新撰組局長筆頭、芹沢鴨は自他ともに認める豪胆な男であった。
32歳になるこの年まで、数知れぬ修羅場を潜り抜けてきたが
一度たりとも恐怖を覚えたことはない。
ところがその芹沢にもたったひとつ苦手なものがあった。
四条堀川の呉服商、菱屋太兵衛の妾、お梅である。
派手好みの芹沢は菱屋で局長に相応しい衣装をあつらえさせたが、代金を支払わなかった。
菱屋が代金の催促に来たが、物言いが無礼であったため
「貴様、この芹沢を盗人扱いするか!」と刀を抜いて突き付けてやった。
肝を潰して転ぶように逃げて行った菱屋を見て、大笑いした芹沢だった。
が、菱屋も引き下がったわけではなかった。
一計を案じ、妾のお梅を屯所に遣わして催促させたのである。
これが菱屋とは反対に胆の座った女で、毎日のように催促に来る。
芹沢もさすがに女に剣を突き付けて脅すのは躊躇われた。
不在と称して避けると、お帰りになるまで待ちますと言う。
芹沢も仕方なく、苦手なこの女に会わざるを得なくなった。
「金はいずれ払う。」
「いずれとは何時でございますか。」
「武士に二言はない。払うと申しておる!」
「存じております。しかし先日のお約束では今日お支払い頂けるとのことでした。
わたくしも子供の使いで参ったのではございません。今日こそお支払い頂きます。」
芹沢鴨は不快だった。この女は俺を全く恐れていない。
京を歩けば泣く子も黙る新撰組、その猛者たちが芹沢の一挙一動に震え上がる。
天狗党にいた時もそうだった。
会う者全てが神道無念流の達人で怪力無双の彼を恐れた。
その恐怖心が芹沢の自信の源だった。
ところがこの女はどうだ。
物腰は丁寧でも、その目に浮かんでいるのは軽蔑のみだ。
気位の高い彼にはお梅の視線が堪え難かった。
この女には脅しもすかしも効き目がない。
ならば… 芹沢はお梅の襟元から覗く白磁の肌に目を留めた。
「な、何でございますか。」
お梅は芹沢鴨の気配が変わったことを察し、無意識に手で襟元を締めた。
「ほう…」
気丈なお梅が動揺を見せている。思わず笑みがこぼれた。
「明日にでも必ずお支払い頂きます。今日のところは…」
危険を察したお梅が挨拶もそこそこに辞去しようとしたその時…
「あっ!芹沢様、何をなさいます!」
その巨体からは信じられぬ素早さで立ち上がった芹沢が左手でお梅の襟を掴み
畳に引き倒したのである。右手はすでに胸元から侵入し、乳房を鷲掴みにした。
「豪商菱屋が妾にするだけのことはある。良い肉付きじゃ。」
「おやめ下さいませ。人を呼びます。」
「ふふ、好きにせよ。わしはこの新撰組の局長だ。屯所で助けを求めても誰も来ぬわ。
もっとも…」
指が乳首をとらえ、お梅はあっと声をあげた。
「隊士どもも眼福に預かってよろこぶだろうがな。」
お梅は必死で芹沢の巨体を押し退けようとしたが、怪力に敵うはずもなく
芹沢は苦もなく左手でお梅の両手を封じると、右手がお梅の裾を割って入った。
「い、いや」
「ほう」芹沢は構わずに感嘆の声を上げる。
吉原や島原の遊女を抱き慣れた芹沢にとって、黒々と茂った女陰の毛は新鮮であった。
この時代花魁の多くは下の毛を手入れする。
ざらつく陰毛の手触りに欲情を誘われ、その先の滑らかな襞に指を這わせる。
お梅は抵抗は無益だと知った。だが、他人にこの恥を知られるわけにはいかない。
必死で声を上げまいと堪えた。
芹沢の指が弄ぶ秘所からは蜜が溢れて来る。
「どうした?声を出さぬか。そなたの体は喜んでおるぞ。」
芹沢の指がお梅の芽を摘む。
「〜〜〜〜ッ!」
エレキテルのような快感にお梅は袖を噛み締めることで堪えた。
「いつまでその我慢が続くかな?」
くっと笑うと芹沢は人差し指で膣口をくつろげると、中指を体内に挿入させた。
膣腔を味わうように中指をゆっくりと動かし始める。
「おお、吸い付くようじゃ。そなたは良いもちものを持っておる。」
指先の動きが激しさを増し、同時に親指が突起を刺激し始めた。
お梅のからだが震え、気息が激しさを増していく。
「〜〜ッ!……ウゥッ!」こらえ切れずに呻き声が漏れる。
全身がひときわ大きく震えた直後、お梅の四肢が弛緩し汗がどっと吹き出した。
息も絶え絶えのお梅は長襦袢をかろうじて巻付けた半裸で、
汗に濡れ乱れた髪が額や首筋に張り付いている様は例え様もなく艶かしい。
「最後まで声を上げぬとは、気丈な女よな。さて、次はわしが愉しませてもらおうか。」
芹沢鴨は褌を解くと、その体格に恥じない巨大な一物を取り出した。
突き出た腹に張り付くほどに天を向いて硬化した巨根が、お梅を求めていた
その巨大さを目の当たりにしたお梅の目に恐怖がよぎった。
「…いやっ…」
芹沢は構わずに脚を開くと一物を入口に押し当て、そのまま深々と突き入れた。
「ああっ!」菱屋のそれとは比較にならない大きさにたまらず声を上げる。
ふたりはそのまま屯所の建物が軋むほどの勢いで、激しく交わった。
もう声を押さえることなど考えていなかった。
「あっ、あっ、あっ、芹沢様!」
「はっ、はっ、はっ、はっ、お梅!いくぞっ!」
芹沢はお梅をひしと抱きすくめると、その中に大量の精を放った。
芹沢がその夜、隊士に自慢して回ったこともあり、
事件は一夜にして組の全員が知ることとなった。
その日からお梅は支払いの催促にかこつけて芹沢を訪問しては体を重ね、
ついには芹沢の部屋に泊まっていくまでになった。
近藤と土方が苦りきっているとの注進もあったが、芹沢は笑って黙殺した。
あの陰気なふたりは俺を恐れている。何ができようか。
「新撰組はこの芹沢鴨のもの。天下に憚ることなど何一つないわ。」
近藤らによって、芹沢鴨がお梅とともに寝所で謀殺されたのは、半月後の9月18日であった。