が結婚したのはおまえだ。そして、私が愛しているのもおまえだ」
自分が望んでいた言葉を、やっと夫から言ってもらえた。
メアリは嗚咽を漏らしながらウィレムの胸に顔を埋めた。
もうエリザベスのことはどうでもよくなっていた。
「…赤ちゃんが欲しいの。私…まだ諦めたわけじゃない。
ウィレムとの赤ちゃん…欲しいよぉ…」
ウィレムの腕の中でしゃくり上げながら思いを吐露するメアリ。
妻の背中を撫でていたウィレムは、静かな声で囁いた。
「今すぐ抱いてやろうか」
夫の予想外の言葉に、メアリは恥じらいで真っ赤に染まった顔を夫の方に向けた。
「私はそんなつもりで言ったのでは…。そ、それに、こんなに明るい時間に…。
神が…神が見ておいでです…」
「妻を愛し、子を産み育てることは、神が望まれたことではないか。
もし、それが神のご意思に逆らうというのならば、明日から毎日一緒に教会へ礼拝に行こう、メアリ」
「さっき、公務で忙しいって…んっ」
恥じらいの言葉を紡ぐメアリの唇を無理矢理な口付けで塞ぐと、
そのままウィレムは彼女をソファに押し倒した。
久方ぶりの夫の濃厚なキスにメアリは必死で夫の身体にしがみつき、無我夢中でキスを返した。
欲情を煽り立てるような口内運動で、メアリの身体はすっかり火照ってしまった。
顔を離し、熱い吐息とともにウィレムが問いかけてくる。
「どうする?」
メアリは瞳を潤ませてウィレムを見上げた。
「…ずるい」
ウィレムが、メアリの白いレースに彩られたドレスの胸元を力任せに引き下げると、
大きくて形の良い胸がブルンとこぼれ落ちる。
そのままウィレムはメアリの胸の谷間に顔を埋め、両手でその柔らかな感触を楽しみ始めた。
「はぁ…あ…ぁ」
うっとりした表情で、メアリは為されるがままに快感に身を委ねていた。
久しぶりに夫に抱いてもらえることが、メアリの欲情をさらに掻きたてていた。
ちゅるちゅると、故意に音をたててウィレムがメアリの乳首を吸い上げ、
唾液を塗りたくるように舌で転がす。
「あんっ!」
メアリはビクンと背中を反らせながら、もっと吸ってと言わんばかりに
ウィレムの顔を自らの乳房に押し付けた。
「ん、んふっ…ぁあ…ん」
耐えられず、喘ぎ声を漏らし続けるメアリの胸からウィレムが顔を離すと、
すでに硬くなっていた桃色の乳首が、唾液で濡れててらてらと光っていた。
ウィレムがメアリのドレスの裾をたくし上げる。
オレンジ色のドレスと白いペチコートの中から、さらに真っ白な太ももと尻が露わになった。
メアリがソファの肘掛に背を預け、ウィレムに導かれるまま大きく股を開くと、
秘部は既に十分すぎるほどに潤っており、窓から差し込む光のおかげで
愛液がとろりと滴っているのが一目でわかるほどだった。
ウィレムはメアリの膣の中に指を一本差し込み、中をかき混ぜ始めた。
「あぁん!ん、んん…ぁあっ」
メアリの喘ぎ声に合わせて、秘部もぬちゃぬちゃと音を立てる。
ウィレムがもう一本指を増やすと、じゅぷぷっという水音とともにメアリの膣から愛液が溢れた。
「ふぁっ…あ、あはぁ…もっとぉ…」
腰をくねらせながら、ウィレムの指の動きに応じるメアリ。
正直、夫婦の営みでこれほどまでに感じてしまうのは初めてではないだろうかと、
戸惑うと同時にメアリは不安だった。
全くの無言でメアリの秘部を指で掻き回し、事を進めるウィレム。
そんなウィレムに比べて、自分は淫らに乱れてしまい、二人のその差に急に不安になったのだ。
ウィレムにも気持ちよくなって欲しい。
それにもう、指だけでは我慢できない。
欲情に急かされたメアリは、ウィレムの顔を見つめて口走っていた。
「あぁ…ん、指じゃ、なくっ…て」
「何だ」
あくまで無表情で応じるウィレム。
メアリは我慢できなかった。
「お願いです…くださいっ…!」
「何をだ…これか?」
そう言うと、ウィレムはメアリの手を引いて起き上がらせ、そのまま彼女の手を自らの股間に導いた。
メアリの手がズボン越しに十分に勃起した夫のペニスに触れる。
夫も欲情してくれているという安堵感と興奮で、メアリは叫んだ。
「ああっ!それですっ!!」
「では、舐めろ」
「えッ?」
「これを舐めろと言っている」
突然の夫の言葉に、狼狽を隠せないメアリ。
そんな妻の前で、ウィレムは手際よく自らズボンを下ろした。
勢いよく、大きく勃起したペニスが姿を現す。
「で、でも…」
先ほどまでの乱れ様はどこに行ったのか、
メアリはうろたえながらウィレムの股間から視線をそらした。
メアリにとって、成人男性の生殖器を明るい場所で見るのは初めてだったのだ。
ましてやそれを舐めることは、メアリの想像を超えていた。
「何でもすると言ったな。嫌ならばよいのだが」
ふと、ウィレムの瞳に冷たい光が宿る。
「はああぁんん!し、しますッ!…何でも…ウィレムが喜ぶなら…っ」
メアリは耐えられなくなって、ウィレムにしがみついた。
嫌われたくなかった。
ソファに腰掛けたウィレムの股間に、メアリはひざまずいて恐る恐る顔を近づけた。
初めて見る勃起した男性器は、不思議な形をしている。
まじまじとペニスを見つめるメアリに、ウィレムの苛立たしげな声が聞こえた。
「何をしている。早く舐めろ」
「は、はい…」
夫に命令され、ギュッと目を閉じてメアリがペニスを舐めた瞬間、
ビクッとペニスが反応し、メアリはびっくりして顔を離した。
「だ、大丈夫ですか?」
「ああ…大丈夫だ。続けろ」
ぺろぺろと、犬のようにメアリはウィレムのペニスを舐め続けた。
頭上でウィレムのため息が聞こえる。
「メアリ…玉のほうも…触ってくれ」
明らかに熱にうかされた夫の声色に、メアリは胸がキュッと締め付けられる感覚を抱いた。
玉とはこのことだろうかと疑問に思いながら、メアリはペニスを舐めながら、
その下にある睾丸にそっと触れた。
すると、再びビクッとウィレムのペニスが反応し、その先端から粘液が零れ落ちる。
そのまま睾丸を手で包み込むようにして触りながら、メアリが舐め続けていると、
ウィレムが再び命令を下した。
「口に含め」
「え?口に…これを入れるのですか?」
「そうだ」
こんなに大きいものが口の中に全部入るわけが無いとメアリは思ったが、
今はウィレムに逆らう気持ちは全く無かった。
大きく口を開けて、メアリはウィレムの硬く、大きくなった男性器を飲み込んだ。
何とも言えない、ツンとした生臭い匂いと味がメアリの口内を満たす。
「歯を当てるなよ…そうだ…舐めながら、口を上下させろ」
ウィレムに言われたとおり、メアリは舌をペニスに絡ませ、それを吸うようにして口を上下させた。
口の中はウィレムのモノでいっぱいで、正直、メアリは息苦しかった。
「ああ…いいぞ、メアリ…っ」
愉悦に満ちたウィレムの声にメアリの下腹部は疼き、内股を愛液が滴っていくのを感じた。
ウィレムが喜んでくれている。
メアリは嬉しくて嬉しくて、必死でウィレムのために奉仕した。
ペニスを口に含みながら、そっとメアリが視線を上に向けると、
ウィレムはメアリが今まで見たことのない表情をしていた。
瞳を閉じて、快感に耐えるように口を開けて震えている。
ふと、ウィレムが目を開けると、メアリと視線が合った。
「あぁ…メアリ…今度は胸を使ってくれ」
じゅるっ、と唾液をこぼしながらメアリがウィレムの性器から口を離すと、
自ら両手で乳房を寄せ上げてみせた。
「はあ…っ、どうすれば…」
「胸で挟んで…そう…」
「ん、あぁ…」
メアリが白い乳房の間にウィレムのモノを挟むと、柔らかで大きな乳房の間からその先端だけが頭を出した。
先ほどまで口に含んでいたため、メアリの唾液とウィレム自身の先走り汁のおかげで、
ぬちゃりと音をたてながらメアリの胸の中をペニスが上下した。
メアリは感じやすい乳房に、夫の熱いモノを挟み、さらに、自分がこんな明るい時間帯に
すごくいやらしいことをしているという恥ずかしい思いも相まって、快感の吐息を漏らす。
メアリはウィレムのペニスを掴むと、自分の乳首にこすりつけた。
「はぁああんッ!!」
「くッ!」
堪らずウィレムも声をあげる。
妻の痴態に興奮したウィレムは、自ら腰を浮かし乳房に挟まれたペニスをメアリの顔にぶつけた。
すると、メアリは必死で舌を伸ばしてそれを舐めようとする。
ウィレムは我慢できなくなって、浮かした腰をそのまま細かく動かした。
「あんっ、んっ、んあっ!」
「くうっ…メアリっ、出る…ッ!!」
ドピュッ!びしゃっ!どろっ…
「ひぁ…」
メアリの上気した顔にウィレムの精液が飛び散った。
ビクビクと名残惜しげに痙攣するウィレムのペニスを、自らの両手で持ち上げた乳房で挟み、
呆然としているメアリの顔から白い精液が滴り落ちる。
とてつもなく卑猥な光景を目の当たりにし、射精した直後にも関わらず、
ウィレムのモノは再びメアリの胸の中で勃起した。
「メアリ、後ろを向いて尻をこちらに向けろ」
ウィレムが命令すると、未だ茫然自失の状態のままメアリはゆっくりとソファにしがみつき、
自らドレスとペチコートをたくし上げて、露わになった尻をウィレムに向かって突き出した。
初めてのフェラチオで興奮しまくっていたのか、メアリの秘部はぐちょぐちょに濡れており、
内股、太ももを伝って、膝の辺りまで愛液がこぼれていた。
ウィレムがメアリの腰をつかみ、秘裂に勃起した自身の先端をあてがう。
「ほら、ご褒美だ」
ずぷうっ…っ
「ひぁぁあああんッッ!!」
後ろから一気に最奥まで貫かれ、それだけでメアリは達してしまった。
ぎゅうぎゅうとメアリの膣内がウィレムのペニスを締め付ける。
「入れただけなのに…おまえは淫乱だな」
「いやぁ…ん、ごめんな、さいっ…あぁっ!」
激しくウィレムは腰を動かし、メアリを攻めたてた。
メアリの豊かな胸が、ゆさっゆさっといやらしく揺れ動く。
ウィレムの肉棒がメアリの膣に出し入れされる度に、そこから愛液があふれだし、
じゅぷっ、と泡立った。
「あんっ、あんっ、だ、駄目ぇ…、そんなに、激しいの…ッ」
ウィレムが後ろからメアリの乳房を揉みしだき、指先で乳首をつまんだり、いじったりすると、
キュッとメアリの膣内が締まり、ビクンと身体は反応する。
「やぁん、駄目ッ、駄目ッ!また…ぁぁっ…またっ、来ちゃうッ!!」
嬌声を上げ続けるメアリの腰をつかみ、思い切り最奥まで突くと、ウィレムの先端が子宮口にぶつかった。
そのまま先端を子宮口にこすりつけるように、ウィレムは腰を回転させた。
「や、だ、だめ、またっ、また…ぁぁああああんっんッ!!」
ビクンビクンと身体を震わせて、メアリは再び達した。
「あん、はぁ…ん、はぁっ…はぁっ…」
達した後もこらえきれないのか、メアリは喘ぎ声を漏らし続けていた。
ウィレムがメアリの膣からペニスを抜くと、ぬぽっと音がしてその先端から粘液がこぼれ落ちた。
ウィレムはソファに腰かけ、ぐったりとしたメアリを引き寄せると、
自分の膝の上に向かい合わせで座らせるようにして、もう一度挿入した。
二度も達したメアリの膣内は、とろとろと愛液をこぼしながらも、
しっとりと、きつくウィレムのモノを押し包む。
今度は下から突き上げるような動きに、メアリは悶え続けた。
「んっ、んんっ、んぁあ…ウィレムっ」
「どうした」
名を呼ばれてウィレムはメアリの顔を見た。
これがオランダの民に慕われ、高貴でしとやかと評されるオラニエ公妃の姿なのか。
潤んだ瞳からは涙を流し、快感で半開きになった口からは唾液がこぼれている。
いつもは青白いまでの肌が、今は薔薇色に染まり、そして欲情をむさぼるように自ら腰を動かす。
「ウィレム…好き、好きぃ…」
涙を流しながら至福の表情を浮かべるメアリ。
まだ精液の残滓が付いているにも関わらず、ウィレムは妻の頭を抱き寄せ、深く口づけた。
「ん、ん、んふっ、んんっ」
ちゅるちゅる、ちゅっ、ちゅぷっ。
互いの唾液をすすり合うようにキスをしながら、二人は腰をぶつけ合った。
結合部からあふれる粘液は、ウィレムの腿をも濡らし、ソファにまで達していた。
口付けを止めると、ウィレムはソファの肘掛にメアリを押し倒し、もっと奥まで
挿入できるように妻の臀部を抱え上げ、さらに激しく腰を動かした。
「やっ、ひあぁっ、あっ、はぁん…ウィレムっ、わたし、もぅ…ッ!」
「メアリ…私もっ、そろそろ…」
グチュッ、グチュッと卑猥な水音とともに、ギシギシとソファも軋んでいる。
「さあ…孕め…ッ!!」
妻の腰を抱えたまま、一番奥までウィレムは貫き、溜まった欲望を吐き出した。
「ふぁあ…ッ!あ、熱ッ!!ぁはあぁんんっ!!」
体内に流れ込んでくる熱い精液を感じ、メアリは三度目の絶頂を迎えた。
子宮がギュンギュンと収縮し、精液を一滴たりとも逃すまいと搾り取る。
「くっ、うぅッ…」
これまでにない射精時の快感に、堪らずウィレムも呻き声をもらした。
絶頂の余韻に浸るかのように身体を痙攣させたあと、メアリはゆっくりと無意識の底へと沈んでいった。
しばらくの間意識を手放していたウィレムは、覚醒するとゆっくりと身を起こした。
何事もなかったかのようにソファから離れ、身なりを整えると、メアリの方に視線を投げかけた。
オレンジ色のドレスから乳房と脚をはみ出したまま、ソファの上でメアリは静かに寝息を立てている。
ウィレムはメアリに近づき、衣服を直してやると、上着として着ていたジュストコルを
脱いで、彼女にかけてやった。
襟元のタイを外し、それで妻の顔にこびりついていた精液をぬぐってやる。
ウィレムはそのままじっと妻の顔をみつめると、何かを呟き、
まだ少し赤みを帯びているその頬にキスをした。
「ウィレム!」
書斎を出たウィレムに聞きなれた声が聞こえた。
「ハンス」
ウィレムの幼いころからの親友であり、腹心として主に外交面で活躍している
ハンス=ウィレム=ベンティンクだった。
二人だけのときは、親友として言葉を交わす仲である。
ウィレムのくたびれた格好を見たベンティンクは、少し驚いた様子だった。
「長かったな、ウィレム。…抱いていたのか?」
「ああ」
「それで、メアリ様は?」
「娼婦のように乱れていたよ。あの女の産みの母親は、卑しい身分の出だからな。
血は争えん。それとも、あの好色は父親譲りかな」
「…俺はそういうことを尋ねたつもりではなかったのだが」
苦笑しながらベンティンクはウィレムの背を叩いた。
「じゃあ、何だ」
「そうイライラするな。ああ、でも、その様子だとメアリ様に関しては心配無いようだな」
「…おまえの言うとおりだ。少なくともメアリに関してはな。
だが、ハンス。女官のレディ・トレローニーとラングフォード夫人、
それと執事のコヴェルをイングランドに追い返せ。
これ以上、メアリに余計なことを吹き込む輩は、私が許さん」
「分かった。彼女たちの最近の行動は、確かに不審だ。追放には賛成する。
イングランドの情勢そのものは、ジェイムズ王の治世において、まだどう転ぶか分からんが」
「ジェイムズの好きなようにはさせんさ」
自信に満ちたウィレムの言葉に、ベンティンクは微笑んだ。
「それで?ウィレム、おまえの今日の予定は?といっても、もう午後だが」
「私は一度着替えてから、ホラント州議会に顔を出す。
ハンス、おまえは妻のアンに言ってメアリの面倒を見させてやってくれ」
「ウィレム…これからメアリ様をどうするつもりだ。イングランドでジェイムズ王が
即位した今、オラニエ公妃はイングランド王位継承権第1位にあたる。
メアリ様の立場は非常に微妙だぞ」
ベンティンクの問いに対して、ウィレムは感情の起伏が感じられない声で答えた。
「あの女は単純だ。愛しているふりでもしておくさ」
「ふり、だって?」
「悪いか?」
ムッとした表情でウィレムがベンティンクを睨みつける。
その表情が図星を突かれたときの親友の癖だということを、
ベンティンクは十分承知していた。
「いや、悪くない。悪くないさ、おまえは。…じゃあ、また後でな」
「ああ」
廊下を去っていくウィレムの背中を、振り返って見つめながらベンティンクは呟いた。
「相変わらず、不器用な奴だ」