蝉がうるさいくらいみんみん鳴いている  
「あぁあぁあ〜………」  
扇風機すらない我が家ではこの暑さはまさにタダのサウナ状態で、すっかり私はダウン中  
「あぁあぁあ〜…あぁあぁあ〜…」  
まるでノラネコが吠える様なけだるい声をあげて畳に寝転がっている  
「あぁあぁあ〜…あぁあぁあぁあ」  
「うるさいよお姉ちゃん…静かにして」  
さっきからしつこくうなっている私の声をさえぎる様に  
布団で寝ていたあすが体を起こして声を出した  
「だぁって〜〜〜…あついんだも〜ん」  
ぷぅ〜と頬を膨らませる私をみて、呆れた顔を向ける…  
「…静かにしてよぉ…お昼寝ぐらいさせて」  
何よ…今日はずいぶん冷たいじゃない。お姉ちゃんよりお昼寝が大事なの?  
「あすぅ。プールいかない?」  
「たらいでしょ…いい」  
「じゃハワイ♪」  
「まだお風呂は早い…」  
何よ…何よ何よ…私の顔も見ないでさぁ…お姉ちゃんいじけちゃうよ?いいのあす?  
「あす〜、あす〜、遊ぼうよ〜」  
「暑いんでしょ?じっとしてなよぉ」  
「やだやだぁ〜」  
寝転がったままじたばた手足を動かす私についに呆れてしまったのか、あすはごろんと背を向けた  
「…………」  
あ〜あ…こりゃだめね。あすは眠いと不機嫌だけど今日はちょっとね  
 
「む〜〜〜〜〜」  
さっきからあすにだきついたまま寝てるけど、あすはまるで目を覚まさない。  
すやすやと気持ち良さそうな寝息を立てている  
「あ〜す〜?」  
試しにほっぺをつついてみたけど反応は無い  
「あす?あす?」  
今度は両手でつついたけどすやすや…  
「………何やってもおきなそうね……」  
無防備な寝顔を見ているうちに、私の中にいるイタズラな悪魔が囁いてきた  
(イタズラしちゃえよ♪お姉ちゃんをムシして勝手にお昼寝したあすに♪)  
「ん〜…でも…」  
(こんなチャンス意外とないよ?ほら…目の前に可愛いオモチャがあるじゃないかぁ…)  
「あすは…あすはオモチャじゃない!」  
(わ!そ、そんな大きい声出していいの?あすが起きちゃうよ)  
「あ…!」  
おそるおそるあすの方に目を向けると…  
「す〜…す〜…」  
…よかった。寝てる  
「…それにしてもほんと可愛いなぁ…」  
ふぅ〜と、ピンク色のため息をついて  
まじまじと寝顔に詰め寄った。  
「あ〜す〜♪」  
ほっぺをくっつけてそのやわらかい感触を味わう  
「ん〜…」  
あ…やば。起きちゃう?  
「…すぅ…」  
ほんとよく寝てるね。  
「普段…苦労させてるからかな。ごめんね…」  
長い髪を撫でてあげるとあすが笑った様な気がした  
 
(何やってんだよ〜チャンスなのに〜)  
また…私の中の私によく似た悪魔が囁く  
(くすぐれ♪こちょこちょっと♪)  
「やめたの!イタズラはしないの!」  
(あ、そう。我慢できるんだ?あす…くすぐり弱いんじゃなかったっけ?見たくないんだ)  
「そ…それは…」  
(けらけら笑うだろうな〜。あすの笑顔、何よりも好きなんでしょ?)  
「そんなの笑顔じゃないよ…」  
悪魔と必死に戦っていたその時だった。  
「う〜…ん…」  
あすが、いきなり  
ごろっと寝転がり仰向けになったのだ。  
「え…?!」  
(あ〜♪神様のイタズラかな?)  
問題は寝転がったことじゃない。シャツがめくれて……  
白いお腹があらわになったことだ  
「あ…あ…あす…あぁ…」  
(へ〜…なかなかいいお腹じゃない。やわらかそうな可愛いお腹だね♪)  
別に初めて見るわけじゃないのに  
なんでなの?なんか…直視できないくらい…その…え…えっと  
(イタズラ…しなよ♪無防備でお腹出して寝てるのに何もしないの?うひひ)  
あぁ…あ…い、いけない、いけない!手が勝手に!  
「ん…っ」  
指があすのお腹に触れたとたん、小さな声とともにぴくっと震えた  
「………」  
あすごめん、あすごめんごめん(平伏)  
つ…つい、悪魔にそそのかされて…だから…  
(くすぐれ〜♪こちょこちょくすぐれぇ♪)  
い…いけない、だめ、こんなことしたら私…  
「ん〜……」  
はっ!あす?!  
まずいよ、今起きちゃったら私嫌われる!!  
「…ん…っ…」  
しかしあすは起きずに、かゆそうにおへその下をぽりぽり掻いた。  
「んふ…あ…」  
その顔、仕草…  
(誰も止めないよ♪は・や・く♪)  
 
「あす…っ!」  
ついに我慢できなくなり、再びあすの白いお腹に指を触れた。  
「あぅっ…」  
その声がなんかやらしくって  
でも、もっと聞きたくなっちゃって、とりあえず人指し指と中指でお腹を歩いてみた  
(やっとやる気になった?遅い)  
「うるさい…!」  
楽しそうな悪魔がいやな感じだけど、それ以上に  
「あ、あぁ、んっ」  
敏感なあすの反応に目がはなせなかった…  
(…くすぐってないじゃーん)  
「うるさいってば!」  
時折、指を強くしてお腹を押すと  
「…ぁん…っ」  
あすの開きかけた口から小学生らしくない声が漏れる。  
やだ、あすったらなんか変な資質があるんじゃ…お姉ちゃん心配だよぉ。  
…と、余計な心配をしていたらつい手元が狂い、おへその中に指を突っ込んでしまった。  
その時、あすが小さな悲鳴を…  
「んぁっ!!」  
きゃ…!あ、あすごめん、あすごめんごめん!  
(今狙ったでしょ?やらし〜ぃ)  
「狙うわけないじゃない…!」  
心配になってあすの顔を見たら…  
「…え…?」  
「あ…はぁ…はぁ…」  
なんと  
痛んでいる様な顔じゃなくって、その…  
ほっぺを赤らめて息が荒くなってたの  
「…」  
ためしにもう一度おへその中をつついてみたら  
「あう!…あ…」  
また声を出して、顔を赤らめてひくひくしている  
(おやおや♪偶然発見ですね、あすのきもちいいところ♪うひひ)  
「…………」  
やらしい…やらしいよあすったら…  
私は今、知ってはいけないことを知ってしまった  
 
 
「ふぁあぁ〜…」  
あすがお昼寝から覚めた  
「………」  
目をこすりながら辺りをきょろきょろみて、私を見つけたら飛び込んできた  
「お姉ちゃ〜ん♪」  
さっきの不機嫌なあすじゃなくいつものあす  
「…おはよ」  
「ごめんね〜さっきはねむくて。でも!もう大丈夫。いっぱい遊んであげる」  
「いいの…」  
「…え?」  
あすの顔が見られない…  
私はしてはいけないことをしてしまったから  
「…あす…」  
ぎゅっと抱き締めるしかできない  
「痛いよお姉ちゃ〜ん」  
「あす…ごめんね…あす……」  
涙で目が潤む私に、ほっぺを近付けるあす  
「……泣き虫なお姉ちゃんも好きだよ」  
「………」  
「…ちょっとイタズラなお姉ちゃんも、ね?」  
「え?!」  
にへっと笑って、今度はおでこをくっつけたあす  
「あ、あす…?」  
「今度は…痛くしないでね?約束だよ」  
う…うそ…まさか…さっきの…!  
「さぁ〜、ご飯作らなきゃ♪」  
 
…あす…  
 
……ごめん  
 
優しいね…  
 

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