〜池田屋事変の裏舞台〜  
 
「行くぞ」  
近藤は沖田、藤堂、永倉らとともに旅籠「池田屋」の門戸に立った。  
窓から不逞浪士共の酔っただみ声が聞こえてくる。  
敵の数はざっと20余人。  
こちらはたった4人。  
近藤は腹を決めた。  
刀の柄に酔伝をして、門を蹴り破った。  
近藤は大声でさけんだ。  
「我等新撰組!御用改めである!刃向うものは容赦無く切り捨てる!」  
池田屋の主人が慌てて二階にいる浪士に急を伝えようとする。  
近藤は主人の脇をかすめて、階段を駆け上がった。  
 
二階に着いた近藤は、障子を破り浪士に牽制をした。  
中では浪士が殺気立って抜刀して待ち構えている。  
突然浪士の一人が近藤に斬りかかった。  
だがそれを後ろから現れた沖田が一刀の元斬り捨てた。  
これに浮き足立った浪士達は窓や踊り場から階下に逃げようとする。  
だが階下では藤堂と永倉が、中庭には斎藤と原田が待ち構えている。  
中庭に飛び降りてきた浪士を原田が得意の槍で串刺しにする。  
一階の階段前では藤堂と永倉が必死に浪士たちと戦う。  
二十人対四人。  
普通に考えれば勝敗は見えているが、狭い屋内では少数のほうが帰って有利だった。  
だがいかに新撰組隊士が強いといっても、時は六月五日―――――――  
まして鎖帷子や羽織で重武装していたため、隊士は滝のように汗をかいた。  
そのせいで藤堂は汗によって目が眩み、  
あらかた敵は倒したと見て、つけていた鉢がねを外した。  
その一瞬の隙をついて、浪士が藤堂に斬りかかった。  
藤堂は眉間に深手を負った。  
かなり深く切られたのか、血がドッと吹き出した。  
 
「大丈夫か!?」  
永倉が走ってきて藤堂を救出する。  
永倉は裏門の隊士に命じて、藤堂を本陣に戻らせた。  
だが、沖田はもっと酷い目にあった。  
敵の不逞浪士の一人、望月亀弥太との一対一の戦いになり、  
望月の背中に一閃を繰り出した。  
望月は背中に深手を負い、ヨロヨロと逃走を始めた。  
だが沖田はそれを追いかけ、とどめの一閃を出そうとした。  
だが突然喀血し、丼一杯ほどの血を吐いた。  
労咳(肺結核)  
彼が血を吐いた理由はこれだった。  
当時はこの病気は不治の病とされ彼はこのあとも  
この病気によって未来を壊されることになる。  
暑い中動き回ったことが体に障ったのだろう。  
浅葱色の隊服が真っ赤に染まった。  
沖田はそのまま崩れるように倒れた。  
形勢は一気に浪士に傾いたと思われたが、そんな時  
土方率いる別働隊が援護に来た。  
こうして池田屋事変は新撰組の勝利。  
歴史ではこのようになっているがこの話には実は裏がある。  
それは池田屋事変の三日前。  
沖田は池田屋の侍女のお香と交際をしていた。  
その三日間に沖田とお香の間に何があったのだろうか?  
  〜続く  
 

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