「目が覚めたようだな、アリババ神帝」
女は目の前に横たわっている少年を見下ろし、冷ややかに語りかけた。
辺りは険しい岩に囲まれて薄暗く、風化しかけている骸骨が幾つも散らばっていた。
少年のぼやけている視界に段々と見覚えのある赤い瞳と炎を形どった髪がはっきりと浮かび上がる。
「サタンマリア、貴様・・・・・っ!!」
少年は即座に立ち上がると、憎むべき女の姿を目掛けて構える。
「お前が魔穴に落ちてきた所を私の力で蘇らせたのだ」
「これからじっくりと料理をして、私のしもべにしてやろう」
マリアは武器も出さずに余裕綽々な表情で、おぞましい台詞を言い放つ。
「黙れ!お前の言いなりにはならない!! 」
アリババは剣を抜いて技を繰り出そうとするが、いくら振りかざしても理力が出ない。
「ハハハハハ・・・!相変わらず威勢だけはいいな」
「何故だ?!どうして・・・・!」
「どうあがいても無駄だよ。ここに入ったら二度と理力は使えまい」
(そうだ・・俺は・・もうみんなの元には戻れない。でも・・・ヘッドロココ様・・ヤマト神帝・・・)
マリアは不吉な金属音をさせて近づき、悔しさで涙ぐんでいるアリババの頬を爪先で上下になぞる。
アリババは鮮血を塗りたくったような長い爪先の感触に鳥肌が立ち、マリアを突き飛ばした。
「お前はずっと私に会いたいと願っていたのではないか?」
マリアは全てを見透かすような口調でアリババににじり寄る。
確かに若神子の頃は天使という立場に度々引け目を感じて息苦しかった事もあるのは事実だ。
自暴自棄になって村中を荒らした過去もあった。そんな中、パワーアップしたマリアは流星のごとく現れた。
自由に空を飛び回り、六聖球を奪って思いのままに荒ぶる彼女は猛々しくも輝いて、遠くから羨望の眼差しで見ていた。
だが、そのような気持ちは一切封印して仲間達と力をあわせて次界を目指して旅をしてきた筈なのに。
マリアは表情を曇らせているアリババに冷笑を浮かべ、鉄仮面を外した。そして煙草の箱とライターを放り投げた。
アリババは首を振り、所在無げに胡坐を掻いて無関心そうに振舞うが彼女の一挙一動を逃さずに監視していた。
しかし相手に殺意は感じられず、粗暴で恐ろしい形相で斬りかかって来るイメージとはかけ離れた穏やかな物腰に拍子抜けをした。
端整で理知的な素顔は印象よりも少女っぽく、スラリとした立ち姿と鮮やかな赤い髪は今の時期に凛と咲き誇る真紅のカンナを連想とさせる。
そして、流麗で無駄のない仕草からはヘッドの風格と洗練された涼しげな色気を感じた。
だが、マリアがくわえ煙草をしながら戦魔槍で素振りを始めたのが気になって仕方がない。
「ねえ・・さっきから何やってるの?」
「近い内に毎年恒例のスーパーデビル主催ゴルフトーナメントが開かれる。しかもヘッドは強制参加だと。馬鹿げている!」
「へえ・・・(天魔界って案外暢気なんだな・・)それでも一生懸命に練習する所がサタンマリアらしいね。。」
アリババは緊張が解けて、苦笑いをしながらフォローをすると賞品目当てだ、という彼女らしい返答が返って来る。
「後、夏の風物詩として野外での乱交パーティーもある。新入りは歓迎してくれるぞ。まあ、私は参加しないが」
「天魔界に行って見たいと思った事はあるけど・・・それはちょっと・・・」
マリアは凍り付いているアリババをチラリと覗き、含み笑いをする。
「ずっと聞きたかった事だが、いつも無闇によい子ちゃんを演じている気分はどうだ」
マリアが素振りをやめて振り返り、悠然と煙を燻らせながら聞いた。
アリババはいきなり核心を突かれて険しい表情になる。
マリアはアリババの隣にしゃがみ、密かに実体験(前作参照)を元に徐に口を開いた。
「ならば、私が代わりに答えてやろう。いつでも緊張して落ち着かなくて人目が気になって気が休まらない・・・間違っているか?」
アリババはキョトンとして、彼女のあまりにも的外れなよい子ちゃん像に堪えきれずに吹き出した。
不気味な魔穴内に似つかわしくない明るい笑い声が響きわたる。
こうして向き合っていると敵として激しく戦っていた相手とは思えず、妙な連帯感が湧いて二人で居るのも悪くはないと思い始めていた。
よく考えたらじっくりと話してみたいことも沢山ある。しかも、近くで見るマリアは文句の付けようがない程美しい。
元来怖いもの知らずで好奇心が旺盛な少年は、一旦打ち解けると趣味は何だの、普段は何して過ごしているだの、
他愛のない事を次々に話しかけてくる。他人に質問攻めされるのは鬱陶しい事この上ない筈だが、
彼だと何故かちっとも嫌ではない。だが、恋をしたことあるかという質問にだけは頑なに黙秘をした。
マリアは頬杖をついて万華鏡のようにクルクルと変わるアリババの表情を飽きることなく見つめている。
見れば見るほどに美しく、情欲を駆り立てる。凛々しい濃い眉と情熱を感じさせる澄んだ海のような大きな瞳、陽の光を沢山浴びた健康的な肌、
大分年下のはずだが全体的に精悍さも兼ね備えており、負けず嫌いで男気のある性格も以前から一目を置いていた。
「よせってば、そんなに見るなって!」アリババは頭を掻いて、照れ隠しをした。
マリアが無造作に両脚を放り出すと白い太腿と下着が一瞬見えた。
その上、大きく開いた胸元の隙間からは黒いキャミソール越しに白桃のような乳房が覗いている。
アリババは目のやり場に困って背中を丸めて膝を抱えた。
思春期の扉に入ったばかりの少年にとってはどれも刺激的過ぎる眺めで顔はたちまち赤くなった。
(頼むからブラジャーぐらい付けてくれよ・・・しかも・・レースのパンティなんて犯則だぜ。。)
「仲間が恋しくなったのか?今更戻れやしないぞ」マリアはアリババに向かって高笑いをした。
「なんでいつも戦いを嗾けてきたりしたんだ。ここにいる君をみたらきっとみんなも・・・」
「全然分かっていないようだな。一体何のために蘇らせたと思ってるのだ」
「それなら、どうしてさっさと悪魔に変えない!?俺の気が変わらない内に、早く!」
「そんなに焦るな。アリババ神帝、今は、そのままのお前が欲しい」
マリアはアリババの顎を引き寄せてマスクを外した。アリババは今までの執拗な攻撃と自分に向けられた視線の真意をようやく理解した。
そして、自分の気持ちにも気づいた。ずっと憎んで怯えながらも心の片隅で惹かれ続けていたことを。
美しい悪魔の囁きと甘い吐息は媚薬で、妖気を放つ瞳を見ていると心ごと攫われそうになる。
マリアはアリババの艶やかな赤銅色の髪に触れて唇を素早く盗んだ。
アリババは目を閉じてごく自然にマリアを受け入れて力を込めて細い腰に腕を絡ませた。
「こうして私の魔力を送り込んで、お前は目覚めたのだ」
「ちぇっファーストキスまで不意打ちかよ!」
アリババは少し不服そうな顔をして、丁度額の位置に当たるマリアの肩に凭れ掛かっている。
マリアはアリババの下腹部に手を添えてズボンの上から中心を探った。アリババは咄嗟に腰を引くが、マリアの手は強引に滑り込んだ。
「フフフ・・・こっちはもうその気になっているようだな」
マリアは一物をしごきながらズボンを脱がしに掛かる。アリババは慌ててズボンを上げようとするがマリアの腕力にはかなわない。
そこはまだ幼さが残っているが、圧倒的な存在感を示して女を悦ばせるには充分すぎる程に屹立していた。
マリアの温かく湿った咥内が自身を包み込んだ。
「あっ・・!そんなこと・・・やめ・・て・・・」
アリババは必死に懇願するがマリアは聞き入れず、激しく頭を上下させて舌を速く動かした。
大きな瞳は潤み、虚ろになっている。限界が近づくにつれて奥歯を食いしばっていたが、一声上げてマリアの咥内に爆ぜた。
マリアは注ぎ込まれた多量な液体に咽て咳き込み、口の端から溢れた白い雫を滴らせている。
「貴様、こんなに溜め込んでたのか・・・!」
眉をしかめて唇を拭い、茫然自失になっているアリババに覆い被さりターバンと衣服を剥ぎ取った。
肩幅や胸板は案外しっかりとして、細い手足には筋肉がついて思ったよりも男を感じさせる。
マリアがうっとりとして胸元に唇を這わせるとアリババは掠れた声で何かを訴えていた。
「ずるい・・ぞ・・・」
「何い?!」
「そっちだけは脱がないなんて・・・卑怯だ」
「・・・・・・」
アリババは絶句をしているマリアの服に手をかけ、肩を剥き出しにすると形のいい乳房が弾むように出てきた。
息を飲んで触れようとすると、至る所に細かい無数の傷跡が見える。震える指でそれを撫でた。
「君は・・・女の子なのに、こんなに・・・これも、この傷もみんな俺達が・・・」
「余計な情けは無用だ。ここでの記憶は全て消える」
「えっ・・・!?今こうしている事も?」
マリアは長い睫毛を伏せてゆっくりと頷いた。
抑揚の無い声と愁いを帯びた表情があまりにも切なくてアリババはマリアに縋り付いた。
「その方が互いにいいに決まっているだろう。だが、これからは私と一緒だ。恐れる事など何もない」
マリアは小さな肩を震わせてしゃくり上げているアリババの頭を撫でた。
アリババは涙の溜まった澄んだ瞳で見上げ、はにかんで笑顔を見せる。
しばらく二人は何も語らず、互いの孤独を埋め合うようにして抱きしめ合った。
乳房の柔らかさと規則正しい鼓動が直に伝わり、再びアリババの欲望が首を擡げる。
マリアは下腹部に固い物を感じて喉の奥で笑う。
アリババはくっきりと浮き出た鎖骨に舌を這わせ、乳首を唇で挟み片方の乳房を揉んだ。
マリアは艶かしい溜息を漏らし、アリババの手を取り下着の中に導き入れた。
(こんなに毛が生えてる・・・やっぱり大人なんだな)アリババは感心しつつ、茂みをおぼつかない手つきで弄る。
「何をしておる、もっと中に・・・」マリアはじれったそうに指を奥に押し進めさせる。
アリババは恐ろしく熱を持った内部と液体に驚く。
「ちょっと待った!えーとその・・・女の子の日って奴じゃないのか?・・こんなに濡れてるし」
「今月は終わった・・って馬鹿者!!何を言わせるつもりだっ///指をひっこ抜いて確かめてみろっ!」
アリババは恐る恐る指を見ると血液ではなく透明な粘液が付着していた。
「これは・・その・・体が喜んでいる証拠だ」
マリアらしからぬ恥らっている様子を見て、アリババは愛くるしい少年から野性味を帯びた男の顔へと変わる。
いきなりスカートの中に潜り込むと下着を脱がして秘所に口付けた。突起に舌先が当たってマリアは嬌声を上げた。
アリババは普段男勝りで荒々しいマリアがこんな甘く切なげな声を出せるという自体に驚いた。
「あんっ・・・あっあっあっ!・・・・どこで・・そんな事を・・?」
「裏本」アリババはマリアの太腿に挟まれながら上目遣いで悪戯っぽく笑う。
(あいつは一体、部下にどういう躾をしてきたのだ。。)
マリアはアリババの頭を引き離し、尻餅を付いた。脚の隙間からは割れ目が見えている。
「もっと、よく見せてよ」
「この・・・!いい加減にしろっ!」
アリババは腹を蹴られてもめげずに、逸る気持ちでマリアの両脚を肩に乗せた。
目の前には髪の色と同じ茂みと小さな蕾、二枚の可憐な花弁が現れる。
それは本で見た女のよりも美しくとても淫らで、目を凝らさずにはいられなかった。
花弁を広げると肉色の襞がヒクヒクと蠢いている。濡れそぼっているそこに指を二本差し込んでいくと蜜が溢れ、
マリアは横を向いて微かに喘ぐ。熱気を帯びて湿った道筋は何処までも続いているようで、終わりを感じさせない。
「お遊びはここまでだよ、坊や」
マリアはいつも通りの凄味の利いた口調で言うとアリババを突き飛ばして跨った。
そしてスカートをたくし上げ、片手で一物を掴むと見えるように秘肉に押し当ててゆっくりと腰を落として行く。
若さに漲る反り返った欲望を奥まで咥え込むとうっとりとした表情になる。
「アリババ神帝、悪魔の女に男にされた感想はどうだ?」
マリアは淫靡な笑みを湛えて腰を巧みにグラインドさせ、内部を意識して締め付ける。
アリババは意地の悪い質問に答える余裕も無く快感の波に酔っていた。
淫らな結合部分からは粘膜が擦れ合う音が聞こえ、下からは揺れる乳房が見えた。
マリアは悶えて嬌声を出しながらも容赦なく腰の動きを早めていく。
アリババはマリアの肩にしがみつき、切羽詰った表情で見つめた。
「フフフ・・さっきの余裕はどうした?」
マリアが動きを止めるとアリババは体を反転させて組み敷き、本能の赴くままに貫いた。
そして思いのほか、複雑な動きをしてマリアを悦ばせた。アリババの背中に赤い爪が食い込む。
「あぁっ・・・!あんっ・・あぁっ・・もっと・・・」
「もっと・・・どうして欲しいの?」
アリババは汗を滴らせ、マリアの乳房を揉みしだく。内部の収縮は一層激しくなり絶頂へと近づけるが、ピストンを続けた。
「マリアの○○○○、蕩けそう。すごく気持ちいい・・」
マリアは淫語を囁かれて耳が熱くなり、くすぐったい様な甘い感覚が体中に広がり体を仰け反らせ、一気に果てた。
「はぁ・・・はぁ・・はぁっ・・・もう駄目・・・・出るっ!!!」
アリババはマリアの達した所を見届けて自身を抜く。白濁は勢いよく飛び散った。
(初めてにしてこの私をイかせるとは・・末恐ろしい奴だ・・・)
マリアは精神的な満足感も手伝って、心地よい気だるさに包まれた。
「ごめん・・・こんなに汚しちゃって・・」
アリババは慌ててマリアの顔と服を拭った。
「服なら何着もある。男ならいちいち細かい事を気にするな」
「同じのが何着も?!こんなボロだけじゃなくて違うのも着ればいい。そうだな・・。色白だからピンクもきっと似合うよ」
隣で寝そべっているアリババをみるとまるで恋人と会話をしているような幸せそうな顔になっている。
「ピンクだけは好かん」とマリアは冷たく言い放つが、頭の中では小躍りしていた。
「ここでの優しい君の事、忘れたくない」
アリババはマリアの胸に甘えて切実そうな表情をする。
「フン、この私が優しいだと?!そんな戯言を言ってると後で泣きを見るぞ」
「ねえ、サタンマリア・・・」
「お前が全てを忘れ、再び悪魔を憎むようになっても私は忘れない」
アリババはマリアの手をおずおずと下半身に持っていく。
「おいっ!貴様、人の話を聞いてるのか?」
一物はすっかり復活を遂げていた。それからアリババは何度もマリアを貫いた。
ーーーーー約4時間経過ーーーーーー
マリアは不敵な含み笑いをして、精魂尽き果てて眠りについたアリババを魔力で浮き上がらせる。
「お前は悪魔の中の悪魔、ゴーストアリババとして生まれ変わるのだ。・・・魔洗礼!!」
小般若リングが一筋の閃光を放った。
数日後、天魔界郊外のスポーツ施設ではトーナメントの開幕を告げる花火が華々しく上がり、稲妻と共鳴していた。
サンバイザーを付け(日光は無いけど格好だけ)、オフホワイトのゴルフウェアを着たデビルが壇上でスピーチを高らかに読み上げる。
他の者も皆、思い思いのゴルフウェアを着ていそいそとしていた。しかし、見知らぬ屈強な鰐型ヘッドの出現に場内はどよめく。
「誰だ、あいつ?」「新入りのようだな」「何でもサタンマリア様の側近だとか」「マジで〜!?」
そんな中、淡いピンクのゴルフウェアに身を包んだマリアがキャディの鬼ガシ魔を従えて颯爽と現れた。ミニスカートから伸びた長い脚が一際眩しい。
デビルはそれを遠くから双眼鏡で見物をする。パンチラをどうにかしてカメラに収めようと一斉に駆け寄る集団もいた。
「うおおおおっ!!可愛い!!」「サタンマリア様、(´Д`;)ハアハア」「辛抱溜まらん!!!」悪魔達の熱狂はある意味最高潮に達する。
マリアが軽やかにスィングをするとボールは高く舞い、ホールの近くにポトリと落下した。
「ナイショット〜!!!」」
ゴーストアリババはマリアの名が書いてあるプラカードを嬉々として掲げ、多くのギャラリーと共に惜しみのない歓声を送る。
マリアはそれに気づき、晴れやかな微笑をゴーストアリババのみに向けた。
それは彼女がワンダーマリアに変わる前の夏の昼下がり。嵐の前の静けさだった。